プロジェクトR!   作:ヒナヒナ

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R-9Leo2“LEOⅡ”

R-9Leo2“LEOⅡ”

 

 

 

「なんかひどい開発要望書が来た」

「どれどれ……これはひどい。Leoフォースだって、未だに結構強いのに、その改良型?」

 

 

げんなりした顔を見せるのはフォース改良班の二人だった。

開発要望書を持ってきたのが、チームリーダーのフラット。文句を付けていたのが、班員ナリスだ。

彼らフォース開発班のBチームが仕事を受けることになった。

定員割れしているのは、つい先日チームの研究員が他の班に引き抜かれたせいだ。

 

 

「はぁ、ぼやいていても始まらない。とりあえず明日に使えそうな試案を持って会議だ」

「そうですね。仕事を選んでいると他のチームに蹴落とされますからね」

 

 

どうしてこんなことにと、Leo開発班班長のレイトンから送られてきた文面を見るフラット。

Leoは試作からして現場・Team R-TYPE双方からの評価が高かった名機なので、開発班長の発言力も高くなる。

未だに機体開発プロジェクトを任せられた経験の無いフォース開発班チームリーダーが楯突けるはずもない。

このあたりにTeam R-TYPEの開発偏重主義が窺えるのは何時ものことである。

 

 

「どうしようかなぁ、流石に専門研究分野の話だし、お茶を濁すのはプライドに触るし、でも……」

 

 

班員を解散した後ぶつぶつと文句を呟きながら、自身も退室するフラット。

その背中は煤けていた。

 

 

***

 

 

「フォースは攻守ともに使用できる兵器であるというのは皆が認めることであるが、

ある側面から見ると、攻撃に特化したエネルギー変換機関であるということも出来る。

質量をエネルギーに変換する技術といえば、核分裂、核融合などの技術が代表であるが、

結果だけみればフォースも同じようなことをしている。さらに効率的に。

バイドは質量(エネルギーも)を食らって莫大なエネルギーを取りいれ、それをバイド素子に変換する。

ただし、フォースはバイドとして成長しないように制御され、そのエネルギーの大部分を

バイド素子として作り変える前に、吐き出させられている。それが敵を破壊する攻撃力となるのだ」

 

 

白衣のフラットは後ろで手を組み、メガネを光らせながら只管ひたすら語る。

そして、言葉を区切ってバッと振り返ると、何かを掴むように片手を握りしめ大声を上げた。

 

 

「つまり、フォースこそは究極の補助ジェネレーターだったんだよ!」

「ええ、知っていました」

 

 

たった一人の聴衆に、長い講釈を垂れていたフラットが決め台詞を放つが、当のナリスは非常に冷めた顔だ。

急きょ集まった会議開始からこんな茶番を聞かされたのだから、当然と言えば当然だ。

その冷たい反応に急に気恥しくなったフラットは、顔を僅かに赤面させ詰まらなそうな顔をして呟く。

 

 

「なんだよ。そこはワザとでも驚いて見せるところだろ」

「いいから、方針話してください」

「それはだな……」

 

 

***

 

 

Team R-TYPEの実験施設に集まる2人。

分厚く重そうなバイド作業用防護服を半分脱いで、汗を拭いながら、

クリーンエリアにある会議室で膨大なデータを参照して議論をしている。

ある程度すると、結論が固まったのかフラットが確認するようにナリスに言う。

 

 

「今日の基礎実験で確認してみたことのまとめだが、やはりフォースの反応速度はバイド係数とはほぼ独立している。

スタンダードフォースもアンカーフォースも純粋な実験値的にはほとんど変わらない」

「まあ、そうですよね。シャドウフォースだって擬似的に反応性がありますし。

質量投入量と出力を精密計測すると、スタンダードでもアンカーでも反応速度自体はほぼ同じ値ですからね。

高バイド係数フォースで反応が早く見えるのは、攻撃性が高くて入力されるエネルギーが多いからってことですね」

「簡単に言うが、実験条件を一定にするのが死ぬほど大変だったけどな」

 

 

フォース開発はバイド係数との戦いであった。

バイド係数が高いフォースほど、攻撃性が高く現れ、強力であるというのがフォースの常識であった。

係数が高いほどギミック付きのロッド(テンタクルやアンカーなど)のロッド反応が良いし、

フォースシュートの攻撃力が、バイド係数(攻撃性)に比例するように見えるためだ。

 

 

疲労の色が見え隠れするフラットが、まとめに入る。

 

 

「新たな仮説はこうだ。

“フォースはバイド素子を純粋培養したものという前提であったが、実は純度による等級が存在する”

“物質のエネルギー変換、またはエネルギーの吸収放出に関わるフォース反応速度は、フォース純度に依存する”

“よって、フォースの純度を高められれば高い反応性が得られる”。……これでいってみようか」

 

 

うなずくナリス。

こうして、Leoフォースは純度を高めるという方向性で改良されていくこととなる。

 

 

***

 

 

オレンジ色の光が溢れるフォース培養漕。

それを見つめるのは4つの目。フォース培養漕の前に佇む二人は防護服にバイザーという完全装備だ。

防護服を着ると肉声では話ができなくなるので、会話はすべて通信だ。

ちなみにバイザーには簡易計測結果だけでなく、通信相手の名前などが表示される準軍事仕様のものだ。

 

 

『駄目だな。この試験区はすべて不純物が多い。このレベルはとても許容できん』

『第2試験区はすべて廃棄ですね。またバイド性廃棄物の量で施設課から文句を言われる……

まあ、次の試験区へ行きましょう』

『第3試験区は一応安定しているようだな』

『まあ、この区は明滅を繰り返すとか、バイド細胞化しかけていたりはしないですからね』

『第3~7までは見た目ほぼ変わらないな、実験結果を持ってクリーンルームに上がろう』

『そうですね。アシスト関節付きとはいえ、この重い防護服は疲れます』

 

 

二人はオレンジ一色の培養漕エリアから除染ルームを経てクリーンルームにまで戻ってきた。

 

 

「培養漕との行き来は体力を使うな」

「リーダー、マッチ棒体型だからですよ。防護服のアシスト機能でリーダーの手足の骨折られないか心配です」

「それ、心配の皮を被った悪口だよな。俺の聞いていないところで言えよ」

「無理です。うちのチーム二人だけですので」

「……」

 

 

沈黙する二人。

 

 

「ま、まあ、今回の結果では、培養出力は関係なさそうか。他の検討項目は培養時間、漕の大きさと……」

「検討項目だけが増えていきますね」

「とりあえず、培養漕は30ほど申請上げたから今月からはひたすら実験だ」

 

 

***

 

 

「三カ月経ちましたが全然進展しませんね」

「どういうことだ? そろそろ実験内容も困りだしたぞ。そもそも仮定が間違っていたとかか?」

「純度は培養方法でも多少変化しますが、皆頭打ちです」

「何でだ。これ第4区と12区、13区だけ純度が僅かに高くて、後は普通。この共通点はなんだ」

「リーダー。他のチームの実験データでも見てみましょう。考え付かなかった実験が思い浮かぶかも?」

 

 

成果は全くと言っていいほど出ておらず、ついでに補充メンバーも来ない。

頭を抱えて呻きだすフラット。

ナリスが空気を変えようと、息抜きを提唱する。

他の班のデータを呼び出す。

 

 

「あ、見てくださいリーダー。Aチームはファイヤーフォースの発展形を作っているらしいですね。」

「あんなイロモノ俺は知らん」

「まあ、そうですね。Cチームは……あ」

「あ?」

 

 

突然、キーボードを高速で叩き出すナリス。

情報が加工され、関連データが呼び出されていく。

 

 

「おいおい、それ他の班のデータだろ、勝手に加工しちゃ不味いだろ」

「実験終わったのに直ぐにデータ回収しない奴が悪いのです。ついでにバックアップは取ってあります。

でた。やっぱりそうです。Cチームの培養実験で純度が非常に高くなっていますよ。

これの培養法を検討すればいいんじゃないですか」

「へ?」

 

 

画面を指差すナリスと覗き込むフラット。

フラットの顔色が変わり、ナリスを押しのけてデータを漁りだす。

 

 

「検討項目は24項。相違点は……これだ!」

「種子提供元?」

「つまり“バイドの切れ端”から経代した代が若い種子を使うほど純度が高いんだ!」

「ああ、それで通常のフォースは純度が低いのですね」

「生産現場では通常“切れ端”から10代程度のものから培養されるからな。

試験で多少高くなるのはTeam R-TYPEで使用するバイド種子は“切れ端”から3~4代程度のものだからだ」

「では?」

「上に“バイドの切れ端”からの直接種子採取を申請しよう」

 

 

***

 

 

Team R-TYPEの中会議室には数名の研究者が集まっている。

フォース班Aチームから、リーダーのフラットとナリス。

Leo研究班から班長レイトンと、班員のエリー、オットーだ。

主にLeo班の所為で平均年齢がひきあがっている。

 

 

「依頼の件について、AチームではLeoフォース改(仮)を提唱します」

「フラットリーダー、バイド係数も高くないし、ロッドも特には変わっていないような、でも出力はけた違いだし……」

「オットー研究員、説明はナリスの方から行います」

 

 

仕様書に首を傾げるオットーに、説明をするナリス。

 

 

「……つまり、このフォースはLeoフォースを高純度で再現したもので、

バイド係数やロッドは余り変わりませんが、反応速度が段違いで出力が高くなっています」

「たしかに、異常に出力が高いですね。でもコストも異常に高く、量産体制は不可ですね」

「エリー研究員、これは“バイドの切れ端”採取に係る費用と作業の手間です。

それにこれが量産体制に乗るならば、それ相応の生産体制を整えれば費用も生産時間も短縮されます」

 

 

Leo班の疑問にナリスとフラットが答えていくと、ようやっと意見の合意に漕ぎつけたようだった。

まとめるように、レイトンがゆっくりと話し出す。

 

 

「これなら問題ないだろう。フォース関係で余計に機体側の容積をとることもないから、いままでの試験型から

スタンダード波動砲装備に変えることができるし、今まで出力の関係でオミットした

“おれがかんがえたさいきょうの”レーザーを付属することができる。

Leo開発班としては、LeoⅡ(仮)のフォースとしてLeoフォース改(仮)を採用する方向で上に報告を上げる」

 

 

その言葉を聞いてハイタッチを決めるフラットとナリス。

ついで、Leo班の面々とそれぞれ握手をして、和やかに会議は締めくくられた。

 

 

こうして、最強のR機の一角たるR-9Leo2“LEOⅡ”が作成されることになった。

 

 

***

 

 

「フラット班長、Leoフォース改ってなんで生産中止になったのです? あれこそ最強のフォースでしょう?

LeoⅡはフォースとサイビットをつけている事が前提の機体です。フォースがなくては辛いでしょう」

「問題ない。LeoⅡも生産中止だから」

「はぁ!? なんでですか! あれ軍部からも憧れの最強機って言われたくらいの機体じゃないですか」

「反応性が良すぎたんだ」

「はい?」

「反応性が良すぎて、長時間稼働状態にあるとフォースロッド自体を分解して暴走する」

「うわぁ……」

フォースロッドはフォースのバイド的性質を抑え込むように強固に作られている。

なので、Leoフォース改のロッドも試験過程では耐えきって実用化に至っている。

だが、単機突入の長時間極限状況は試験で再現されておらず、

実戦中にフォースが暴走し機体を呑みこむという事故が起こった。ただ、事故現場が跳躍26次元であったので、

被害は観測用のR-9Eや無人型POWアーマーが数機消し飛ばされるだけで済んだ。

 

 

この事件があってから、Leoフォース改だけでなくLeoⅡも封印される事となった。

 

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