憎悪の瞳,渇望する愛   作:伊佐那岐

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何やかんやでもうここまでやってきました。


でもやっぱり自分の文才が無いのが悔しいっす。コミュニケーション取れない俺


でも俺は書きます。なんか書いていておもしろいからね


では!


第10話 【朱乃の想い】

―――駒王学園 オカルト研究部部室――――

 

 

 

 

「負けて・・・・しまいましたわね」

 

 

朱乃はただ1人、誰もいない部室に重い溜息を吐く

 

 

あれから2日、フェニックス眷属とのレーティングゲームで負けた後、私は冥界のベッドで目が覚める。そして知った。私たちは負けたのだと。イッセー君は2日経った今でも目が覚めず、アーシアちゃんもその看病で学校に姿をあらわしていない。

 

 

リアスも今は冥界に、4日後の婚約パーティーの為に軟禁され、祐斗君も小猫ちゃんもそんなリアスに付き合っている。

 

 

皆自分が今やることをやっている。

 

それなのに、それなのに私は何をやっている?

 

私はここで何をやっている?

 

リアスがライザーの下に嫁げば彼女は必然的にこの学園から去ることになるだろう。そして、彼女の女王である自分も当然離れることになる

 

 

だけど自分はここを離れたくは無かった。

 

 

まだ、まだここに居たい!自分勝手なのは十分わかっている。解っているのだ・・・だけど、だけど私はまだ・・・蓮と離れたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”ゴトン”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、誰もいない部室の奥、丁度何時もリアスが座っている机から何か堅いものがぶつかる鈍い音が聞こえる。

 

何だろうと机の近くに近寄ると銀の懐中時計が転がっている。

 

 

落ちた拍子か何かだろうか、丁度蓋が外れて中の文字盤と、蓋の背面から除く家族の写真が目に入る。

 

 

「あら?これは・・・・・」

 

 

それは教会やはぐれ悪魔から自分たちを守った謎の男。仮面ライダーナイトが自らのコートと共に置いて行ったもの。

 

なぜ今、こんな物が此処にあるのだろうと。確かリアスが預かると言っていたが彼女が机にしまったままにして置いたのだろうか?

 

思わず手に取る朱乃。ふと3人家族の写真に目が行ってしまう。母親が子供を抱き上げ、父親がその隣、3人ともカメラに向かって幸せそうに笑っている。

 

 

本当に幸せそうに

 

 

「失礼します。やはりここにおられましたか朱乃さん」

 

 

 

部室の扉の前、黒く長い髪を波打つように揺らして自分に近づいてくる。

 

生徒会副会長にしてソーナの『女王』でもある椿だ。今日はソーナどころか眷属の1人も周りには居ない。彼女だけが訪れることは滅多にないのに

 

「椿さん?どうしましたか?残念ですがリアスは今冥界で」

 

 

「いいえ。今回はあなたの様子を見に来たのよ。同じ女王ですもの。今回の件は会長ともども、残念でなりません。」

 

「いえ・・・仕方の無い事ですから」

 

態々こちらを心配してくれるのはありがたい。けれど、今更誰が何と言おうと結果は変わらない。リアスはライザーと結婚し、私もこの駒王町を離れる。『女王』である以上にリアスの下を離れるという事は出来ない。

 

 

私はリアスに救われたのだから

 

 

唯一この状況を如何にか出来る存在。彼女の兄であり魔王様でもあるサーゼクス・ルシファー様だが、あの方の『女王』でもあるグレイフィア様が態々審判を務めた試合で負けたのだ。

 

 

あの方が表だって動くことはもうないだろう。

 

 

最早絶望しかないことを表情に浮かべる朱乃。彼女の表情から最早同情せざるを得ないと椿はふと彼女が握る銀時計に気づく。

 

 

「あら?朱乃さん、その手に持つ物懐中時計は?」

 

何かのお守りだろうか?と気になってしまう椿に、私はそういえば握りしめたままだった銀時計を彼女に見せる。

 

 

「え・・・あぁこれはある方の落とし物ですわ。できれば探して返したいんですけど、誰の者かわからなくて。手がかりはここに映っている写真なんですけど」

 

 

椿に見せやすいように、写真の向きを椿に向け、椿もその写真に写っている人物をよく見ようと目を細める

 

 

「えっ・・・この人って」

 

 

「椿さん?この写真の男性を知っていますの?」

 

 

椿は思わず面食らった様に目を丸くする。どうやら彼女はこの写真の男性を知っている様子

 

 

「えぇ・・・と言うよりあなたは、喫茶店『バカランダ』と言う店を知っていますか?」

 

 

バカ・・ランダ・・・!?その店の名前は聞いたことがあった。

 

 

確か小猫ちゃんが毎週スイーツを楽しみに通い詰めている店でもあり、蓮の父親がマスターをやっている店ではないか!

 

 

「この男性は、『バカランダ』のマスター、相川始さんと言って、とても美味しいコーヒーを入れると評判の男性で、確か相川君のお父様だったはず。」

 

 

「蓮の・・・・お父様。ならこの隣に映っていらっしゃる女性は」

 

 

「蓮君のお母様と言う事になるのでしょうか?しかし、こうまじまじと見るとあなたと瓜二つの顔ですね。それでこちらの小さい男の子が蓮君・・・はふぅ!ちっちゃい蓮君は可愛いですね~」

 

 

思わず顔に手を当ててうっとりと小さいころの蓮を見つめる椿。

 

 

 

だが、朱乃は手にもつ写真、にこやかに笑っている蓮の父親が。『ナイト』なのだろうか・・・

 

 

一瞬、怪訝な顔色を浮かべるが、どうにも納得できない。蓮の父親が仮に仮面ライダーナイトならおかしい点が幾つかある

 

 

まずあの日、堕天使レイナーレによって一誠が殺された日。私たちがナイトを見た時間帯は午後の17時位だったろうか

 

あの日は日曜日だけあって、当然店には人もいるはず。少なくともナイトは30分以上はあの場にいたことになる。店の、それも喫茶店のマスターが稼ぎ時にそんなに離れるだろうか?

 

 

そしてもう1つ、タイミングが良すぎる。

 

 

ナイトは私たちがミラーモンスターに襲われている時に現れ、そして堕天使のアジトである教会に関しては私達より先に潜入していた。

 

たった2回。たった2回だが偶然にしてはタイミングが良すぎる。ましてや小猫以外はほとんど面識がない

 

学生でもないし、ストーカーでもありえない程に行動が速すぎる。

 

その上、『ナイト』の声は男性だとしても、少し若い。私達位の年の印象を受けた。しかし、この写真が撮られた日付は14年前の者。いくら若く見えても声自体は!?

 

 

 

 

ドクンッ!

 

 

 

一瞬頭の中に何かがよぎる。突然の心臓の高鳴りに表情が凍り付いてしまう。

 

 

写真は14年前にとられたもの・・・・そう自分は考えた。

 

 

ならば今・・・・この写真に写る子供は幾つだ?

 

 

(恐らく・・・・・15から20歳くらい)

 

 

この子は誰だ?

(相川・・・・・蓮)

この子は今・・・・・何処に所属している?

(駒王学園2年・・・・・そして、オカルト研究部の部員)

 

 

 

声が年相応に若く、時間に縛られない、かつこちらの行動をある程度先回りできる。

 

 

 

すべての条件と言うパズルが次々に組み合わさり、私の思考の中に絵として現れた蓮に内から溢れ出す衝動が最早抑えることができなかった。

 

 

 

「・・・・と言う事で非常に残念ですが相川君は「蓮!」っ!朱乃さん!?」

 

 

 

驚く椿を押しのけ部室を飛び出していく。確か今日はまだ学校に残っているはず。今日はまだ

 

 

 

西に沈んでいく夕日が朱乃の姿を紅く照らす。

 

 

明日でもと一瞬頭に過る考えを振り払い朱乃は走り続ける。

 

 

何故だかわからない。何故だかわからないが今日で会えなければ後悔してしまう

 

 

もう二度と会えなくなる様な。そんな不安が私の頭を過る。

 

 

走り続ける朱乃は必死に蓮の居そうなな所を探す。

 

 

教室、生徒開室、その他、蓮が居そうな場所を必死に探すが何処にもいない。

 

 

 

焦りもう帰ってしまったのではないか?

 

 

 

 

思い出したのだ。

 

 

彼なら、彼なら蓮の居る場所を知っていると

 

 

向かった先は体育館の横にある建物。表の看板には駒王学園、剣道部と書かれているその建物には大勢の駒王学園の生徒が集まり、中ではもう日が沈むというのに、必死に声を張り上げて竹刀を振り下ろしている剣道部員の姿が見える。

 

 

 

ざわざわっ

 

 

 

「あれっ!おいあれ姫島先輩じゃあ」

 

 

「マジか!?おいおいいったい何でこんな汗臭い所に」

 

 

 

ざわめき始める部員たち

 

朱乃は自分に集まる視線を華麗にする―し、目的の人物を探し・・・・・・見つけた。

 

 

朱乃に気づかずに一人必死に竹刀を振るうその目的の人物に

 

 

「失礼します!」

 

 

「えっ!あっ・・・先輩!」

 

 

一言断ると黙って上がる。朱乃に思わず声をかける生徒がいるが、彼女は気にせず目的の人物まで歩み寄る。

 

 

 

「ん?・・・あなたは・・どうしてこんな所に」

 

 

こちらに気づいたからか防具を外し、汗をぬぐう

 

 

蓮が校内ででも最も一緒に行動している人物

 

 

 

 

「貴方に教えてほしい事があるんですの・・・・神代君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃・・・・

 

 

 

「つまり、子供の方は会話ができるような状態ではないんだな」

 

 

『そうなんですよ。何というか・・・・・言葉に表せないくらい深刻で』

 

 

ふむと顎に手を当てどうするか考える蓮

 

 

まさか朱乃が自分を探しているなど終ぞ知らない蓮はアジュカ製、改造携帯電話で連絡を取り合っていた。

 

相手は現在、冥界の失踪事件の調査へと送り出した佐野

 

 

 

「リアスが勝てるとは想像していなかったが予想外なことに、あと数日経てば、婚約パーティーが行われるとか。」

 

 

電話の向こうで佐野の嫌そうに引いている表情が目に浮かぶ。実際に蓮としてもこの進行速度は異常だと

 

 

恐らく予め、予定されていた事なんだろう

 

 

 

胸糞悪いぜ

 

 

『だけどよ旦那。正直黒幕はもうわかっているだろ?さっさと仕留めた方が』

 

 

確かに。佐野の言う事も解る。だが

 

 

 

「フェニックス家の周囲にはミラーモンスターの気配があるんだろ。それに、本当に敵が奴だけなら問題は無いがな」

 

 

『どういうことですか?まさか悪魔が』

 

 

 

悪魔なら・・・か

 

 

悪魔ならまだいい。魔王、最上級悪魔クラスの化け物さえ来なければ対処できない訳でもない

 

 

だが

 

 

 

”ガコン”

 

 

 

ん?誰か屋上に来たのか?

 

 

 

「佐野、悪いが誰か来た。続きはまた後だ」

 

 

「えっ・・・・いやちょっと旦那!?」

 

 

”パタッ”と携帯電話が閉じられ、懐に携帯電話をしまう。

 

 

ここは本来、立ち入り禁止の屋上。一般の生徒が、ましてやこんな夜暗い時間に来るわけがない

 

 

ギイィィィィィィ

 

 

鈍い鉄の扉が開かれる。蓮がこの場に残っていた理由は2つ、一つはここならば滅多に人が来ない、または居ても追い出せば良いだけの事

 

 

そして2つ目、それは人との待ち合わせ

 

 

別に屋上でやる理由は無いが、自分も待ち人もここならばすぐに集まれる。

 

 

そう考えて決めた待ち合わせ場所だったんだがな

 

 

 

 

「ッツ!?・・・・参りましたね。何であなたが此処に」

 

 

思わず額に冷たい汗が流れる。待ち合わせていた人物は蓮の親友でもある剣、そして、レオのはずだった。

 

 

だからこんな所を待ち合わせにしたのだ。なのに

 

 

 

「なんであなたが此処にいるのか。説明してもらえますか?朱乃先輩」

 

 

 

「そうね~。あなたにどうしても会いたかったから。じゃあダメかしら?蓮」

 

 

 

 

何であなたが此処に来るかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺に会いたかったから?それは一体どういう意味ですか?」

 

 

 

「あら?そのままの意味のつもりなのだけど?」

 

 

 

不敵に俺の目の前で笑う朱乃。何時もの笑みに若干影が見えるのは・・・リアスの件か

 

 

 

「今回の事は生徒会長から聞きました。残念でしたね。」

 

 

「えぇ・・・。でもあなたの事、あなたのその右腕の事は、今後はソーナ会長が面倒を見てくれるから」

 

 

 

悲しそうな表情を浮かべる朱乃。面倒が見られない、つまりこの学園に居られなくなる。またこの学園に居られる時間が少なくなると言う事か

 

 

 

「辞められるのですか?この学園を」

 

 

「…………解りません。ですがリアスが冥界に向かっては、『女王』である私は付いて行かない訳にはいきませんから」

 

 

 

「そう・・・・・ですか」

 

 

思えば仕方の無い事かも知れない。そもそも関わり合うはずもない関係だったのだ。

 

 

これで・・・・そう、これでいいんだよな

 

 

 

「それじゃあ。最後のお別れ・・・ってことで会いに来てくれたんですか?」

 

 

「そうね・・・・本当は黙って行こうかと思っていたわ。でも・・・抑えられなかったの」

 

 

朱乃は制服のスカートからそれを取り出す。それは銀色に輝く、この世界に2つと無い懐中時計

 

 

「なッ!?なんで・・・それを、その懐中時計はッ!」

 

 

唖然とするしかなかった。それはこの世界で唯一、相川蓮しか持ちえないただ一つの形見

 

 

「これはあなたの物ですね?蓮」

 

 

「そっそうです!いや~何処に落としたか探していたんですよ。は・・・ははは」

 

 

頬が引き攣る。この懐中時計は、どんな時でも一緒に居られる。そう意味を持って母から、そしてあの人から幼いころに貰った・・

 

 

その中には、小さいころの、自分が3~5歳くらいに撮った写真が納められているはずだ。当然それを見た上で。

 

 

「見たんですね」

 

 

「えぇ・・・勝手ながら。あなたと初めて会った時、あなたは驚きのあまり泣いていましたが、やっとその意味が解りました。」

 

 

「すみません。・・・・・あなたと母を重ねてしまった。不快に思われたのなら、謝罪します。」

 

 

深々と頭を下げる蓮。しかし、朱乃は黙って首を横に振るう。

 

 

「私は言いましたよね。2人の時は、朱乃って呼んでと。私は本気です。だからこそ、最初はこの内に抱く葛藤を抑え込んで、合わないつもりでした。」

 

 

私はあなたに振られたのだから。彼女のその一言が蓮の心を揺さぶる。

 

 

「でも、この懐中時計の持ち主があなたとわかった時、私は・・・私はあなたに会いたい思いと同時に確かめたいと思ったの」

 

 

「確かめたい?一体何を確かめると言うんですか?この懐中時計の持ち主なら確かに俺ですが」

 

 

「違うわ」

 

 

違う?一体何を確かめたいと言うんだ

 

朱乃はただ何も言わずに首を横に振るう。その表情からも何を言っているのかわからない

 

 

「わからない?この懐中時計はコートのポケットの中にあったのよ。」

 

 

………コートの……ポケット……ッ!?

 

 

朱乃の真意に思わず動揺を隠せない蓮

 

 

余りの予想外、まさかアーシアに渡したままのコートの中にあの懐中時計が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方が・・・仮面ライダー・・・ナイトだったのね。蓮」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮面ライダーナイト

 

 

嘗てミラーワールドにてその存在を知らぬ者はいなかった。

 

冷静に戦場を分析し、常に的確かつ冷酷、卑怯ともいえる残酷な手口であらゆる敵を、あらゆるライダーを葬ってきた。

 

そんな蓮だがただ一つだけ、その正体だけは最後まで、一部のライダーを除く、他のライダーには正体がばれないように慎重に慎重を重ねていた。

 

 

はず・・・・だったんだがな。

 

 

 

 

「は・・は・・・・!!あっははははははは!!そうかっ!いやまさかこの懐中時計が。母さんの形見がまさか仇になってばれるとは・・・解らないものだ、本当に解らないものだ」

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 

 

顔に手を当て突然狂った様に笑い始める蓮。顔に当てた右手の指の間から射抜くような冷徹な眼光が朱乃を射抜く

 

 

蓮から放たれた異常なほどの殺気に思わず朱乃は身を震わせる他なかった。

 

 

(こんな濃密な殺気!今まで感じた事なんて)

 

 

 

 

”殺される”

 

 

【雷の巫女】と一部の人間からは実力が評価されている。戦闘もはぐれ悪魔なんかで経験が無いわけでもない

 

 

そんな実力がある。朱乃でもそう感じさせるほどの殺気

 

 

 

 

 

普通だったら失神するか、体が板のように硬直して思うように動かせないほどの殺気を朱乃に向かって発し続けているはず。

 

 

 

なのに

 

 

 

なのに何で

 

 

 

「なのに何であんたはっ!俺を憐れむような悲しい表情を浮かべるんだよ!」

 

 

 

彼女の表情からは”恐怖”は見えず、逆にこちらを”かわいそうな目”で見つめる。

 

 

 

やめろ

 

 

そんな目で、そんな目で俺を見るな。憐れむな!

 

 

 

 

「ダークウイング!!」

 

 

 

”キイイィィィィ!!”

 

 

 

「ミラー・・・・モンスター」

 

 

 

蓮に呼ばれてやってきた蝙蝠型ミラーモンスターにして、ナイトの初期からのパートナー【ダークウイング】

 

 

屋上を旋回するように一周飛行した【ダークウイング】は主である蓮に向かい合う形で空中停止する。

 

 

 

 

「命令だ!・・・その女を!その女を殺せ!!ダークウイング!」

 

 

 

 

”蓮”と小さく朱乃は呟く。蓮は無情な決断を、目の前の朱乃を殺すようにダークウイングに冷酷な命令を下す。

 

 

だが

 

 

 

「何故だ。・・・・何故命令を聞かない!!ダークウイング!!!」

 

 

何度命令しても、ダークウイングは動かなかった。契約者の呼び声に答え、契約者の命令に絶対に従う。それがミラーモンスターのライダーの契約のはず

 

 

なのに【ダークウイング】は動かなかった。

 

 

ただ真っ直ぐに、こちらをを直視したまま動かない

 

 

 

”キイィィ。キィ。キィィイイ”

 

 

悲しげな鳴き声を上げる。

 

 

ダークウイングの言葉に俺は思わず唖然としてしまう

 

 

 

「なん・・・・だって、俺が・・・あの女を殺すのを拒んでいるだと。」

 

 

俺が目の前の女を・・・朱乃を殺すのを拒んでいると言うのか!

 

 

この俺が、この俺が

 

 

「巫山戯るな・・・・・・巫山戯るなよ!ダークウイング。お前が動かないのなら俺が直接手を下すまでだ!!『変身!』」

 

 

Vバックルにカードデッキを装填した蓮の体が鏡合わせの様に重なると同時に、その姿が漆黒の仮面ライダー、ナイトの姿へと変わる。

 

 

 

ナイトは左腰に添えられた翼召剣ダークバイザーを右手に添え、一歩で朱乃の目の前まで移動し、剣を振り上げる。

 

 

 

「さようならだ!何か最後に言い残すことは」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

最後の最後になっても憐れみを消さないか・・・・、死ね!

 

 

 

月の光に照らされた白人の刃が朱乃の首に向かって振り下ろされ、朱乃は一瞬、体が恐怖震える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あっ……あ……れ…ん』

 

 

 

 

 

 

 

 

蓮の脳裏と朱乃の姿が重なる。同時に、振り下ろされた剣が空中で止まる。

 

 

 

”バリィン”

 

 

鏡が割れる音に目を恐る恐る開けた朱乃。その目に写った蓮の姿に胸が引き裂ける思いになる

 

 

 

蓮は泣いていた。腕に力を入れずにっと脱力した状態で、その手に握っていたカードデッキが落ちると同時に思わず膝をついてしまう程に弱弱しく見えた。

 

 

 

「蓮っ!」

 

 

体を暖かな温もりが全身を包む。どこか懐かしいと思えるような温もりが蓮を包む

 

 

 

解らなかった。何故この女性は自分を抱きしめる。何故泣く。俺はあなたを殺そうとしたのに

 

 

 

「ごめんなさい。あなたの事をわかってあげられなくて。あなたの苦しみを分かってあげられなくて。」

 

 

だから何故あなたが謝る。謝るべきは此方のはずだ。なのに何故

 

 

 

 

 

「なんで・・・・謝るんだよ。謝らないでくれよ」

 

 

自分自身、自分の気持ちが解らないでいた。殺すべきかそうではないか。

 

 

 

「リアス達にはあなたの事は言っていませんし、教えるつもりもありません。だから大丈夫よ」

 

 

「何故・・・・何故そこまで俺に優しくしてくれるんですか。俺はあなたを」

 

 

蓮は抱き付いたまま思わず幼少のころの癖彼女の胸に顔を埋めてしまう。そんな蓮の頭をなでながら、赤子をあやすように扱う

 

 

「例えあなたが私にお母様を重ねていても構いません。私は蓮が好き。それがどんな形であれ私を求めてくれたらそれでいいんですよ。」

 

 

 

でも、と言葉を濁す朱乃。その理由は解っている。ライザーとの婚約。リアスがこの場を離れれば朱乃もそれに付き添って離れていく

 

 

朱乃だけではない。小猫や木場、一誠にアーシアも離れていくことになる。あの戦いのない、暖かな空間が

 

 

 

「だからこれで最後。ごめんなさい。もっと沢山、抱きしめてあげればよかったわね」

 

 

 

 

 

 

それが彼女との、この場での最後の別れになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱乃が屋上を立ち去った後、蓮は後に合流した剣やレオと連れ添って家に戻った。

 

 

2人とも、特に剣に関しては朱乃に屋上を教えたからか何時ものおちゃらけた声は無い

 

 

レオも剣から聞いていたためか、それとも空気を感じ取ってか、最後まで黙ったままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蓮の部屋

 

 

 

 

 

ベッドと写真以外何もない部屋だった。パソコンは別宅の方にあるしテレビもあっちだ

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

暗い部屋で蓮は電気もつけないまま黙って下を向いていた。如何すればいいか解らなくなっていたのだ。感情のまま動けば俺だけじゃない、仮面ライダーと言う存在に悪魔や堕天使。天使などのこの世界の者たちにその存在を知られる。

 

 

 

だが、動かなければ朱乃たちを見捨てることになる。

 

 

本当にそれでいいのか・・・本当に

 

 

 

「シェーラ・・・お前はどう思う。如何すればいいと思う?」

 

 

自分の右腕に意識を向ける。すると念じてもいないのに右腕は深淵と永劫の鍵((アビシャルエタニティー))の鍵の漆黒の鎧に覆われ、手の甲の眼球が俺の視線とかち合う

 

 

シェーラの瞳、深淵と永劫の鍵((アビシャルエタニティー))によって生まれたのろいの眼光が静かにその瞳を細める。

 

 

『私には答えられない。私は唯の神器(セイクリッド・ギア)、あなたの意思は私の意思。」

 

 

そうか・・・それはそうだよな。こいつはもともと神器(セイクリッド・ギア)に封印された規格外の存在。所詮は俺の決定には逆らえない

 

 

 

 

 

「すまない・・・・余計なことだったな。」

 

 

 

 

質問するだけ無駄か・・・・そう結論付けようとする蓮。だが

 

 

 

 

 

『でも・・・・・一つだけ言えることがあるわ」

 

 

 

 

言える事?・・・

 

 

 

 

意味深な答えを返してくるシェーラに神器(セイクリッド・ギア)の解除を止め、自らの内に意識を集中させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・後悔のない選択肢を。かな・・・』

 

 

 

 

何処か思慮深い、しかし単純なその答えに俺は直ぐに答えを返すことができなかった。

 

 

 

後悔の無い選択肢。それは今までの自分を振り返ってみろと言うシェーラなりのアドバイスなのだろう

 

 

 

 

そうか・・・・後悔の無い選択肢

 

 

 

 

神器(セイクリッド・ギア)に封印された私だけど後悔はしていないわ。聖書の神を恨んだ事もないし、私を旨く扱えなかった使い手たちを侮蔑したり、蔑んだりした事も無い。』

 

 

 

だって

 

 

 

『全ては貴方という使い手に出会う為の通過点だと思っているのだから』

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・通過点

 

 

 

 

シェーラの言葉が脳内で繰り返し、再生される。

 

 

 

 

そうだ・・・・・そうだった。俺は何を迷っているんだ。

 

 

 

 

俺は何のためにこの力を手に入れた?

 

 

 

殺すため?

 

 

 

 

 

破壊するため?

 

 

 

 

 

守るため?

 

 

 

 

 

違う、違う、違う。全てだ。

 

 

 

俺が愛する者、大切な者を全てを守り、それらを奪う者を滅ぼし、全てを破壊する。

 

 

 

今までもそうではないか。

 

 

 

確かに、行動に対する結果、後悔する事は沢山あった。

 

 

 

母さんは死に、手塚も死に、城戸も死んだ。大切なものを失っていった。

 

 

 

だが、今回は違う

 

 

 

行動しなければ奪われる。なら奪わせないために行動しろ。

 

 

俺から奪っていく全ての奴等から奪え。邪魔をするものには容赦をするな。どんな汚い手を使ってでも奪わせるな。奪え。

 

 

 

そうだ・・・・・何を迷っているんだ。奪われる前に奪う。殺される前に殺す。

 

 

 

今までだってそうやって来たじゃないか。

 

 

 

『どうやら・・・・・あなたの意思は決したようね』

 

 

 

 

「あぁ・・・2年間、ぬるま湯に浸かり過ぎた。奪う前に奪え。殺される前に殺せ。そういうことだ。」

 

 

 

 

 

蓮は壁に立てかけてあった漆黒のコート。朱乃が最後の別れと共に手渡した漆黒のコートを着込むとゆっくりとした足取りで店の外へと歩みだす。

 

 

 

途中店の手伝いをしていたであろう木場(勇)や総司とすれ違ったが二人とも蓮がまとう雰囲気に声をかけることができなかった。

 

 

 

 

そして、外へと続く扉を開いた蓮を3つの影が待ちかねていた。

 

 

 

 

 

「おいおい!わが友、蓮よ!ここで頼らないのはどういうことだ?」

 

 

「そうだよ。僕らの力がそんなに信用できないかい?」

 

 

白いスーツに身を通した、手にジェラルミンケースをぶら下げている剣

 

 

青と白のなタンクトップに【SMRT・BRAIN】とロゴ書きされたジュラルミンケースを床に置いているレオ

 

 

そして

 

 

 

「俺は絶対にお前を守るとある人に誓った。だからこそ、お前が闘うと言うなら俺も闘うまでだ」

 

 

オレンジ色の上着に白いTシャツ。手には赤紫色のライアのカードデッキが握られている。

 

 

 

 

 

「後悔するぞ。俺がこれから行おうとしていることは」

 

 

 

血で血を生み出す争い。殺し合いだぞ

 

 

 

そう言葉にさっきを乗せて放つ。だが

 

 

 

「だから?言っただろ蓮。俺は、いや俺たちはお前と共に戦うと。それがどんなに理不尽なものであろうとも。」

 

 

 

「同感だ。爺やが言っていた。男にはどんなに世間から攻められ非難されようとも、共に戦い抜かなければならない友が居ると」

 

 

 

「僕も元からそのつもりだしね。」

 

 

 

 

手塚はやわらかい物腰でだがはっきりと言い切った。

 

 

 

剣もレオもどちらの意志も固く、誰も引き下がろうとしなかった

 

 

 

 

『物好きがたくさんいるな』

 

 

 

…本当にな

 

 

 

思わず微笑が止まらない。これから命を奪い合う戦いに赴くと言うのに

 

 

 

 

「ならば行こうか。俺から奪おうとしている愚か者に、自分が、何を敵に回したのかを」

 

 

 

 

「「「ああっ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、勝利の美酒に浸かっていたライザーは知らない

 

 

 

自分が敵に回してしまった者の大きさを

 

 

 

そして全ての悪魔は知るだろう。この世には自分たちが知らない、強大な力を持った者がまだ居ると言うことを。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回 第11話 【守る者の為に】




さて・・・・遂に正体を明かされた蓮


今後はどうなるのか。乞うご期待
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