こんな、横島忠夫はどうでショー!   作:乱A

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(`・ω・)一話完結と言いつつ、いきなり続いたでござるの巻。


「てぽてぽお使い唯緒ちゃん」

 

「じゃあ唯緒(ただお)、お使いをお願いね」

「うん、いってくゆね。おかあさん」

 

てぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽ

 

唯緒は可愛い足音を鳴らせ、腰まで伸びた長く艶やかな黒髪を揺らしながら商店街の方へと走って行く。

 

百合子は付いて行きたい衝動に駆られるがぐっと我慢した。これは唯緒の初めてのお使いなのだ、もし付いて行ったのがばれると暫くは口を聞いてくれないだろう。

 

実際に以前怒らせてしまった時は一週間もの間口を聞いてくれなかった、その時は余りの寂しさで唯緒の方から話しかけて来てくれるまでかなり老け込んでいたらしい。

 

「それにあんまり心配する必要もないのよね」

 

そう呟き、唯緒が道の角を曲がるのを見届けると家の中へと入って行く。

 

てぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽ

 

「えへへ~~、おつかいおつかい、はじめてのおつかい♪」

 

横島唯緒、三歳。この少女は「魔神大戦」での英雄、横島忠夫が生まれ変わった姿である。

彼は魔族との闘いの際、不運の死を迎えたが最高指導者達の手によって少し時間をさかのぼっての転生で再び横島夫妻の子供として新たな生を受けた。

 

「おや、唯緒ちゃん。お出かけかい?」

 

八百屋のおじさんが話しかけて来た。

 

「うん!唯緒ね、はじめてのおつかいなの♪」

「そうかいそうかい、唯緒ちゃんはえらいねぇ~~」

「えへへ~~、唯緒、えやいの。えっへん!」

 

誉められたのが嬉しいらしく、唯緒はその小さな胸を張る。

 

「じゃあ唯緒ちゃん。ウチの野菜も買って行ってくれないかい?唯緒ちゃんに『食べてほしいよ~』って言ってるよ」

 

八百屋の親父はそう言いながら手に取った野菜を一つ唯緒に差し出す。……が。

 

「や~~!タマネギ、きやい~~~!」

 

唯緒はすぐに逃げ出した。

 

「はははは、タマネギが嫌いな所は変わらねえな」

 

走り去って行く唯緒を見つめながら親父は笑っていた。

 

その頃、町の上空に一つの影が漂っていた。

それは他の町で雑霊や低級霊を吸収して、今では下級魔族ほどの力を得た悪霊だった。その悪霊は力を求めていた、神にも匹敵するほどの力を得て世界に君臨したいと。

 

『足りない……まだ足りない。もっと、もっと力を……ん?』

 

そんな悪霊の視線の先には一人で歩いている唯緒がいた。

 

『あの小娘、かなりの力を持っているな。いいぞ、あの小娘に取り付けば生き返れる上にかなりのパワーアップが出来る。フフフフ、ハァーーハッハッハッハッ!グゥーーーッドタァイミィングゥゥゥーーーーーッ!』(cv・セルの中の人)

 

そして悪霊は唯緒に乗り移ろうと上空から舞い降りて来た。……が、

 

『浮幽霊・烈波ぁーーっ!』

『ぐはあっーー!』

 

突然襲いかかって来た浮幽霊による多段アッパーに悪霊は吹き飛ばされる。

 

『な、何だいきなり!?』

 

『浮幽霊・ギャロップ!』

『がはあっ!』

 

今度は上空からの激しい蹴りが襲いかかる。

 

地面に叩き付けられるかと思った瞬間、何者かに掴まれる。

 

『貴様、今唯緒ちゃんに何をしようとした?』

『は?』

 

厳つい親父の幽霊が凍りつきそうな視線で悪霊を睨みつける。

そして…

 

『自縛霊・ブリッジッ!』

 

肩の上に抱え込みギリギリと背骨を逆方向へと押し曲げていく。

 

『ぎゃあああああーーーーっ!』

 

放り投げられ解放されたかと思ったのもつかの間。

 

『次は俺だ』

 

別の幽霊に両腕を掴まれ、ふとももの所を両足で固定され、そのまま両腕をひねり上げられる。

 

『自縛霊・スペシャル!』

『があああああーーーーっ!』

 

『次は私に任せてもらおう』

 

老紳士の霊、彼の名は鷲五郎。孫の守護霊をしていたが余りの孫の粗忽さに愛想を尽かし今では自称唯緒の守護霊として彼女を影ながら護っている。

 

愛用のステッキを中段に構え、悪霊に向け一歩を踏み出す。

悪霊は見た。その刹那、ステッキが九本に分かたれたのを。

 

『九守護霊・龍閃』

 

剣術の基本である九つの斬撃が全てが一瞬にして悪霊を襲う。

 

『ぎゃあああーーーっ!』

 

『お次は私だ』

 

石神は悪霊を上空に放り投げるとマッスルな星の王家に伝わる三大奥義の一つを繰り出す。

 

『土地神・スパーク!』

『ぐぎゃあああーーーーっ!』

 

悪霊は何が何だか分からなかった。

自分は力を得ていたはずだ。少なくともそこら辺に居る浮幽霊如きでは自分に触れる事すら出来ない筈なのに。

だが実際には触れるどころかもはや逆に滅ぼされる寸前である。

 

そう、悪霊は知らなかった。助けられてばかりで助ける事が出来なかった彼女の前世、忠夫の為にも彼の生まれ変わりである唯緒を護ろうと街の住人だけでなく幽霊達も彼女を護っている事を。

 

其処に騒ぎを聞きつけたのか唯緒がやって来た。

 

「みんな、なにやってゆの?」

 

唯緒は可愛らしく小首を傾げながら聞いて来る。

彼女にとって彼等は自分と仲良くしてくれる友達であって、幽霊だからと言って怖がったりする事は無かった。

 

そんな唯緒を見て、幽霊達は途端にデレデレになる。

何の事は無い。前世がどうのこうのではなく、彼等はただ単に唯緒に萌え萌えなだけの様だ。

 

『何でもないよ。皆でプロレスごっこをしてたんだ』

「そうなんだ。唯緒はねぇ、はじめてのおつかいなんだよ♪」

『そうか~~、唯緒ちゃんはえらいんだねぇ~~』

 

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチッ

 

皆は顔を綻ばせながら拍手をし、悪霊も何故かつられて拍手していた。

 

「えへへ~~」

 

唯緒は照れながら後ろ頭を掻くのであった。

 

『さ、急がないと。お母さんに怒られるよ』

「うん、いってくゆね。ばいば~い」

 

唯緒はその小さな手を振ると、可愛らしい足音を鳴らして走り去っていく。

 

てぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽ

 

『ばいば~い』

 

幽霊達はデレデレの表情で手を振っていたが彼女が見えなくなると途端に冷たい表情になり、

 

『さてと、そろそろ終わりにするか』

 

そう言いながら巨漢の幽霊が悪霊を掴むと、遥か上空へと放り投げる。

 

『浮幽霊・スカウティング・ボンバー!』

 

『うわああああーーーーーーっ!』

 

『さあ、ジェームズ伝次郎。止めだよ』

『OK、レッツ・ミュージック!』

 

伝次郎はマイクを取ると、その歌声(ソリタリー・ウェーブ)を悪霊に叩きつける。

 

『ガ○ガ、ガン○、 ~略~ ○ガガ、ガーオ○ーイー○ー』

 

『ぐわあああああああああっ!』

 

悪霊の体は徐々にひび割れて行き、最後には

 

『ガー○ガー○ーガァーー!』

 

巨大な金色のロボットの幻影が現れ、巨大なハンマーを振り下ろして来た。

 

『嫌ァーーーーーーーッ!』

 

そして、悪霊はそのまま光になって消え去った。

 

『ちっくしょおおぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーっ!』

 

『イエーーーイッ、サイコォーーーだッズェ!』

『『『イエーーーーーーーーイッ!』』』

 

そう、百合子が安心して唯緒を送り出したのは彼等が唯緒を護っているからなのだ。

彼等の萌えパワーは上級神魔族にも匹敵する。

 

『これが勝利の鍵だ!』

 

 

 

―◇◆◇―

 

そして唯緒はようやく目的地の肉屋にたどり着き、店の中に入るとすぐに店の主人が出て来た。

 

「こんにちわーー、おつかいにきたよ」

「いらっしゃい、唯緒ちゃん。何が欲しいのかな?」

「あのね~、とりさん!!」

「ん~、ここはお肉屋さんでペット屋さんじゃないんだよ。鳥さんはいないかな~」

 

ちゃんと鶏肉を買いに来たという事は分かっているが少し意地悪気味に言ってみる。

すると案の定唯緒は少し困った顔になる。

 

「あのね、ちがうの。とりさんをかいにきたんじゃなくてね、え~と、え~と……そうだ、とりのおにくさん!!」

「そっか~、鶏肉だね。じゃあ、鶏肉をいくつ欲しいのかな?」

「え、いくちゅ?……え~と、ん~と。あ、そうだ!おかあさんにめもをかいてもらったんだった」

 

そう言うとポシェットからメモを取り出し内容を確認する。

 

「え~とね、しゃんまるまるこ」

 

そう言いながら小さな手で三本指を立てると笑顔で突き出し千円札を差し出す。

 

「鶏肉を300gだね。よく言えました」

「唯緒、えやい?」

「うん、偉い偉い」

 

そう、肉屋の親父は笑顔で唯緒の頭を撫でてやり、鶏肉の入った袋を持たせお釣りをポシェットに入れてやる。

 

「えへへ、じゃあしゃよなや」

 

笑顔で手を振りながら唯緒は店を出て行き、扉が閉まると親父は店の奥に隠れていた妻に声をかける。

 

「首尾はどうだ?」

「勿論、完璧だよ」

 

店の奥から出て来た妻のその手にはビデオカメラが握られており、さっそくその映像を確認すると二人の鼻からは赤い液体が零れて来た。

 

「ああ~~、唯緒たん。何て可愛いんだい」

「さあ、何時までも萌えている場合じゃない。さっそくダビングして百合子さんに渡さなきゃ。そうすれば見返りに唯緒たんのお昼寝の姿を録画したDVDが貰える事になってるんだからね。急ぐんだよ、アンタ」

「合点だ!」

 

何と言う事でしょう!百合子は家での唯緒の映像のDVDを取引に使い、各方面での色々な唯緒の映像を手に入れていたのです。

もっとも、公開できない(する気もない)秘蔵映像もあるのだが。(例えて言うならおねしょをして涙ぐんでいる唯緒の映像とか)

 

 

 

てぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽ

 

唯緒が家に向かって歩いていると公園の中に見知った人物を見つけた。

 

「あっ、タマモおねえちゃ~~ん!!」

「あら、唯緒じゃない。どうしたの、一人?」

 

九尾の狐の転生体タマモ。彼女も唯緒の前世である横島忠夫に想いを寄せていた一人であり当然、生まれ変わりである唯緒の事も可愛くて仕方がない。

 

てぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽ

 

「わ~~い♪」

 

ぽふっ

 

唯緒はタマモに駆け寄るとその足に抱きつく。

 

「ぐふっ!」

 

タマモは自分の足に抱きつき、頬をスリスリと擦りつけて来る唯緒に精神的な大ダメージを受ける。

 

「た、唯緒……?」

「タマモおねえちゃん、だっこ♪」

 

唯緒は満面の笑みで両手を差し出し抱っこをせがむ。

 

「ざぐれろっ!」

 

かいしんのいちげき、タマモに一億のダメージ。

もう止めて、私のライフはもうゼロよ。でも止めないで。

 

唯緒は両親以外ではタマモに一番懐いている。

もっともその理由は赤ん坊時代に彼女のナインテールをおもちゃ代わりにしていた為という事はタマモの為に内緒にしておこう。

 

「タマモおねえちゃん、どうしたの?」

「な、何でもないわよ。そうか、抱っこだったわね」

 

何とか“川岸”から還って来たタマモはゆっくりと唯緒を抱き抱える。

 

「それより今日はどうしたの、百合子さんは一緒じゃないの?」

「きょうはね唯緒、はじめてのおつかいなの。だからおかあさんはおうちでおるすばんなんだよ」

「そう、ちゃんとお使いが出来たんだね。じゃあご褒美にお姉ちゃんがアイスを御馳走してあげる」

「え、ほんと♪あ、でもみちくさたべたらおかあさんにおこられちゃう」

「大丈夫よ、ちゃんと百合子さんにはお姉ちゃんが言ってあげるから」

「わーーーいっ♪」

 

それから唯緒はタマモの膝に座ってソフトクリームを舐め、タマモは鼻歌を歌いながら唯緒の長い髪を自分と同じナインテールにまとめていく。

 

そんな二人をシロは草むらに隠れ、血の涙を流しながら撮影していた。

 

「くうう~~、あの時グーさえ出さなければ……」

 

実はこれも百合子の依頼、百合子は唯緒の撮影を二人にも頼んでいてその為、どちらが遊び相手になってどちらが撮影係になるかをジャンケンで決め、勝ったのがタマモだったのだ。

 

「おいしかった、タマモおねえちゃんありがとう♪」

 

アイスを食べ終えた唯緒はタマモに向き直りニッコリと笑顔を浮かべる。

 

「どういたしまして。さ、早く帰らないと百合子さんが心配するわよ」

「うん、じゃあ唯緒かえゆね」

 

そう言い、ベンチの上に立つとタマモの頬を両手で掴みタマモが何かを言う前にその唇に自分の唇を重ねる。

 

「ちゅう」

「!!!!!!!!」

「……えへへ、しゃよなやのちゅうだよ。じゃあ、タマモおねえちゃんまたね。ばいば~~い」

 

てぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽ

 

唯緒はベンチから飛び降りるとタマモに別れを告げて可愛い足音を鳴らして走り去って行く。

 

そんな中……

 

「こんのぉ~~女狐ぇ~~~っ!よくも先生の可憐な唇を奪いおったなぁーーーーーーっ!」

 

我慢の限界を超えたシロは隠れていた草むらから飛び出し、号泣しながらタマモに詰め寄って行く。

 

彼女だけは何故か先生という呼び方を変えようとはしなかった、彼女曰く『先生はたとえ生まれ変わっても先生に変わりはござらん。将来、拙者が霊波刀の師匠になったとしてもこの呼び方だけは変えるつもりはないでござるよ』との事だ。

 

「聞いておるのかタマモ!何とか言ったら………、タマモ?」

 

肩をゆすっても反応が無いのでシロはタマモの顔を覗き込んで見る。すると……

 

「…タ、タマモ……。お、お主は……そうであったのか」

 

タマモは何処かのボクサーの様に真っ白に萌え尽きて逝た。(誤字にあらず)

 

「タマモ、おぬしは…おぬしは漢であったよ…さらばでござる!!」

 

シロはそう言いながら滝の様な涙を流し萌え尽きて逝るタマモに敬礼をした。

そんな時、何処からともなくゴングの音が聞こえて来たそうな……

 

カーン、カーン、カーン、カーン、カーン、カーン、カーン……

 

 

 

―◇◆◇―

 

てぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽ

 

ふさふさふさふさふさふさふさふさふさふさふさふさふさ

 

 

唯緒が走るとその足音と同時にタマモに結わえられた黒髪のナインテールが揺れる。

 

「ぐはあっ」

「な、なんという破壊力」

「ハアハア、唯緒タン」

「いかん、コイツは危険だ。早く連れて逝け!」

 

そんな風に唯緒が家に向かって走っていると、ある一組の親娘が唯緒に話しかけて来た。

 

「あら、唯緒ちゃんじゃない。どうしたの?」

「にーにー♪わーい、にーにだ♪」

 

唯緒をにーにと呼びながら走り寄って来るこの少女は「美神ひのめ」。

美神美智恵の娘で唯緒より三カ月ほど年上である。(そう言う事にしといてください)

 

彼女は赤ん坊の時、忠夫が唯緒として生まれ変わって来た時、最初にそれに気付いた人物であり成長した今も唯緒の事をにーにと呼び続けている。

 

「あ、美智恵おばちゃんとひのちゃんだ」

「にーに、ひのとあそぼ♪」

「う~ん、いまはダメだよ。唯緒はおつかいのとちゅうだからはやくかえやないといけないの」

「やーー!ひの、にーにとあそぶの!」

 

「こらひのめ、我儘言ったら唯緒ちゃんが困るでしょ」

 

「やーー、やだーー!」

「じゃあ、ひのちゃんもうちにおいでよ。そしたらいっしょにあしょべゆよ」

「わーーい。ひの、にーにといっしょにいく」

「いいの、唯緒ちゃん?」

「うん、唯緒もひのちゃんとあしょびたいもん」

「にーに、はやくいこ♪」

「うん♪」

 

そうして二人は手を繋いで走って行く。

 

てぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽてぽ×2

 

「まったくひのめったら、唯緒ちゃんと仲がいいのは嬉しいんだけど……あの娘、まともな恋愛できるのかしら?」

 

美智恵のその心配は将来さらに深刻な物になるのであった。

 

そうして唯緒は無事に家まで帰りついた。

 

「ただいま~~」

「こんにちは~~」

 

「おかえりなさい、唯緒。あら、ひのめちゃんいらっしゃい」

「こんにちは、おばちゃん」

「おかあさんただいまっ!はい、とりのおにくさんかってきたよ」

「よく買って来てくれたわね。唯緒はお利口さんでいい子よ」

 

にこにこ笑いながら唯緒は買って来た鶏肉を百合子に渡し、百合子は唯緒を抱きしめて頬ずりをする。

 

「きゃあ~~、くすぐったいよおかあさん♪」

「にーに、はやくあそぼ」

「うん!おかあさん唯緒、ひのちゃんとあしょぶね」

「あ、分かったわ。ひのめちゃん、ゆっくりして行きなさいね」

「は~~い」

 

そうして二人は唯緒の部屋へと行き、暫くするときゃっきゃっと楽しそうな笑い声が聞こえて来た。

 

「こんにちは、百合子さん。ひのめがお邪魔してます」

「あらいらっしゃい美智恵さん。かまいませんよ、唯緒もひのめちゃんが来てくれて喜んでますし」

 

その後、帰って来た大樹と一緒にひのめと美智恵も横島家で夕食を食べ、ひのめはどうやら今夜は泊って行く事にしたようだ。

 

「ふう~~、満腹だ。唯緒が勝って来てくれた鶏肉はとっても美味しかったぞ」

「えへへ~~、おしょまちゅしゃまでした」

「ぐっ……ううう…ああーーっ、唯緒は本当に可愛いなぁ~~~!」

「や~~!おとうさん、おひげがいたいよ」

 

大樹は涙を吹き飛ばしながら唯緒を抱きしめて頬ずりをするが唯緒は頬に擦れる髭を痛がり、そして当然……

 

「何やっとるんじゃーーーっ!唯緒が痛がっとるやないか、この宿六が!」

「ぐぎゃああああーーーーーーーーーっ!」

 

モザイク処理が必要な物体になり下がったのであった。

 

「さ、あんなのは放っておいて二人でお風呂に入ってらっしゃい」

「「は~~い」」

 

「娘とのお風呂は父親の永遠の夢!」

「朝まで逝っとれ!」

「ぬあーーーーっ!」

 

 

かいしんのいちげき

タイジュをやっつけた(笑)

 

 

 

 

「すうすう…にーに♪…すうすう」

「くうくう…むにゃ…えへへ」

 

そしてひのめと唯緒は一つの布団の中で寄り添うように眠りについていた。

 

「まったく、ひのめったら。夢の中まで」

「ふふふ、唯緒はどんな夢を見てるのかしら」

 

娘達の穏やかな寝顔を見ながら母親達の顔もまた穏やかだった。

そんな唯緒の見る夢は………

 

 

―◇◆◇―

 

『おにいちゃ~~ん』

『お、来たな唯緒』

 

夕焼けに映える草原に横島忠夫は立っていて、走り寄り飛びついて来る唯緒を優しく抱きとめる。

 

『おにいちゃん!きょう唯緒ね、はじめてのおつかいがんばったんだよ』

『そっか~~、唯緒は偉いな』

『えへへ、おにいちゃんだいすき。もっとなでなでして』

 

唯緒は兄、忠夫に頭を撫でられながら忠夫の胸にじゃれ付いている。

 

何故此処に二人がいるのか?それは最高指導者達によって逆行転生した際に男ではなく女として転生した為かその体にはもう一つの意識が生まれていた。

その為、横島は新しい体をその意識に譲り、自分は守護霊といった立場で唯緒の意識下に引っ込んでいる事にしたのだ。

だから唯緒が眠りについた時などには、こうして意識下で会い、話し合う事などが出来るのであった。

 

『しょしてね、タマモおねえちゃんにアイスをごちそうしてもらってひのちゃんとあしょんでおふろもいっしょにはいったんだよ』

『良かったな、唯緒』

『うん♪』

 

膝の上に抱いた唯緒と遊びながら横島は彼女の事を考えていた。

 

《ルシオラの魂は何故か唯緒の方に入ってしまってるからな。唯緒も将来は人外の力を得るかもしれん、例えそんな事になったとしても俺が必ず護ってやるからな!!……しかし、可愛く成長した唯緒に悪い虫が着くと思うと……、許さん!! 唯緒と付き合うにはまず俺に勝ってからでないとな。フフフフフ》

 

何気に横島もシスコンの兄バカになっている様だ。

膝の上で無邪気に笑う唯緒を見て横島はただ、彼女の穏やかな幸せだけを願っていた。

 

《俺の、いや俺達の分まで幸せにならなくちゃな。なあ、唯緒》

 

 

~fin~

 

 

 




(`・ω・)という訳でとりあえずの終わり。
唯緒と忠夫は同一の存在であると同時に兄妹でもあるという設定です。
ですからネタバレな事を言うと唯緒が影法師(シャドウ)を出したとしたら横島が出て来るという裏設定もあったりします。

ではこの辺で。(^o^)ノシ

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