ループなハイスクール。二番煎じですね、はい。   作:あるく天然記念物

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どうにか書き上げたぜ。
駄文だが、楽しんでくれ。
それとSwitch2当てたから、再来週から暫く更新は無いよ。
次回は原作5巻か。主人公を何処に行かせるかねぇ。


シーン37~66

シーン37

 

 久々に死んだでござる。

 目覚めた場所は毎度お馴染みの自室のベッド。携帯のカレンダーを見れば三大勢力会合の一週間前。今回はここが中間地点のようだ。コカビエル戦の後でよかったぜ。

 いやー、油断してたのか、と言われたらしていたな、完全に。

 流石に三大勢力が勢揃いした会合で死ぬわけが無いじゃーん。などと、その気になっていた俺はお笑い草だったぜ。本当に何なんだろうね。

 しっかし、今回も原因が分からんな。原因が分からないと対策がとれないのにぃー。

 一先ず、今回は鍛えるのはそのままに、原因を探ることとしよう。

 陸上に精を出しながら向かえる会合日前日。

 会合場所の職員室を徹底的に調べてみた。

 天井、異常無し!!

 床、異常無し!!

 窓、異常無し!!

 扉、異常無し!!

 机等の備品、異常無し!!

 結果、怪しい場所は見つかりません!!

 会場に原因は無かったのか。えっ、マジ?

 結局対策ができないま会合当日になってしまい、俺の目の前は真っ暗になった。

 あかんやん。

 

享年17歳 死因 ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン38

 

 とりあえず原因は第三者だな。

 なんでそう判断したのかって? しょうがねぇなぁ、教えてやろうではないか。

 実は練習ついでに会場だけでなく、学園中をくまなく探したのだが、何一つ見つからなかったのだ。

 故に、俺が殺されたのは第三者に違いないと言うわけだ。

 そして、第三者からと分かれば対策も容易だ。

 会合当日。

 和平について兵藤がしょーもない事を話したりし、コカビエルの件について俺が適当に答えた辺りだ。

 ここだ!! バリア、全開ッ!!

 今まで破られる事の無かったバリアを全面に展開した。三大勢力のお偉いさんがギョッとした表情で俺の方を見てきたが、仕方ねぇだろ。しないと殺されるんだから。

 さあかかってきやがれ。来た瞬間が貴様の最後だからな!! きっちり防いで蹴り抜いてやるよぉッ!!

 

 そして、俺の目の前は真っ暗になった。

 

 うそーん。

 

享年17歳 死因 ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン39

 

 なんでや!! なんでディアベルはんを見殺しにしたんやッ!!

 失礼、こころのキバオウを押さえられなかった。

 でもな~、マジか~。これまで無敵(使う人間の耐久性は除く)のバリアがダメなのは予想外だった。

 いやね、たとえ絨毯爆撃されても頭が物理的に沸騰して死ぬけどさ、それでも誰が攻撃してきたかは分かるじゃん。まさかなにも分からずヤラれるとは思わなかったぜ。

 こうなればアレを使うしかない!!

 テッテレー!! 《刹那の懐中時計》~。

 説明しよう。《刹那の懐中時計》とは、俺が手に入れた神器なのだ!! レアリティはノーマルであるとされるが、その能力は数十秒先の未来を過程含めて予測するという代物。

 かつてレーティングゲームでどうしようもなかった時など、ここぞと言う時に役に立つ、スペシャルウェポンなのだ。

 さーて、ここからはガチで行かせてもらいますかね。

 向かえる三大勢力会合。

 会合の終わり際、俺は《刹那の懐中時計》を発動させた。

 

 《刹那の懐中時計》!! 俺は未来を予測するッ!!

 

 《刹那の懐中時計》により、脳内へ写し出される未来のヴィジョン。

 そこには能力発動ポーズを取ったまま、無防備に立つ俺が写っていた。

 そして次の瞬間、何の抵抗もなく爆散する俺姿が…………はぁ?!

 なんで無抵抗で死んでんだよ、俺!! ……いや待て、まだ少しだけ続きがあるぞ。

 爆散した俺の跡地から、ワープしてきたかのように突然一人の女性が現れた。

 胸と股部分のみを黒の衣服で隠した褐色の女。人はそれを痴女と呼ぶ。

 

 またテメェかぁああああああああッ!! またテメェだよぉおおおおおおおおッ!!

 

 能力が時間切れになると同時に、俺の怒号が会場を響かせた。

 そして俺の目の前は真っ暗になった。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン40

 

 なんで…………なんで何時も何時も俺は痴女に殺されなければならんのだッ!! 

 あれ、思い出してみたら羽が堕天使ではなく、悪魔の形をしてるなぁ。なぁんだ、いつもと違うのかぁ────じゃねぇんだよっ!! どうなってんだ、説明しろ、大和田ァァァァアッ!!!!!!!!

 …………ふぅ、スッとしたぜ。イライラがたまった時は意味もなく叫ぶのが一番効率的だ。

 しっかしまぁ、俺の人生において痴女は飽きないねぇ。命狙ってくる存在の大半が痴女だぞ。少しはコカビエルや変態神父を見習えって感じだ。………いや、そもそも命を狙ってくんなこのバカちんが。

 さて、いい加減状況を整理しよう。痴女による犯行だと判明したのだが、今回の状況は非常によろしくない。

 何しろ前々回、バリアで防ごうとした俺が無防備で立っていた理由について皆目検討がつかないのだ。

 催眠や超スピードでヤられた? いやいや、そんな瞬間など無かった筈だ。そもそも超スピードや気づかれずに催眠ができるのなら、俺ではなくて三大勢力のお偉いさんを爆破させるだろ。俺なんて爆破させてもメリット無いし。

 まあ、相手が単に自己顕示のために俺を爆破させるというしょーもない理由ならあり得なくもないが、流石に三大勢力が集まる会合でそんなアホな事をするヤツなんていないだろ……………マジでいないよな? いないと信じたいけど、相手が痴女だからなぁ~。俺にとって痴女とは、女版兵藤だからなぁー。思考回路は読めねぇんだよなぁ~。

 

『…………ん?』

『どうしたんですか、イッセーさん?』

『いや、なんか失礼な事を言われた気がしたんだよなぁ』

 

 気のせいでは無いぞ。

 ん? 俺は何を言っているんだ? んー………まあどうでもいいか。

 さて、俺のバリアを完全無効化できた理由について探るとするか。

 ここは一つ、作戦αβγで行くとするか。

 

 作戦α 立ち位置の変更

 

 そもそも、立っていた場所が悪いのかもしれない。

 たまたまあの痴女が出てくる位置に俺が居たのが悪いのかもしれないからな。

 つー訳で、

 

「…………何してるの、君」

 

 気にするな。ちょっと痴女から隠れてるだけだ。

 会合当日、俺は木場ちゃんとゼノヴィアから睨まれながらヴァーリちゃんの後ろに隠れていた。

 ちなみにヴァーリちゃんからは呆れられた視線を受けてるぜ!! めっちゃ悲しい!!

 でも仕方ないじゃん。痴女が悪魔って分かったし、最悪ヤツの狙いがサーゼクスさんの可能性が捨てきれないんだもん。

 何しろ前回俺が立っていたのはサーゼクスさんの近くなのだ。間違って攻撃された可能性もあるため、今回はアザゼルさんとヴァーリちゃんの近くに居させてもらうぜ!!

 

 結果 突然俺の目の前は真っ暗になった。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン41

 

 はい、敵の狙いは俺みたいですね!! 本当にありがとうございましたッ!!!!

 次だ次ッ!!!!!!

 

 作戦β 会合に行かない。

 

 もうね、行かなくていいんじゃね?

 だってさぁ、三大勢力会合とか言いながら、人間は居ないわけじゃん? だったら俺が行く意味なくね?

 さーて、溜まってた漫画でも読もうかな────ん? 何やら天井からドロッとした物が─────あかーん!!!!

 

 

享年17歳 死因 ドロッとした何かに飲み込まれて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン42

 

 わ す れ て た 。

 基本的に俺の人生において逃走は許されていなかったのを忘れてたわ。

 うぅ………またあの恐怖を味わうことになるとは。

 未だに身体の震えが止まらないが、気を取り直して次の作戦に取り組むとしよう。

 

 作戦γ くらえDIOッ!!

 

 こうなったら、何がなんでも痴女の手口を暴いてやる。

 会合の始まる一時間前には現地入りし、入念に検査。

 前と同じで、何一つ見つからなかった。やはり会場そのものに仕掛けはないことを改めて確認。

 よし、前提条件は大丈夫だな。

 そして何事もなく始まる会合。

 ここだッ!! 見ててくださいよ、ジョースターさん。ヤツ(痴女)の爆破の秘密をッ!!

 会合の終盤になると同時に、バリアを会場全体を囲うように展開!!

 さぁ来るがいい、痴女!! 会場を中心に半径20mのバリアだッ!! 俺の脳みそは今にも沸騰しそうだが、貴様の動きは手に取るように分かるぞッ!!!!

 バリアの展開時間は残り数分。これまでの経験から、爆破は数秒後と分かっている。つまり、バリアの酷使で死ぬことはない!!

 喰らえ(?!)痴女ッ!! 半径20m、広範囲バリアをッ!!

 

 結果 俺の目の前は真っ暗になった。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン43

 

 なっ……何が起こったのだ。

 俺はヤられたのか? んなバカな。バリアを広範囲に展開していたんだ。例え転移魔法だろうと会場に入ってこれる訳がない。にもかかわらず、今回も俺を爆破してきた。

 何か……………何がおかしい。これまでの経験から、明らかに今回は異常性だけが突出してやがる。

 一体どういう事なんだ。

 

 この時、珍しく心の頭には陸上の情熱だけでなく、痴女や世の理不尽、兵藤への呆れよりも奇妙な疑問だけが強くこびりついていた。

 

 どうして俺はヤられる時に毎回意識が無いんだ。

 それも毎回、バリアを展開しているのにも関わらず。

 まるで俺がリスペクトするどこぞの奇妙な冒険と同じように、催眠だとか超スピードだとか、そんなちゃちなものじゃない。もっと恐ろしい何かを味わった気分だ。

 それこそ時を止められ……た………ような────────ッ!!!

 

 瞬間、俺の脳裏をPlasmaが撃ち抜いた。

 

 そうか…………そう言うことなんだな、花京院ッ!!

 痴女ごときには不相応の能力。だが、それしかこれまでの事に説明がつかない。

 痴女め、時を…………時を止めて来やがったッ!!!!

 何と言うことだ。マジで対策の取りようが無いぞ。

 今の俺なんて、ミカエルさんからスパイクを没収されたから、ただの陸上部員だと言うのに。

 

「「「「「「それはないっ!!」」」」」」

 

 なんか、スゴい多方面から否定的な思念が飛んできた気がするが、気のせいだろう。

 でも、どうするか。現状、逃げるのがアウトってことは、この一週間でどうにかしなければならないと言うことだ。

 難易度高くね? ベリーハード超えてルナティックじゃね? だって、一般人にDIO様と互角に闘えって言うようなもんだぞ。辛うじて俺はモンキーではないが、それに毛が生えた程度に過ぎない。

 しかし、それでも時止めという途方もない壁を超えなければ、俺に明日など無い。

 出来る出来ないの話ではない。やるしかねぇのだ。

 なんとしてでも、この無限に繰り返す一週間で、時止めの世界へ辿り着かなければならない。

 その第一ステップとして、どこぞの高校生と同じように俺も時の世界に入門するのからスタートするか。

 かつてのモンキーだって、文明という道の世界へ足を踏み入れたからこそ、霊長類の頂点へと辿り着いたのだ。

 なぁに、同じだけの時間はあるのだ。必ず辿り着ける。

 それに俺はモンキーと違い、アドバンテージがある。それは時を止めたという事実の認識と、《刹那の懐中時計》による未来予知という時間の概念が身近にあるということだ。

 そうとなれば、早速《刹那の懐中時計》を改めて調べてみるとしよう。

 ほほーん。未来を見れる時間の限界値はあまり変化はない………なら、見せてくるヴィジョンに対して停止して見ることは出来る………あっ、無理そう。

 

 一週間、《刹那の懐中時計》を弄ってみたが、特に進展は無かったとさ。

 まあ、最初はこんなもんだよ……うん。次行こ。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン44

 

 今回も《刹那の懐中時計》を弄り回す。

 ヴィジョンに対して、こちらからアクションはできる筈だ。現に、俺は過程を含めた未来予知が出来るようになったのだ。

 だから、ビデオ再生のように扱える筈なのだ。

 

 一週間後、どうにか《刹那の懐中時計》のヴィジョンに対してスキップ再生が出来るようになった。

 着実に進歩している。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン45

 

 《刹那の懐中時計》のヴィジョンに対して、早送りが出来るようになった。

 それと、少しづつであるが未来予知が出来る時間が伸びてきた。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン46

 

 ヴィジョンに対して進歩はしなかった。

 諦めず、次に託すとする。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン47

 

 またダメだった。

 諦めず、次に行く。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン48

 

 そろそろ会合で目の前が真っ暗になるのにも慣れてきた。

 しかし、ヴィジョンに対しては何も進展しなかった。

 すこし、心が折れそうになった。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン49

 

 何も進まない。

 どうしてだよ。過程を見るのは秒でできたじゃねぇかっ!!  なんでそれ以外が上手くできねぇんだよっ!! まだ超えるべきポイントは山のようにあるのにっ!!

 こんなところで、躓いている暇なんて無いのに!!

 

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン50

 

 久々に陸上と鍛練をサボった。

 楽しかった。

 楽しすぎて、最終日まで遊び呆けていたらドロッとした何かに飲み込まれた。

 

 

享年17歳 死因 ドロッとした何かに飲み込まれて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン51

 

 怖い思いをした。

 でも、なんでかやる気が出ない。

 なんか、無理だと思い始めてきた。

 でも、ドロッとした何かに飲み込まれるのは怖いから、会合には参加した。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン52

 

 《刹那の懐中時計》を弄った。だけど、なにも進歩しないから、壁に投げつけてしまった。

 なんか、いろんな事がどうでもよくなってきた。

 でも、ドロッとした何かは怖いから会合には行く。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン53

 

 ドロッとした何かは本当に怖いから会合には行った。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン54

 

 なんでやる気が出ないのか、気づいた。

 気づいてしまった。

 これまでの人生、一度も味わったことの無いモノだった。

 そうか、これが………………挫折なのか。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン55

 

 やはり、プロという集団はスゴい。

 初めての挫折で、俺は心が完全に折れかかっている。

 でも、テレビの中のプロたちは誰もが立ち上がれていた。

 でも、俺はそれができていない。

 こんなに不甲斐ないのに、なんでか心の修造さんは何も話しかけてくれなかった。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン56

 

 俺は………あと何回、爆発すればいいのだろうか。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン57

 

 何でだろう。イライラが止まらない。

 走っても、叫んでも、物に当たっても収まる事がない。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン58

 

 俺はヒドいヤツだ。

 イライラして学校の窓を割ってしまった。

 クラスが騒然となる中、木場ちゃんが心配してくれたのだが暴言を吐いてしまった。

 次には木場ちゃんは忘れているから気にしなくてもいいのに、どうしてか後悔と心の痛みが消えない。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン59

 

 今度はゼノヴィアに心配させてしまった。

 放っておいてくれ。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン60

 

 ヴァーリちゃん、お前もかよ。

 ヴァーリちゃんだけでなく、アルビオンさんにまで心配されてしまった。

 何なんだよ、お前ら。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン61

 

 学校に行くのを止めた。

 もう、誰からも心配されたくない。

 だから三人とも、俺の家のチャイムは鳴らさないでくれ。

 そして妹よ、兄のベッドに潜り込むな。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン62

 

 頼む。放っておいてくれ。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン63

 

 いい加減にしてくれ。

 

 

享年17歳 死因 痴女により爆死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン64

 

 いい加減にしろよ!! お前ら、俺より弱いくせに、一丁前に人を心配するんじゃねぇよ!!

 んだよ、ヴァーリちゃん。何か言いたいのかよ。

 あ? 木場ちゃんとゼノヴィアは鬱陶しかったからボコボコにしてやったんだよ。お前もイライラさせんなら、ボコボコにしてやんよ!!

 

 

享年17歳 死因 ヴァーリちゃんにより圧殺

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン65

 

 はっ!! ご自慢の羽だろうが、俺にかかれば羽虫同然だぞ。

 《刹那の懐中時計》!! 貴様の未来を予測する!!

 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄っ!!

 どんな攻撃してこようが、お前に俺は倒せねぇよ。

 んだよ、その余裕。禁手があるから何だって?

 だから無駄だって。んなもん使ったところで、お前の攻撃なんか俺には当たらねぇよ。そら、禁手を使えよ。どうせ無駄だからなァッ!!

 

 すこしは………………やるじゃねぇか。

 

 

享年17歳 ヴァーリちゃんにより滅殺

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン66

 

 《刹那の懐中時計》ッ!!!! テメェの何もかもを予測する!!

 禁手だろうが何だろうが、俺には届かねぇんだよっ!!

 

 はぁ…………はぁ…………だから、お前じゃ俺には勝てねぇって言っただろうが。

 何度空間を圧縮しようが、何度力を半減しようが、お前には足りないものがあるんだよ。

 あ? んなもんも分からねぇのかよ。

 お前も、木場ちゃんも、ゼノヴィアも足りねぇんだよ。

 それは? それはなぁ────情熱、思想、理想、頭脳、気品さ、優雅さ、勤勉さ、速さ、そして何よりも────陸上魂が足りないッ!!!!

 はぁ? 何お前ら全員笑ってんだよ。何時もの俺に戻って良かっただ? 俺らしいって何だよ、俺らしいって。何ワケわかんないこと言ってんだか。

 あーぁ、馬鹿馬鹿しい………ハイハイ、学校にはちゃんと行くから心配すんなって。

 

 でも、俺らしい………か。

 何でだろう。イライラと心の痛みが収まっていた。

 なにか、掴める気がした。

 

 ……しばらくお待ちください……

 

 後日、俺は何も考えずに走った。

 息が上がっても、脚が折れそうになっても、喉が裂けてしまいそうでも、どこまでも走った。

 まるで風にでもなったかのように、颯爽と走る。

 自由だ。

 苛立ちや不甲斐なさ、不安。あらゆる感情から開放された気分だ。

 あぁ、そうだった。

 なんで俺は忘れていたのだろうか。

 初めから、俺は器用な人間じゃなかった。

 俺に出来ることなんて、走ることと蹴ることだけだ。それがいつの間にか、魔力やら未来予知やら、果てには時止めなんて考えるようになっていた。

 目先の出来事に、振り回されてしまった。相手ができるなら俺も出来る、と

 どうやら烏滸がましいのは、俺の方だったようだ。

 元々土俵が違う? 当然だ。何だって俺は──────

 

「新月心、陸上選手だ」

 

 頭に声が響いた。

 

『そうだ!! 崖っぷちありがとう。最高だ!!』

 

 修造さん!!

 それは久々に聞いた、修造さんの声だった。

 修造さんは俺を励ますように、言葉を続けてくれた。

 

『過去のことを思っちゃダメだよ。何であんなことしたんだろ……… って、怒りに変わってくるから。未来のことも思っちゃダメ。大丈夫かな、あはぁ~ん。不安になってくるでしょ? ならば、一所懸命、一つの所に命を懸ける!!! そうだ!! 今ここを生きていけば、みんなイキイキするぞ!!』

 

 修造さん…………ハイ!! 俺、陸上一つに命を懸けます!!

 俺は来た道を戻り、駒王学園へと戻った。

 どこまで走ったかは分からなかった。帰り道も、どれだけあるのか知らなかった。

 でも、走り抜けれる自信はあった。

 加速しろ、俺…………どこまでも、どこまでも……誰よりも先へッ!!!!

 風を超え、音を超え、それでも尚、俺の脚は加速を続けた。

 そうして一生懸命走った俺は、新たなステージに到達した。

 

 俺は…………世界を縮めてしまった。

 

………はいはーい、時間が進みま『ザ・ワールドッ!!!!!!』………っ?! 何が起きた?!…………

 

 三大勢力会合当日。

 俺の心は凪いでいた。

 緊張もなく、不安もない。ただひたすらに静かだった。

 

「さて、コカビエルの件で迷惑をかけちまった心君、君は和平についてどう思う?」

 

 堕天使側のトップ、アザゼルさんから質問が投げ掛けられた。

 和平について……か。前までは痴女がどうこうとか、アルプスで静かに暮らしたいとか、思うことは沢山あったな。

 でも、今の答えは違う。

 そして自信をもって、答えることが出来る。

 

 俺は────走るだけだ。

 

「「「はっ、走る?」」」

 

 俺の言葉に、三大勢力のトップ全員が疑問符を浮かべた。

 でも、実際にそうなのだ。

 俺は走るだけだ。どこまでもどこまでも。この命が尽きるときまで、走りたい。ゴールに向かって走り抜けるだけだ。それ以外に望むことは無いよ。

 

「「「「「「??」」」」」」

 

 トップの三人どころか、ある三人を除いて全員が意味が分からない、といった表情を浮かべた。

 そして、除かれた三人は、俺の方を見て笑っていた。

 木場ちゃん、ゼノヴィア、ヴァーリちゃんの陸上部員三人だ。

 

「ははっ、相変わらず陸上バカだね、心君は…………でも、君らしいね」

「あぁ。それでこそ、私が子作りしたいと思う男だ」

「やっぱりキミはスゴいよ。それでこそ、挑み概があるってものだね」

 

 何とでも言えよ。ただの陸上バカ、それが俺だからな。

 つーか、ゼノヴィア。お前はこんな場所でなーに言ってんだ?

 俺の発言以上にヤバい発言をしたゼノヴィアを呆れた顔して見るが、当の本人は平然とした様子だった。

 何をどうすれば俺との子作りになるんだよ。は? 悪魔になった時から女としての幸せを追うことにした? 強い人間と子を成したい? ほほーん。そうね、できるといいな。否定はしないが、俺に追い付けたらな。

 

「本当だな?! 約束だからな!!」

 

 おう、分かった。分かったから離れろ。発言含めて時と場所をお前は考えんしゃい。

 んで、木場ちゃんとヴァーリちゃんはなんで俺の方を睨んでんだよ。

 

「…………別に。なんでもないよーだ」

「私も。でも、君もいけずだね。私とあんなに激しくやり合ったのに、他の女に目移りするなんて」

 

 なんかトゲのある言い方~。

 いやさ、ゼノヴィアの子作りって、多分あれだぜ? 小さい子が『パパと結婚するー』って言うのと同じだぞ。

 

「ほぉ、俺はヴァーリからそんなことを言われなかったがなぁ?」

 

 知るかよ!!

 つか、なんでアザゼルさんが俺を親の敵の如く睨んでくるんだよ!!

 あのな、ヴァーリの言ったことはな、そっち方面じゃなくてバトルの方だからな!! 殺し合いの方だからな!!

 

「…………嘘は言ってねぇな。だがな、もしヴァーリに手を出してみろ。堕天使の総力をもって、貴様を消してやろう」

「アザゼルのオッサン、俺も手伝うぜ」

「おう。その時は頼んだぜ、赤龍帝」

「オッス!!」

 

 はぁ…………どいつもコイツも馬鹿ばっかり。つか兵藤、そんな風に思ってんなら変わってやろうか? 赤と白の闘いは宿命なんだろ? 俺が二人の邪魔するヤツは全員蹴り倒してやるから安心してヤリ合えるぞ?

 それこそ、次の代が決まるその時までな。

 

「…………えっ、遠慮しときまーす」

『………はぁ。新月よ、宿主が世話をかけてすまんな』

 

 ドライグさん、別に気にしないでください。ただのじゃれ合いなんで。兵藤の事はいろんな意味で理解してますんで……いやホントに。

 そんなこんなで、会合は脱線したりしつつも、着実に和平に向けて結論を纏めていった。

 最後にアザゼルさんが「神がいなくても、世界は回る」と名言を残し、続く兵藤たちへの質問で会議が締め括られそうになる。

 それは俺にとっての合図でもあった。

 ついに…………か。

 そしてその時が訪れた。

 俺の視界が真っ暗になる瞬間が。

 

 …………だが、今回は違った。

 

 なるほど、世界の時が止まるのではなく、俺の身体の時間が止まっていたんだな。

 これまでは何の感覚もなく、突然に意識を無くした俺だったが、今回は意識を失うこと無く現状を把握できていた。

 指一つ動かない。目も動かせないが、見える範囲では三大勢力のトップや付き人たち、それからグレモリー先輩、木場ちゃん、ゼノヴィア、ヴァーリちゃんの4人が問題なく動ける様子が確認できた。

 なるほど………動けなくさせる対象には何かしらの制限があるみたいだな。

 さて、もう少し状況を整理したいが………時間だな。

 俺の足元から突然、光が溢れだした。何回目だったか、《刹那の懐中時計》で見た魔方陣だ。この魔方陣が展開されると同時に、俺は爆発四散してしまい、その跡地から痴女が登場する。

 無論、このままなにもしなければ今回も同じ結果になるだろう。

 なにもしなければ………な。

 魔方陣が完成しそうになる瞬間、俺は“加速”した。

 

《俺式ザ・ワールドッ!! 俺よ、世界を超えろッ!!!!》

 

 ピキ────ンッ!!

 瞬間、世界からあらゆるものが停止した。

 ほんの一瞬、それこそ瞬きが数回出来る程度の極短時間。

 だが、その時間だけは何人足りとも、俺を捉えることは叶わない。

 俺は数歩だけ歩き、魔方陣から離れる。そして振り向きながらバリアを展開した。

 今はここが限界だ。

 

 そして……世界が追い付く。

 

 あらゆるものが、俺の速さに追い付き、動き始めた。

 当然、

 

 ドカーンッ!!!!!!!

 

 俺を吹き飛ばす筈だった爆発も発生した。

 これまでの違いとしては、

 

「─────なっ?!」

 

 よぉ、始めましてだな

 

 元凶とようやく対面できた事だ。

 殺したと思っていたのだろう。痴女の顔は驚愕に染まっていた。

 それも仕方がないか。実際、これまで何回も何回も爆発四散していたからな。ある意味で、すこしだけは気持ちが分かるぞ。

 

「こっ、この下等生物───ギャハッ?!」

 

 分かるだけで、理解はしたくねぇがな。

 痴女が何かを喋る前に、俺は顔面へ向けて蹴りを入れた。

 どうやら、一度動ければ問題なく動けるようだ。

 素直に助かった。あの技は、本家以上ににインターバルが必要だからな。

 しかし、どこぞのコックには申し訳ないことをしてるな。すまねぇ。だが、俺はヤる時は例え女でも容赦できねぇんだ。

 

「嘘?!」

 

 痴女を蹴り飛ばした俺を見て、誰かが叫んだ。

 あれは確か、生徒会長のお姉さんだっけ。

 そのお姉さんの驚きに続くように、三大勢力のトップたちが痴女について話し始めた。

 

「あれは、先代レヴィアタンの血を引く者。カテレア・レヴィアタンだったな。しかし、心君といい、これはどういうことだ?」

「カテレアについては《禍の団》絡みだな。どうやら旧魔王組も参加してるってことか。しかし、ヴァーリを誑かすだけの野郎と思っていたが、案外やるじゃねぇか。あの小僧、俺たちが認識するより速く動いていたぞ。それも一瞬だ。どんなカラクリだ?」

 

 アザゼルさんが先程とは打って変わってキラキラした目で俺を見てきた。

 別に複雑なことじゃないし、説明してもいい。俺もアザゼルさんが言ってた《禍の団》って単語が凄く気になる………が、それはこの痴女を完膚なきまでに蹴り抜いてた後だな。

 

「き………貴様ァッ!!」

 

 少しよろめきながら、痴女は立ち上がり、俺を睨んできた。 

 怒り、侮蔑、その他諸々の悪感情を混ぜ混んだ表情だ。

 おいおい、たった一度でそんなにキレんなよ。つーか、テメェは知らねぇと思うがな、キレたいのは俺の方だよ。

 だが、不公平なのは俺のスポーツマンシップに反する。そら、かかってこいよ。テメェと同じ条件で、俺は勝負を挑ませて貰おう。

 

「ッ??!! 下等な人間風情が……同じ条件で、だと? いいだろう。その嘗めきった態度を冥府野底まで後悔するがいいッ!!!!」

 

 啖呵を切った痴女は懐から小瓶を一つ取り出した。なにやら黒い物体が蠢いている。

 うわっ、気持悪!!

 普通に声が漏れた。

 でも、マジで気持ち悪い物体なのだ。そんな物体を痴女は気にする様子もなく飲み込んだ。

 瞬間、痴女の取り巻く空気が数段重いモノへと変貌した。

 

「ありゃ、オーフィスの蛇か。くそっ、トップに居るって噂は本当だったか」

 

 知っているのか、雷電!!

 雷電ではなく、事情を知っていたアザゼルさんが痴女が飲み込んだモノの正体を教えてくれた。

 ほうほう、なるほど。《禍の団》のトップであるオーフィスってドラゴンの分体ね。んで、それを飲み込んだらパワーアップできると。んで、使う人間次第で魔王クラスにワープ進化すると。

 なるほどなるほど。つまりドーピング剤という事か。何という事だ。あの痴女、スポーツマンシップの欠片もない事しやがって。もう許さねぇぞ。

 そんな痴女はパワーアップが完了したようだ。

 

「消えろッ!!!!」

 

 手を突きだし、攻撃をしようとしてきた。

 中々のスピードだ。木場ちゃんやゼノヴィアでは反応も出来ないだろう。

 だが、今の俺には────遅すぎた。

 止まって見えるぜ。落ちろカトンボッ!!

 俺は一瞬で痴女の元へとたどり着き、先程よりも力を込めた一撃を放つ。

 コイツは挨拶代わりだ!!

 受けるがいい、どこぞの大航海世界において極限まで肉体を鍛え上げた者のみが習得できる技の一端をっ!!

 脚を超高速で痴女目掛けて振り抜く!!

 

 嵐脚ッ!!!!

 

 バキーンッ!!!!

 空間が裂けるような音を響かせ、痴女が校庭の方へ衝撃波と共に吹き飛ばされる。

 俺も後を追って校庭へと降り立つ。

 

「き………貴様ァッ……」

 

 ほぉ、ドーピングは伊達では無いようだ。

 これまでの痴女やコカビエルであれば致命傷レベルの攻撃をしたつもりだったが、痴女は息が荒いが傷はあまり無かった。

 それどころか、元気ピンピンといった様子だ。

 ついでに癪に触ったのか、マジで俺を殺す気なのだろう。一言も話すこと無く、先程俺に潰された攻撃を仕掛けてきた。

 カッ!! ズドドドドドドドッ!!!!

 重機械の掘削機を彷彿させる音を響かせ、コカビエルのオッサンが放った光の矢が児戯に思える魔力弾が数十発と放たれた。

 コイツは、少しギアを上げるとするか。

 俺は爪先で軽く地面へ数回叩き、走る準備を整える。

 コカビエルの時であれば、スパイクが無ければ出来なかった芸当。だが、迷いを捨てた今の俺には関係ない。

 今こそ俺は、自分の限界を更に超える!!

 

 ウォオオオオオオオオオッ!! 

 

 魔力を汲まなく、淀み、ムラなく述転させていく。

 全身の血流だけでなく、神経1本1本を意識し、心臓と魔力のトルクを上げていく。

 一歩でも間違えたら穴という穴から血と魔力を噴き出しかねない危ない作業。しかし、それをやりとげることが出来れば、

 

 カッ!!

 

 俺の肉体は、俺の速度に耐える事が可能となるっ!!

 

 俺式八門遁甲────景門、解ッ!!

 

 全身が薄く魔力の色、俺の場合は黄色と血の色である赤色が混ざったオレンジ色に輝く。

 

「なっ……そんな虚仮威しがッ!!」

 

 虚仮威しかどうか、試してみるか?

 俺は少しだけ腰を落とし、嘗ての対乱撃用の超奥義を今の状態で強化し、撃ち込む!!

 

 ウォオオオオオオオオオッ!! せいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいせいセイヤァアッ!!

 

 俺の脚があまりの速度による摩擦で発火を通り越して発電へと至る。その脚から放たれた衝撃波が次々と雷の弾と化して痴女の魔力弾へと向かっていく。

 これぞ努力の天才が扱う奥義の一つ!!

 

 俺式、朝孔雀改め──黄龍鱗ッ!!

 

 俺の魔力の影響から黄色のエフェクトかつ炎ではなく雷を纏うため、この名前にさせて貰ったよ、ガイ先生。

 そんは黄龍鱗は全て寸分の狂いなく、痴女の魔力弾と衝突。

 ズドドドドドドドッ!!!!

 ズガガガガガガガッ!!!!

 両者共に轟音を出しながら相殺していき、

 

「なっ?!」

 

 痴女が驚愕に満ちた声を上げると共に、全て相殺された。

 痴女は現状を受け止めきれていないのか、少しだけ思考が停止していた。

 仕掛けるならここだ!! 行くぞッ!!

 俺は一気に加速し、痴女へ攻撃を仕掛ける。

 

 痴女よ、陸上に必要なモノを知っているか?

 

 痴女が俺に気付き、防御を固める前にその顎を蹴り抜く。

 高く舞い上がる痴女。その痴女へ追撃を仕掛けるべく、俺は空気を蹴りながら上空へと向かう。

 

 陸上に必要なモノ、それは努力。

 そしてこれがッ!!

 

 痴女の元へと向かう俺の全身がオレンジ色の閃光と化した。

 

 俺のッ!!

 

 最早第三者の目からは線となる速度で、痴女へ向けて技を仕掛けるッ!!!!

 

 努力の結果だッ!!!!

 

 ギュドドドドドドドドドッ!!!!

 それは一種のビームだった。

 いや、俺自身がビームとなったような速度で何度も何度も痴女を蹴り抜いていく。

 その速度と威力が尋常では無いため、痴女の身体が拘束されたかのように空中に縫い付けられる。

 最後に止めと、俺は痴女諸共に真上から一気に急降下したッ!!

 

 俺式究極────裏蓮華ッ!!!!

 

 ズド─────ンッ!!!!!!!!!!!

 校庭に痴女を叩きつけるように落下したため、校庭の中心に巨大なクレーターが出来てしまった。

 その中心にはミンチとはいかないが、ボロ雑巾の方がキレイと言える姿になった痴女が横たわっていた。

 俺の………努力の勝ちだ。

 さて、ここで勝利に酔って気持ちよく帰りたいところだが、どうらやそうもいかないらしい。

 クレーターの底から空を見ると黒いローブを着込んだ人間が無数にいた。その全員が魔法陣を全面に展開している。

 それも俺に向けて。

 上等だ。第2ラウンドといこうじゃねぇか。

 

「ちょっと、一人だけ美味しい思いはダメじゃない?」

「そうだぞ。私達も陸上部員だろう、心」

「ここはリレーでいかない、心君?」

 

 お前ら、揃いも揃って。

 ヴァーリちゃん、ゼノヴィア、最後に木場ちゃんがクレーターの縁から俺に手を指し伸ばしながらやってきた。

 たく、お人好しなヤツらめ。いいぜ、ちょうど4人。400mと洒落こもうじゃねぇか!!

 木場ちゃんの腕を取り、俺はクレーターの外に出る。

 三人に対し、俺は軽く頷きを返し、黒いローブのヤツらへ視線を戻す。

 そろそろ攻撃をしてきそうだ。

 んじゃ、よーい…………ドンッ!!!!

 俺の合図と共に、俺たち4人はローブの野郎達へ向かった。

 そーら、滅殺ッ!!!!

 開幕一番、俺が再び黄龍鱗や松岡陸上魂オーバーキャノンで吹き飛ばす。

 やっぱり一発目は派手にいかねぇとな!!

 

「心君程じゃないけど、僕も《騎士》らしくスピードで仕掛けるよ!!」

 

 木場ちゃんが高速で敵を次々に切り裂いていく。

 これまでの練習の成果もあり、ローブの連中は誰も反応できずにいた。

 相変わらず、素晴らしいトモだ。

 

「ウォオオオオオオオオオッ」

 

 おまえはゴリラか。

 ゼノヴィアがデュランダルでビームを乱発し広域殲滅を行っていた。

 いや、お前剣士である意味ー。

 あれか? マッシュの騎士曰く「騎士とは戦場で聖剣振るのが仕事です」と言っていたのは事実なのか?

 

「さて、残りは私が美味しくいただくね。アルビオン」

『あぁ。Vanising Dragon Balance breaker!!』

 

 ヴァーリちゃんは全身に白い鎧を纏い、敵を殲滅していく。

 やはり三人の中ではヴァーリちゃんが一つどころか二つも三つも突出していた。

 ドドドドドッ!!!! といった様子で魔力弾、圧縮、そして敵からのパワー吸収と無駄の無い攻撃の数々。

 …………やさぐれていたとは言え、俺はアレにどうやって勝ったのだろうか。

 まあ、そんな敵からしたら悪夢のような蹂躙を数分していたら、ローブの連中は一人残らず再起不能となった。

 死屍累々の山が出来上がってる。

 さーて、クレーターもあるし片付けでもしますかね~。

 木場ちゃん、縛るヤツある?  あるね、それくれ。

 たらりたったら~。引っ越し道具を縛る紐~。さーて、縛っちゃおうね~。

 雑にローブの連中を縛ったては地面へと放り投げていく。全体の8割ぐらい片付けが終わったところで、兵藤達がやってきた。

 もれなく全員がこの惨状にギョッとした表情を浮かべた。

 なんか見ない顔が一人いたが、前に兵藤から聞いたギャスパーとやらだな。挨拶をしたいが、今は手を止めるのはよろしくない。

 おう、驚いているところ悪いが手が空いてるなら手伝ってくれ。それと君はギャスパー君だね。兵藤から話を聞いていたが、陸上に興味は………そう、無いのね。まあ無理強いはしねぇよ。あ? なんで能力の影響を受けないのか、だって? どゆこと?

 なんか兵藤が事情を知ってそうな顔をしていたため話を聞く。

 ほほーん。つまり時間停止の原因はあの痴女ではなく、このギャスパーが持つ《神器》がローブの連中に暴走させられた結果なのか。んで、能力は視界の対象の時間停止ね。なるほど、そうだッたのか…………そうかぁ。

 何でだろう、虚しさが心を支配しかけた。

 だってさぁ、これって俺が世界を超える必要は無かったて話だろ? それなのに一人で盛り上がって、挫折して、覚醒って………舞い上がっちゃてたなぁ…。

 あ? なんで停止能力が効かなかったのかだって、アレだよ。俺が時を止めたってヤツさ。

 

「「「「「「「「は?」」」」」」」」

 

 俺の説明に、全員が聞き返してきた。

 いや、だから効かなかった訳じゃない。適応したんだよ。停止した後、俺が時を止め返した。そして脱出できたって訳。簡単だろ?

 

「「「「「「「「はぁああああああああっ??!!」」」」」」」」

 

 うるさっ?!

 校庭中に俺を除いた叫び声が響き渡った。

 つか、敵の時間を止める《神器》があるんだから、一個人の陸上選手が時を止めても可笑しくないだろ? 可笑しい? ふーむ………確かにな!!

 否定できなかった。

 それからアザゼルさん筆頭にあれやこれや問い詰められていたら──。

 一人の三国志に出てきそうな格好をした男がやってきた。

 男は此方に向けて手を上げてきた。

 

「よぉ、迎えにきたぜぃ…………って、うあーめっちゃめちゃじゃねぇかよぉ」

 

 えっと……どちら様?

 俺だけでなく、全員が訝しげな表情で男を見つめた。痴女やローブの連中の事もあり、全員に緊張が少しだけ走る。

 男は余程の自信か、もしくは状況が理解できていないのか飄々した態度を崩さない。

 一応聞いておく…………ヤル気か?

 

「いやいやいや、オレっちそんなつもりねぇって。さっきも言ったが迎えにきたんだって」

 

 だから誰をだよ!!

 思わずツッコミを入れてしまった。

 なんか話が噛み合わない。先の様子からローブの連中や痴女とも関係しそうだし、コイツもボコボコにするか?

 

「ッ!! なんかヤバめな感じぃ。おい、オレっちを無視すんなって、ヴァーリっ!!」

 

 なに?

 俺の殺気に慌てた様子でヴァーリちゃんに助けを求める男。

 そんな男を見て、ヴァーリちゃんは少しだけ考える素振りをした。

 

「ん? …………あぁ美猴か。何しに来たの?」

 

 どうやらマジで知り合いみたいだ。

 ようやく思い出したヴァーリの様子に、男──美猴はガックリと肩を落とした。

 

「それはヒデェんだぜぃ? 相方がピンチ………じゃねぇな。それ以外か。とにかく他の連中が騒ぎまくってるぜぇ。北の田舎連中と一戦交えるから任務に失敗したのなら、さっさと戻ってこいってよ」

「…………戻る? なんで?」

「なんでって、お前ぇが北の田舎連中と闘いたいって言い出したから《禍の団》に入ったんだろぉがっ!!」

 

 なっ……なんだってぇエエエエっ!!??

 ここに来てショーック!!

 ヴァーリちゃん、お前痴女と同じ組織のメンバーだったのかよ?!

 オレを含め全員が「嘘だろ?!」と言った様子でヴァーリちゃんを見る。

 しかし、当の本人は「え?」と言いながら頭を捻る様子。

 なんでお前が疑問を抱いてんのかいっ!!

 思わずヴァーリちゃんの頭にツッコミを入れる。ヴァーリちゃんは叩かれたショックで思い出したのか、掌に手を当てて美猴へ話しかけた。

 

「あぁ……そんな事もあったわね。ゴメン美猴、それパス。組織も抜けるわね。元から仲間意識なんて、向こうもないだろうし」

 

 あっけらかんとした態度で、ヴァーリちゃんは《禍の団》からの脱退を告げた。

 これには美猴も度肝を抜かれた。

 

「抜けるぅっ?! パスッ?!」

「北の田舎連中よりも、彼を超えたいの私」

 

 俺の方を見ながらそう伝えるヴァーリちゃん。

 えっ、陸上の方だよね? バトルじゃないよね? ねぇ?!

 突然の宣言に取り乱す俺。当然ながら、伝えられた美猴さんも同様だった。

 

「イヤイヤイヤイヤッ!!!! アーサー達はどーすんのよっ!!」

「そうねぇ……まあよろしく頼むわね、これからのリーダーさん」

「ハァアアアッ?! ソイツは横暴だろ?! お前抜きであの組織に居られるかよっ!! 抜けるならオレッち達も連れてけよっ!!」

 

 なんか揉めてらっしゃる。

 その…………美猴さん、お疲れ様です。

 それから美猴さんはヴァーリちゃんを説得し、抜けるなら抜けるでメンバー全員に説明しろということで纏まり、一度《禍の団》へと戻ることになった。

 周り、特にアザゼルから思い切り止められたがヴァーリちゃんは「責任は果たさなきゃダメ」と言って聞く耳を持たなかった。いや、アンタさっき、美猴さんに全部放り投げようとしまよね?!

 そして美猴と共に帰ろうとしたヴァーリちゃん。まさか、ここで悲劇が起こるとは思いもよらなかった。

 

「それじゃあ行ってくるわね、心くん」

 

 おう、しっかりと責任果たしてこいよ。間違っても美猴さんに丸投げするなよ? したら陸上部として黙ってないからな!!

 

「分かってるわよ。それじゃあ───」

 

 ヴァーリちゃんが俺に近づいてくる。

 見れば右手を差し出していたため、行く前の握手だと思い俺も右手を差し出した。

 しかし、これがいけなかった。

 俺の右手を掴んだヴァーリちゃんは、そのまま一気に自分の方へと手を引いてきたのだ。

 なっ、何事?!

 そして勢いそのままに、ヴァーリちゃんと俺の距離がゼロとなる。そして────んー?!

 

「……ん」

 

 ヴァーリちゃんと俺の唇は重なった。

 おっ、俺のファーストインパクトがっ?!

 

「「なぁっ?!」」

「ハァアアアッ?!」

 

 沸き立つ周りの連中。

 そんな連中の中、木場ちゃんとゼノヴィアがヴァーリを睨み、アザゼルさんが「お前を殺す」とバリに俺を鬼の形相で睨んできた。

 イヤイヤイヤイヤ、俺も被害者ですって!!

 ヴァーリちゃん、説明プリーズ!!

 

「ふふ、少しだけ待っててね。私の初めて(敗北)を奪った人」

「………何だと??」

 

 オイイイイイイイッ!!?? その説明は洒落にならねぇって!! アザゼルさんがとんでもないことになるって!!

 美猴さん、ヴァーリちゃんを止めて!!

 

「あー………オレッち達は帰るわ。そのぉ……頑張れよ!!」

 

 あー!!! 帰った!! テメェ、親指立てながらいい笑顔して逃げんじゃねぇよ!!

 

 ズドンッ!!!!

 

 ひぃっ?! 足元に光の矢が刺さってますって!! あっ、アザゼルさん?! ヴァーリちゃんの言った初めてって、敗北の事だから、センシティブな事じゃねぇから!!

 

「黙れよカス野郎…………ヴァーリの唇を奪った罪…………コキュートスすら生温い。最早生かしてはおけねぇなぁ!!!!」

 

 ブチギレながら懐から1本の短剣を取り出した。

 えっ、それで刺すつもり……え? なんか短剣が変形して…──「禁手化ッ!!!!!」──ひぃいいい?! なんか黄金のフルアーマー化したんですけど?! あんたはどこの黄金聖闘士だよ!!

 こんなヤツと闘ってられ──「禁手化ッ!!!!!」──ちょっ、オメェもかよ兵藤!! そんな血の涙を浮かべながら覚醒すんじゃねぇよ!! ドライグさんに申し訳ねぇと思わねぇのかよ!!

 並び立つ黄金と赤のドラゴン達。最早、ゲームのワンシーンだ。

 あぁ、もう!! やってらんねぇわ、この世界!!

 いいぜ、やってやらぁ。もう一度世界を縮めてやるよ!! 俺の脚の速さを嘗めんじゃねぇ!!

 

 こうして俺は神話の1ページのような闘いに身を投じる事となった。

 三大勢力は一先ずの和平を手にしたが、俺の平穏な生活はまだまだ遠いようだ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところでサーゼクスさん、話ってなんですかい?

 

 ………時間がちと進むよ~………

 

 三大勢力会合、及び俺だけドラゴンハンターをすることになってから数日。

 俺は決意新たに陸上へと精を出していた。

 

 ふぅ、また世界を縮めてしまったな。

 

 タイムは好調。いい感じである。

 一時期は自暴自棄になりかけた陸上部(非公式)だが、ヴァーリちゃんが事後処理で一時抜けた一方で、新たにメンバーが加わった。

 

 

「お疲れ様です、心様。此方、水分補給です」

 

 おう、助かるわ。

 差し出される水を受けとり、飲み干す。

 いやー、やっぱり優秀なマネージャーが居ると助かるわ。

 

「恐縮です」

 

 そう。この陸上部にマネージャーが加入することとなったのだ。

 名前は加藤玲美(かとう れみ)さん。

 え? 誰だって? んなもん見れば分かるだろ。俺がボコボコにした痴女だよ。旧名カテレア・レヴィアタンだ。

 まあ話せばそこそこ長くなる。

 実はあの三大勢力会合とドラゴンハンター(兵藤だけボコボコにした)が終えた後、サーゼクスさんから報奨の話が出たんだ。

 んで、金銭も多少貰ったけど、ついでに犯罪者としてしょっぴかれる痴女を貰ったんだよ。聞けばこの痴女、なんか昔の魔王の血族であるレヴィアタンの一員で、色んな意味で魔界には戻れないのだ。

 このまま魔界の牢獄にぶち込んでもらってもよかったが、それは勿体ないって思ってな。何しろ俺は陸上戦士ではあるが、事務系は苦手なのだ。出きることなら練習のみに力を入れたい。本当ならコカビエルのオッサンの時も人材として欲しかったが、アレはヴァーリちゃんに回収されてしまった。だが今回は融通が効きそうであったため、俺が監視という名目で譲って貰ったのである。

 いやー、人件費タダの労働力が手に入りましたわ。非公式だから理事長であるサーゼクスさんからのお小遣い程度の部費しか貰えていないため、非常に助かった。

 しかもありがたいことに、ボコボコにした事で痴女も俺に反旗を翻す様子もなく、素直にマネージャーを勤めることを了承。なんか俺の事を常に様付けで呼んでくること以外は優秀であった。事務処理が捗ること捗ること。あぁ、名前が変わった事についてはレヴィアタンの名を使うことが許されないということで、俺が考えた。なんか痴女のヤツから頼まれてな。まあ減るもんじゃねぇし。

 そういった経緯を辿り、加藤くんという新たな陸上部員が誕生したというわけだ。

 おっ、ちょうど木場ちゃんとゼノヴィアも戻ってきたな。んじゃ、加藤くん。俺はもう1本(フルマラソン)してくるから、二人にも水分補給を頼むわ。

 

「承知しました。いってらっしゃいませ、心様」

 

 おう、んじゃ行ってくるわ!!

 足取り軽く、俺は再び練習へと戻った。

 

「そら、心様からのご厚意だ。ありがたく受けとれ、下等悪魔ども」

「あの、僕たちも立場としては心君と同じなんだけど?」

「黙れ。私は素晴らしき心様に敗北しただけであって、貴様ら下等生物に負けたわけではない」

「ほぉ……なら、試してみるか?」

「ふん。威勢だけは一丁前だな。そうしたいのは山々だが、それをすれば心様に迷惑がかかる。そら、さっさと水を飲んで消えろ」

「このっ!!」

「はいはい、そんなに熱くならないの、ゼノヴィア。そういうことなら、ありがたくいただくよ────そっちをね!!」

「なっ?! 貴様!! それは私が心様の為に特別用意した水だぞ!!!!」

「へへーん。ほら、ゼノヴィア。私たちも練習に戻らないと」

「だな。後で私もソレを頂くか」

「貴様らーっ!!!!!」

 

 

 おっ、なんか木場ちゃん達が盛り上がってるな。

 いやー、やっぱり陸上は友情を育むいいスポーツだな!!

 悪魔、天使、堕天使。その他多くの勢力が闊歩するこの世界。

 俺の嘗て望んだ平穏無事なアルプスでの生活にはほど遠いが、今日も楽しく陸上をすることができるから、悪くはねぇな。

 んじゃ、もう少し世界を縮めてくるかねぇ。

 今日もゴール目指して、俺は走り出した。

 




主人公が身につけた新しい技

・俺式ザ・ワールド
チート技。自由に走る主人公の速さに世界が追い付けなくなり、その結果周りが停止したかのようになる状態。世界の処理が追い付けないため、敵からの能力の情報も追い付けなる。あくまでも世界の処理が遅れているだけのため、主人公自身の処理は遅れないから空気や光の分子が止まるわけではない。色んな偶然が重なり、結果的に《停止世界の邪眼》を攻略した。速度を微調整すれば色々悪用できる。現在の停止時間は1.5秒程度。インターバルは数分。主人公的には予備動作なしに全力疾走した感覚に襲われるため。

・俺式八門遁甲
劇眉先生やその弟子が使うのとほぼ同じヤツ。彼らとの違いは強制解放ではなく、自分で魔力と血流をコントロールして発動する点。自分でコントロールする分、返しのダメージは少なく済むし、耐久力も向上。

・黄龍鱗
朝孔雀と呼ばれる炎を繰り出す技の雷バージョン。一撃の威力はコカビエルの光の矢に匹敵。八門の景門を解放しないとフィードバックで主人公は普通に摩擦熱で燃え尽きて死ぬ。

・俺式究極裏蓮華
ナルティメットなヒーローの二作日で初登場した劇眉先生の必殺技。あまりの速さで閃光と化して相手に攻撃し、相手を拘束。最後に落下攻撃で相手を地面に叩き付ける大技。ゲームてでは劇眉先生はあまりの衝撃で地面にめり込んでいた。無論、普通の状態で主人公が使えば燃え尽きるよ。
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