プロジェクトR!   作:ヒナヒナ

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※第三次バイドミッション(R-TYPEⅢ)前の話です。


R-9S“STRIKE BOMBER”

R-9S“STRIKE BOMBER”

 

 

 

 

R-9Cウォーヘッドが地球圏を救ってから幾年。

人類は二度目の勝利宣言を行い、バイドからの復興景気に沸いていた。

第一次バイドミッション、サタニックラプソディ、第二次バイドミッションと

毎年のように人類の生存を賭けた乾坤一擲の勝負を続けていたのだ。

その圧力が無くなって色々と問題はあれど、みな明るい表情を見せ凄まじい勢いで復興が進んでいた。

未だに小惑星などから小型バイドが発見され、その都度R機隊が駆り出されるが、

地球圏はバイドが根絶されないまでも小康状態にあった。

 

 

だが最近、一部では不穏な空気が流れている。

 

 

 

***

 

「つまりはぁ、第三次バイドミッションがありえるって事ですか?」

「ええ、最近のバイド発生消長はバイドの大規模攻勢の前触れとする解析があるの」

 

 

白で統一された内装のTeam R-TYPEの会議室だ。

語尾を間延びさせて楽しそうに話すレホス、それに答えるのはスーツ姿の中年女性だった。

レホスは本局勤務を終えてR機第1開発班の班長に戻ってきた出世頭であり、

対する女性は強面の軍人とすら遣り合うやり手開発課長、次期部長補佐の呼び声も高い。

一見ただの与太話でもTeam R-TYPE開発部の中枢での会話となれば、その信頼度は飛躍する。

 

 

「それで、開発方針はどんなです?」

「今までの通り強力な波動砲とフォースを備えた単機突入機の予定よ」

「結局それですか。そういう機体は技術的なブレイクスルーにはなるけどワンオフ機ばかりではねぇ」

「誰でも操縦できる、単機突入機並みに高性能で、全状況に対処できて、

量産体制が完璧な機があれば、物量が武器のバイドでも面で征することもできるけど」

 

 

究極の機体は目指すべき理想ではあるが、

差し迫って第二次バイドミッション並みの大攻勢があるとなれば、

二人とも迫りつつある脅威を無視して、理想にかまけるつもりは無い。

それをアイコンタクトで確認した後、会話を続ける。

 

 

「つまり、第三次バイドミッションを睨んだ機体、単機突入機のための実験武装機を作って

突入作戦に間に合うようにデータを収集するのが今回の仕事って訳ですねぇ」

「そうね。あと、第三次バイドミッションでは外部に漏れたときにインパクトが大きすぎるから、

バイド来襲が確定するまではバイドミッションではなく、サードライトニング作戦と呼称する事になる。

なので、今回の機体開発はサードライトニング作戦の事前準備としてスタートするわ」

「なるほど、今回の開発は第三次バイドミッション機の実験機、

もといポスト・サードライトニング機の開発というわけですね」

「そうよ。バイド来襲はまだ確定情報ではないから、決して外には漏らさないように」

 

 

共犯者の笑みを浮かべる二人はそれぞれの仕事場へと戻っていった。

 

 

***

 

 

「単機突入機で事前にテストしておきたいのは、まず波動砲だよねぇ。

メイン武装である波動砲は二種類打ち分けたいよね。

R-9A2デルタでやった、通常と拡散は波動砲のチャージ回路が似ているから簡単だったけど、

あれだけだと面制圧が不安だからなぁ。拡散と、面制圧できる新規波動砲がいいかなぁ?

それをつけるには波動砲のチャージ回路の容量が問題だからぁ、低ループ高威力波動砲として、

どれくらい威力を出せるのか実験しないとね。ループは精々2~3ループくらいかなぁ?」

 

 

疑問文だらけの発言ではあるが、部屋にはレホス一人だ。

なにせ、絶対外には漏らしてはならない検討事項を他人と相談することはできない。

開発方針の決定はレホス一人で行い、部下に流すのだ。

キーボードを叩き仕様書を端末に書き込んでいく。

 

 

「あとは……高出力スラスターとかのバランスを見ておきたいなぁ。

まあ、スラスターや主機はすぐに新しいものが開発されるから予備的なものでいいか」

 

 

班員の割り振りも考えながら一人会議を進めるレホス。

実質的には次期単機突入機を作るための試験機なのだ。

 

 

「フォースはいくつか案は在るけど……どの道、期限内には出来上がらないから、

バイ……サードライトニング作戦本番で使うフォース開発に時間と予算を回そうかなぁ。

現場はみんなスタンダードフォース大好きだし、今回はノーマルをつけておけば良いさぁ

ビットも間に合わないから、今回は普通のだね。」

 

 

黎明期にフォース暴発事故を経験したTeam R-TYPEでは、流石にフォースの開発には慎重を期している。

時間がかかるため、機体毎に簡単に仕上げるわけにはいかないのだ。

効率的なバイド素子の扱いを習得しフォース研究が飛躍的に進むには、B系列機の誕生を待つことになる。

 

 

また、R-13系列のような例外を除いて、フォースの制御はコントロールロッドの性能によるところが大きく、

機体側に載せるフォースコンダクターは、殆どコントロールロッドとの連絡装置のような物である。

それぞれのフォース(のコントロールロッド)に対応したコンダクターを組み込むだけなのが通例だ。

レーザー機構などにも関わってくるので、もちろん簡単に載せ変えはできないが、

機体との根本的なミスマッチはまず起こらないので、機体に装備しての事前テストは余り重要ではない。

 

 

「コックピットは……前回のエンジェルパックのときは現場がうるさかったからなー。

通常範囲のサイバーコネクトにして、本番に向けてパイロット適性の調査でもしようかな」

 

 

ディスプレイには大方の企画書が出来上がっており、

レホスの頭の中には更に詳細な完成予想図が組みあがりつつあった。

あとは自分の班の部下達に説明して、実際に開発に向かうだけだった。

 

 

***

 

 

レホスとその部下の前にはR-9Aアローヘッドに似たR機があった。

R-9Cの後継機ということで、フレーム自体はコスト重視量産機R-9Kサンデーストライクのを流用している。

 

 

「で、これがR-9Sと。僕はメガ波動砲と出力系以外は関わってないけど」

「そうですね。大変でしたよ軍との折衝は……」

 

 

レホスはおいしい所以外は殆ど部下に丸投げしていた。

何故ならサードライトニング本番のためのフォースと、面制圧用の新機軸波動砲の研究にかまけていたからだ。

ただし、メガ波動砲は本番単機突入機に載せる予定のため、開発を行っていた。

 

 

「チャージ時間を圧縮した割には異常に高威力だから軍から文句は来ないさぁ」

「ええ、あれだけの波動砲が2ループで収まるとは思いませんでした。

ただ研究時の暴発事故が多くて総務課から文句を言われましたが」

「ああ、メガ波動砲研究のせいでR-9Kを10機くらい潰したからね。まあアレはそういう機体だからいいよ。

それより追尾ミサイルを積むサイロが無くなったけど、ミサイルは補助武装だしあまり重要じゃないよねー」

 

 

基本的に、波動砲以外はR-9Aと余り変わらない構成で、主機やスラスターなどを最新式にしてある形だ。

スタンダードフォースに、R-9Aアローヘッドと同じレーザーとパイロットからすると非常に分りやすく、

そのため、スタンダードな構成を好む現場から配備の要請が多い。

 

 

「派手に試射実験をしていた所為か、軍からの配備の問い合わせが来ていますがどうしますか?」

「外縁部の部隊に集中配備してもらうよ。まとめて実践テストしたいしね」

「圧力かけて特別部隊を編成するのですか? さすがに嫌がられる気が……」

「大丈夫、そんな長い事じゃないよ。たぶんねー」

「?」

 

 

確信じみた反応をするレホスに疑問符を浮かべる部下達。

レホスには、バイドの発生消長パターンから、第三次バイドミッションもとい、

サードライトニング作戦の発動が、時間の問題になったことが知らされていたのだ。

恐らく、ここ数ヶ月でバイドの先触れが地球圏に到達する可能性が高いことが予想されていた。

 

 

そして、2ヵ月後

25機のR-9Sストライクボマーがロールアウトし、現場に集中配備されることになる。

R-9Sだけが配備された太陽系外縁部防衛部隊R-9S大隊が

バイドの大規模攻勢を防ぐために投入されることとなったのは、その更に3ヶ月後のことだった。

 

 

***

 

 

R-9S大隊の壊滅とバイド大量発生を受けて、民間でも二度目のバイド復活が報じられるようになった。

軍部が表立って立てた方針は、戦時体制への移行によるR機や艦隊の増強とバイド防衛線の確立であったが、

その先触れから、第一次、第二次バイドミッションをも凌ぐバイドの物量が予測され、

関係者間ではすでに、敵中枢への単機突入作戦である

第三次バイドミッションが発動することは確実視されていた。

しかし、民間への動揺を抑えるためとしてバイドミッションの名は伏せられ、

当面は、サードライトニング作戦の名がそのまま継続されることとなった。

 

 

「レホス班長、報告を聞こうかしら」

「今回の“試験”では、大型バイドを多数含む艦隊規模の群れにR-9S大隊25機をぶつけてみました。

作戦目標は冥王星基地グリトニルの防衛として、基本増援はなし。結果はR-9S大隊は壊滅ですね。

まあ、この結果自体は当初から予想されていましたが、機体性能は予想以上ですよ。

こちらの全滅予想時間より1.8倍の時間を稼ぎましたし、

一部機については敵陣を突破して後方からの撹乱に成功していますね。

現場判断として勝手に出撃した艦隊が援軍に来るまで、グリトニル防衛に成功しています。

彼らに与えられた作戦内容からすれば、全滅はしましたが作戦成功といっていいでしょう」

 

 

レホスが上機嫌で答える。口調もハキハキしていて何時もの彼ではないようだ。

それに対して彼の上司は淡々と評価する。

 

 

「機体性能は予想より上、それよりこの波動砲は使えるわね。予備としてはもったいないくらい」

「これをメインに、これから開発する予定の面制圧の新式波動砲をつければ

サードライトニング作戦も捗りそうですねぇ」

「フォースの試験はしなかったようだけど、新型フォースはサードライトニング作戦に間に合うかしら?」

「2つの方向性で試験を続けていますよ。

片方はすでに形になっていますけど、もう片方が難航しているんですよねぇ」

 

 

レホスが示すディスプレイには、緑色のフォースと、未だ形にならない青いフォースがあった。

それから、暫く質疑応答が続いたが、検討事項を決めてサードライトニング作戦への検討事項が纏まる。

さてデータを検討しないと、と嬉しそうに呟き課長室を辞そうとするレホス。

レホスが扉に手をかけた時、後ろから声がかかる。

 

 

「そういえば、このストライクボマーって、どういう意味でつけたの」

「メガ波動砲の試作段階でフレームに使ったサンデーストライクを爆破しまくりましたからねぇ、

サンデーストライクを爆破するって意味でつけました」

 

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