プロジェクトR!   作:ヒナヒナ

67 / 105
※GALLOP前夜的な話です。ただしGALLOPはやりません


R-11B“PEACE MAKER”

R-11B“PEACE MAKER”

 

 

 

 

薄暗い一室、椅子に座って何らかの動画を見ている良い歳の大人達。

照明を落としていた一角に明りが戻り、映写装置が停止すると、

R機の紹介PVが消えてのっぺりした商業ブースの壁が現れる。

痩せぎすのスーツの男が進み出て、観客達に告げた。

 

 

「こちらがTeam R-TYPEで作成した警察用R機R-11Bピースメイカーです。

ご覧になられた映像は、試験的に仮想空間の都市での戦闘を映像化したものです」

 

 

観客席にはスーツが多いが、明らかにガタイが良く目つきの鋭い客がいる。

軍人でよくいる何事にも無感動だったり、攻撃的であるタイプではなく、

ひたすらコツコツと裏から地固めをしていく性質だろう。

彼らは警察の人間だった。

 

 

ここで行われているのは警備用品の商談会場であり、

通常、一般警察の用いる小火器や通信機器類が展示される。

しかし、今回は少々空気が違った。

会場のブース半分を貸しきってとある展示物が展示されているのだ。

大きすぎて通常の搬入口からは入れられず、

会場の天井パネルをはずして搬入したそれはどう見てもR機だった。

しかも展示品の周囲を警戒する警備員らしき人間は、明らかに軍で使う様な物々しい装備をしている。

展示パネルにはR-11B“PEACE MAKER”と書かれており、武装警察向けの機体である事が示されている。

 

 

展示品のR-11Bを横目で見た警察関係者が挙手をして、ブースの担当に質問をする。

 

 

「あのR-11Bだが、どう見ても軍用に見えるのだが、武装が強力過ぎるのではないかね」

「武装については警察現場の意見を取り入れた結果です。

軍基地から出たジャンクを改造して、一部簡単な武装を復元する犯罪者もいるそうですから」

 

 

そういってブースの担当は、装備を映し出し説明を始めた。

 

 

「このR-11Bの武装は3種あります。一つ目はレールガン。

名称通り実弾を電磁的に加速させ打ち出す兵器です。

これはR機の武装として長い技術集積があり、もっとも信頼性が高い兵器です」

 

 

基礎武装のレールガンといえど、強化されていないビル位なら簡単に破壊できる威力を持つ。

画面で近距離撃から舗装道路や建築物を破壊するR-11Bを見て顔を顰める警察関係者。

その画像が終わると、画面が再び切り替わりミサイルサイロが映される。

 

 

「2つ目の武装はミサイルですが、市街地での運用を考えて誘導ミサイルを標準としています。

ただし、有事の際に殲滅力を上げるため誘爆ミサイルも搭載可能となっております」

 

 

確かに目標に向けて誘導はされているが、目標ごと周囲をなぎ倒すミサイルに、呆れ顔さえ見られる。

誘爆ミサイルでの試験映像に至っては「市街地を爆撃するのかよ」という呟きが聞こえた。

そんなことは日常茶飯事なので担当者は無視して言葉を続ける。

 

 

「最後ですが、一番の目玉であるロックオン波動砲です。

この波動砲は敵を機体コンピュータで自動的に補足、ロックオンしビーム状の波動砲を照射します。

基本的に外れる事はあり得ませんし、敵との間に非破壊障害物があれば自動的にロックオンが外されますので、 

市街地で、移動目標を撃墜するのに役立つはずです。ご覧の映像では軍用出力で射撃しておりますが、

リミッターを付ける事で、警察仕様に威力を下げることも可能です」

 

 

青い波動砲が敵の移動先を先読みして見越し射撃しながら撃ち落としていく芸当には、

今までかなり引き気味だった警察関係者がほう、と溜息を洩らした。

周囲の観客がこの機体に引き込まれた事を確認してブース担当は説明を終了する。

 

 

「以上が、Team R-TYPEプレゼンツ、警察用R機R-11Bピースメイカーの説明になります。

これ以降は質疑応答の時間とさせていただきます。ご質問がある方は挙手をお願いします」

 

 

何のかんので、バラバラと上がる腕が警察関係者のR-11Bに対する興味の高さを示していた。

 

 

***

 

 

「市街地で使う武装にしては威力が高すぎる。波動砲のように他の武装も威力を制限できないか?」

「ミサイルにつきましては誘導性の高いモノを選択することで被害を限定することができます。

レールガンにつきましては、正直ダウングレードはお勧めしません。何故ならばこれは完全規格化された武装であり、

無理なダウングレードは技術集積による信頼性を損ねる恐れがあります」

「具体的には?」

「集弾性や精度の低下です」

「……わかりました」

 

 

若い男性が終わった後に挙手したのは目つきの鋭い男だ。

 

 

「R-11Aを導入した辺境警備隊では情報操作が為された形跡があったが、R-11シリーズには何か問題があるのではないか?」

「いいえ、R-11Aが問題を起こしたという事実はありません。ただ、初期型に搭載されていた圧縮炸裂波動砲について、

居住区の近くで使用すると事故を起こす可能性があるので、オミットされた経緯があります。

そのあたりの噂に尾ひれが付いたのでしょう。R-11A、R-11B共に小回り加速性能共に優秀です」

「……そうですか」

 

 

明らかにブース担当の発言を信じていないが、目つきの鋭い男は引き下がった。

正面からでは捜査できないTeam R-TYPEについて何かを調べている刑事は多くいる。

おそらく、質問者は権力に屈することを嫌っており、単独捜査を行う性質の男なのだろう。

痩せぎすの担当者は、刑事の質問を牽制しながら煙に巻く。

Team R-TYPE側が一応形だけでも情報を出した形になるので、これ以上追求できない刑事は悔しそうな顔をしていた。

そして、今度は明らかに高位に位置するであろう老齢の男性が勿体ぶって話す。

 

 

「しかし、R機というのはどう考えても軍事兵器を連想する。警察で使うには物々しすぎるのではないか」

「物々しいですか……では対外的には適当に名前を変えれば良いでしょう。

そうですね。警察ですし少し硬めにArmed Police Unit、武装警察機とでもすれば良いでしょう。

愛称が必要なら、課内ではパトロールスピナーなんて呼称されていましたよ」

 

 

質疑応答が続きながらも、段々とR-11Bの制式採用に向かって議論が進んでいく会場。

第一次バイドミッションの影響も未だ色濃く、武力行使権限の殆どを軍に握られている警察は独自の武器が欲しかったのだ。

少なくともデモ鎮圧や暴走族相手に軍の出動を乞うなど、警察関係者としては耐えられない事である。

そして、最悪バイドの様な外敵から市民を逃がす時間を稼ぐ力が必要だった。

 

 

結局、数ヵ月後には各所の警察組織では武装警察という部署が作られ、

R-11Bピースメイカーが、制式採用されることとなった。

 

 

***

 

 

夕時、帰路につく人々は突然の耳鳴りの様な音に、夕闇の空を見上げる。

足早に通りを歩いていた人々は、一瞬嫌な顔をして立ち止まると、またかという顔をして、そそくさと脇道に入っていった。

それは、都市用の公共交通システムの重力制御装置が、別のザイオングシステムと相互干渉する異音であった。

ビルの隙間を縫うように飛ぶ非合法機体が見えると、通りにいた人々が身をかがめて、耳を塞ぐ。吹き飛ばされないようにだ。

その真上を、作業艇を改造して宇宙用のスラスターを無理矢理付けた様な歪な乗り物が蛇行しながら飛び抜けていく。

 

 

都市内において一般人のザイオング慣性制御システム利用は禁じられており、破れば厳罰がくだるが、

低反動エアバイクや民間用作業艇に無理矢理、裏から流出したザイオングシステムを取り付けた機体で、

町を暴走するのが、今も昔も変わらない若者の間での流行だった。

 

 

少年達がジャンク品の部品を思い思いに組上げ、速度だけは一流のエアバイクを作る。

自分達の力を誇示するように街中で暴走させ、あまつさえ、犯罪まがいの事まで手をだす。

都市の住民も、今まで馬鹿にされてきた所轄警察もいい加減限界だった。

 

 

今日も、頭の悪そうな塗装を施したそれは安全性皆無で騒音をまき散らしている。

ねじ曲がった青春発露を嫌う都市の住民たちが、地元の警察に通報すると、

所轄署は、今までの恨みを晴らすべく、とある部署に一報をいれた。

凶悪犯を待ち草臥れていた彼らは直ぐにやって来た。

 

 

白に赤色パトライトの警察色は踏襲しつつも、今までの警察装備とは一線を画す10m弱の小型R機。

青いコックピットの下にはウイングが付いており、旋回性を高めてある事が窺える。

側面に大きく“POLICE”の文字がペイントされ、赤色回転灯が周囲を威嚇する機体。

武装警備隊のR-11Bピースメイカーだ。

パーツを寄せ集めた少年達の乗るエアバイクと違い、純正ザイオング慣性制御システムが静かな低い音を立てている。

一部軍事仕様を凌駕するその推力にはとてもジャンクエアバイクなどでは太刀打ちできない。

 

 

無法者を気取っている怖いもの知らずの少年たちでも、流石に軍用の機関を持ったR機に、

ジャンク品違法エアバイクで正面から立ち向かおうとは思わないのか、脱兎の如く逃げ出した。

ピースメイカーの搭乗員はそれを確認してすぐに、指揮車に通信を送る。

 

 

『こちらスピナー1号機から指揮車へ、都市隔壁を閉じてくれ、所定のエリアに追い込む』

『指揮車了解。ルート23~26、33~39までのバイド迎撃用隔壁を閉鎖した』

『スピナー1号機了解、再開発予定エリアに追い込む』

 

 

通信が終わらない内に、ピースメイカーは急加速しながら疾走し、先回りする。

目立つカラーリングと回転灯は威嚇効果抜群で、ピースメイカーを見ると暴走少年達は進路を変えて逃げる。

包囲網の外に出さない様に隔壁を利用しながら回り込み、誘導を掛ける。目指すは人口密度の低い再開発予定地区だ。

 

 

ネズミを袋に追い込むように大体の誘導を掛け終わったスピナー1号機は、ビル壁面にそって垂直上昇する。

ビル街の真上から見ると、都市とそれをつなぐ通路は碁盤の目の様に広がって見える。

そして、非行少年達の進路を限定するようにバイド対策として取りつけられた都市隔壁が閉鎖されていく。

逃げることを優先する少年達は誘導されているとも知らずに、開発区としてビルが取り壊された工事エリアに向かっていく。

秘匿回線などまったく考慮されていない違法バンドの通信帯からは非行少年達の声が漏れてきた。

 

 

『おい、このチンカス野郎が! 何が今日は大丈夫だ。どう考えてもあのポリ公ども張ってやがったぞ』

『だれがチンカスだ、早漏! ありゃ、ここいらの腰ぬけ警察じゃなくて、武装ポリだ』

『ええ、R機ってあれ軍用だろ。まずいってまずいって』

『お前らウルせぇ。潰すぞ! いいから地下潜んぞ、工事現場から地下鉄の路線に入れ!』

 

 

武装警察隊のスピナー1号機搭乗員はコックピット内でほくそ笑む。

綺麗に罠に嵌ってくれた頭の足りない少年達だが、恐喝や数に頼んでの暴走行為など所轄署の手を焼かせる厄介者だ。

所轄署が追いつめても、街中や繁華街など人通りが多い場所で撒く手口で逃げ回っている。

今回は広域行政に強制力を以って介入し、防災設備までを使っての大捕物だ。万が一にも失敗はできない。

そろそろ、少年達は隔壁に誘導されて人気の少ない工場エリアに到達しそうだ。

スピナー1号機搭乗員はピースメイカーを駆って高層ビルの陰から一気にダイブし、非行少年達の退路を塞ぐ。

威圧感をだすため波動砲をチャージしながら、外部スピーカーで呼び掛ける。

 

 

『こちら、武装警察隊だ。ただちに武装解除しエンジンを切って降りてこい。此方の指示に従わない場合は……』

 

 

全く効果があるとは思っていなかったが、少年達は逃げるどころか破れかぶれで向かってくるものも出る始末だ。

ピースメイカーは突っかかってくる2台を高速旋回で軽く避けると、

脱出口を切り開こうと地下鉄の工事口に向かっていた2台に狙いを定める。

ロックオンが瞬時に完了したことを確認して、先ほどからチャージしていた波動砲のトリガーを押し込む。

 

 

青白い波動砲は寸分狂わず、2台のエアバイクの推進部に直撃し、小爆発を起こさせる。

少年達の乗るエアバイクは勢いもそのまま地面に車体を擦りつけた。

初めに突っかかってきた2台がようやっと、ブレーキを掛けて旋回しようとしていた。

後ろを向いたままミサイルや波動砲でも攻撃可能だが、街中でのミサイル使用は色々内部的に制限があるし、

態々今から波動砲を再チャージするのも面倒である。

ピースメイカーはそのまま宙返りするように後ろを向くと、機首を合わせてレールガンを叩き込んだ。

軍用出力のレールガンは、装甲とも呼べないジャンク品の鉄板を容易に貫通し穴だらけにする。

搭乗員は余りの柔らかさに、一瞬コックピットを潰したかと危惧したが、繋ぎの甘いエアバイクはコックピット部が外れ、

回転しながら地面に数回衝突した後、転がった。

 

 

そんな事をしている内に、所轄署の物らしきパトカーや装甲車が次々と到着し、現場を取り囲んでいる。

すでにエアバイクは破壊済みだが、小火器を持っている可能性を考慮しているのか、

警官達はシールドに防弾チョッキという重装備で出てきた。

コックピットから引きずり出された少年達は、銃を構えた警官隊に囲まれてホールドアップしている。

 

歯ごたえが無い事が残念だった。もっとこのピースメイカーの性能を引き出す様な事件は無いものだろうか。

スピナー1号車の搭乗員は警察官として危ない事を考えていたが、指揮車の上司に聞かれなければ問題は無い。

ガンカメラでの成果を確認しながら、遅れてきた所轄署の警官達が少年達に手錠を嵌めるのを見ていた。

その時。

 

 

「なんだありゃ!?」

 

 

パトカーのドアに身体を押しつかられながら、手錠を掛けられていた少年の一人が空を見上げて叫んだ。

警官達は捻り上げている少年の腕を掴んだまま、空を見上げる。

 

 

空には流星雨の様な光の雨が降ってくる光景。

 

 

幻想的な光景に警官も少年達も皆空を見上げている。

しかし、流星雨にしては途中で燃え尽きることなく、星屑の様なモノは地上に到達していく。

だが、無機物である隕石であるなら落ちている途中で軌道を変える事などあり得ないし、減速もしない。

なんらかの意図を持ったそれは都市の……地球上の様々な場所に墜ちていった。

 

 

不意に怒声が上がる。

空を見上げて呆然としていた警官の腕をふりほどいた少年がひとり逃げたのだ。

痩身の非行少年は地下鉄の工事口に細い体をねじ込んで逃げる。

警官がすぐさま追うがは完全装備が災いして隙間を潜れず、簡単に撒かれてしまう。

所轄署員は慌てて応援を要請していたが、武装警察隊はそれどころではない空気を察していた。

きっと、これからが本当の任務だと。

 

 

***

 

 

その夜、空からは悪魔のタネが落ちてきた。

武装都市警察の夜はまだ更けない。

 




つ づ か な い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。