スキルカオス   作:ホワイト・ラム

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鍛冶屋の弟子達
それぞれの決意


ヨークトゥシティの安宿、その中で3人の男女が自分たちの今後を話し合っていた。

 

真世界政府の最高幹部の一人サロメの襲撃により、レイジ一向は精神に大きなダメージを負った。

「約束の3週間まで時間が無いわよ!」

サロメ襲撃後、プールは今回の出来事を世界政府の本部に連絡した。

真世界政府の過激派が世界政府の失脚を狙い、政府の建物を襲撃する事件自体は少数だが確実にあった。

しかし今回狙われたターゲットは世界政府の監獄ウコギナーグ、当然だが非常に厳重に警備がされ、簡単に襲撃できるものではない。

ウコギナーグは前時代の施設を改造した、世界政府の所有する監獄の街である、本来あった建物の地下を掘り進め、囚人を収容しており建物自体が監視塔の役割を持ち、周囲は分厚い防壁で囲まれている。

2重3重のセキュリティを持ち、世界政府側はウコギナーグ専用の部隊が設置されておりこの世界で最も安全な場所である。

しかしそれゆえに、その安全神話が破られた場合の世界政府への信頼の揺らぎは巨大なものになると考えられる。

 

「ああ、わかってる…」

レイジは先日初めて命の掛かった戦いで敗北した、本来ならもうすでに死んでいる身だが、敵の機転により情けをかけられ見逃された。

そのことがレイジの中に重い影を落としている。

 

「ふーん?なんかえらいことになってるな?」

烈火は先日の戦いで何もしていない、出番自体ほとんどなかった。

烈火は自分の影が薄くなることを心配している。

 

「ってゆうかアンタね!なんで勝手に持ち場を離れるの!?最悪よ!一歩間違ったら全員死んでたかもしれないのよ!?」

プールが烈火に詰め寄る。

「ん?俺様を責めるのか?世界政府のエージェントさん?」

テーブルのウイスキーを煽りながら烈火がプールに嫌味を返す。

「アンタは!私が雇った…

烈火がプールの言葉をかき消す。

「俺様の雇い主…だろ?だからなんだ?俺様とレイ公は雇われただけの旅人だ、本来はあんた(政府職員)のサポートが仕事だろ?チーとばかし俺様たちに頼り過ぎなんじゃねーの?」

烈火は煙草をくわえ、烈火狂儘で火をつける。

「アンタのその力がいるから、やっとってるのよ!働きなさい!」

プールはダン!とテーブルに手を付き立ち上がった。

「おお、怖いねぇ!だがよ…イキがるなら部下の一人も守ってやれよ?」

烈火がレイジに視線を向ける。

「あんた、どこまで…」

「好きに言えよ?俺様は指図されるのと、口だけの無能が嫌いなんだ」

灰皿で煙草をもみ消す。

「後三週間もあるんだ、一回この後どうするかを考えようぜ?また明日この時間にここに集合な?」

そう言って烈火は自分のジャケットを羽織り部屋から出て行った。

 

「アイツは団体行動がホントにできないのね!」

プールは憤慨する、しかしその心の中では迷っていた。

(私がレイたちに比べて弱いのはわかってる…レイみたいな希少の能力も、烈火みたいな強力な力もない…決定打に欠ける私じゃどうにもならないのよ!けど…あの二人はあくまで私が雇った一般人…命のやり取りに参加させていいの?)

答えが見つからないまま思考だけが堂々巡りを繰り返す。

プールも烈火の後を追うように部屋から出て行った。

 

安宿の部屋にレイジ一人がぽつんと置き去りにされる。

「俺が、やんなきゃ…いけない…」

レイジの中には先日の恐怖が生々しく残っている。

旅を続ける事は安全な事ではない、身を守るため旅人は武装している。

レイジも実際にそうだ、だが命を明確に狙われたことはなかった。

正確には違うかもしれない、サロメはレイジを「カブトムシがいたから捕まえる」そういった感じの考えで殺そうとした。

圧倒的なまでの実力差…

捕食者と批捕食者それくらい2人の間には力の差があり、レイジはそれを理解していた。

レイジは人の笑顔が好きだ、他人の笑顔を見るたび自分にも幸せが来る気がする。

レイジは同じくらい美しい風景が好きだし、どこまでも広がる世界を見たいと思っている。

「旅もやめようかな…」

しかしその心もおれかけていた…

「なら、私の故郷に来ませんか?二人で暮らしましょうよ!」

すぐ隣から明るい声がした。

「う、おぉう!なんだ、カウスか…」

どうやって入ったのか、レイジのすぐ隣でカウスがニコニコと微笑んでいた。

「はーい!レイさん!愛しのカウスですよ!」

クルリと一回転する。

「ああ、今そういうの、いいから…」

レイジはなおもふさぎ込んでいる。

「うーん、正直言ってがっかりですね」

カウスがレイジの向かいに座る。

「何がだよ?」

「今のレイさん輝きが無いんですよ、前はもっとよかったのに…」

「なんだよ輝きって…こっちは巨大組織の幹部に命狙われてるんだぞ?これでへらへらしてたらそいつ、頭おかしいぞ?」

レイジが苛立ち気味にいう。

「だからなんです?」

カウスが急に真面目になる。

「ふさぎ込めば、誰か助けてくれるとでも?それとも相手に「殺さないでくれ」って土下座でもします?見つからないように逃げて、びくびくしながら隠れ生きるのがお望みですか?」

「んなわけねーだろ!俺は…!自由に生きたい!誰よりも!この世界で!」

レイジがカウスに掴みかかる。

「なら、答え出てるんじゃないんですか?」

そこでレイジはハッとする。

「下手な考え休むに似たりですよ?まず行動です、悩むのも後悔も諦めるのもまずはそれからです」

レイジはそっとカウスからてをはなす。

「ああ、そうだな…でも少しだけ心を整理したい、ちょっと風に有ったってくる」

レイジも

安宿から出る。

後に残ったのはカウス一人。

「レイさん意外とチョロイですね、さてパンツでも盗んで帰りますか…」

レイジの荷物をあさる。

めぼしいものが有ったのかカウスは満足顔で部屋を後にした。

 

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