プロジェクトR!   作:ヒナヒナ

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※時系列的にR-TYPE⊿後くらいです。


R-9D“SHOOTING STAR”

R-9D“SHOOTING STAR”

 

 

 

 

単機突入はRの華

 

 

後の世ではそんな言葉が存在する。

 

 

これは主にパイロットの間で交わされたジョークだが、その実半ば本気のセリフだ。

これは人類を勝利に導いた大規模作戦バイドミッションが一機だけ中枢に到達し、

任務達成したことに由来する。

もっとも第一次バイドミッション時はR-9大隊30機が作戦に参加したが、

機体の不備から大隊からは離れて単独で突入を行った機体が結果的に

バイド中枢の一つを破壊したのであって、当初から単機突入というわけではなかった。

 

 

そして、第一次バイドミッション(初代R-TYPE)終了後、人類はバイドの脅威に打ち勝ったとして、

過ぎた英雄機R-9アローヘッドを封印した。

その一年後には、英雄機R-9暴走に端を発するサタニック・ラプソディー(R-TYPE⊿)が発生、

この作戦は複数機による同時侵攻作戦であるが、敵地への突入自体はすべて単機で行われた

更に一年後には再びバイドの大規模攻勢が始まった。

この第二次バイドミッション(R-TYPEⅡ)では、前作戦から時間的余裕が無く、

最強の一機であるR-9Cウォーヘッドを作り上げ、再び敵中枢への単機突入を行うこととなった。

その伝統はサードライトニング作戦(第三次バイドミッション=R-TYPEⅢ)でも継承され、

単機駆けを決行することになる。このころにはすでに集団運用が研究されてはいたが、

ここでは「ゲン担ぎ」といった意味合いも大きい。

 

 

全体を見渡すと決して、単独作戦が前提の兵器ではないのだが、

成果を出すのは単独での任務ばかりといった訳で、サタニック・ラプソディが終わった時点で、

すでにR機=単機突入というイメージが定着していたのだ。

 

 

Rの系譜の中には、突入作戦支援に向けた機体も存在する。

アローヘッドが極力戦闘を避けて侵攻するのに対し、その道中の敵を予め排除。

もしくはアローヘッドが撃ちもらした敵を狙撃する役目が宛がわれた。

 

 

「流石に突入機とアイテムキャリアだけで戦場を支えるわけにはいかない」

「敵将を討ち取るのは英雄でもいいが、戦線を支える砲が必要だ」

 

 

そんな流れで単機突入型の支援も行える機体の作成に着手した。

 

 

***

 

 

この案件を担当したのはR-9の開発にも参加した経歴を持つナンブ班長であった。

サタニック・ラプソディがなんとか決着したが、軍の保有するR機は一時0機になるという、危険な状態があった。

そんななか、なんとか戦力を取り戻したい軍部は、政府を通してTeam R-TYPEにR機の開発を命令し、

Team R-TYPEより研究員を招集したのだ。

 

 

「ナンブ研究員、陸戦兵器や基地など砲門だけでは時間稼ぎにしかならない、新しい機体が必要だ」

「バイドをかいくぐるのではなく、面で抑えるということですか?」

「現状で有効打を与えられるのは波動砲とフォースのみだが、

既存物質にバイド素子が付着したばかりの小型バイドならば既存兵器で対処可能だ」

「問題は大型バイドが迫ってきたときという事ですね」

「そうだ。大型バイドは確実に防がねばならない。そして、なるべくならば突入機の遠距離援護を行える機体を」

 

 

そんな会話があったあと、研究室に戻ってくるナンブ班長。

といっても一人病欠(精神)の彼の研究室には班長のナンブと班員のジェニファーだけだ。

ナンブは帰ってくるなり軍部からの依頼というか命令ジェニファーに伝えて、

新規のR機の開発方針を明確にしようとした。

 

 

「ここに書いてある通りの話し合いがあったわけだが、具体的にどうするかを考えたい」

「班長、狙撃兵器というのはやはり波動砲ですか?」

「もちろんだ。迎撃や推進剤の問題のあるミサイルや殲滅性に問題のあるレーザーはそもそも論外。

フォースはその特性からR機から長距離、長時間の分離はできないので、波動砲一択だ」

 

 

バイドを効率的に殲滅できるのは波動砲とフォースだけであるので、

ミサイルやレーザーでは不可能であるという前提がある。

もちろん例外もあって、波動エネルギーを付加した強力な攻撃では殲滅できることが確認されているが、

これをすぐに配備することは難しい。

その代わりをR機で担うのならやはり波動砲を使うことになる。

 

 

「さて、R-11の様に機能を限定して超高機動型にすることも考えられるが、同じ路線の機体は要らないだろう」

「確かに、機体性能を限定してでも波動砲に出力を回すべきですね」

「狙撃用波動砲がメインの機体で決まりだな。よし、その方向で話を詰めよう」

 

 

喧々囂々の論議が続く。

 

 

***

 

 

設計の前に基本研究(費用は班別に割り振られた予算から支出)から研究に

入ったナンブ班ではあるが、行き成り問題にぶち当たった。

肝心の波動砲の射程が伸び悩んでいるのだ。

浮かない顔のジェニファーが測定結果をナンブに報告する。

 

 

「計測結果でました。有効射程距離10万km。これで全力ですね」

「月~地球間くらいの狙撃性能がないと役立たずになる。この圧縮波動砲にはブレイクスルーが必要だ」

「超長距離狙撃に堪えるには、虚数次元で波動エネルギーを捕まえておく力場の安定化が必須です」

 

 

虚数次元にエネルギーをチャージして一気に解放するからこその波動砲であるのだが、

もちろんエネルギーが強大になればなるほど維持は難しい。

膨大な波動エネルギーを押さえ込み、力場の関係を崩してやることで指向性を持たせることになる。

近距離で前方にぶっ放すだけの波動砲ならば、比較的アバウトな照準でもいいが、

ここで要求されるのは地球から月まで狙撃可能な波動砲であるので、

R-9AアローヘッドやR-9A2デルタなどに組み込まれたものを単純に使うことは出来ない。

力場の計算された一点だけに精密に穴を開けて力に指向性を持たせて解放し、

外部へと一気に拡散したがる波動砲の圧に負けないように指向性を維持する。

圧縮波動砲という仮称が付いているそれには、そんな技術が必要なのだ。

 

 

「それはコンデンサの性能がもろに係って来る問題ですね」

「コンデンサと波動エネルギー充填の両方でエネルギー喰われるから、出力が恐ろしいことになる」

「とりあえず、軍部から最も大型のコンデンサを持ってきて、安定化を図かろう」

「それ要塞兵器に使う様なやつですよ。てかそんな出力だしたら冷却機構が持ちません」

「とりあえず、何事もやってみてからだ」

 

 

班員の愚痴に律儀に答えるナンブ。ともかくトライ&エラーを繰りかえすナンブ班。

実験区画を何度も吹き飛ばしそうになりながら実験を続ける。

 

 

***

 

 

爆発の煤が生生しい実験区画でジェニファーがナンブに意見する。

明らかに疲労の色が濃く、休息が必要な顔だが、答えるナンブも大体同じようなものだった。

 

 

「ナンブ班長……私思うのですが、どう考えても狙撃距離と狙撃精度の両立は無理です」

「やってみればなんとか……」

「これで何回目の失敗ですか! 私は200を越えたあたりで数えていませんが!」

「データナンバーによれば311回目だな。泣きたくなってきた」

「波動エネルギーを高くすると、精密狙撃のための力場の維持に多量の出力を喰うし、

精度を高くすると波動エネルギーに回す出力が足りません!」

「そこをなんとか」

「ちなみに主機の出力は限界です。それ以前に冷却機構が壊れます。オーバーヒートです。

実験区画の防護壁は堪えられますけれど、コックピットブロックは影も形もなくなります」

「そうだな」

 

 

鬼気迫る迫力のジェニファーに、とうとう折れるナンブ。

彼なりに引き際を探っていたのかもしれない。

頭を変えたらしいナンブがジェニファーに妥協案を提示する。

 

 

「しかし、冷却機構の限界を考えると、波動砲射程か、狙撃精密性のどちらかをとることになる」

「狙撃性にしましょうよ」

「長距離狙撃用R機ならばやはり月まで届かなくても、射程を……」

「長距離狙撃って突入機の援護もする可能性があるのでしょう。うっかり味方撃ち抜いたらどうするんです?」

「そもそも波動砲がその距離を駆けるタイムラグとR機の機動性を考えると余り意味が無い気が……」

「目標到達前に壁に当たるのは困りますよ」

 

 

終始ジェニファーのペースで方向性が決定していくナンブ班。

 

 

「さて、ではこのデータを持ってTeamと軍部に書類を挙げようか」

「班長、まだ挙げてなかったんですか!」

「いや、軍部から形になってから挙げろと……」

「先にTeamの中だけでも書類通して置いてください! Team内で没食らったらどうするんです!」

 

 

圧縮波動砲用の波動砲ユニットと主機、冷却ユニットだけのR機のお化けを見やって言う。

そんなナンブにジェニファーが追い討ちを掛ける。

 

 

「というか、これって作る気あるんですか? 予算も流動的だし、

基本設計だけで基礎実験しかさせてくれないなんて。どういうことです、ナンブ班長?」

「しかたないさ……2年前の総力戦と今回のR-9汚染機駆除、軍もTeamも資金がないのだろう。

でも、今回の作戦でとりあえず、機体を作っておかなければならないから」

「試作案だけ作る?」

「おそらく」

 

 

実験区画から逃げるように去っていくナンブを見るジェニファーの目は冷ややかだった。

 

 

***

 

 

一週間後。

 

 

「ナンブ班長聞きました!?」

「なんだ、慌てて?」

「今朝、軍部から発表があって、バイドの大規模攻勢が観測されたそうです」

「またか、三年連続大規模作戦とは……」

 

 

ナンブが額に手を当ててため息を付くと、ジェニファーは更にせき立てるように言う。

 

 

「班長そこじゃなくて、どうやらTeam R-TYPEも総力戦体制に移行して、R-9の後継機、

仮開発コードR-9C一本に絞るらしいのです」

「つまり開発リソースを喰われると?」

「ええ、どうやら主だった研究員は全員R-9Cの研究に組み入れられるようです」

「あと、資料を課長に提出するだけだったのに、開発はお預けだな」

「だから、先に書類を通しておけば良かったのに……」

 

 

ナンブ研究室が再開し、実際にR-9Dの開発が行われるのは、

R-9Cが作戦投入してバイドを打ち破ってからの事である。

ちなみに接近戦用兵器であるフォースがつけられるようになるのは更に先のことだった。

 

 

 




ナンブ班長は目の前にあった南部茶から名前をとったのですが、
当時、パイルバンカー系列まで名前を取っておけば良かったと思っていました。
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