スキルカオス   作:ホワイト・ラム

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この世界の価値観

嫌な匂いがする。

ケダモノがまき散らした体液、火薬、そして人が焼ける匂い。

目の前はまさに惨状と呼べる事態。

人だったモノがそこらじゅうに落ちている、昨日自分が殺した兵士二人の比ではない量の死体が転がってる。

不快、ひどく不快な感情が烈火の中に渦巻いている。

別に博愛主義者を気取る気はないが、この死体それぞれにも家族が有り、夢が有り、そして愛すべきものがいたハズだ。

自身の足元に居た人間が、うめき声をピタリと止め動かなくなった。

死亡リストに1名追加……

数字上ではたったこれだけで済まされてしまうのだろう。

その事実がさらに烈火の不快な気分を煽る。

何故……なぜ目の前の少女は。

「残念だけどファンタジー要素は零っ♪オジサン、足音が五月蠅いから」

こんなにも平常心でいられるのだろう?

「……若すぎるな。5、6年待てば……っ_______痛ぁっ!?」

突然少女がこちらに発砲した。

16と17から奪ってきた銃がきれいに破壊される。

どうやら二発撃ったようだ。

自身の身体に当たらなかっただけ良かったが決して友好的なアクションではないのは確かだ。

「おいおい冗談だろ!?俺様に敵対する気はねぇぞ!?」

自身の両手を上げる。

この世界で降参のポーズがこれであってるか少し心配だが……

「ふざけた格好で戦場に居る方が悪いよ☆」

少しだけニコリとするが目が全く笑っていないのが恐ろしい。

「ふざけた格好?普通だろうが。俺様から見れば、嬢ちゃんん達の方がふざけた格好だ、戦争ごっこか?」

敢えてふざけた態度をとってみる、こちらは兵士ではない。

それに……

(俺様のこの真っ赤な服はデート用の勝負服!酒に女にギャンブル!すべてに対して真剣な心持ちの現れ!脱ぐ気はねーな!)

「…………脳味噌まで黴びてるの、オジサン。戦闘服も知らないなんて……余程の平和ボケと思えるよ」

こちらの心を読んだような相手の言葉に少しだけギクリとする烈火。

平和ボケしたのは確かな事実であるため、口を何とかつぐんだ。

「平和ボケした阿呆はさっさと消えて☆じゃないと…………この場で家畜の残飯にしてあげる」

少女はなおも言葉を続ける。

おそらくこの少女は烈火を殺すことに対して何のためらいも、心残りも作りはしないだろう。

その事が、烈火とこの少女の生きている世界の違いを思い知らせた。

通信でも入ったのか、少女が僅かに烈火から注意をそらす。

「なんでもないよ」

通信相手に対してそう告げる。

少女にとっては本当に「何でもない」ことなのだろう。

何度も相手と遭遇し、ただ殺す。

何時からか、その事に何のためらいも恐怖もなくなった存在。

おそらく戦場で必要とされるであろう才能、そして心構え。

「オジサンは平和ボケした国で生き過ぎていたんだと思うよ?だから、私如きにも見つかる。……死にたくないなら、故郷に帰る方が身の為。自殺願望持ちか、十字軍気取りなら、余所でくたばってくれないかな。……オジサンみたいな、酒と牝犬臭いクズは迷惑だから」

そう、いい残し壁の一部が破壊された倉庫に入って行った。

「故郷に帰れか……」

懐から煙草とマッチを取り出し、火を付ける。

煙が肺と器官に満ちていく。

なぜか自身の故郷を思いだす烈火。

温かい国、海に良くナンパ目的に遊びに出かけた、子供たちの笑い声。

すべてがどれも懐かしい……

「平和ボケか……」

確かに争いとは無縁の世界、ここに比べれば理想郷ともいえる国。

しかしその国はもうない……

だから烈火は旅人なのだ、理想を求めるから進み続ける。

「ん?もう終わりか……」

思った以上に思い出に浸っていたらしい。

吸い終わった煙草を道端に捨てた。

「だが……俺の旅はまだ終わらねぇ」

そのためには武器が必要だ。

その力を得るため、少女が入っていた倉庫に自身も入っていく。

生き残る、ただそれだけのために……

「……殺る気なら、そのふざけた服を捨てたら?オジサン。『俺を殺してくれ』って全身でアピールしてるよ。……そんな馬鹿が武器を持ったところで邪魔。目障りだから」

倉庫の出口で再び少女とすれ違う。

何様の積りか知らないが説教を垂れてくる。

たぶんこの場で兵士が100人いたのなら99人が少女の言葉に共感を覚えるのだろう。

しかし烈火はそんな事に興味が無い、自身の服装も変える気はない。

自分のしたい様に生きる。

それが烈火の全てだった。

「すっかり忘れちまってたな……そういう意味では感謝……か?」

自嘲気味に笑いながら倉庫を漁る。

「撃てて、当たれば基本どれでも一緒だよな?」

トリガーさえ引いて当たれば問題ないと言った考えで、使えそうな銃を探す烈火。

「アサルトライフルって奴かコレ?」

立てかけてあった銃を失敬する。

近くに会った弾薬を銃の弾と比較する。

「何とか規格は同じみたいだな」

弾薬をリュックに詰める。

「後、デカいのが一発欲しいよな、バズーカ的なの」

さらに倉庫内を漁る。

「お!コレ良いんじゃないか?」

RPGのような大型の銃器を手にする。

「弾は……っとデカいし重いな……二発が限度か」

予備として一発分の弾を手に入れた。

「さーてと、酒は無いのか?まあ、いいか」

そう言って倉庫の外に飛び出した。

大型の車両が発進しようとしている。

「おーい待ってくれよ~」

走りながら車に近づく。

「……何の用、オジサン。さっさと国に帰ってよ~邪魔だから」

飽き飽きしたと言った風に先ほどの少女が言う。

(あ、そこにいたのね)

少女に仲間がいた事ににわかに驚く。

「帰れるんなら、さっさと帰るって。……帰れねぇんだよ。俺様が元居た場所に!」

(こいつらはすき好んで俺様がここに居ると思ってんのか?)

心の中で悪態をつく烈火。

そんなことを考えていると再び唸るエンジン。

「おいおいおいっ!?薄情だなお前らっ!?」

再び車の前に踊りでる。

(轢かれねーよな?)

自身の行動に冷や汗を流す烈火。

「どいてくれ、轢き殺されたいのか?」

運転席の男がそういって車を止めた。

(あぶねーあぶねー)

ホッと胸をなでおろす烈火。

「轢き殺されたかねぇよ。どうしてそう、短気なんだよアンタらは!」

「ここが戦場だからだ」

ぴしゃりと男が言い放った。

「戦場なら、人を見捨ててもいいと?」

「誰もそうは___」

「寝言は寝て言いなよ、オジサン。人の価値ってのは確かに高いよ。……でもね、それはあくまで上の連中だけ。オジサンみたいな奴は見捨てられるのが普通なの。……で、オジサンはそこまで私たちに固執する理由は、私達と行動した方が安全だと思ったからでしょ?」

先ほどの少女が横から口をはさむ。

(あーあ、グタグタと良くしゃべんな~。さんざんブッ殺しといて{人の価値}かよ、ステーキ食いながら生き物殺すなっていう自称人格者みてーだ)

悪態をつきながら話を聞き流す。

「それは間違い。私達と行動する方が危険だよ。素人をうまく扱えるほどの余裕は無い」

しかし{素人}その言葉にカチンときた。

「俺様が弱い?ふざけんのも大概にしろよ、嬢ちゃん」

要するにこいつはしったっぱの兵士には価値が無くて、強い奴と位が高くて酒と女に溺れる司令官の方が価値が有ると言ってるのだ。

(一体それは誰が決めた基準なんだ?たとえそれがセオリーだとしても俺様には一切それに従う義理はねー!誰だろうが頭に弾丸撃ちこみゃ死ぬ、どっかの頭のおかしなヤツが言ってた。{銃は平等を人々に与える}と、ならこの銃で俺様が成りあがってやれば問題ない!)

「弱いかどうかはまだわかんねーぜ?。……なぁ、一緒に行こうぜ?」

自身の欲望の一歩目に手を掛ける。

男たちが話し合いをしている。

聴いてもほとんど関係ないので、懐から再び煙草を取り出し火を付けた。

「……アンタ、名前は?」

一人の男がそう聞いてきた。

「烈火!本名じゃねーがみんなそう呼ぶ!」

そう名乗った。

メンバーたちがそれぞれ挨拶をする。

「メドヴェーチ……どういう意味だ?」

全員がメドヴェーチと数字で自身の名を答えた。

「今は関係ない。……早く乗れ」

お許しが出たみたいだ。

「ヘイヘイ、乗りますよ……っと」

吸っていた煙草を捨て軽やかに車に乗り込んだ。

(思ったより狭いな……まいっか)

そう言って座席に腰を下ろす。

「……なんで私の所?」

さっき会った少女、メドヴェーチ3と名乗っていた。

「どうせ乗るんなら、野郎の隣より嬢ちゃんの隣がい___」

「黙れ汚物☆」

「ごふっ!?」

水月に衝激

(なんでぇ、少しはかわいげがあるんじゃねーか……)

そう思いながら烈火の意識は闇に沈んでいった

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