「じゃ、俺はここで」
ジェッソが手を振りレイジ達一行と別れる。
一行から背を向けた途端歯ぎしりをする。
(なんでアイツらは……なんで俺は……!!)
ジェッソが街中のスキルストーンを道具に加工する店の前を通る。
今や人の生活の根幹にあり、犯罪や旅さらには政府の重役すら使用しているストーン。
安物の石でさえ今のジェッソにはどんな宝石よりも輝いて見えた。
「あー、これは厄介ね……」
プールがデバイスを操作しながらつぶやいた。
「ん?どうしたんだ?」
「このあたりにW・I・Mのメンバーの目撃情報が有るわ……」
飽き飽きといった様子でプールが話す。
「W・I・Mってそんな厄介な組織でしたっけ?結束力と政府への不満が強い真世界政府も方が厄介なんじゃないですか?」
カウスがプールに向かった尋ねた。
「確かに組織力とかは、明確な目的を持った真世界政府の方が厄介だ、だがな?W・I・Mの奴らは殆どが単独の愉快犯で組織の結束は皆無、頭を潰してってのはできないんだ、目的自体不明だけどな……ま!いずれにせよちょっと厄介なチンピラどもって覚えておいてくれ」
カウスの疑問に烈火が答える。
「やけに詳しいわね?何かあったの?」
プールが烈火に疑問を投げかける。
「秘密の組織ってロマン有るだろ?だからさ!」
ニヤリと笑う烈火。
「いずれにせよ、組織に打撃を与えるのが難しいんですね」
カウスが思案顔で話す。
「あー、途中から全く理解できない……」
レイジが隣でそうつぶやいた。
「師匠!ただ今帰りました!」
買い出しに行っていたジェッソがやおうの工房へ帰ってきた。
「おう……帰ったか」
やおうはジェッソを見向きもせず鉄の鉱石を見ていた。
「また、素振りしてきます……」
一人になりたくて素振り用の鉄塊を握り工房の裏に行く。
「フン!フン!フン!」
立て続けに素振りを繰り替えす。
(俺も!力が欲しい!……どんなことでもできる!力が!!)
夢中で素振りを続けるジェッソをいつの間にか仕立ての良いスーツを着て、手にはトランクを持った男が見ていた。
男自身かなり大柄な体型でスーツとは非常にミスマッチな印象を与えた。
とてもではないが工房の有る森に来る恰好ではない。
「何か御用で?」
首にかけたタオルで顔を拭きながら、ジェッソが男に要件を聴く。
「うーん、アナタ!合格よ!」
その男は妙に甲高い声で話始めた。
「な、何ですか!?」
男の思いも依らない行動に度肝を抜かれるジェッソ。
「だーかーらアナタは選ばれたのよ!ワタシにね!」
そう言って男がしなを作りウインクした。
「自己紹介が遅れたわね、ワタシはW・I・Mのメンバーの一人。キャンサーって人によっては呼ぶわね」
キャンサーがくねくねとしながらジェッソに近づく。
「W・I・Mのメンバーが俺に何の用だ!!ここにはお前たちにやるモンは何もない!」
鉄塊をキャンサーの頭めがけて振り下ろす。
「ンフフフフ!せっかちね~、でもそういうのって正義感にあふれててステキよ!」
難なく左手で受け止めさらにはそのまま手でねじ切ってしまった。
「んな!?」
到底人間業ではない行為に驚愕の声を上げる。
「どお?アナタもこんな力欲しくなぁい?」
右手に持っていたトランクを目の前で広げるキャンサー、そこには色とりどりのスキルストーンがあった。
「ねぇ?力が欲しいんでしょ?」
「……断るよ……反政府組織のアンタが俺にタダで力をくれるはずがないからな」
未練を感じさせる口調だが何とか断った。
「あら?ワタシ言った筈よ?アナタはスキルストーンを手に入れる条件をクリアしたのよ?」
「条件?テスト?悪いが俺はどちらも受けちゃいないぞ?」
「いいえ?したわ。アナタは力を強く求めた、それに見返したい人がいるんじゃない?」
見返したい人、その言葉にジェッソの脳裏にとある人物が浮かぶ。
再びキャンサーがニヤリと笑う。
「さあ、アナタの願いが叶うまであと僅か……手を伸ばしなさい?」
トランクの中のストーンが再び輝いた、怪しく誘うように……
その日以降ジェッソは工房から姿を消した。
「がぁ!俺が!!クッソ!こんな奴らに!!」
服があちらこちら焦げた男が倒れる。
「ハッ!!相手とタイミングが悪かったな!俺様は今、絶好調なんだぜ?」
烈火が烈火狂儘を構えつつ男を見下ろす。
ジェッソと別れた一行はプールの情報をもとにW・I・Mのメンバーを街中で発見し交戦したのだ。
「烈火のオッサンってやっぱスゲーや……」
レイジが一方的すぎる戦いを離れたところで見ている、現在武器が無い彼は文字どうり戦闘不能なのだ。
「わ、私もびっくりです!烈火さんってお酒飲んでるイメージしかありませんでした」
はじめて烈火の戦闘を見るカウスが驚く。
「ガーハハハハ!いくらでもかかってこいや!」
笑ながら男の持つスキルストーンを破壊した。
確保された男の話では、最近W・I・Mを名乗る男に渡されたらしい、最初は反政府組織の道具であるため使用はためらっていたが、使っているうちにだんだんと楽しくなりついには、自分をフッた元恋人を襲ったのだという。
今ではすっかり反省し初犯という事もあり、厳重注意程度で済まされた。
(けどこの男にストーンを渡したのは誰なの?まだ裏がありそうね……)
プールは自身の不安をぬぐいされないでいた。