おまたせしてすいませんでした。
「そんな……まさか、もう?」
プールが燃え跡となったかつて酒場だった場所で力なくつぶやく。
連絡が入ったのはついさっきだ、バスタラの酒場が燃えているという通報うけて、現場に向かった。
しかし実際には生き残りは居ないらしい、烈火らしき男が入って行ったのは目撃されているが、死体は完全に炭化していて年齢はおろか性別が付く者自体少ない。
「やっぱり真世界政府が動いてる……烈火を最初に潰したんだ……」
現時点でプールの率いるメンバーの最強戦力は間違いなく烈火だ。
しかしそれもすでに潰され、プールは嫌でも真世界政府の本気を思い知った。
「みんなを……みんなを集めなきゃ!!」
そう言って自分たちが泊まっている宿屋に勢いよく走っていく。
否、逃げ出したというべきだろうか?
「そんな事が……烈火のオッサン……」
報告を聞いたレイジが力なくうなだれる。
「ま、まだ烈火さんと決まった訳ではありませんよ!!きっとそのうち……」
カウスがレイジを励まそうとする、しかしそれはあまりにも可能性の小さな希望的観測でしかない事をカウス自身わかっている様だ。
「皆の者待たせたな!!」
その時、宿屋の扉が開く。
顔を覗かせたのは別行動していたサイロスだった。
「あ、お兄ちゃん……」
「ん?どうした?何か有ったのか?」
プールは今日の事をすべてサイロスに話した。
話の最中珍しくいつもやかましいサイロスが黙って聞いていた。
「……そうか……そんなことが……しかし私達にはうなだれている時間は無いぞ!!そいつがどうなったかはまだわからん!!しかしそいつを殺しに来た奴は確実にこの街にいる!!今は仲間の死よりも守るべき物が有る筈だ!!お前は世界政府のエージェントののだろう?感傷を捨てるのだ、辛いだろうがそれがお前の選んだ道だ!!」
サイロスは厳しくプールに諭す。
「けど……」
「やかましいぞ!!お前の仲間のそいつは強かったんだろ?そいつを拉致したにせよ、殺したにせよ、そいつをどうこうできるヤツがこの街にいるのは確実だ。私達に後ろを振り向いている時間は無い!!すぐ後ろに危機が迫っているのだ!!死にたくないなら弱さを捨てろ!!」
尚も縋り付くプールを振り払う。
「今日は全員で固まって行動する、食事も毒を考慮しカン詰、ふたの開いていないペットボトルだけを飲め!!」
サイロスがせっせと仕切り始める。
それは少しでも妹に対して心を落ち着けさせるための時間を作ろうとする、彼なりの優しさなのかもしれない。
翌日烈火が抜けてメンバーが減ったプール一行は再びウコギナーグへ向かった。
今日は世界政府からプールの上司がこちらに来る予定だ。
「やあ、プール。いつもお仕事お疲れ様」
約束の部屋に通された時、ソファーに座っていた優男が柔和な笑みを浮かべ挨拶する。
「あれ?レイジとサイロスも一緒か?」
プールに同行していた二人にも挨拶をする。
「シロガネさん……お久しぶりです」
「おお!!久しいな!!」
レイジサイロス共に挨拶を繰り出す。
「え?3人とも知り合いなの!?」
「シロガネさんは俺と同郷なんだ、街でも人気だったな……身寄りのない俺の世話も良くしてくれたよ……親代わりの兄弟みたいな感じかな?」
レイジが思いで深そうに話す。
「その街で、私達3人は出会ったのだ!!」
サイロスがそう補佐する。
「そうなんですか!!義兄さんよろしくお願いしますね!!」
ワイのワイのと話をし始めるが、その部屋にミカゲが入って来たことで話は一旦中断された。
「チッ、シロガネか……」
シロガネを見た途端露骨にミカゲが気に入らなそうにする。
「なんともまぁ……わざわざ11部隊の隊長の一人が来て下さるとは……光栄だすなぁ?」
皮肉たっぷりでミカゲがそう言い放つ。
「ありがとう、けどあなただって11部隊の隊長の一人でしょう?」
全く意に反さないというようににこやかに返す。
「なぁ、プール11部隊って?なんだ?」
レイジが小声でプールに聴く。
「11部隊ってのは世界政府の部隊よ、名前の通り11個の部隊が居てそれぞれ仕事の部署が違うの。シロガネさんが隊長を務めて、私が所属する第9部隊は、地方の地方の暴徒鎮圧がメイン。それに対してあのミカゲ所長は第4部隊、主な仕事は犯罪者の収容と校正ね」
プールが同じく小声で説明する。
「まあ、いいか……せっかく隊長殿が来てくれたんだ私のウコギナーグの見学を許可しましょう。実際私の作った設備を見ればここがどれだけ安全な場所かわかるでしょう」
そう言ってミカゲが立ち上がった。
「皆さんも一緒にどうぞ、まず入り口の途中に有る中庭へ行きましょうか?」
そう言って扉を開け、どんどん奥へと進んでいく。
複雑に曲がった通路を抜け厳重に鍵がかけられた扉を開ける。
「おお……」
外の様子に思わず言葉を漏らすレイジ。
巨大な塔の中庭に出たのだ。旧時代の遺跡を使った作られた塔なので現代に存在しない巨大さなのだ。
「あそこは職員たちの生活の基盤です、収容所は地下に有るのですが……先に見せておきたかったんですよ。……この世の見納めとして!!」
突然ミカゲの態度が豹変する!!
「プール!!レイジ!!下がれ!!」
いち早く反応したシロガネが二人を突き飛ばす!!
その瞬間シロガネを囲むように地中から4枚の鏡が現れた。
「なんだ……コレは?」
そこは4枚の鏡の無限反射の世界、シロガネが手を差し出すと鏡の中に消え、後ろの鏡から消えた手が出てくる。
言うなれば鏡の無限結界。
「シロガネさん!!」
「待て!!こっちに来るな!!来たは良いが出られなくなる可能性が高い!!」
レイジとプールが近寄ろうとするがシロガネはその場で制止する。
「貴様!!なぜこんな事をする!!」
サイロスがミカゲに詰め寄り激しく問いただす!!
「触るな!!負け犬が!!理由が知りたいなら説明してやる!!答えは単純だ!!私がシロガネの事が大嫌いだからだ!!あんな血筋もない若造がスキルの能力だけで私と同じ11部隊の隊長だと!?認められる訳ないだろう!!私が10年の歳月を重ね手に入れた地位を奴は3年で手に入れた……!!歴史も一族の偉大な血もないクズ同然が私と同じ場所にいるのだ!!許せる訳あるまい!!だから!!だから
その言葉と共に再び地面から3枚の鏡がミカゲの後ろから出現した。
「ッ!!」
鏡に映った一人を見てレイジの背中に悪寒が走る!!
一枚に付き一人、それぞれがこちらに向かって歩き出し、扉をくぐるようにこちらに現れた。
「ごきげんよう?私の首は元気にしていたかしら?」
貴族を思わせる豪奢なドレスの様な服に不、釣り合いな巨大な鋏。
レイジのトラウマのサロメだった。
「待て、お前の仕事はまだ終わってないだろう?」
それを制止するのは別の鏡から召喚された人物、こちらの人物もレイジは良く知っていた。
中国の道士を思わせるようなデザインの青く袖が広い服、そしてその袖から漏れる金属がこすりあわせるような音。
真世界政府の研究者ルクスだった。
そして最後の一人はレイジの知らない人物だった、
白い毛皮でアクセントをつけたロングコートに顔の下半分を覆うようにまかれた青と白のストライプのマフラー。
しかし明らかに雰囲気が他のメンバーと違った。
この男こそ、真世界政府の4人の最高幹部の一人にして事実上の真世界政府のボス。
シュアイズだ。