あらかじめご容赦をお願いしましゅ。
(;ω;)うpする場所を間違えた為、こちら側に再うpでしゅ。
ご迷惑をおかけしました。
『ヨコシマ、少し頑張りすぎよ』
来るべき決戦に向け、横島は都庁地下にある霊動シミュレーターで修行しており、一時(ひととき)の休憩をしている所に心配をしたルシオラがやって来た。
『でもなルシオラ、あのアシュタロスが相手なんだぞ。何時ものおちゃらけで倒せるとは思えないし、頑張りすぎる程度じゃ不安なんだよ…』
『馬鹿…、でもありがとう』
壁に背を預ける横島に顔を寄せるルシオラ、そして何時もの煩悩を見せる事無く横島はスッと目を閉じその唇を受け止める。
『ルシオラ…お前は俺が守る』
『うん、ヨコシマ』
決戦前のささやかな日常の一コマだった。
―◇◆◇―
「ふああぁ~~~あっ…と」
眠りから覚めた横島は一際大きなあくびをしながら起き上がる。
「…また夢か。くっそ~ぉ、せっかく綺麗なねーちゃんと良い雰囲気になったっちゅーに何で夢の中の俺はあそこで押し倒さんのじゃ!」
此処はGS世界では無く、オカルトや霊能力などが無い別の世界でこの少年もまたこの世界での横島忠夫である。
「でもあの娘、会った事なんか無い女の子なのに妙にリアルな夢なんだよな。今だって顔や声もはっきり思い出せるのに……何故かな?名前だけが思い出せない。いや、現実には会った事の無い娘だから当たり前なんだけど」
頭を掻きながら何とかその名前を思い出そうと頭の中で夢を再生するが、その名前を呼ぶ所だけがノイズが走る様に聞き取れないでいた。
「はあ~~、……学校行くか。ふあ~~ぁ」
そして再びあくびをしながら着替えるのであった。
―◇◆◇―
「でねでね、ソイツが熱ぅ~いキスをした後に言う訳よ!『お前は俺が守る』って。きゃあ~~~♪」
「あはは…。ねえ、そろそろ砂糖吐いていい?」
場面は変わり、此処は横島が通うのとは別の学校。
この世界ではルシオラは人間としてごく普通の生活を営んでおり、彼女はクラスメイトの女子に昨夜見た夢をデレデレの表情で語っていた。
「で、その愛しの彼の名前は思い出せたの?」
「全然……、何でかなぁ~~。夢の中じゃ確かに呼んでいたのよ、なのに朝起きたら名前だけが思い出せないのよ」
横島とルシオラ、この世界では蛍と呼ばれているが何故かこの二人だけがGS世界での出来事を夢で見ていたが、学区が違う事からか未だに二人は出会う事が無かった。
「何でなのかなぁ?顔も声も、唇の感触もはっきりと思い出せるのに…って、いやぁ~~ん♪」
「ゴメン、ちょっと自販機でブラックコーヒー飲んで来るね…」
―◇◆◇―
場所は変わって此処は横島が通う学校。
彼はこの世界でもクラスメイトであったピートとタイガーに夢の話を語っていた。
「へえ~~、横島さんの夢の中じゃ僕は吸血鬼なんですか」
「まあ、悪い奴じゃ無かったぞ。ただ、父親の頭の中が中世で脳を腐っていたけどな」
「はははは……。イヤすぎますね、ソレ」
「しかし、夢とは言え壮大な物語ジャノー。横島サン、夢の中じゃワッシはどうだったんジャー?」
「えっと、タイガーか?えっと、その、たしかいるにはいたんだが…」
「影が薄かったんジャノ~~」
あわれタイガー。どうやらこの世界でも影の薄さは変わらないらしい。
―◇◆◇―
そして彼等は最後の決戦時の夢を見る。
『ルシオラ!俺は…俺は!』
『もういいのよ、ヨコシマ。お前は十分すぎるほど頑張ったんだから。私は満足してるわ』
『何が満足だよ!俺は…、俺は約束したのに。お前を助けるって約束したのに!』
『ヨコシマ、私達は何も無くしてはいないわ。恋は実らなかったけど何時か、何処かできっとまた巡り合える。その時こそきっと…』
『まってくれ、ルシオラ!俺はまだお前と…』
『ありがとうヨコシマ。…さようなら』
『ルシオラァーーーーーッ!』
―◇◆◇―
「何なんだよこのオチは」
夢から覚めた彼の気分は最悪であった。
世界を救うには彼女の犠牲が必要だった。
彼女を選ぼうにも彼女自身がそれを拒んだ。
結果、世界は救われたが彼女との恋は悲恋で幕を閉じた。
―◇◆◇―
「はあ、サイアク」
着替えながらそう呟く少女、
「本当にそれで良かったのかなぁ、夢の私は?」
夢の中の自分は満足だと言っていたが、本当にそうだったのか?
あの魔王も約束は守っただろうし、世界を捨ててでも彼と幸せになれるのだったらそれを選んでも良かったんじゃないのか?
そうやって考えてはみるが……
「でもそれじゃ幸せにはなれなかったんだろうな」
世界の全てを、仲間達を見捨てての選択では例え二人きりで暮らせてもやはり後悔の中で生きて行かなくてはならなくなる。
「やっぱり、あそこで逃がすんじゃ無く無理やりにでも押し倒しておけばって…いやん、私ったら」
―◇◆◇―
「もっと頑張りようがあったんじゃないのか、夢の俺」
学校へと進む雨の中、言っても仕方が無い事だと分かっていてもつい呟いてしまう横島。
もっとも、平凡な日常が続くこの世界で生きている自分と違い、夢の中の自分は漫画やアニメでしかあり得ない様な戦いを潜り抜けた結果があの結末なのだ。
「とは言っても俺が文句をつける事じゃないか」
夢とはいえ、見ていただけの自分が文句をつける資格は無い。
溜息を吐きながらも学校へと足を進めるのであった。
―◇◆◇―
翌日、休みだった事もあり横島は気晴らしがてらに少し足を伸ばして別の街へと散歩に来た。
「今日は良い天気になって良かったな」
横島の表情は昨日とはうって変わり明るい笑顔であった。
見知らぬ街で気分が変わった事もあるが、彼には何かの予感があったのだ。
今日、此処で何かが変わる、そんな予感が。
そして街を一回り歩いた夕暮れ時、ふと空を見上げると沈み行く太陽が空を紅く染めていた。
「夕焼けか……、昼と夜との一瞬の隙間…だから」
「だから、余計に綺麗」
「「えっ!?」」
夕陽に見惚れて気付かなかったが、すぐ傍に居た誰かが同じ言葉を呟いた事に二人は驚き、お互いの顔を見合うとその瞬間……
時間が止まった。
しばらくそうして見つめ合っていたが、ふと横島が歩き出して蛍の横を通り過ぎる。
はっとした蛍もすぐさま振り返りその背中に声をかける。
「あ、あのっ!…。変な事聞く様だけど…」
横島も頭を二、三回掻くと振り向いて答える。
「俺も…ナンパだと思われたくねーーんだけど…」
「「君の名は?」」
それは出会いであり、そして再会。
二人は歩み寄り、お互いの両手をごく自然に掴みあう。
「「やっと会えた」」
あの世界で悲恋に終わった物語はこの世界で再び新たに始まる。
「これからもずーーっと一緒に見ようね、あの夕陽を」
~おしまい~