と言うよりインペラ―無双になりそうな気がする。
一応どうぞ!
リアスの婚約をかけてライザーとのレーティングゲームが決まったころ、魔王アジュカ・ベルゼブブの依頼、そして蓮の命令で冥界のベルゼブブとある研究所のとある一室に佐野は案内されていた。
本当ならばもう1人、同行してきたライダーが居るはず。しかし近くの鏡には何も映ってはいない。
佐野のパートナーとして冥界にやってきたオーディンは別行動で行方不明事件の発生現場を回り、先にフェニックス領に潜入している。
冥界入りして既に7日が経とうとしていた。だが一向に調査が進まない。
こんなことでは旦那に殺されてしまう
そんな時だった。数日前に襲われた女性に話を聞けることとなったのは
「そうですか・・・シマウマの化け物に襲われて」
「はい・・本当に、あの時、戦極凌馬様が現れてくれなかったらと思うとっ本当に・・本当に怖くて」
目の前で肩を掴み、怯えた様に体を震わせている女性。この女性、実は一昨日ミラーモンスターに襲われたところを、その戦極凌馬とか呼ばれる(恐らくライダーだろう)に助けられたと。
正直運が良かったとしか言いようがないと佐野は思っていた。
自分もかつて死んだからこそ分かるのだ。死の瞬間のあの恐怖は何とも言葉では言い表せられない。しかもミラーモンスターに捕食されようとしたのだ
「ではもう一度確認しますが、お嬢さんの務めていた主のお屋敷っていうのはフェニックス家とは関係があるんですね」
「は・・はい。実は数日前にライザーフェニックス様とその執事様との会食パーティーがありまして」
パーティー・・・・いいな~うらやましいな・・・っと違う違う
思わず貧乏人根性で想像してしまった佐野は頭を振り払う
「で・・・その数日後、最初の行方不明が起こったと。」
「はいっ!数日周期に1人、1人と・・・私のメイド仲間も・・あの子、小さい子供を養いながら頑張っていたのに」
「あっ・!ちょっ・・!泣かないで、大丈夫ですから~泣かないで下さいよぉぉ」
女性は思い出してしまったのか嗚咽を漏らしながら泣き出してしまう。彼女れき=人生である佐野にとっては女性の泣き顔など幼いころの同級生の泣き顔しか知らないため、こういう状況の時の宥め方など解らなかった。
「ヒックッ!・・・いきなりごめんなさい。でも・・あの子、まだ小さいのに不憫で不憫で」
「ん~まぁ・・そうでしょうね。自分もちょっとは解らない訳でもないですから」
自分もかつて親に勘当させられたが、実際に父親が死んでしまった時の事はよく覚えている。何とも言えないのだ。内心ではすごく嫌っていても、実際に親の死に直面したら。愕然と来てしまう。
ましてや、それがまだ親にべったりの小さい子供、それも母親が居なくなると言う事はどれだけの事か計り知れない
子供の時とはそれほど繊細な事なのだと、俺は旦那から口を酸っぱくなるほど言われた。
あの人子供が関わると急に人が変わるからな~
そんな昔を懐かしむように思わず苦笑いを浮かべる佐野だったが、女性が小さく驚いたような声を上げる。
何か思い出したのだろうか?
「そういえば・・・ルビー君。確かお母さんが消える少し前に変なものを見たって」
変なもの・・・何だろう?何か見たのだろうか?
「鏡の中に・・・人がいるって、その人がお母さんを連れて行ったのかな~って」
「何だって!?」
思わず椅子を弾き飛ばす勢いで立ち上がる佐野。女性は小さく”あわあわ”と口元を震わせる。
だが佐野はそんなの関係ないと言った勢いで女性を問い詰める。
「その子はあなた以外に・・例えば他に何か言ってませんでした?見たことある人だとか。あっあとその話他の人には言いましたか!?」
問い詰めなければならない。佐野の背筋に嫌な汗が浮かぶ。もし俺の考えが正しければ
「え・・・あっ!・・わっ私・・」
「良いから答えて!最悪の事態が考えられるなら!奴らはその子供まで狙ってきます!」
「・・・そう言えば・・・あの子、黒いヘルメットを被っていたって。それにこの話はメイドや執事にも言っていたから」
黒いヘルメットを被った人が鏡の世界にいた。ミラーモンスターなら黒いヘルメットなんてあいまいな表現はしない。それにミラーモンスターでそんなモンスターの情報は無い。
それに俺の感が正しければ・・・その子が見たのはミラーモンスターではない
旦那が言っていたミラーモンスターを背後で操り、フェニックスに協力している存在
それがもし俺の予想している奴で、その子の話をそいつの耳に入ったとしたら
その子が危ない!
誰か!と叫び、外に待機していたスーツ姿の女性に後を任せると廊下に取り付けてあった鏡にカードデッキを翳す。
「変身!」
仮面ライダーインペラーへと変身しミラーワールドに飛び込むと同時に1枚のカードをガゼルバイザーに装填する。
【アドベント】
「ギガゼール!お前はオーディンの所にこの伝言を伝えろ!」
”コクン”
そう言ってメモをギガゼールに渡し、傍に控えていたライドシューターに乗りこむと最大速度でミラーワールドを駆け抜ける。
急がなければ・・・急がなければ間に合わなくなる。冥界は道が整備されていないが、幸い道幅が広い。このスピードなら
(っ!見えた!)
ライドシューターで駆ける事、数10分。メイドの女性から聞いた住所にひっそりと立ち尽くす建物が見える。ライドシューターを適当に置き、急いで家の中に駆け込むインペラ―
しかし・・・事は既に起こってしまっていた。
『『『ウウゥ・・・ウゥゥウ』』』
既に家の中には確認できるだけでも3体の白い昆虫型ミラーモンスター『シアゴースト』がのろのろとした緩慢な動きで人間の手の様な物を捕食している。その周りのも食い散らかされた肉片がちらほらと目に入る。
「おじさん・・チャールズおじちゃん!!」
「っ!?子供!」
インペラ―の強化された聴覚は唇を震わせた幼い少年の声を聞き逃さなかった。建物の端、コンクリートの壁にもたれかかる様に体を震わせている4,5歳の少年。
おそらくあの少年がメイドが言っていたルビー君で間違えないだろう。
だが同時に食事が済んだのか『シアゴースト』も次の獲物を捕食しようと動き出す。
3体が3体、端っこで震えている少年に群がるように集まっていく。
「させるかよ!!」
インペラ―は叫ぶと同時に少年に襲い掛かろうとした3体『シアゴースト』に蹴りや拳の打撃を暴風雨の様に浴びせる
もともと動きが緩慢な『シアゴースト』。ミラーモンスターの中でも最弱の戦闘能力だけあってインペラ―の打撃をまともにすべて受けてしまい、建物の外まで叩きだす。
「良いかい。このまま目をつぶって、ここから動かないように。お兄ちゃん直ぐに終わらせて来るから」
少年の体を傍にあった綺麗な毛布で隠し、安心させるように言葉をかけ、外に弾き飛ばした『シアゴースト』を追撃する。
『ウウゥ!?ウゥゥウゥ』
『ウゥウウゥ』
『ウゥウウゥウウゥ!』
外では吹き飛ばされた衝撃から起き上がった『シアゴースト』が建物から出てきたところを口から吐き出した職種の様な物でインペラ―の腕や足、首を拘束する。
「ぐっ・・・舐めんじゃねぇぞぉぉぉ!!!」
インペラ―は怒りの咆哮を上げると、腕に巻きついている触手を手にし強引に『シアゴースト』ごと自ら引き寄せ、渾身の蹴りを叩きこむ。
『ウゥゥウウ!!?』
『『ウウゥウ』』
蹴りをぶち込んだ『シアゴースト』を残りの『シアゴースト』にぶつけることで、首と足の職種の拘束が弱まり簡単に外れる。
互いの重量を支えきれずに重なり合うように転がる『シアゴースト』
そのチャンスをインペラーがみすみす逃すはずは無い
【スピンベント】
インペラ―の右腕には、嘗て【ディスパイダー】の硬質した装甲を紙の様に貫いた【ギガゼール】の頭部を模したドリル状の刃が装備され
「オラァァァ!!」
高速回転する2本のドリルが重なり合っていた一番下の【シアゴースト』の背中からお腹までを貫通させる。
『う!?うぅ・・・う・・・』
そのまま立ち上がることなく爆散させる。残りは2体。だが
『『う・・うぅぅ・・う』』
メキメキメキメキ!
体を丸めた体位になっている『シアゴースト』の背中が心臓の様に上下に鼓動したと思ったら、その皮の中から青い、頭部に4つの虹色に輝く薄い羽根を取り付けたトンボ型ミラーモンスターに姿を変貌させる。
『シアゴースト』が脱皮することでトンボ型ミラーモンスター『レイドラグーン』に変態した。
(くそ!進化する前に倒したかったが・・・)
奴の面倒な所は『シアゴースト』と違って、純粋に飛行能力が追加される点
ナイトの旦那とは違い飛行能力は持たないんだよ!
『ブブブブブブブ!!』
「飛ばしはするかよ!」
【アドベント】
『ギギィィィィ!』『グルォォ!』
飛翔しよう翅を高速振動させる『レイドラグーン』をレイヨウ型モンスター『ネガゼール』と『オメガゼール』がそれぞれ自分の武器である両腕のカッターと槍で飛び立とうとする『レイドラグーン』を地面に抑え込む
「これで!ラストォォォォ!!!」
右腕のガゼルスタッブで仰向けに倒れている『レイドラグーン』串刺しにする。
ギュイィィィィィィィン!!
『ブブ!?ブブブブブブブブゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!』
腹に串刺しにしただけではまだ死なない『レイドラグーン』に突き刺したガゼルスタッブのドリル部分を高速回転させる。レイドラグーンの体から血の代わりに大量の火花が泉のように溢れ出す。
インペラ―の最後の追い討ちに遂に耐え切れなくなった。レイドラグーンは絶望を超える痛みの中、断末魔を上げ、『シアゴースト』と同様に爆散する。
残りは!?何処にッ!
『ブブブブブブ!!』
残る『レイドラグーン』の高速振動する翅の音が、羽ばたきがどんどん近くなってくるが、辺りを見渡してもミラーモンスターの影も形も
「!?上か!」
反応するインペラ―だが間に合わない。『レイドラグーン』の右腕の鋭利な鉤爪が頭上から迫る。
【ソードベント】
・・・斬!
『ブブ!?・・・ブブ・・ブブゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
だが、インペラ―の頭上に迫った。『レイドラグーン』の体が上半身と下半身で真っ二つに割れ、爆散する。
一体誰が!?と周りを警戒するインペラ―だがその前にソイツは現れた。
「ふん・・我が居なければあの場で重傷を負っていたぞ。佐野 満。お前は主が遣わしたライダーの1人なのだ。ミラーモンスター如きに殺されるでない。」
尊大な物言いでこちらを助けた仮面ライダーオーディンは言いたいことを言うだけ言うと再びミラーワールドに消えていく。
正直言い返したいところではあったが油断していた事は事実。死ぬことは無いにしろ、重傷を負っていたかもしれない
2年間死んでいた故に体がなまったか?
まぁ一応周りに確認できるモンスターは倒したから良いとするか。
それよりも
インペラ―の姿のまま、再び半壊した建物の奥へと入っていく。奥のむごたらしい事件現場の様な所に包んだ毛布
それをそっと外すと中から目を見開いたまま恐怖に打ち震える1人の少年がこちらを見上げている。
「大丈夫だ。もう大丈夫だから。」
インペラ―の姿、変身を解いた佐野は少年の小さい体をそっと包むように抱きしめる。
「怖かったな・・苦しかったな。だけど大丈夫。お兄ちゃんが付いているから。」
「あ・・・ぁ・・ぁ」
少年は恐怖からくる張り詰めていた緊張が解けたのだろうか、腕の中で意識を失いぐったりとなる。
しかし、佐野は少年を抱きしめたまま、拳を握る。
何故こんな少年が襲われなければならないのだろうか
自分はライダーだ。殺す殺される環境で相手を沢山傷つけてきた。正直殺されても文句は言えない。
だがこの子は違う。この子はただ母親と幸せに暮らしていただけなのに
ただ・・・幸せに
『俺はただ・・・幸せになりたかっただけなのに』
それはかつて自分が死ぬ前に蓮に訴えた最後の言葉であり、純粋な望みだった。
幸せでありたい。だから金を欲する。昔の俺はどんなことをしても、どんな相手に媚びても金を手に入れる。
それが幸せにつながると思っていたから。
懐から取り出した携帯電話で電話をかける。このままではこの子は衰弱してその内死んでしまうかもしれないから
『ふむ・・・私だ』
『はは・・・私だ。じゃ解りませんよアジュカの旦那』
電話の相手はアジュカ・ベルゼブブ。こんな時の為、また何かあった時や情報を共有するためにこの携帯も彼から渡されたものだ。
『ではこれからは名乗ろうとしよう。でだ佐野君?何やら飛び出して行ってしまったと研究所の方から連絡があったが?』
流石に情報が速い。
『先ほど、ミラーモンスターに襲われた情報から、彼女の同僚、ミラーモンスターに喰われた女性に子供がいるという話を聞きまして、しかもその少年、どうやら母親が消えるところを見てしまっているそうなんです』
電話の向こうでアジュカが”なるほど”と意味深な返事返してくる。
『つまり、口封じにくる可能性があることから、君は急いでその少年の下へ向かったと・・では少年は?』
「少年は何とか・・・しかし、少年の身元引受であろう2名の叔父夫婦は・・・助けられませんでした」
唯一の後悔に思わず歯ぎしりしてしまう。だが今は後悔よりも腕に抱かれている少年をどうにかしなくてはいけない
「少年は捕食の現場を見てしまっていますし、襲われた恐怖で精神的にも結構負担がかかっています。どうします?」
『・・そうだな・・・ならばこのまま研究所まで連れてきてくれ。あそこなら大抵の事には対応できる。それに凌馬と私が開発した。アーマドライダーシステムもある。ミラーモンスターの1体や2体対処できる。』
「わかりました。では・・・」
電話を切った佐野はここで重大なことに気づいてしまった。
「この子・・・どうやって連れて帰ろうか」
こうして佐野は犠牲は出たものの、未来ある少年の命を怪物から守ることができた。
完
―――冥界、フェニックス領―――
人間界から戻ってきたライザー・フェニックスは自分の部屋に戻るなり、余裕の笑みを浮かべていた。
もう少しで欲しかった女が手に入る。手に入れたらどうしてやろうか。など楽しみでいっぱいだった。
「失礼します。ライザー様、明日のご予定の確認に参りました。」
「ああ・・入れ」
失礼しますと一呼吸置いた扉から現れたのはメガネをかけた執事
これでも多忙なライザーはそのスケジュール管理を眷属から、最近採用した最も優秀なものに任せていた。
「明日のご予定は、バアル家との会食、エルサドル様とのチェス・・・他に」
執事はメモを見ずにすらすらと次の予定を一字一句、時間の秒単位まで完璧に話す。これがライザーがこの執事を専属に選んだ理由だった。
この一度見たらすべて記憶してしまう、”絶対記憶”これを持っているこいつならば何処にスケジュールを組めばいいのかも全て任せていられる。
父上に無理を言って専属にする価値だけはあるな。そして父上も知らない事がもう1つ
「続いて・・・本日の処理ですが、レフュール侯爵を行方不明で処理いたしました」
「ほう・・よかった。よかった。あいつはあれで、面倒な男だった。おかげで美しい女を取りこぼす所だったよ」
ライザーは邪悪な笑みを浮かべる。もう一つの使い道
暗殺
目障りな男や、俺に不満を持つメイドなどを進んで処理をしてくれる俺の裏の右腕
唯一の懸念としてはこの男。どうやって処理をしているかのその方法が解らない
それとなく何度も聞くがはぐらかされるか、契約の事を持ち出される。
契約とは俺が指し示す輩を消すこと。しかし、その方法については口外しない
まぁだが、こちらも動かずに邪魔者を黙って対処できるのは楽でいい
「これからも頼むよ・・・・なぁ
香川英行(かがわ ひでゆき)君
」
「はい・・・・お任せ下さい。わが主」
執事は黙ってお辞儀をする。その頭の下で薄っすらと不気味な笑みを浮かべながら。
ライザーはこの時、気づいていなかった。
この男の存在がこれからの冥界において、どのような害をもたらすかなんて。
次回 第9話【守るべきもの】