元々その世界に居る横島も居れば別の世界から転移して来た横島も居ます。
『横っち、発見や』
『さて、この世界の横島さんはどうでしょう?』
『どうやろな?』
・・・・・・・・・・・・
とあるビルの屋上、横島はその端に座って赤い夕陽を眺めている。
その隣には一人の少女が寄り添うように座り、横島の横顔を見つめている。
夕陽が照らしているからなのか、その頬は少し赤らんでいる様にも見える。
横島はその少女の視線には気付かないのか、そっと呟く。
「美神さんやおキヌちゃん達…。皆は元気にしてるかな?」
「む~~~、ぷいっ!」
その呟きを耳にした少女は先程までの見惚れてる様な表情とは一転し、頬を膨らませてそっぽを向く。
「ん、どうしたんだシャナ?」
「うるさいわね、何でもないわよ」
「そんな顔をして何でもないって事はないだろう」
「何でもないったら何でもない!」
「おい、シャ・・「帰りたいんでしょ!さっさと帰りなさいよっ!」
そう叫びながら顔を上げたシャナの瞳には涙が光っていた。
「シャナ、俺は」
「うるさい、うるさい、うるさーい!」
シャナは聞く耳を持たないと言うかのように叫びまくる。
もっとも、横島の横に座ったままで何処かに逃げ出そうともしないのだが。
そんな時、横島の額に巻いているバンダナに眼が開き、シャナに話しかけて来た。
それは、あの戦いの後に横島の内なる力を制御する為に小竜姫によって再び与えられた心眼であった。
・・・・・・・・・
『あちゃー。心眼がおるっちゅー事はこの横っちは別人やな』
『その様ですね。まあ、それはそれとして続きを見ましょう』
『せやな』
・・・・・・・・・
『心配はせずとも、この男は今更そなたを見捨てて帰るような真似はせぬぞ』
「し、心配なんかしてないわよ。別に忠夫が帰ったって私は構わないもん」
そう言い捨てるシャナだが、今度は彼女の首に掛けられていた
『シャナよ、そう言わずにもう少し横島忠夫を信じてみても良いのではないか?』
「何よ、アラストールまで」
『付き合いはまだ浅いが信用は出来る。心眼の言う通りお前を見捨てる様な真似はすまい』
「そ、それは……、解ってるけど……」
シャナは頬を紅く染め、俯きながらそっと呟いて横目で横島を見る。
何だかんだと言いながらも、横島の事は誰よりも信頼しているのであった。
そんなシャナを横島は……
「あーーっ!もう、かーーいーーなーーっ!」
「ひゃわっ!?」
シャナを抱き上げて自分の膝の上に乗せ、左手で抱き締めて右手で頭を撫で回す。
「こいつめ!可愛い、可愛い」
「うにゃぁ~~~~!」
かいぐり、かいぐりと撫で回され暴れるが、横島の膝の上からは逃げ出そうとしないシャナであった。
その後、しばらくじゃれ合っていた二人だが、横島は手を止めるとそのままシャナを背中から抱き締める。
「た、忠夫?」
「約束する、俺はお前を置いて何処にも行かない」
「忠夫……」
シャナは自分を抱き締める横島の両手を掴み、その顔を見上げる。
横島もまた、シャナのその顔を見下ろす。
二人の間にはもはや言葉は必要無く、シャナは潤んだ瞳をそっと閉じ、横島も瞳を閉じながらシャナの頬に手を触れる。
「ん……」
そして、二人の唇は夕陽の紅の中でゆっくりと重なり合う。
暫くして、同じだけの時間をかけてゆっくりと離れる唇。
シャナはそのまま横島の胸の中に顔を埋めてそっと呟く。
「忠夫……、好き」
横島はそんなシャナをそっと抱き締め、頭を優しく撫でていく。
これからも苦しい戦いは続くだろう。
これからも辛い戦いがあるのだろう。
だが、二人が一緒ならどんな戦いでも乗り越えて行ける。
今度こそ、約束を守る為に。
そう、決意を新たにする横島であった。
『ザーーーーーーッ!』
『ザーーーーーーッ!』
キーやんとサっちゃんはそれぞれ、グラニュー糖と黒糖を口から滝の様に吐き出すのであった。
まる
( ;ω;)<ザーーッ!(和三盆)