こんな、横島忠夫はどうでショー!   作:乱A

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第三話「さざなみ寮と翼を持つ少女なの」

 

美緒達は部屋の隅に移動してのの字を書きながらいじけている耕介を無視して横島達に注目している。

 

「はーなーれーなーさーいー!」

「やーー!やだー!」

「ねえ、那美おねえちゃん。久遠は何であんなに横島さんに懐いてるの?」

「私にも分からないの。初めて会った時にも怯えもせずに自分から近づいて行ったし」

「でも那美、あん人……」

「うん。お姉ちゃんも気付いた?横島さん、かなり強い霊力を感じる」

 

あいからわず久遠とタマモは横島を取り合っているが。

 

「いい加減にせんかタマモ」

「うう~~、でも~~」

「いいから、ほれ」

「はぁ~、仕方ないわね」

 

横島はそう言いながら自分の頭の上を指さすとタマモは溜息を吐きながら呟くき、狐の姿になって横島の頭の上に飛び乗る。

 

「なっ!?」

 

それを見て皆は、特に薫と那美は驚愕する、何しろ狐の姿に戻ったタマモは久遠とは違い九本の尾を持っているのだから。

狐になったタマモを見たとたん薫の目つきは鋭くなり、十六夜を抜くとタマモに切りかかるが…

 

キインッ

 

横島は霊波刀で十六夜を受け止め、薫と同じように目つきも鋭くなっていた。

 

「タマモに何をする!?」

「な、何……、光る剣?…貴様こそ何故その九尾を庇う?操られているのか!?」

「九尾だから何だって言うんだ?」

「何だって……(何やこん人の目、怒ってるような、辛そうな……何て哀しそうな目)」

「タマモがお前達に何かしたか?いきなり殺されなければならない様な事を何かしたか?」

「い、いや……だがしかし九尾と言えば…」

 

周りの皆はいきなりの事に呆然としているが二人から目は離せないでいた。

 

「ならこの久遠はどうだ、妖狐だから退治させろと言って来る奴がいたらどうぞと差し出すのか?」

「それは……」

 

横島の質問にうまく返せない薫だが、そこに真雪が話に入って来た。

 

「もうそこまでにしときな。薫、あんたの負けだよ」

「はい……」

 

薫は少し項垂れながら十六夜を鞘に戻し、横島も霊波刀を消した。

 

「さて、横島だったね。その狐やアンタのその力の事を含めて詳しい話をしてもらうよ」

「そうっスね。分かりました」

 

もうここまで来たら隠しきれないと横島は事情を説明する事にした。

もっとも、さすがに文珠の事など話せない事もあるが。

 

 

 

ー◇◆◇―

 

 

「はあ、平行世界……ですか」

「はい、そう言う訳で向こう側の事態が改善されるまでこの世界で暮らす事になった訳です」

「まあ、嘘を付いているようには見えないから信じるのはいいとして住む所はどうするつもりだい。いくら理由が理由でもさすがに男を入寮させる訳にはいかないよ」

 

真雪がそう言うと耕介達もすまなそうな顔で横島を見る。

 

「別に問題は無いんじゃない。あっちの姿になればいいだけだし」

「あっちの姿って?」

「やっぱりそれしかないか……」

 

タマモの言った事に知佳が聞くと横島は溜息を付きながらそう言った。

 

「まあ、妖狐と猫又は居るし幽霊…いや、刀に憑いている精霊が居てもあんまり問題がない所だから大丈夫だろうけど」

「よ、横島さん。十六夜の事が分かるんですか?」

「当然よね、ヨコシマは『能力だけは』一流のGSだから」

「言い方がとげとげしいな」

「フンだ!」

 

結局、膝の上を久遠に取られたままのタマモは横島の隣でふてくされていた。

 

「初めまして、私が十六夜です」

 

十六夜が姿を現すと横島は反応するがタマモの殺気によって飛びかかる事は出来なかった。

 

「じゃあ、次はヨコシマの番よ」

「そうだな」

 

横島はあらかじめポケットに入れておいた文珠(【開】の文字込め済)を取り出すとブレスレットにはめ込み神魔人の姿になる。

体は女性体になり、瞳は真紅に染まり、背中には薄緑色の一対の翼が現れる。

先に聞いていたとはいえ目の前で見るとさすがに驚きを隠せない。

顔を赤くして見とれていた耕介は愛に尻を抓られていたが………

 

「そ、その羽は本物なんですか?」

『うん、本物だよ』

「リアーフィンとは違うんやな」

『リアーフィン?』

 

 

HGS《高機能性遺伝子障害病》と呼ばれる数十万人に一人という割合で発症する先天疾患。

幼児死亡率が高い為その病気は近年までその存在は確認されて無かった。

HGSの患者は念動や精神感応などの特殊な能力を持ち、その放熱や能力制御を行うのが光の翼、リアーフィンである。

 

知佳は簡単な説明をするとその背中にリアーフィンを展開する。

知佳のリアーフィンは、まるで天使の様な白い翼の形をしていた。

 

「これがリアーフィン、私もそのHGSの患者なんです」

「知佳……」

『綺麗な翼ね』

「あんたなーっ!」

 

真雪は横島のその言葉が無神経に聞こえたのか憤るが。

 

「怒ったって無駄よ。横島は魔族や妖怪だって簡単に受け入れちゃうんだから、病気の影響だからって変に思うなんて事はしないわ。ただ、単純に綺麗だから綺麗っていっただけよ」

「そうなん…ですか?」

『まあね、それを言ったら見た通り私だって普通の人間じゃないし』

 

横島のその笑顔に知佳も安心したように笑顔を返す。

 

「でも横島さん、とても綺麗です。きっともてますよ」

『あはは…中身は男だからもてても嬉しくないけどね』

 

とりあえず横島はこの姿でさざなみ寮で暮らす事になったが、知佳がある疑問を口にする。

 

「ところで横島さん。翼は隠せるんですか?」

『うん、ちゃんと体の中に隠せるわよ』

 

そう言うと翼は薄い光を放つと吸い込まれるように背中に消えて行く。

 

「で、ヨコシマ。学校はどうするの?」

『え?』

「えって、学校には行くんでしょ?でも此処で暮らすんだったら学校にも女として行かなけりゃ不審に思われるわよ」

 

横島は思い出したように鞄の中を探るとこっちのキーやんが渡してくれた学校の資料を見る。

するとちゃっかりと転校届けなどの資料には女性として登録されていた。

 

『……………』

「あ、私と同じ学校。同級生ですね」

「ま、そう言う訳よ。頑張りなさい」

 

タマモは優しい目をして横島の肩を叩く。

 

「くーー」

「何だかよく分かんないけどがんばってね」

 

久遠と美緒もその背中を優しく叩く。

薫や真雪達は乾いた笑いで見守る事しか出来なかった。

 

横島はおもむろに立ちあがると何処からともなく二つの藁人形を取り出し、五寸釘を打ち込みだす。

 

『何考えてるのよ、あの最低指導者共はーーー!』

 

さざなみ寮の住人達はいきなりのその行動にただ、唖然とするしかなかった。

 

 

 

 

―◇◆◇―

 

その頃、ある異空間では……

 

『『ぎゃああああああああーーーーーーーっ!!』』

 

二柱はいきなり襲って来た苦しみにもだえ苦しんでいた。

 

『よ、横島さんが怒ってるようですね……』

『やっぱ、悪ふざけが過ぎたか……』

 

その苦しみはしばらく続いたらしい。

 

 

ともあれ、横島とタマモの新しい世界での新しい生活はこうして幕を開けたのであった。

 

 

=続く=

 

 

 

 

オマケ

 

此処は次元を隔てた横島が元居たGS世界。

 

そのある異空間……

 

 

『『ぎゃああああああああーーーーーーーっ!!』』

 

二柱はいきなり襲って来た苦しみにもだえ苦しんでいた。

 

『な、何やいきなりーーー!?』

『こ、これは横島さんの呪いの様です!!』

『向こうのワイらは横っちに一体何をしたんやーーーー!?』

 

ズズーー

 

『そんな事、考えるまでもなかろう』

 

苦しみ悶える二柱の傍で猿神は呑気にお茶を飲んでいたとさ。

 




(`・ω・)ちゃんちゃん

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