ループなハイスクール。二番煎じですね、はい。   作:あるく天然記念物

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前編後編でお送りします


シーン66~72

 突然の来訪者、曹操──の子孫。

 会っていきなり仲間にならないかとか、お前はどこの海賊王かとツッコミをいれたい男である。

 流石にいきなり仲間にならないかとか言われても意味が分からん。だが、これまでとは違って出会って三秒『死ぬがよい』はされなかったから、案外いい人かもしれない。とりあえず話だけは聞いておこう。

 

「おっと、俺としたことが。結論を先に言ってしまって申し訳ない。何時も仲間から注意されていたが、コカビエルを倒すなんて英雄の実物を前に、つい気持ちが高まってしまった。いやぁ、すまんすまん」

 

 いや謝罪はいいから、はよ説明しろや。なんやねん、この時間。

 なんか、初対面だが既に君のことが嫌いになりそうだよ。

 

「改めて説明させてくれ。俺は曹操。《禍の団》では英雄派と呼ばれる組織の長だ」

 

 なーんか物騒な名前が聞こえやがった。

 あんちゃん、《禍の団》って聞こえたが? マジなのか?

 俺が訪ねれば、曹操は頷いた。まーじか。

 いくら俺が周りから土地狂ったと言われまくっていようが、流石にテロリストの仲間にはなりたくねぇぞ。

 

「待て待て。《禍の団》に入っているとは言え、別にテロリズムをしているわけじゃない」

 

 なら何をしてんだよ。

 わざわざテロ組織に入ってよぉ。

 

「その前に一つ質問だ。君はこの世界が間違っていると思わないかい?」

 

 間違っているだ?

 

「そう。人間社会に蔓延る悪魔、天使、堕天使。もっと言えば神仏や魑魅魍魎ども。そのどれもは人間社会に影響を及ぼし、理不尽を押し付けてくる。嘆かわしいと思わないか?」

 

 まあ…………否定はできねぇな。現に痴女からは命を狙われまくったし、兵藤に至っては一度殺された。

 あれ? もしかして言ってることは正論なのでは?

 

「そうだろう!!」

 

 うるさ?!

 ちょっと同意したら曹操はテンションが上がったのか、大声で喋りだした。

 

「本来、ヤツらのような存在は人間社会には不要だ。その証拠に人間社会の歴史には一切出てこないだろ? 故に俺たちのように英雄の子孫や《神器》を宿し、力ある人間こそが立ち上がる必要があるのだ。弱者である人間を守るために」

 

 まあごもっともな言い分だな。それで、その力あるお前は何をするつもりなんだ?

 

「当然。彼らに勝負を挑むのさ。この世界にお前達はいらない。さっさと人間社会から出ていけ、とね。それが英雄の子孫たる俺の使命だと思っている」

 

 手始めに、と。曹操は方に担いでいた槍で、ある方向を指し示した。

 そこにはビルが一等建っていた。むろん、ただのビルではない。

 つい先程、木場ちゃん達が向かった、パーティーの開催会場だ。

 テメェ…………まさか!!

 

「君の枷を外そう。人間の君は悪魔ではなく、英雄である我々と共にあるべきだ」

 

 曹操が言った瞬間。

 ドーン!! と、ビルの近くで爆発が起こった。

 立昇っていく黒い煙。明らかなテロ行為だ。。

 おい、さっきテロリズムはしないって言ってなかった?

 

「もちろん。テロリズムは政治目的の暴力。だが、私たち英雄派の敵は人間じゃない、悪魔だ。これは聖戦だよ」

 

 …………そうか。お前の気持ちは理解したよ。

 

「分かってくれたか、同士よ!! さぁ、我々英雄と共に、悪魔を倒そうじゃないか!!」

 

 曹操が槍を下ろし、片手を差し出しながら俺の元へとやってくる。

 差し出された手を俺は────

 

「ッ?!

 

 思い切り弾いた。

 ずっと笑みを浮かべていた曹操の顔が、怒りを滲ませたなものへと変わる。

 奇遇だな、俺もだよ。

 

「どういうつもりだい?」

 

 曹操の問いかけに、俺は迷わず答える。

 どういうつもりだもクソねぇよ。自分の思いやエゴのため、他人を平気で傷つける。

 それを平然と口にできるテメェは、俺を襲ってきた痴女達と何一つ変わらねぇってことだよッ!!

 続けざまに、俺は蹴りを曹操へと叩き込んだ。

 

 俺式嵐脚ッ!!

 

 ガキンッ!! と固いもの同士がぶつかる音が響かせ、曹操が数メートル後退した。

 ちっ、槍で防ぎやがった。

 常人なら反応できない速度で蹴ったのだが、流石は悪魔と戦争をおっ始めようとした男、戦闘力はそれなりにあるようだ。

 

「やれやれ。これは少々痛い目をみないと分からないようだ」

 

 曹操は盾にしていた槍を構え直す。

 向かってくるか。

 俺はどんな攻撃でも対応できるように構えようとした─────瞬間だった。

 

「フッ!!」

 

 キュピピピピーン!!

 

 《刹那の懐中時計》によって脳裏にPlasmaが走るのと同時に、俺の胸に槍が突き刺ささった。

 

 なん………だと?

 

 曹操が再び笑みを浮かべながら槍を引き抜くと同時に、俺の意識は闇に落ちた。

 

 

享年17歳 死因 曹操によって刺殺

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン67

 

「やれやれ。これは少々痛い目をみないと分からないようだ」

 

 意識が戻ると、目の前で曹操が槍を構える場面だった。

 ちょっ、今回はここからかよっ?!

 流石の俺も予想外の事態に取り乱し、何も出来ずに死んだ。

 

 胸に槍が生えて─────って、いたたたたたたたたッ!!

 

 

享年17歳 死因 曹操によって刺殺

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン68

 

「やれやれ。これは少々痛い目をみないと分からないようだ」

 

 曹操が槍を構える。

 ここだ!!

 

 世界よ、後から来い。俺式ザ・ワールドッ!!!!

 

 世界の速度が俺に追い付けず、止まる。

 ふぅ、とりあえず初撃は避けて───ってあぶなっ!?

 既に曹操の槍は俺の胸から数センチのところまで来ていた。

 いっ、いつの間にここまで接近していたんだ。いや、そんなことよりもだ。

 俺は迷わず曹操の槍を蹴り飛ばす。どんな手品でやって来たかは知らんが、これでヤツは丸腰よ。

 本当なら追撃も入れたかったが、今の俺にはそこまでが限界だ。

 

 そして俺の速度に、世界が追い付く。

 

「なっ、槍が─────ッブ?!」

 

 停止解除後、驚く曹操の土手腹に蹴りを入れる。

 綺麗な直線を描いて吹き飛んでいった。

 たく、これに懲りたらテロなんてするんじゃねえぞ?

 どれ、伸びたヤツの顔でも拝むか。どんな間抜け面…………あれ?

 曹操が吹き飛んだ方向へと向かったが、そこには何もなかった。どういうことだ? ヤツはどこに行った?

 消えた曹操の姿を探そうとした瞬間、

 

 キュピピピピーン!!

 

 俺の脳裏にPlasmaが走る。

 この状況、まさ…………かっ!?

 気がつけば曹操の槍が胸に突き刺さっていた。

 

「やれやれ。俺は弱いんだから、隙を晒されたら仕留めるに決まってるじゃないか」

 

 何が………起こって……………ガハッ。

 槍が引き抜かれ、再び俺の意識は闇に染まった。

 

 

享年17歳 死因 曹操によって刺殺

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン69

 

「やれやれ。これは少々痛い目をみないと分からないよう─────」

 

 俺式ザ・ワールド!!!!

 そして吹き飛びなッ!! ダイナミックエントリーッ!!!!

 

 開幕と同時に時を止め、今度は無防備な土手腹に強烈な飛び蹴りを放つ。

 本当なら松岡陸上魂キャノンや、朝孔雀でも撃ち込んで再起不能にしたいが、それをすれば時が動き出すと同時に俺の身体が耐えられんし、そもそも時間も足りない。

 時が止められるのに有効活用が出来ない自分が歯がゆくなる。どこかの父親も同じ気持ちなのかもしれんな。

 話を戻そう。

 そのため、他の技より低威力になってしまうが、これが俺にできる時間停止中最大の技となる。

 ドンッ、と。曹操へ撃ち込み終わるのと同時に、制限時間を向かえた。

 

 そして世界が追い付く。

 

「────だぁああああああぁああッ!!??」

 

 先程よりも速い速度で吹き飛ぶ曹操。木々をなぎ倒しながら山奥へと沈んだ。

 しかし、ここで油断は出来ない。

 既に2回も謎の速度で負けているため、そのからくりを探るべく『刹那の懐中時計』を発動。

 

『刹那の懐中時計』!! 貴様の未来を予測する!!

 

 俺の脳裏に写し出される未来。

 ほうほう、数秒後には襲いかかってくる曹操の姿が………って、マジかよ?!

 ダメージなんか微塵も感じられない曹操が映像に写し出されていた。ついでに言えば、またしても俺は反応できないでいた。

 一体どんな速度で来てるというのだ。

 未来の映像から、俺には残り数秒しか猶予は残されていないため、有効活用すべく解析に取り組む。

 一先ず、ヤツはどれ程の速度で向かってくるのか確認するため、映像のコマ送りを行う。

 10、100いや、これでも一瞬だ。1000………おいおい、嘘だろ?!

 俺が現在できる最大限までコマ送りをしてみたが、そのどれもが一瞬で近づく曹操の姿を写し出していた。

 時間停止………いや、それだったら俺は感覚で認識できる。だとしたら、これは物理的な速さだぞ。どんな速度をしてやがる────っちぃ、ここまでか。

 能力の発動限界を向かえ、俺はせめてもの抵抗として最大限の防御技で対抗する。

 半径数メートルのバリアを展開。利き足を軸に回転を行う!!

 

 俺式回転ッ!!

 

 技を放つと同時に、バチィイイイとバリアに何かが衝突した音がなった。

 十中八九、曹操の槍だ。

 速度では負けたが、耐久勝負といこうじゃねぇか!!

 拮抗するバリアと槍。その勝負は、あっさりと迎えた。

 バリィイイインッ!! ガラスが砕け散る音と共に、俺のバリアは粉々に砕かれた。

 

 …………ハハッ、マジかよ。

 

 そしてそのままの勢いで、俺の胸に槍が深々と突き刺さった。

 

 

享年17歳 死因 曹操によって刺殺

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン70

 

「やれやれ。これは少々痛い目をみないと分からないよう─────なんだと?」

 

 曹操が困惑した声を出した。

 それもそうだろう。何しろ開幕と同時に俺は曹操とは逆の方向に走ったのだから。

 有り体に言えば、逃げた。

 バカやろう!! こんな意味の分からんヤツに構ってられるか!!

 

「このっ?! 逃げんじゃねぇよ!! それでもコカビエルを倒した英雄か!!」

 

 うるせぇっ!! こっちは必死なんだよ!!

 追いかけてくる曹操。しかし、俺も無作で逃げているわけではない。というか、マジで逃げた日にはドロッとした何かに殺されてしまう。

 故に、この逃走はDIO並みの作戦でもあるのだ。

 現状、曹操の摩訶不思議速度の謎が分からん。ついでに復活できた理由も検討がつかない。恐らくだが何度時止めをしようが、終わるのと同時に俺の命も終わってしまう。

 だからこそ、逃げることによって打開策を考える時間を捻出しているのだ。

 さーて、曹操の野郎は……うわ、普通に追って来てるわ。

 俺と曹操の距離は十数メートル。現在、その距離を保ちながら逃走を続けることができていることから、ヤツはこの山に初めて来たようだ。

 慣れていないヤツとは違い、俺は兵藤とタンニーンの三人で修行したお陰で山の地理は完璧だ。考え事しながらでも問題なく逃走を続けられる。

 さーて、この隙にヤツの摩訶不思議な速度について考えるか。

 先ずもって驚異なのは予備動作が無いことだ。

 どんな脚力で近づいているのか知らんが、常に気づいたら目の前で槍をぶっ刺して来やがる。

 数字にしたら0から一瞬で100にやるような動きだ。

 俺が言うのもあれだが、ヤツは化物か?

 だが、腑に落ちない点が1個。

 それはこの鬼ごっこの成立だ。

 そんな超スピードを持っておきながら、ヤツはどうして俺に追い付けないんだ?

 もしかして、逆か?

 出来ないのか、あるいは制限があるのか………待てよ?

 いや、そもそも超スピードでは………ない? ッ?!

 脳裏に一つの仮説が浮かぶ。

 だがあり得るのか? いいや、俺だって世界を置いていくことができた。大抵のあり得ない事こそがあり得ない。

 なら、実証してみせよう。

 俺は曲がりくねった道ではなく、平坦な道を選び走ってみる。

 すると、

 

 キュピピピピーン!!

 

 けたたましく脳裏にPlasmaが走る。

 二度は間違えない!!

 それを合図に、俺は後ろを振り替えること無く時を止めた。

 

 俺式ザ・ワールド!!!!

 

 時が止まり、急いで後ろを振り返る。すると、俺の予想通りの予想通りそこにいたのは今にも槍を突き出さんとする曹操の姿があった。

 イエスッ、思った通りだ。

 曹操のヤツは超スピードで動いている訳じゃない。

 開けた場所のみ来たことから、ヤツの視覚の範囲内でしか行動できず、更には時間停止ができる俺とは違う移動手段を持っている。

 つまり、ヤツのからくりは速度じゃない、空間だ。

 空間その物に干渉、いわゆる瞬間移動をしてやがった!!

 俺とは違いながらも0からの攻撃。避けられるわけがなかった。

 だが、タネさえ分かればこちらのもの。十二分に対処できる。

 俺は槍の間合いから離れると、敢えて曹操の目の前に立った。

 

 そして世界が追い付く。

 

「ッ?! 避けた………だと?」

 

 避けられないと思っていた曹操が驚きの声を上げた。

 それに畳み掛けるように、俺は告げる。

 分かったぜ、お前の速さの正体が!!

 

「正体? ……あぁ、瞬間移動の事か」

 

 そうだろうそうだろう。その瞬間移動、お前が隠したい気持ちは─────は? いっ、今なんて?

 

「何って、君も言ったじゃないか。しかし驚いたな、俺の瞬間移動に初見で見抜いたのはヴァーリ以来か」

 

 何でもない様子の曹操。

 ……………あのぉ、バレてるよ? いいの? ホントに大丈夫?? 強がらなくてもいいんだよ????

 

「なっ、なんで敵の君が心配するのか理解に苦しむが、別に問題ないよ。それに瞬間移動だけで倒せた相手なんて殆ど居なかった────ってぇ、急に踞ってどうした?!」

 

 …………ぐすっ。別に何でもないですよー。

 そんな隠すほどでもない能力にヤられまくった自分が恥ずかしいとか、そんなことは一切考えてませんよーだ!! 分かったか!!

 

「よく分からんが………スマン」

 

 謝るんじゃねぇよ!! 余計に悲しくなるだろうがッ!!!!

 俺は地面にしゃがみこみ、床へのの字を書きながら曹操へと吠えた。

 くそが。これだから人外魔境の世界は困るんだ。少しは陸上部員のか弱い命を考慮しやがれってンだ。

 とまあ、予想外の事態で精神的ダメージはあったが、曹操の能力の秘密に気づいたことに間違いない。

 ここはこれ以上ヤられないで済むと、逆に考えて切り替えよう。

 つーわけで、ウジウジタイム終了だ!!

 俺は勢いよく立ち上がり、曹操へと肉薄する。

 

「ッ──くるか!!」

 

 おうよ。これまでの鬱憤含めて、テメェの余裕そうな面をボコボコにしてやるよぉ!!

 

「鬱憤……君は俺から逃げてただけだろ?」

 

 カチーン!!

 切れちまったよ、俺の中の大切なにかが。

 一般的陸上部員であるこの俺に対して、ただ逃げただけだと?? ふざけんなよ、ここに至るまでどんな苦労があったか分かってンのか!!

 ループを知らないから仕方がないとは言え、テメェは俺のトラウマを思い切り踏みやがった!!

 

 覚悟しろよ、曹操!! 今、俺の怒りは有頂天に達したぞーッ!!!!!

 

「……………頂点だろ?」

 

 頂点に達したぞー!!!!!!

 

「言い直した?!」

 

 曹操のツッコミを無視しながら、俺は曹操の元へとたどり着く。

 バカめッ!! ツッコミに意識を割いたことで、貴様は我が作戦に引っ掛かったのだ。

 これまでのやり取りから、貴様が瞬間移動するには視覚的な位置情報が必要だ。だが、俺が正面から来る以上、前の景色は俺によって防がれ、左右や後ろを見ようと隙を晒せばその瞬間に時を止めて終いよ。

 故に、今の貴様は無防備な赤子同然。

 勢いそのままに、俺は右足を思い切り曹操の顔面へ向けて撃ち込む。

 勝った!! 死ねぇい、曹操─────

 

 バキンッ!!

 

 ───は??

 明らかに人体ではない、固いものを蹴った音が鳴った。

 この感触。まるで鉄の塊を蹴ったようだ。もしや曹操の野郎、武装色な覇気を身に付けていると言うのか?!

 脳内にありったけの夢をかき集めるメロディーが流れるが、よくよく見たら違うみたいだ。

 これは……壁だ。

 曹操の顔面と俺の脚の間に紙一枚程度の隙間が生まれていた。まるで見えない壁が、曹操を守ってやがる。

 これは一体どういうことだってばよ。

 曹操の能力は瞬間移動。俺と同じバリアなんて持っていなかった筈だ。

 ここは一旦………やべっ。

 次の瞬間、目の前から曹操が消えた。

 しまった。曹操の瞬間移動だ。

 俺式回転で防げない以上、槍が俺の腹に刺さるのも時間の問題となってしまった。

 最早プランD、いわゆる絶体絶命のピンチですね。

 仕方がない。ここは次へと託とするか。

 

 『刹那の懐中時計』!! 貴様の未来を予測する!!

 

 少年!! 次の世界への水先案内人はこの、新月心が引き受けた!! いいか、これは死ではない!! 俺が未来へ生きるための選択だ!!

 なーんて、どっかの乙女座ファイターの真似を心のなかでやりながら『刹那の懐中時計』を発動。俺の脳裏に未来が写し出される。

 ふむふむふむ。あー、やっぱり胸から槍が生えてますわ、俺。

 活け花と化した俺を見下ろす曹操………おや? なにやら人影が見えるぞ。

 

「やれやれ。大人しく仲間になると言えば、こうならずに済んだというのに」

「曹操、油断したのか?」

「ゲオルグか。ちっともしなかったさ。だから君が居てくれて助かったよ。君の『絶霧』が無かったらと思うとゾッとするな」

 

 マジか。

 敵は曹操一人と思っていたが、別に仲間がいたのかよ。

 曹操がゲオルグと呼んだ男。その男が俺の蹴りを防いだみたいだな。しかし『絶霧』…………聞いたことがない単語だ。ヤツ固有の能力なのか、それとも『神器』なのか。謎は沢山あるが、明確なのはヤツもどうにかしないと俺に未来は無いようだ。頭が痛くなる情報がポンポン出てきやがって。

 それから二人は俺を放置し、何処かへと消えていった。

 そこで未来の映像が終了。死体のポイ捨てに文句のひとつでも言いたいが、『刹那の懐中時計』の未来予知が終了した後は………ね。

 お察しの結末である。

 

 胸から槍、あはーん。

 

 

享年17歳 死因 曹操によって刺殺

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン71

 

 ゲオルグとやらの対処を考える必要が出てきた。

 だが悲しいことに、今の俺は目の前にいる曹操ですら持て余す状態だ。

 とりあえず命乞いでもしてみて─────おや、親方!! 空からドロッとした何かが───マジでー??

 

 

享年17歳 死因 ドロッとした何かで圧死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン72

 

 どうやら俺の人生に降伏は物理的に存在しないようだ。

 

「やれやれ。これは少々痛い目をみないと分からないよう─────ちょっ?!」

 

 はい、曹操と対面するところに戻って参りました。

 今回はループ開始と同時に思考時間の確保のため早速逃走を開始。

 後ろから『逃げるな卑怯者ぉッ!! 逃げるなーッ!!』という声が聞こえるが、俺は鬼でも上弦でも、果てには狛さんでもないので無視します。

 さーて、マジでどうすっかねー。

 正ー直ッ、瞬間移動の種が割れた曹操でさえギリギリなのに、ここにきて新たにゲオルグとやらが生えてきた。

 意味が分からねぇし、真面目にどないせぇっちゅうねん。

 難易度がルナティクより上の頭無惨と化してやがる。

 どうする~、アイ○ル~。なんて現実逃避しても状況は一向に改善しない。

 これが痴女だったら、どんなに楽だったことか。

 その証拠に、くらえ!!

 

 反転し、松岡陸上魂オーバーキャノンッ!!

 

 最近は素の状態で放てるようになったオーバーキャノン。エクスカリバーや痴女であれば一撃で葬り去るこの一撃も、

 

「ふん!!」

 

 曹操にかかればあら不義。あっさりと槍を横に振るだけで相殺されてしまった。

 これはヒ☆ド☆イ☆。

 聞こえてきた効果音を説明するならバチューンッ!! だぞ。ギャグマンガかってんだ。

 あれか? 打ち返して来なかっただけマシッてか?

 

「ようやく観念して俺と戦う────って、ちょっ、またかよっ!!」

 

 再び曹操から『逃げるんだよぉー!!』と第2部主人公の如く戦略的逃避を始めた俺。

 背中にこれでもかと曹操から「誉れを捨てるな!!」や「逃げるな!! 逃げるなッ!! バカヤローッ!!!!」といった罵倒を受けるが気にしない。

 気にしたら瞬間移動で瞬殺だ。誰がって? 俺がだよ。ついでに誉れは駒王町に捨てました。

 しかし分かってはいたが、やはり手持ちの武器で有効手段がないな。

 ノータイムで撃てる最高打点は曹操に防がれて「何の成果も、得られませんでしたぁアッ!!」と化した松岡陸上魂オーバーキャノンだけ。打点だけなら俺式八門遁甲を開けば余裕でどうにかなるだろうが、残念ながら俺式八門遁甲には溜めの時間が必要。止まったら直ぐに瞬間移動で胸から槍が生えてしまう。

 しかも、仮に瞬間移動抜きにして曹操へ攻撃できたとしても、下手な攻撃はゲオルグとやらの壁で防がれる始末だ。

 やべぇな。マジな詰みかもしれん。具体的には某魔神の「ヤバい、ちょっと勝てない」ってくらい打つ手がない。

 あれ? もしかして終わった??

 どこかのハンバーグ少年のように終わり無きループに落ちてしまった??

 不安な考えがが頭を埋め尽くしそうになったとき、フと、タンニーンさんの言葉を思い出した。

 

『心よ、お前は今まで道具に力を求めたことは無かっただろ?』

 

 あの時も、今もそうだ。

 アスリート体質の俺は、自分の力だけで物事を考えていた。

 そうだよ。俺にはいつだって頼りになる相棒が身近にいるじゃねぇか。

 しかも、加藤さんの一件からあれこれ考えるのを止めた筈じゃねぇか。

 そうだよな、相棒。

 今回ばかりは悪い。力を貸してくれ。

 俺は徐々に走るスピードを落とし、やがてその場に立ち止まった。

 数秒と経たずに、曹操が追い付く。

 

「はぁはぁはぁ。ふぅ…………ようやく観念したか。さあ、お遊びはここまでだ」

 

 あぁ、そうだな。俺もここまでにするぜ。

 俺は『刹那の懐中時計』を右手に持ち、曹操へと振り向く。

 曹操の顔は相変わらず胡散臭い笑みを浮かべていた。

 

「少し手こずったが、安心してくれ。次の瞬間には俺たちのアジトだ」

 

 槍を俺に向けて構えた曹操。

 あぁ、そうだな。

 その、次の瞬間があればな。

 俺は右手を高く掲げ、

 

「なに? 君はなにを────」

 

 曹操の言葉が終わる前に、『刹那の懐中時計』を自分の胸へと押し当てた。

 今こそ俺は、俺を信じるッ!!

 

「ッ─────」

 

 眩い光が俺の胸から放たれる。

 ちょっ、眩し?!

 そしてそのまま、俺の目の前が真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………やっと巡り会えたね……………




次回 主人公覚醒

オマケコーナー その時加藤さん
「妹様、何をしているのですか?」
「何って、お兄ちゃんのベッドで寝てるだけだけど?」
「…………全裸で、ですか?」
「なにか? ………あぁ、そこのソファーと毛布なら使用してもいいわよ。私とお兄ちゃんの部屋を綺麗に掃除したご褒美ね」
「ありがとうございます!!」
「………貴女も全裸になってるじゃないの」

今日も新月家は平和です
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