ループなハイスクール。二番煎じですね、はい。   作:あるく天然記念物

9 / 10
あかん。自分で作った主人公なのに扱いがムズい。
バトルは次回になりそうです。


シーン66

 季節は完全に夏!!

 世間同様に、駒王学園も夏休みに入りました。皆さん、いかが御過ごしでしょうか。

 夏休みになったことで、俺たち陸上部(非公式)もより一層練習に精を出しています。

 ホントに、ものすごく精を出しています。

 どれくらいかと言われたら────。

 

「死にさらせやァアアアァアッ!!!!!!!!!!」

 

 ヒィイイイイイッ!!!!! 矢が、矢がぁアアアアッ!!

 ものすごく怖い堕天使の長から毎日殺されそうになる日々を送るくらいです────ってぇ、近くに刺さってるって!! あー!!! かすった、かすったって!! にゃろう、マジで殺す気かよっ!!!!!!

 ヴァーリちゃんよる俺の唇ファーストインパクト事件から、俺はアザゼルさんに命を狙われる日々を送っています。

 なんで堕天使総督であるアザゼルさんが毎日くるのかって?

 説明しよう。

 アザゼルさんは三大勢力会合の後、グレモリー先輩達の庇護、及び《禍の団》から身を守るためのコーチとしてオカルト研究部の顧問として赴任してきた。

 そこからが俺にとっての厄日の始まりだった。

 俺が加藤くん(後に上級悪魔と判明)を倒した事で、鍛えるという名目で常に命を狙い始めてきたのだ。死ねばラッキー、死ななくても強くなれるからオッケーってか? ハッ倒すぞ!!

 しかし、そのスパルタ教育のお陰で普段以上に鍛えることができていた。嬉しくはねぇけどな。

 そのため、今はこんな芸当も可能となった。

 アザゼルさんが光の矢を構えた。

 その瞬間!!

 

 キュピピピピピピーン!!

 

 俺の脳裏にPlasmaが走った。この信号、アウトなヤツだ!!

 すぐさまブレーキをかけ、急停止を行う。

 俺の身体が停止するのと同時に、

 ズドォオオオオーン!!

 あり得ない威力の光の矢が目の前に落ちてきた。

 爪先から先がちょっとしたクレーターになってやがる。

 おおう。止まってなかったらループ間違いなしだったな。

 とまあこの様に《刹那の懐中時計》をオートで発動させることができるようになったのだ。

 気分はまさに宇宙な世紀の天パ。彼と違って敵の感知ができない、および即死攻撃しか察知できないのが難点だが、それでも格段に利便性は向上した。

 お陰でアザゼルさんの攻撃に被弾することも殆ど無い。なんなら現在に至るまで一度も無いのだ!! ……まあ、一度でも被弾したら最後、ループ確定なんだけどね。

 

「………っち、相変わらずしぶてぇな。そろそろ部活の時間だし、お前にも連絡事項があるから来い」

 

 めっちゃ態度悪ぅっ!!

 無事に生き残った俺を見るなり舌打ちしてきやがった。それでも教師かお前は!!

 未だにヴァーリちゃんが戻って来ないからって、俺に八つ当たりしてんじゃねぇよ!! 勝手に殺しに来て、勝手にやめる。どっかの腹がへったら飯食って、眠くなったら寝るとかいう歌のレベル100みたいな言動、PTAが黙ってねぇぞ!!

 多分、サーゼクスさんの権力で揉み消されるだろうけどねっ!!

 とまあ俺の嘆いても無駄にしかならない思いは隅に置くとして、連絡事項ってなんだ?

 部室に行けば分かるとだけ言ってアザゼルさんは部室へと向っていく。

 そんなアザゼルさんにそこはかと無く内容について聞いても睨まれるか舌打ちの2択しか無いため、俺は大人しくついていくことにした。

 マジ理不尽。

 そんな理不尽を全身に浴びながらオカ研の部室にたどり着くと、そこにはグレモリー眷属と陸上部員(マネージャー含む)全員が揃っていた。

 必然的に俺が最後の登場になる。なんかVIPになった気分だ。

 とりあえずアザゼルさんとの鬼ごっこが大変だったから、木場ちゃん、お茶くれ。

 

「はいはい。待っててね心く──」

「こちらをどうぞ、心様。そしてこちら、濡れタオルになります」

「ちょっ?!」

 

 おっ、流石マネージャーの加藤さん。悪いね。

 渡された濡れタオルが火照った身体に染み渡る。

 そして一緒に渡されたお茶を一気に流し込む!!

 きっ、キンキンに冷えてやがる!! あぁ、ありがてぇ。犯罪的だ!!

 

「………つーん」

 

 

 なーんて一人カイジごっこをしていたんだが、木場ちゃんが誰の眼から見ても不機嫌になっていた。

 すっ、すんません。頼んでおいて別の人から貰ったら気分悪いよね。で、でもさ、好意で渡されたらつい貰っちゃうよね?

 だから………その………ねぇ。

 

「………」

 

 あぁもう、ごめんでした!! 今度から気を付けまーす!!

 

「………ふふ、そこまで怒ってないよ、心くん」

 

 不機嫌な様子から打って変わり、笑みを溢す木場ちゃん。

 にゃっ、にゃろう。この俺を弄んでいたってのか。

 俺が木場ちゃんへ一言物申そうとしたところで、グレモリー先輩がパンパンと手を叩き、話題を変える。

 

「はいはい。夫婦漫才はその辺にしなさい」

「めおっ?!」

 

 あ? 誰と誰が夫婦だって? 俺と木場ちゃんのことを言っているのか、グレモリー先輩。

 ふふっ、甘いなグレモリー先輩。俺と木場ちゃんは共に陸上戦士。つまり、共にリレーのバトンを繋ぐ運命共同体!! だから夫婦なんてちゃちな表現で納めて貰っては困るぜ。

 そうだよなぁ、木場ちゃん?

 

「うっ……うん、そうだね心くん」

「はぁ………祐緋が可愛そうになってきたわ」

「……ハッ。いい気味ね」

「心よ!! 私も運命共同体だよな!!」

 

 あはーん。なんかみんなの視線が冷たい~。

 それとゼノヴィア、暑いから近づくな近づくな。

 鬱陶しいゼノヴィアを引き剥がしたところで、グレモリー先輩から夏休みの予定について説明が行われた。

 なんでも夏休みには実家のある魔界に眷属と一緒に帰省をするとのこと。ついでにその時期に魔界では社交界が催され、魔王系列の悪魔達が交流会を行うらしい。

 んで、その帰省になんで俺も参加しなきゃなんのだ?

 俺が疑問を投げ掛ければ、アザゼルさんが説明してくれた。 

 ふむふむ、なるほど。

 魔界に帰省するついでにグレモリー眷属の修行もするから、俺にも手伝えってことね。

 普通に頭を下げてお願いされてしまった。

 これだからアザゼルさんを嫌いになれねぇんだよなぁ。普段は訓練や特訓で軽く命を狙ってくるが、公私混同は基本しないのだ。ホント、ヴァーリちゃん絡みがなければいいオジサンである。

 俺は木場ちゃんとゼノヴィアの一件があるため快く了承。図らずも夏休みの予定ができてしまった。

 魔界の景色には興味あるし、禁止された区域以外は休憩時間中は自由に走っても大丈夫とグレモリー先輩から許可を貰ったため、今から当日が楽しみである。

 ところで気になったのだが、俺が行く間加藤くんはどうなるの?

 ほうほう。加藤くんは先の会合テロや旧魔王関係のいざこざから今回はお留守番になると。

 そっ、そんな加藤くん一人でお留守番だなんて…………そんなの…………。

 

「心様……」

 

 まあテロは加藤くんが全面的に悪いから是非もないネ。俺がいない間も事務処理と掃除を頼んだで。誰もいないから、ついでに大掃除をお願いネ☆

 

「心様?!」

「…………プっ」

「このっ………ンンっ。木場様、何か言いたそうですが、私に何か?」

「いえ………なにもぉ……」

 

 何やら加藤くんが言いたそうな雰囲気の醸し出しているな。まあ、お見上げ買ってくるからそう気落ちするなって。

 さーてこれで連絡会は終わりだよなグレモリー先輩? オッケー。んじゃ木場ちゃん、ゼノヴィア。俺たちは加藤くんの分まで楽しむぞ!!

 そうとなれば買い出しだ。俺についてこい、おやつは300円までだぞぉ!!

 

「「おー!!」」

「そっ、そんなぁ~」

 

 悲しそうな声を上げる加藤くんを尻目に、俺は木場ちゃんとゼノヴィアを連れて買い出しへと繰り出した。

 加藤くん。恨むのならテロを起こした昔の自分を恨みたまえ。

 

 心達三人が部室を出ていった後、加藤は未練がましく部室の扉を見つめていた。

 

「行ってしまわれた。はぁ………心様がそう仰るのであれば、私はそうするまでだな。アザゼル、話が終わりなら私も掃除のため部室へ戻らせてもらう」

「おう。だが、あのレヴィアタンが人間相手にここまで甲斐甲斐しい悪魔になるとは思わなかったな」

「黙れ。私がお仕えするのは人間ではなく、心様だ。そこを履き違えるなよ堕天使」

「おぉー、こわこわ。しっかし、お前といいヴァーリといい、そんなにあの陸上バカがいいのかねぇ」

 

 アザゼルが小馬鹿にしたように笑いかけるも、加藤は何処吹く風といった様子で聞き流していた。

 

「ふん、当然だ。少なくとも娘がテロ組織に入るのを見抜けなかった、どこぞの父親よりは魅力的だな」

 

 いや、アザゼル以上に小馬鹿にした返答を投げ返していた。

 

「ちょっ?!」

「「「「「「プッ!!」」」」」」

 

 あまりの不意打ちにアザゼルは言葉につまり、グレモリー眷属全員の頬が決壊しそうになった。

 流石の状況に、アザゼルは声を荒げた。

 

「お前ら笑うんじゃねぇ!! おい、カテレア。喧嘩なら言い値で買うぞ?」

「ふん。誰も貴様だと言っていないではないか。それに毎回怒っているが、貴様もある程度は心様の事を認めているのだろ?」

「それは………まぁ、多少はな」

 

 カテレアは渋々といった様子で頷く。

 事実、アザゼルは心の事を嫌ってはいない。その証拠に襲うのは常にアザゼル一人だ。本当に形振り構わない状態の場合、彼はグリゴリを躊躇い無く動員する。それをしないのは、心に対する期待の現れでもあった。

 アイツなら、必ず自身よりも強くなってくれる、と。

 それを薄々感づいている加藤は、アザゼルの様子にため息を溢した。

 

「まったく堕天使の総督であると言うのに、不器用な男だな」

「うるせぇよ。ンなことは俺が一番分かってんだよ。でも仕方ねぇだろ。ヴァーリが好いている以上、いつかアイツには俺の変わりにヴァーリを守ってもらうことになるんだからよぉ」

「だから、それを言わないのが不器用だと言っているのだ。心様であれば、言えば必ず貴様を余裕で越えるぞ?」

「ハッ、誰が言うもんか!! 未だに俺の矢でヒィヒィ言って逃げるヤツには絶対にだ!!」

「そうか。なら、近い内に言うかもしれんな、貴様は」

 

 その時の姿が楽しみだと、加藤は言い残し、部屋を後にした。

 その後ろ姿を見ながら、アザゼルは一言溢すのだった。

 

「あぁ。俺もその時を楽しみにしてるよ」

 

 何時もみたいな親バカな顔ではなく、総督として笑う堕天使がそこにいるのだった。

 しかし、それはそうと娘に好かれる男はムカつくため、今後も容赦なく命を狙おうとアザゼルは考えるのであった。

 

 心よ、強く生きろ!!

 

 

…………時間が進『おっと、また世界を縮めちまったぜ』………やっぱりねー…………

 

 

 あれよあれよと言う間に、俺は魔界へとやって来た。

 魔界には専用の列車で向かうこととなり、駅で見送りに来た加藤くんが涙を流しながら見送ってくれるのにウルッと来たが、列車の快適空間によって秒で忘れた。

 いやー、マジで快適だった。二時間で3万円かかる高級列車と同じ内装で、ウェルカムドリンク有り。

 さらにアラカルトメニューは頼み放題。これまでの活躍もあり、グレモリー先輩から好きなだけ食べていいとお墨付きも貰い、兵藤が引くぐらいには食べて食べて食べまくった。

 マグロ、キャビア、フィレ肉、食わずにはいられない!! しかも木場ちゃんが甲斐甲斐しく世話をしてくれたため、完全にVIP待遇そのものだった。

 ゼノヴィア? あぁ、木場ちゃんに対抗して世話をしてくれたよ。まあ、俺の顔が発火する勢いで拭いてきたりしてきたのでクビにした。

 そんなセレーブな列車旅が終われば「今まで、見たことがないわ」と言わんばかりの光景が広がる魔界へと到着。

 到着時にはグレモリー先輩の帰郷を祝うセレモニーが行われたり、グレモリー先輩の実家での会談が催された。

 兵藤は即座にグレモリー先輩の両親に引きずられていき、魔界の貴族社会の教育を受けさせられていた。2日間を予定しているとの事であったため、その間、俺はグレモリー領を自由に走らせて貰った。

 ほほぉ、日本の本州程度か。面白い!!

 かるーく流そうと思ったが、初めて見る景色に感動して夜通し走ってしまった。お陰で領土を一周することができた。

 ふぅ、いい運動になったぜ。意気揚々とグレモリー先輩の家に戻ったら、木場ちゃんとゼノヴィアを除いた全員から化物を見る目で見られた。なんで?

 

注)

 本州一周 = 約7000㎞

 夜通し = 約12時間

 時速 = 約583km/時間

参考)

 リニアモーターカー = 約600km/時間

 

 結果、当然である。

 

 グレモリー領フルマラソンが終われば、グレモリー先輩は眷属を連れて若手悪魔の集まりへと向かい、俺はグレモリー先輩の家で留守番となった。

 ほら、俺は修行のお呼ばれであって、グレモリー先輩の眷属じゃねぇから。

 なのでサーゼクスさんの息子さんであるミリキャスくんと思い切り遊んだ。

 ほぉ、ミリキャスくんはどうして強いか気になるのか。それはな、陸上のお陰だ。

 ミリキャスくん、陸上はいいぞ~。脚を鍛えて聖書に載る堕天使だろうが、誰もが知る上級悪魔だろうが蹴り飛ばせるようになれるからな。やって損はないぞ~。

 俺の武勇伝にミリキャスくんが目を凄くキラキラしていたため、これはチャンス!! と思い本格的に勧誘。だーが、どこで聞き付けたのか真っ青な顔をしたサーゼクスさんが現れてミリキャスくんに陸上はまだ早いと言われてしまった。

 まあ保護者からそう言われたら仕方ない。ミリキャスくん、もう少し大きくなったらやろうな!! と誘えばミリキャスくんはいい笑顔で「ハイ!!」と答え、サーゼクスさんは乾いた笑みを浮かべていた。

 サーゼクスさんから陸上は控えるように言われたあとは普通にミリキャスくんと遊んでいた。ミリキャスくん、トランプ強いんだね。お兄さんボコボコにされちまったよ。

 次は何をして遊ぼうかと考えていたら、集まりを終えたグレモリー先輩達が戻ってきた。

 お帰り~、どうだったん?

 木場ちゃんに話を聞けば、いろいろ上級悪魔の人たちに嫌みなどを言われたそうだ。ついでにヤンキーみたいな若手悪魔から言い寄られたとも。

 ふむふむなるほど………グレモリー先輩、そのヤンキーの家を教えて貰っても? ダメ? いやいやい、襲いなんてしませんよ~。ただ……季節にピッタリな花火を打ち上げようかと。それでもダメ? ちぇー、分かりましたよぉ。

 ちっ…………命拾いしたな、ヤンキー。

 なんか妙に嬉しそうな木場ちゃんに、他には何かなかったか尋ねたら、この魔界にいる間に若手悪魔同士のレーティングゲームが開催されることになったとのこと。

 んで、対戦相手は生徒会長達。あんまり顔が浮かばない。とりあえず負けないように、修行にはより一層力をいれることとしよう。

 誰の担当になるかは知らんけど。

 

 次の日、レーティングゲームが20日後に控えたグレモリー眷属はそれぞれがアザゼルさん監修のトレーニングに勤しむこととなった。

 んで、俺の担当と言えば────。

 

「ヒイィィィィィッ??!! しぬぅうううううっ!!!」

 

 ほれほれ~。死ぬ~って、言える間は死ぬことはねぇから(実体験)死ぬ気でよけろよぉ~。

 

 俺式朝孔雀ッ!!

 

 魔力で強化した脚を高速で撃ち込み、摩擦熱を帯びた衝撃波を兵藤へと飛ばす。

 

「ギァアアアアアッ!!!!! 火、火ッ!!!!!」

『タンニーンのブレスと同じ火力を複数飛ばしてくるとは…………あの男、本当に人間か? 兵藤一誠よ、一つでも当たれば丸焦げだぞ』

「マジかよぉっ?! あぁぁああっ、地面が焼け焦げてるゥウウウッ?!」

 

 ほぉ、朝孔雀を避けるか。当てるつもりは更々なかったとはいえ、中々に成長したな兵藤。

 とまぁこのように、グレモリー眷属の『兵士』で意外性ナンバーワンの変態、兵藤の相手をしていた。

 かつて山で修行をした時とは違い、アザゼルさんから「俺と同じように絶妙に死なない程度にヤってくれ」と言われたので、そこそこ本気で技を撃ち込んでいます。

 兵藤の当面の目標は自分の意識で『禁手化』を行えるようにすること。現状、ぷっつんした時か、後から聞いた代償アリのやり方しかできていないため、急務だとアザゼルさんは言っていた。

 あの………俺も『禁手化』できておりまへんけど? とアザゼルさんに進言したが、それ抜きで化物だから問題ないとのこと。ガッデム!!

 しかし、俺もアザゼルさんに頼まれ、ただひたすらに兵藤を虐めているだけではない。

 その証拠に────来る!!

 

 キュピピピピピピーン!!

 

 俺の脳裏にPlasmaが走った。

 急ぎ周りを警戒すれば────囲まれているだと?

 しまった。兵藤の扱きに夢中になり過ぎていた。

 

「それそれー!!」

「やれやれー!!」

「フハハハハッ!!!!! 今度は逃げられんぞ、心よッ!!」

 

 やがて視界に現れるは3体のドラゴン。

 一番大きい1体は今回、アザゼルさんの紹介で俺と共に兵藤の修行相手に抜擢された『魔竜王(タンニーン)』さん。残り2体はタンニーンさんの保護した子ドラゴン。子ドラゴンと言っても大型バス程度には大きい。子とは一体?

 そんなドラゴン3体の猛攻(兵藤も標的)を掻い潜りながら、兵藤を虐めるのが俺に課せられた修行であった。

 アザゼルさん、ここでも俺の命を狙っていないか?

 ドラゴン3体により、三方向から火のブレスが俺へと放たれた。

 上空へ逃げようにも、既に飛んでいるタンニーンにより退路は塞がれている。

 ならば、迎え撃つしかない!!

 俺は即座に新たな防御力技を放った。

 自身の半径3メートル程のバリアを展開。続けて利き足を軸にその場で回転を行う!!

 受けよ!! 努力ではない、本当の天才が放つ鉄壁をッ!!

 

 俺式回転ッ!!!!!

 

 これぞ攻防一体の技。

 これにより、圧倒的回転エネルギーをかけたバリアによって、受けたブレスや光の矢を相手に弾き飛ばすことが可能となる。

 アザゼルさんには秒でブッ壊されたが、タンニーンさん達には十分に有効だ。

 俺の目論み通り、バリアは時計回りに高速回転を行い、炎のブレスが流れるようにそれぞれ元の宿主へと襲いかかる!!

 

「おおー、あっつーい」

「にはは~。ダメか~」

「なんと、この歳になって己のブレスを受けることとなろうとは。ハーハハハハッ、久しく味わったことのない高揚感よっ!!」

 

 うーん、微塵もダメージがねぇ。

 まあ自分の口から出てきた炎を受けて熱がるドラゴンなんているわけないか。

 熱がるドラゴンがいるとしたら─────元気に逃げ回る兵藤くらいなものだ。

 

「あっ────つぅうううううううううっ!!!!!?????」

『おい!! 急いで逃げぬと本当に丸焦げになるぞッ!!!! 心よ、少しは手加減をしてくれ!! 俺の宿主が本当に死んでしまうぞ!!』

 

 いや、マジですまん。

 その……殺しかけた罪滅ぼしとして、この後数分程度はタンニーンの相手をしてやるから、許して。

 

 それからタンニーン相手に大怪獣バトル(相手だけ)を行い、午前中の鍛練は終了。

 兵藤は様子を見に来たアザゼルさんからグレモリー先輩お手製のお弁当を受けとり、大粒の涙を溢しながら食べていた。

 そんな兵藤を尻目に、俺はふと思った悩み事をタンニーンに聞いた。

 なぁ、タンニーンさん。少しいいか?

 

「どうした、心よ。少しとは言わず、何でも俺に聞くといい」

 

 おぉう。ほぼ対等に闘えた結果か、タンニーンさんとの距離が近い。まるで同級生と話す感覚だ。

 まぁ威厳たっぷりに敬語を使え!! と言われないだけましか。

 いやさ、兵藤が『禁手化』するために修行してるじゃん?

 

「進展は微塵も感じられんがな」

 

 まぁ、そこは人それぞれだし、しょうがないとして、俺も『禁手化』に至ってないわけじゃん。それって大丈夫なの?

 

「なんと、お前も『神器』を持っておったのか。先程の健闘ぶりからして、神滅器………もしくはそれに連なるモノか?」

 

 んにゃ、ごくごくありふれた《刹那の懐中時計》です。

 

「もっ……《刹那の懐中時計》?? 何かの冗談か?」

 

 ところがどっこい、冗談ではありません。現実、現実なんです。

 俺は胸元から《刹那の懐中時計》を取り出し、タンニーンさんに見せた。

 ほれ、どう見ても《刹那の懐中時計》でしょ。他に持ってる人見たことないけど。

 

「うーむ………外観は確かに《刹那の懐中時計》であるな」

 

 でしょう。別に《刹那の懐中時計》不満は不満もなければ、めちゃくちゃ便利でお世話になってるんだけど『禁手化』には至ってねぇんだわ。

 俺も兵藤を鍛える手前、どうにか『禁手化』をしたいんだけど、何かいい手は無いだろうか。

 

「うーむ。気持ちは分かるが、現状その身一つでこの俺と対等に闘えているのが難点だな」

 

 難点? どゆこと?

 

「俺も神が産み出した《神器》については詳しくは知らん。だが、これまで『禁手化』に至ったヤツは全員何かしらの切っ掛けがあった。その多くは、強大な敵に立ち向かうときや、力を渇望した時などに覚醒していた」

 

 なるほど、流石は竜王と呼ばれたドラゴン。ためになる情報だ。

 しかし、少し引っ掛かる。タンニーンさんの情報を鵜呑みにするのならば、俺も当てはまる気がするんだが。これでも変態神父、コカビエル、加藤くんと言った強大な敵に立ち向かったし、力を求めたことも度々あったぜ?

 ここまで濃密な経験をしておいて、逆になんで覚醒しねぇんだ?

 

「そこが難点なのだ。心よ、お前は今まで道具に力を求めたことは無かっただろ?」

 

 道具に力を求めたこと? んなもんバリバリにあるって。

 現に俺の《刹那の懐中時計》はその時々で素敵能力を解放してきたぞ。

 過程予知、疑似ニュータイプ能力とか。

 

「それは手段としてだろ。まあそれも規格外のモノであるが………。アザゼルにも聞いたが、お前は敵に対して常に自分の力で突破してきた。違うか?」

 

 たっ…………確かに。

 言われてみれば、そんな気もしてきた。

 要所要所で《刹那の懐中時計》は使用してきたが、思い切り頼ったのはライザー達とのレーティングゲームの時が最後だ。

 あの時は自分の実力が足りず《刹那の懐中時計》が無ければループを永遠と繰り返すことになっていた。《刹那の懐中時計》の能力を全面的に頼っていたのを覚えている。。

 対して加藤くんの時は止まった時の世界への入門を目的に使っていたが、《刹那の懐中時計》を使って何かをしようとはしなかった。

 有り体に言えば、最近は《刹那の懐中時計》そのものを頼りにしていない。

 今一度、《刹那の懐中時計》と見つめ合う必要があるかもしれないな。

 タンニーンさん、助言ありがとうございます。

 

「構わねぇよ。そら、赤龍帝の小僧の休憩も終わりだ。小僧ともども、『禁手化』に至れるようしごいてやるよ」

 

 おう。なら、俺がピンチと思えるくらいには厳しく頼むぜ。

 

「望むところよ」

 

 俺とタンニーンさんが後半戦へ向けて戦意を高めていたら、俺たちの会話を聞いていたのか慌てた様子で兵藤が混ざってきた。

 

「ちょっと待って!! 今より厳しくなったらホントに俺死んじゃうって!!」

「バカ者!! リアス譲の最強の『兵士』になると豪語する男が、そんな軟弱なことを言ってどうする!!」

「だとしても死んだら元も子もないじゃん!!」

 

 全く兵藤は。俺は何時も言っているだろうが。

 

「何をだよ!!」

 

 死んじゃうと言える内は死なねぇって。

 その意味くらいわかるだろ?

 

「そりゃ死んだら何も言えないからだろうが!! ハッ倒すぞ!!」

 

 よーし、調子が出てきたな。

 この調子で俺もだが『禁手化』が出きるように頑張ろうぜ。タンニーンさんも俺が至れるレベルで攻めてくるからな。

 

「やぶ蛇ったぁっ!! いぃやぁああああああああああ─────ッ!!!!!」

 

 それからレーティングゲームまでの間、俺と兵藤はタンニーンさん相手に修行を続けた。

 その修行において、兵藤の成長は目まぐるしいものであった。

 最初は俺とタンニーンさんが大怪獣バトルをして、兵藤は逃げ回るだけであったが、最終日に近づくにつれて俺たちに反撃が出きるようになっていた。

 タンニーンさんは手加減して受けたりしたが、俺は更なる成長を込めてカウンターをしてやった。

 兵藤よ、強くなれよ。

 そうして迎えた修行の最終日。

 結果として残すと、俺と兵藤は目標には至れなかった。

 切っ掛けぐらいは掴めると思ったんだがな。

 まっ、できたらいいなぐらいにしか思ってなかったから、切り替えていこう。

 

 

 ………時間は進むよ~どーこまでもー………

 

 

 さて、各人の修行期間が終わり、一度グレモリー眷属全員がグレモリー先輩の屋敷に集まった。

 全員がこれまでの修行について報告を行う。

 木場ちゃんとゼノヴィアは共に剣の修行。なんでも有名な人に教わったとのこと。その結果、ゼノヴィアは全身包帯だらけとなった。どゆこと?

 アーシアちゃんと姫島先輩、グレモリー先輩は三人とも魔術関係を強化。外見では一切わからないため、レーティングゲームでの結果に期待したい。

 んで、俺と兵藤ペアについても報告。山でサバイバルしてきました。とても楽しかったです!!

 俺が笑顔で報告したらアザゼルさん含めて全員からドン引きされた。あれ、なんかデジャヴを感じる。

 一緒に報告したら兵藤もこれには不振がり、全員の宿泊状況を確認。結果、サバイバルをしたのは俺たちだけであり、他のみんなはグレモリー先輩の保有するコテージで生活していたことが判明した。

 兵藤は泣いた。

 アザゼルさんはバカ笑いした。

 何ワロてんねん。

 あっ、面白い報告もあった。

 それは小猫ちゃんだ。

 なんと修行中に生き別れたお姉さんである黒歌さんががやって来たのだ。なんでもヴァーリちゃんと同じチームに所属しており、メッセンジャーとして先に戻ってきたとのことであった。黒歌さんは過去に事件を起こして犯罪者となっていたが、そこはヴァーリちゃんを全面的に守るアザゼルさんによって解決済み。

 二人の感動の再会には、兵藤ですら涙を流す光景だった。

 ウンウン。その感動的な様子に免じてヴァーリからの伝言を全部忘れていたことは多めにみておこう。

 アザゼルさんは別の意味で号泣した。

 とまあ、そんな事件も多々ありつつも、グレモリー眷属全員がスキルアップを果たすことに成功したのであった。

 あと、コテージについて黙っていたアザゼルさんは後でしばきたいです。

 

 次の日の夕刻、グレモリー先輩から社交パーティに誘われたが、俺は用事があると伝えて断った。

 木場ちゃんが寂しそうにしていたが、すまん。グレモリー眷属ではない俺が参加するのも後々加藤くんみたいな悔恨が出来そうで嫌なのだ。俺一人なら蹴り飛ばすだけで終わるが、流石に先輩や木場ちゃん、ゼノヴィア達に迷惑はかけたくない。

 それに、やりたいことがあるのだ。

 グレモリー先輩達を見送ったあと、俺は一人修行していた山へと戻っていた。

 兵藤には悪いが、俺はここで『禁手』へと至りたい。

 とは言え、座禅を組む程度で至れるとは思っていないし、どうするべきか。

 

「なら、俺が手助けしてやろうか?」

 

 突然、聞いたことが無い声がかけられた。

 何奴!!

 俺が声のした方を向くと、そこにはまたしても三国志に出てきそうな衣装を見に纏った青年がいた。

 人間、みたいだな。悪魔や堕天使みたいな空気を感じない。

 だが、ただの人間では無さそうだ。肩に不気味なオーラを纏った槍を担ぎ、優しそうな笑みを浮かべている。

 青年はこちらに対し、頭を軽く下げた。

 

「初めまして。俺は曹操という。英雄曹操───の子孫だ」

 

 これはご丁寧に。

 俺は新月心、陸上選手だ。んで、その曹操さんの子孫が何のようだ? 流石に俺と違って魔界にお呼ばれしたわけじゃ無いんだろ? ほら、目的を言ってみろよ。

 流石の俺も、この状況で曹操とやらが怪しさ満点なのは嫌でもわかる。

 そもそも魔界に人間がいることが可笑しいのだ。

 警戒する俺に対し、曹操は以前として笑みを崩さない。

 

「いい警戒心だ。そんな君にいい提案をしようか」

 

 提案だ? 藪から棒に何を言いやがる。

 俺は依然として警戒を解かないが、曹操とやらは本気で俺の様子を気にしていないようだ。槍を持つ手とは反対の手を差し出しながら、

 

「お前、俺の仲間にならないか?」

 

 俺を勧誘してくるのであった。




 その頃加藤くん。

「妹様、こちら洗濯すると言って回収した心様の下着となります。お納めください」
「ご苦労様。んー、中々の逸品ね。褒めてあげるわ」
「ハッ。ありがたき幸せ」
「これは約束してた報酬(心の生着替え写真)よ。受けとりなさい」
「ありがとうございます!!」

 今日も新月家は平和です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。