こんな、横島忠夫はどうでショー!   作:乱A

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第七話「対決!お兄ちゃん対お兄ちゃん・後編なの」

 

台所に向かう二人を見送り、道場に行くと既に恭也と横島は勝負を始めていた。

横島は木刀で、恭也は二本の小太刀の木刀で、其々手加減無しといった感じで、美由希達は邪魔にならない様に道場の隅に座って勝負の行方を見守っていた。

 

そんな中、二人の心境は………

 

 

 

 

――気にいらない…気にいらない!

何だコイツは?何なんだ、コイツのこの何もかもを見通すような目は!?

貴様なんかに何が解る、俺がどんな思いで闘って来たか、何が解るっていうんだ!

父さんが殺されて、御神の剣を継ぐ為にどれだけの苦難の道を歩いて来たか…

なのにこんな目で俺を見やがって……

 

叩きのめしてやる!

 

 

 

――気にいらねえ…気にいらねえ!

何だコイツは?何なんだコイツの闇に囚われた暗い目は!?

あの時の俺と同じ目じゃねえか!

力のみに囚われた、力だけを求める…力だけを見ている目。

周りから注がれている想いに気付きもしねえ盲目の目。

丁度いい、コイツがあの時の俺と同じだっていうんなら……

 

叩き直してやる!

 

 

目標だった父を亡くした恭也、

恋人だったルシオラを亡くした横島、

 

だが、二人の強さの求め方には明確な違いがあった。

恭也の剣は自分が言った様に護る為の剣、だが逆に言えば周りを護る事しか考えては居らず、その”護る”対象には自身を含んではいない。

だが横島は知っている、護る為だけでは駄目だと。

たとえ自身を犠牲にして周りを護った所でそれは”救っただけ”で護った事にはならないと。

必要なのは自分ごと仲間達を護る事が出来る強さなのだと。

 

 

数十合打ち合った頃恭也は、そして周りの皆も気付き始めた。

受け身だった横島が徐々に恭也を圧倒し始めた事に。

 

「そろそろ頃合いかしらね」

 

タマモはそう呟くと道場の壁に掛けてある二本の小太刀の木刀を手に取ると横島に向けて放り投げる。

 

「ヨコシマ」

「おう」

 

横島は後ろを振り向く事無く手にしていた木刀をタマモに放り投げてから小太刀を受け取り、そしてそのまま恭也に切りかかる。

 

……御神流剣術で。

 

 

御神流で打ちかかって来る横島に対して恭也の怒りはさらに膨れ上がる。

それが横島の狙いだと気付く事無く。

 

「なっ!? ば、馬鹿にしやがって……。舐めるのもいい加減にしやがれ!」

「そいつは……どうかなっ!」

 

そしてさらに数合打ち合っていると逆に恭也が横島に討ち負かされ始めていた。

 

「う、嘘やろ……」

「お、お、お師匠が…押されとる」

 

晶とレンは信じられないといった表情でそれを見ている。

そしてそれ以上の驚愕の表情をしているのが美由希である。

当然であろう、何年も恭也にしごかれた自分よりも遥かに完成された御神の剣を今日初めて恭也と打ち合った横島が振るっているのだから。

 

横島はGS世界において、反デタントを掲げる過激派神魔族と何度も闘っていて、実戦経験や霊的戦闘力なら恭也を上回る。

だが、それ以外の純粋な剣術だけならば恭也の方が横島を遥かに上回り、ましてや御神の剣術のみなら横島が恭也に勝てる筈が無かった。

 

しかし恭也は初めから横島を舐めてかかり本気を出さずにいて、それ故に恭也は勝てる機会を自ら棒に振っていたのだった。

そして、自分の剣が上手くいなされた挙句に見よう見まねで身に付けた御神の剣を振るわれた事で怒りに我を忘れ実力を出し切れずにいた。

 

それに横島は妙神山での修行で小竜姫や猿神との修行を受けている。

その小竜姫達の動きに慣れている横島にしてみれば恭也の剣術から見とり稽古で御神の剣術を会得するのはそれほど難しい事では無かった。

 

「くっ!こうなれば……」

 

そして恭也は奥の手である神速を発動させ横島に斬りかかる。

 

「これで終わりだ!」

 

タマモ以外の誰の目にも神速で消え去った恭也が勝利を掴み取ると思っていた。

しかし、横島の頭と胴体を打ち抜こうと恭也が放った二本の小太刀は、まるで待ち構えていたかの様に其処に横島が構えていた小太刀に阻まれる。

 

「「「「なっ!?」」」」

 

美由希達はそれを信じられないかのように目を見張っていたがタマモはまるで当たり前の様に整然としていた。

 

「な、何故だ?……」

「いくら速く動いた所で狙った場所に殺気が集中していれば「今から其処に打ち込むぞ」と宣言しているみたいなもんだ。後は寸前にその場所を防御すればそちらから勝手に撃ち込んでくれるという訳だ」

 

そして横島は自分の奥の手であった「神速」での一撃を防がれ、呆然としている恭也の首筋に小太刀を宛がう。

絶対の急所である首に触れられた事でさすがの恭也も負けを認める他は無かった。

 

「……俺の…、負けだ………」

 

 

 

 

―◇◆◇―

 

 

「何が敗因だったか解る?」

「敗因か……、横島の実力を侮っていた事だろうな」

 

タマモは項垂れたままの恭也に尋ね、恭也も自分の敗因をそう判断した。

 

「まず一つは侮っていたというより見下し過ぎていた所ね。言っとくけど最初から横島の事を認めて真剣に闘っていたら勝っていたのはアンタの方よ」

「そ、そうなのタマモちゃん?」

 

見下す事無く真剣に闘っていたら恭也が勝っていたと聞き、美由希は驚きながら聞き返す。

 

「もっとも、純粋な剣術のみでの話だけどね。ヨコシマも剣術はかなり使えるけど剣術だけならコイツの方が圧倒的に実力は上だったわ。だけどヨコシマの事を見下して本気を出さずにいたから勝つどころか逆に剣術を盗まれる事になった訳よ」

「……俺もまだまだ修行不足だった訳だ」

「そう言う事ね。ま、取り返しがつかなくなる前に気付く事が出来て良かったじゃない」

「はははは、まったくだ。(結局、俺は“あの時”から成長してないって事か)」

「そしてもう一つ、本当の敗因はヨコシマを本気で怒らせた事。触れてはいけない傷に触れてね」

「触れてはいけない傷?」

 

恭也はそう言われ、タマモを見てみるとその悲しみに満ちた瞳から目を離せないでいた。

 

「臭いから解るわ、アンタは何か大切な誰かを護れないでいたのね」

「……ああ…」

「でもそれはヨコシマも同じなのよ。ヨコシマも大切な人を護れなかった、私が言えるのは此処まで」

「なっ……」

 

恭也は愕然として横島に目をやると横島もその目を軽く笑いながら見返す。

そして何故此処まで横島に突っかかっていたのかようやく理解した。

 

“同族嫌悪”

 

何処となく同じ様な心を持っていた、同じような闇を持っていた相手が気にいらなかっただけなのだ。

 

お互いに……

 

 

 

ー◇◆◇ー

 

「じゃあ、勝負も終わった様だしそろそろ食事にしましょうか」

「お兄ちゃん達、おなかすいたでしょ?なのはも頑張って作ったからいっぱい食べてね」

 

其処に食事の用意を終えた桃子となのはがやって来た。

 

「す、すみません桃子さん」

「うちらも手伝わないけんかったのに」

「いいのよ、どうせ手伝ってても恭也の事が心配で手につかなかったでしょ」

 

桃子は笑いながらそう言うと晶とレンの二人は赤くなって俯いた。

 

「桃子さんは師匠が心配じゃ無かったんですか?」

「ん~~?別に」

「別にって…何で?」

「勝てば勝ったでいいし、負ければ負けたで何か得る物はあったでしょ。殺し合いをしてたわけでもないんだから」

 

桃子が恭也を見ながらそう言うと恭也も「ああ」と言いながら頷いた。

その表情は何処となく爽やかで晶達はその顔に見惚れていた。

 

「まあ、それはそれとして。ヨコシマ、これからお世話になるんだしあの事も教えといた方が良いんじゃない?」

「あ、それは私もそう思います。さざなみ寮や学校の事もどうせ隠し切れないんだし」

「ん~~、やっぱりそうか。仕方ねーなー」

「あの事って何?」

「何と言うか、ややっこしいけど俺にはもう一つ別の本当の姿があるんスよ」

「もう一つの別の本当の姿???」

 

桃子にそう答えると、横島はポケットの中で文珠に『開』と刻んで封印具のブレスレットにはめ込む。

 

そして横島は神魔人形態へとその姿を変える。

HGSの事がある為、翼は魔力を調整して隠したままにしておき、声も文珠を上手く隠しながら使って変えておく。

そうして横島は自分が別の世界から来た事を話し、霊波刀などを見せて霊能力などがある事、しばらくはこの世界で過ごす事などを説明した。

 

「と、まあ他にも色々話せない事もあるけど、さざなみ寮に居る時や学校に通う時はこっちの女の姿で過ごす事になるので改めてよろしく」

 

晶にレン、美由希になのは、そして桃子は女性の姿になった横島を見て唖然としていた。

何しろ、さっきまで男だったのに今は見惚れる様な美少女なのだから。

 

(余談ではあるが、その時桃子の口元がニヤリと軽く笑いを浮かべたのに気付いたのはタマモだけであった)

 

 

恭也はと言うと………

 

 

「は、ははは……ははハハハHAHAHAHA破破破………、き…」

「き、恭ちゃん?」

「貴様だったのかぁーーーーーっ!」

 

おもむろに立ち上がった恭也は横島を睨みつけながら叫び、何時の間にか手にしていた小太刀(真剣)で切りかかって行く。

当然であろう、忍を怒らせた原因の女が横島であったのだから。

 

「きゃああーーーっ!」

 

横島はそれをよけながら道場から逃げ出して中庭へと飛び出し、『封』の文珠で男の姿に戻る。

 

「行き成り何するんじゃ!」

「やかましい!貴様の…貴様のせいで、貴様のせいでぇーーーーーっ!」

 

問答無用と言わんばかりに恭也は横島に襲い掛かる。

 

「俺の盆栽を返せーーーーーっ!」

「何のこっちゃい!?」

 

二本の小太刀から繰り出される剣撃を横島は先ほどまでとはまるで違うオーバーアクションで次々にかわして行く。

 

「よ、は、た、と、何の、こりゃさと、ほい」

 

 

「な、何だあれ?」

「何であんな出鱈目な動きでお師匠の攻撃をかわせるんや?」

「忠夫お兄ちゃん、すごーい」

 

なのはは何故か、横島の方を応援している様だ。

 

「かわすんじゃねえーーーっ!大人しく切られろ」

「無茶言うな、死んでまうやないか!」

「殺すと言ってるんだ!」

「ヤバい、あの目は本気だ。こうなれば……」

 

横島は霊波刀を出して恭也へと駆け出す。

 

「蝶の様に舞いーーーーっ!」

「やっとその気になったか」

 

恭也は駆けて来る横島を迎え撃とうと小太刀を構えるが…

 

横島は恭也の直前で反転、勢いよく逃げ出す。

 

「ゴキブリの様に逃げーーーるっ!」

 

だああああーーーーーーーっ!!

 

恭也を含め、見物していたタマモ以外の全員はそれを見てずっこける。

 

「ふ、ふざけやがって……」

 

湧きあがる怒りを隠そうともしない恭也が立ちあがった瞬間。

 

「と、見せかけて蜂の様に刺ーーす!」

 

何時の間に回り込んだのか、横島が恭也の後ろ頭を霊波ハリセンで思いっきりはたく。

 

スパァーーーーンッ

 

「ぐはあっ!」

「そんでもって、ゴキブリの様に逃げーーる!」

「き、貴様ぁーーっ!」

「わははははははっ!正義は勝ぁーーつ!」

「何が正義だ、正々堂々真面目に闘え!」

「勝てば官軍負ければ賊軍、所詮負け犬の遠吠えじゃーー!」

「そのうっとしいダミ声、首を切り落として消してやる!」

 

そう言って小太刀を振り上げると。

 

「いやーん、恭也くん怖ーい」 

 

女の姿で地面に座り、瞳を潤ませながら恭也を見上げる横島。

頭では解っていても涙目の女の姿では一瞬恭也のその手が止まる。

 

「ぐっ…」

「隙あり!」

 

すぐさま男に戻り、霊波ハリセンでアッパーカット。そして、逃亡。

 

「よ、横島…許さぁーーーーん!」

「ほほほほほ、捕まえてごらーん♪」

 

逃げながら女の姿で挑発、もの凄い文珠の無駄使いである。

 

「き、恭ちゃぁ~~ん…」

 

憧れの兄のあまりにも崩れっぷりの闘いに、涙目の美由希であった。

そしてそれは、恭也の弟子の二人も同様である。

 

「な、何なんや、あの兄ちゃんは?」

「さっきまでのあの強さは何だったんだよ?」

 

その疑問に答えるのはタマモ。

 

「あ~、何と言うか…。“アレ”がヨコシマの本来の闘い方なのよ」

「「あれが!?」」

 

本来の闘い方、そう言われてもアレの何処が闘いなのか?

そう突っ込みたくてたまらない二人であった。

 

 

 

 

「サイキック猫だまし!」

「がはあっ!目がぁーー!」

 

スパーーンッ

 

道場裏から閃光が走り、ハリセンの音が鳴り響く。

 

「ねえ、タマモちゃん」

「何?」

「アレが横島さんの闘い方って言ったよね」

「そうだけど」

「じゃあ、もし恭ちゃんが最初から真面目に闘っていたら」

「当然ヨコシマもあの戦法を使ってたって事ね」

「つまり……」

「どの道アイツは負けてたでしょうね」

「恭ちゃぁ~~~ん」

 

美由希は不憫な兄に一人涙した。

 

 

 

 

 

数日後……

 

「いらっしゃいませー」

 

翠屋は新しく入ったアルバイト店員目当ての“男性客”で大繁盛していたとさ。

横島の女性形体を見た桃子はアルバイトの条件として女性の姿で接客をするように仕向けたらしい。

 

「うう~~、貴重な男でいられる時間が~~~」

 

 

そんな涙ぐむ姿を見て、

 

「ざまあ見やがれ」

 

そう、ほくそ笑む恭也がいたらしい。

 

 

=エタる=

 




(`・ω・)前半の闘い、横島が本気で怒ればこれくらいの闘いは見せるんじゃないかとオイラは思っています。
丁稚時代からも潜在能力や才能だけはありましたからね。
そして後半のギャグバージョン、やはりこの闘い方は外せない。
これでこそ僕達の横島忠夫。

(・ω・)と、言う訳で昭和ジャンプ風に第一部完!

「……完、じゃないの」
「え?」

突如、乱の四肢は光の輪によって空中に大の字で拘束される。

「な、何だこれは!一体何が起きた?」
「なのはの出番、全然無かったの。殆どタイトルコールだけのお仕事だったの」
「ひ、ひいっ!お前は……白い魔王!」
「こんな中途半端で終わるなんて。…初めてなの、なのはをここまで怒らせたお馬鹿さんは……全力で全壊なのっ!」
「や、やめて、たしゅけて。あ、あああ、ギャアアアアーーーーー!」
「汚い花火だったの」

お死まい
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