プロジェクトR!   作:ヒナヒナ

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TW-2 “KIWI BERRY”

TW-2 “KIWI BERRY”

 

 

 

「R機で戦車……ですか?」

 

 

地球連合軍の開発局の技術少尉は呆けたように聞き返す。

ここは南半球第一宇宙基地近郊にある連合軍の工廠。

統合作戦本部のあるメイン施設からは少しはなれたところにあるここでは、

軍直属の開発局とTeam R-TYPEの2つの組織が入っていて、日夜研究開発に勤しんでいる。

Team R-TYPEはR機とフォースを開発し、軍の開発局は主に艦艇の開発に携わっている。

本来なら、組織を一本化するべきという声が大きかったのだが、

Team R-TYPEの成り立ちの特異性から軍に組み込まれる事を嫌がったため、このような形となった。

ちなみに、特に危険を伴うフォースの研究施設は宇宙施設に隔離されている。

 

 

「そうだ、少尉。ダックビルという支援機をしっているな?」

「はい、少佐。整備支援機ですね。たしか元は最初期の自走コンテナであったように記憶していますが」

「ああ、はねっかえりの整備達が改造してしまったのだが、あれらの有用性は中々見所がある。

陸上機というコンセプトも有りではないかと思ってな」

「それで戦車ですか。しかし、R機はTeam R-TYPEの開発ではないでしょうか?」

「こんな所で、縄張りを主張しあっても始まらんさ。

もともと、この区分けはフォースの取扱を限定したかった軍部と政府の意向だ」

「ああ、確かに軍にも技術自体はありますから、出来ないはずはないですね」

 

 

民間のノリの強いTeam R-TYPEと違い、開発局は完全に軍の影響下にあり、

指揮権はないが研究者にも階級もある。

技術職ではあるので、規律自体は五月蝿くないし、

格好も戦闘職のものとは細部の違う軍服を着ている。

 

 

「しかし、戦車とはどういうコンセプトでしょうか?」

「地上、特に施設防衛に特化させる。R機が出来てから陸軍の主力は旧式戦車だが、

なにしろ構造上、限界に突き当たっている。砲の口径もすでにこれ以上は大きくならない」

「ええ、あれは主砲がレールキャノンですので、R機だったら予備武装あつかいです。

あれじゃあ弾幕でも張らないと、小型バイドだって落としきれない性能ですものね」

「ああ、構造的に限界なら、主砲に波動砲を応用すればいい」

 

 

基本的に地球連合軍の対バイドドクトリンは時間稼ぎとR機による敵中枢の破壊だ。

宇宙基地・艦隊での遅滞戦術によってバイドの侵攻を遅らせている間に、R機で敵中枢を破壊する。

小規模侵攻では都市・基地等の拠点を、無人機や防衛隊によって防衛して時間稼ぎをする間に、

専用基地に集中配備されたR機や宇宙母艦を急行させて、バイドを殲滅する。

大規模都市では都市警備隊が常備されるが、その戦力の多くは時代遅れの砲台や戦車だ。

 

 

 

連合軍でも、辺境基地などにおいては未だにR機の配備が遅れていて、固定砲台による迎撃がメインだった。

R機の定数を満たしているのは統合作戦本部のある南半球第一宇宙基地くらいだ。

ちなみに、Team R-TYPEの実験機が多くを占めるので、この基地の防衛隊はR機博覧会の異名を取る。

ちなみに、極端に影が薄いが、一応、連合陸軍と海軍は存在する。

体質的に宇宙環境に適正がなかったり、何らかの原因でR機に乗れない者が配属される場所である。

 

 

「陸戦用の機体案を幾つか考えてみたのだが、やはり戦車型が良いだろうという結論に落ち着いた」

「しかし少佐。R機であれば戦車にしなくてもいいのではないでしょうか?」

「少なくとも運用するのは連合陸軍の将兵になるだろう。感覚的にも直ぐにはR機に対応できない。

それならば、いっそ戦車型の方がいい。拠点防衛用ならば必要以上の運動性は必要ない」

「陸軍保守的ですものね」

「いや、海軍よりはマシだろう」

 

 

設計資料を集めますと言って、少尉は少し崩れた敬礼をして資料室に走っていった。

それを見送った壮年の少佐がひとこと。

 

 

「Team R-TYPEにばかり美味しい所を取られてたまるか」

 

 

こうして、軍の開発局で戦車型R機の開発が始まった。

 

 

***

 

 

この少佐はどうやってか予算を引っ張ってきた後、部下の少尉を引き連れて設計室に篭る。

設計思想のすり合わせだ。

 

 

「少佐。無限軌道でしかもスラスターの性能はオマケ程度です。何故飛ぶのです?」

「不正地障害物を迂回するより、飛んだほうが早い。戦闘機に張り合うつもりは無いが、

最低限の機動性は必要だ。このシミュレータを見ろ」

「物理演算シミュ? 戦車が飛んでる。なんというか……異様な光景ですね」

「ザイオング慣性制御システムのちょっとした応用だ」

「ああ、自重分の重力加速度を打ち消しているのですね。

しかし、なぜ地上機にザイオングシステムを?」

「戦車の制動はかなりパイロットに負担になるので、衝撃緩和のためにつけた。

どうせ付けたのなら利用しない手はないだろう」

「ええ、でも飛びっぱなしにすると直ぐに冷却系がイカレそうですね」

「それは仕方が無い。下方スラスターは緊急回避か障害を乗り越える程度だ。

そういえば無重力下では逆に上方スラスターで機体を押し付ける必要があるな」

 

 

映像を見ながら、仕様書の数値を簡単に検算する少尉。

その間に少佐は解説を続け、少尉が疑問をぶつけるといった具合で作業は進んでいった。

ちなみに、この開発局には複数の室があるが、陸戦兵器開発室は冷遇されているため、

設計者は二人しかいない。室長の少佐と見習いの少尉だけだ。

開発局の華である戦艦の開発室などは、第一から第三まで室が3つもある上に、各種分室を従えている。

少佐はそんなことは知らないとばかりに、ダックビルの本体を基本として、戦車型のR機の設計図を仕上げていった。

 

 

「主砲はどうしますか? 現状を見るとレールキャノンでは間に合いません」

「50口径は越えないと、メイン武装としては難しいな」

「戦車であれば実弾ですよね。反動が酷いことになりそうですが。

ザイオング慣性制御システムはイレギュラーな加速度に対する反応性は余り良くないです」

「衝撃緩和くらいはできるだろう。あと試作機段階で試射をしまくって反動データを蓄積、

実戦機では主砲発射とザイオングシステムを連動させよう」

「レールガンですか? 火薬式ですか?」

「一番効率がいいのは、波動エネルギーで砲弾を飛ばすことだな。

波動砲としては出力が足りなくても、砲弾を飛ばすエネルギーとしてだけなら問題ない」

 

 

そんな、屁理屈のような問答が繰り返され、何とか設計図が埋められていくのだった。

 

 

***

 

 

「形……にはなりましたね」

「ああ、これが戦車型R機の完成図だ」

 

 

大型ディスプレイに完成予想図が映し出されている。

戦車というよりは、旧世紀の戦艦主砲を思わせる大砲を背負ったバケモノだった。

波動機関や主機の大型化、足回りの強化を加えた結果、従来戦車の倍以上の大きさとなり、

ダックビルの胴体、R機のキャノピーで50超口径の大砲を持った機体は、

ずんぐりむっくりで一見愛らしさすら感じられた。

 

 

「名称はどうされます?」

「カッコいい名前をつけようと思っていたのだが……少尉、君はこれ見てどう思う?」

「正直に言わせていただくと、カッコいいというよりは可愛いという評価を付けざるを得ません」

「だな。開き直ろう。……キウィはどうだろう?」

「キウイフルーツですか? 確かに形状は似ていますね」

「いや、飛べない鳥のkiwiだよ。R機でありながら陸戦機だからな」

「あ、失礼しました。てっきり形状から命名されるのかと思いまして」

「いやいや、キウイフルーツもキウィから名前が取られているし、

ダブルミーニングでいいではないか。いや、フルーツならキウイ・ベリィだな」

「キウイフルーツはベリィではない気が……」

 

 

こんな適当でいいのだろうかと心配する見習い少尉であったが、

ご満悦そうな少佐を見て、比較的どうでも良い突っ込みを飲み込んだ。

これで陸軍の現状も改善されますかね。と問う少尉に、

バイド自体を太陽系から殲滅しないと。と言う少佐。

 

 

「本当は辺境警備隊に大戦力を置いて、太陽系内への侵入を拒めれば一番なのだが」

「今の所R機の定数を満たしているのは本部基地だけです。それも実験機込みの数です。

太陽系外縁戦力を拡充して、各艦隊を常備するには、平時でも10年以上掛かるのではないかと」

「そうだな。近場からコツコツと戦力をつけていくしかないな」

 

 

少佐は暫くディスプレイを眺めた後、データを持って上司の下へ行った。

 

 

***

 

 

開発局の小型兵器開発幹に開発案を渡す少佐と、その後ろで控えている少尉。

開発幹部は眉間にしわを寄せながらデータを睨み、暫くするとため息をついた。

設計に大きな穴はなさそうだが、そもそもこの設計思想はどうなのか。と、

これまでで何度目かになる質問をする。

 

 

「陸軍が対バイド戦において苦境に立たされているのはご存知のはずです」

「予算付けることは承認されたし、陸が不味いのは分かっているが開発コストが高すぎる」

「開発コストについてはこれでも削減済みです。本体はTW-1のものを流用していますし、

R機の中では波動機関が小型で、フォース開発コストも掛かりません」

「しかしだね……」

「陸はバイドに対抗する兵器が必要なのです。

陸戦は確かにバイドに対して有効ではありませんが、

民間人保護の観点からも陸軍に戦力がなくてはならないはずです。

それなら彼らにもまっとうな装備を!」

「そうか、そこまで考えているのなら、上に通そう。

しかし、水上艦に衝角をつけようとして海軍開発室を追い出された君が現場を語るとは……」

「……若気の至りです」

「少佐、そんな事をしていたのですか?」

 

 

最後に堪えきれなくなった少尉は突っ込みを入れるが上司二人からは無視された。

こんなだから設計技術はあるのにこんな窓際に異動になるのだと思ったが、

自分自身がそんな部屋の配属であることは意識の外であった。

 

 

こうして戦車型R機、TW-2キウイ・ベリィが開発されることとなった。

 

 

***

 

 

操作性の違いからR機乗りからは非常に不評であったキウイ・ベリィであるが、

戦闘毎に壊滅するとまで揶揄されていた陸軍の拠点防衛部隊は泣いて喜んだ。

まともにバイドを破壊できる手段が手に入ったからだ。

陸軍の将兵は上層部に掛け合い、自分の基地へのキウイの配備を望んだ。

この副次的な効果として、陸の現場の将兵の士気向上と一部のファン層を作った。

こうして、キウイに対する両極端な評価ができた。

 

 

―発想を間違えたR機―

―陸戦の救世主―

 

 

Team R-TYPEがその発想は無かったと悔しがり、

開発局の技術少佐が勝ち誇っている。といった一幕もあった。

その後に、Team R-TYPEがいつも通りにフォース着用型のキウイを作ったり、

張り合った技術少佐が、クラン・ベリィやブルー・ベリィ、ダーク・ベリィ、ベリィ・ベリィ

といった上位機種シリーズを企画したが、クラン・ベリィの試作機が戦場に出た後、

さすがに正気に戻った上層部からの開発停止を食らい計画は立ち消えとなった。

 




DLCなんて無かった
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