R-TYPE FINALにおいてR-9B系列はバリア波動砲を装備した航続距離延長型のR機として開発されたという設定です。
しかし、実際のゲームシステムでは長距離機設定による恩恵は殆ど無く、バリア波動砲も非常に使いづらいため、
一部の変態的技能を持ったプレイヤーを除いてネタ機と評価されてきました。
しかし、R-TYPE TACTICSシリーズにおいて爆撃機として再設定されると、
波動砲とフォースが無くなった代わりに、高性能迎撃型実弾兵装バリア弾と
単発高威力の水爆ミサイル‘バルムンク’が搭載され、主力級のR機となりました。
続くTAC2では、ちょっとした波動砲並みの威力のあったバルムンクが試作型として下方修正されますが、
相変わらず難易度を左右するほどのユニットとして活躍することになった。という経緯があります。
TAC界隈においてはR-9Bの存在意義=バルムンクと言われるほど、バルムンクのインパクトが強く、
一部プレイヤーの間で‘R-9Bバルムンク’と揶揄されることになります。
実際には互いに波動砲チャージが間に合わない初期接敵時に、優秀な盾としても機能します。
ただし、フォースに弱い。
・R-9B3“SLEIPNIR”
「今更、中距離型ですか?」
「らしいな。まったく上の考えることはよく分らん」
通信画面上で呆れた様な声を出すのは、
Team R-TYPEと軍開発局という垣根を越えていつの間にか良いコンビとなりつつある
スタークル研究員とアドマイヤー技術大尉だ。
両者を結びつけたのは間違いなくR-9B系列機であった。
「中距離なのはいい。ただ航続距離を絞って、はい中距離型ですとは出せないから、
何かしらオプションをつけないとならないな。波動砲はどうか?」
「難しいです。バリア波動砲はあれ以上の強度と展開時間を維持するのは現実的ではないですからね」
「バリア波動砲の限界ということか」
「まあ、ものは試しです実験してみましょう」
スタークルがそう答えた。
簡単な打ち合わせをしたあと、互いの予備試験内容を確認し、
次回の検討日を取り決めると、それぞれR-9B3の開発に向かって動き出した。
***
「結果から言うと、バリア波動砲Ⅲの開発はとても難しいでしょう」
「不可能を(常識、倫理その他すべてを捻じ曲げて)可能とするTeam R-TYPEの言葉とは思えないな」
「まあ、正確に言うなら“理論的には”可能でしたよ」
スタークルとアドマイヤーは月面基地ルナベース2で落ち合って、研究結果を持ち寄っていた。
半開放式の会議ブースだが、Team R-TYPE区画近くにあるため、周囲には白衣の人物が目立つ。
消音システムも完備されているので、大声を立てなければ聞かれることも無い。
スタークルは説明しながら、端末から画像データを取り出して投影しようとした。
ブースに備え付けられたディスプレイに大型の波動砲コンダクタを抱いたストライダーが映る。
バリア波動砲Ⅲβ版.試験機とテロップが入っている。まずは静止状態での発射実験のようだ。
ストライダーが黄色い光を放つ仮想ブロック構造体が波動の盾として宇宙空間上に並ぶ。
試験施設から投擲された大型通常ミサイルやR機程度の質量物の衝突にもビクともしない。
各種攻撃からストライダーを守りきり、展開からきっかり4秒後に、黄色い光のブロックが消失した。
「なんだ。出来ているじゃないか。コレではダメなのか」
「この実験動画には続きがあります」
アドマイヤーが喋っている間に、次の実験に映像は切り替わっていた。
下方に表示されているデータを見ると巡航速度で移動中の様だ。併走するR機からの映像だろう。
コンダクタに光が灯り、チャージ完了を示す閃光が瞬く。
次の瞬間、画面からストライダーが消えた。画面は何も無い宇宙空間を映したままだ。
「は?」
「ご覧の通りです」
「意味が分からん」
スタークルが映像を巻き戻し、今度は超スロー再生モードで映像をスタートした。
再び、チャージ完了と閃光。さっきより随分とゆっくりでじれったい。
そして、ストライダーが一分くらい掛けてバリア波動砲を発射すると、ゆっくりとバリアが展開してゆく。
そしてバリアが展開しきった瞬間、バリアが突如凄いスピードで後方に滑りストライダーに迫っていった。
直進するストライダーと、後方に流れるバリアの壁が接触すると、
そのままストライダーが縦に圧縮されて、バリアとともに画面後方に流れていった。
「……」
「このように硬度や展開時間はバリア波動砲Ⅱより延ばせるのですが、そうすると問題があるのです。
現行型のバリア波動砲及びそのⅡ型は、展開されたバリアと自機の距離を保つために、
空間座標ではなく、自機との距離にゆるく連動して展開されています。
まあ、相対距離が完全に決まっているわけではないので、バリアとの距離が常に一定というわけではありませんが。
で、これバリア波動砲Ⅱ以上の硬度や展開時間の延長を実現するためには、
絶対座標軸に固定しないとならなくなってしまうのです。そうすると……」
「バリア波動砲を撃った瞬間、自分で展開したバリアに突っ込んで自爆、と?」
「他の構造物と違って弾性が全くないですからね、見事に圧縮されます。
余りに圧縮率が高いので他の用途に利用できないか検討中です」
パイロットが乗ってなかったことを祈りながら、なんともいえない顔をして沈黙するアドマイヤー。
「よし、波動砲は諦めよう。他に改良点は……」
「フォースですかね。ディフェンシヴフォース改が候補ですが」
スタークルの提示した案に飛びつきかけたアドマイヤーだが、ふととある考えが頭を過ぎる。
かつて木星ラボで起きたフォース事故だ。半径3万mの空間を消滅させることもあるのだ。
フォース事故は巨大な実験施設が跡形も無く消え去るのだ。
厚さ数μmになってしまったテストパイロット一人で済む様な生ぬるい事故ではない。
「……事故はないだろうな」
「ディフェンシヴ改はD系列で実装済みですから大丈夫です」
アドマイヤーは「その実験で死人はでなかっただろうな」と聞かずにはいられなかった。
***
「結局、R-9B3の改良点はフォースと増漕外してシェイプアップしただけか」
「でも、軽量化で多少小回りは効くようになりましたし、レーザーの改良も出来ましたから」
「なんというか、開発者の端くれとして、コレを新型機として世に出すのは気が咎める」
「私としてはバリアの新しい利用法を考えられたので良いのですけれどね」
二人の前に佇むR-9B3スレイプニルは、ストライダー、ステイヤーからタンクを取り外し、
幾分すっきりとした形をしていた。
「POWアーマーから一回簡易補給を受ければ、木星まで航行可能ですし。
なんやかんやで要求と現実の機能の折り合いの付いたところではないですか?」
***
所変わってデ・ハミルトン社
バータレック技師は、R-9Bで喧嘩別れになり、
R-9B系列開発プロジェクトチームを外れた後も諦めてはいなかった。
軍とのコネを利用して、手に入れた試験用R-9BストライダーとR-9B2ステイヤー
(流石に民間企業への貸し出しのため、波動砲やフォースの機構ははずされた)
を改造して、水爆ミサイル‘バルムンク’の搭載試験機を研究していたのだ。
試作型バルムンクを搭載したストライダーとステイヤーは、対バイド戦術の研究に使われた。
核兵器単体ではバイド素子を効果的に破壊することは難しいとされていたためだ。
数年の研究の後に研究は実ることとなる。
より強力になった「実戦配備型」のバルムンクを搭載したことにより、
バイドの依り代となる物質を周囲から完全に消し去ることに成功した。
そして、ミサイル起爆時に少量の波動エネルギーを放出する仕組みを取り付け、
丸裸となったバイド素子を消し去るという兵器になった。
POWアーマーと組み合わせて運用し、
水爆ミサイル‘バルムンク’を乱射する凶悪な機体に仕上がることになる。
水爆による飽和攻撃という前世紀の悪夢的な光景が見られるようになる。
しかし、元来の兵站の負担を減らすという構想に真っ向から喧嘩を売る仕様になったため、
バルムンク搭載型のR-9B系列機は、局所的なマイナーモデルに収束していった。