こんな、横島忠夫はどうでショー!   作:乱A

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(`・ω・)脳がぶっ壊れていた時に書いた話で何気に一番のお気に入り。


「横島くんのメイドで行ってみよう!」

 

「全く、アンタはとんでもないドジをかましてくれたわね!!」

「す、すんませ~~ん」

 

ある日、美神除霊事務所の面々はとある企業からの除霊依頼を受けていた。

そして横島のちょっとしたミスから危うく悪霊を逃がす所だったのである。

 

「罰として今後半年間給料無し!」

「そんな殺生なーーっ!」

「み、美神さん。それはいくら何でも」

「と、言いたい所なんだけど其処までするとママがうるさいから勘弁してあげる」

「た、助かったぁ~~」

「良かったですね、横島さん」

 

安堵の表情を浮かべる横島であったが、美神の目には怪しい光が灯っていた。

 

「安心するのはまだ早いわよ。横島クンには”こんな事もあろうかと”用意していたコレを着てもらうわ」

 

そう叫びながら美神が荷物から取り出したのは………、

一着の『メイド服』であった。

 

「み、美神さん?……」

おキヌが目を丸くしていると。

 

「み、美神さん……、アンタは一体どんな”こんな事”を想定していたんじゃーーーーーっ!」

 

 

     ―◇◆◇―

 

そして数日後……

 

「やあ、令子ちゃん。横島君がまたミスをしたんだって?」

オカルトGメンの西条は喜々とした表情で事務所に入って来た。

 

「そうなのよ、幸いに除霊はうまくいったけど危うく除霊失敗で違約金を支払うはめになる所だったのよ」

「全くしょうがないなあ横島君は」

 

そう言いながらも西条の顔は清々しいまでの笑顔に包まれている。よほどライバルである横島の失敗が嬉しい様だ。

 

「ところでその横島君は?」

「今、罰を与えている所よ。何をしてるの!お客様よ、早くお茶を持って来なさい、横島ちゃん」

「……ちゃん?」

 

そう呼ばれて、台所から現れたのは膝裏までもある長く艶やかな黒髪を真っ赤なリボンでツインテールに纏め、あろう事かメイド服にその身を包んだ美少女だった。

そう、文珠を使って女性の姿にさせられた横島だった。

どうやらこれが美神が横島に与えた罰らしい。

 

「いらっしゃ……何だ、西条か」

「な…な、な、な?よ、横島君なのかい?」

「こらっ!お客さまに対して何よその態度は。ちゃんと教えた通りにやりなさい!」

「で、でも美神さん。いくら何でも西条相手に…」

「一週間、罰を延長しましょうか?」

「わかりました……」

 

横島の顔は悔しさと恥ずかしさで真っ赤だった。

西条は西条で何が何やらと混乱していたが目の前の美少女から目が離せないでいた。

おキヌやシロタマもそんな西条を見て「あはは」と笑う事しか出来なかった。

 

「い、い、いらっしゃいm」

「違うでしょ、はい、もう一度」

「うう~~っ」

 

美神はパンパンと手を打ってダメ出しをする。

横島は俯き、目尻に涙を浮かべながら更に顔を赤くする。

 

「お、お帰りなさいませ…ご、ご主人様…」

「………………ごぼはぁっ!」

 

その、男心を刺激しまくる仕草を直視した西条は大量の鼻血を噴き出してぶっ倒れた。

 

「ああっ、西条さん!」

「やっぱり、ヨコシマのアレは破壊力が有り過ぎるわね」

「拙者も初めて食らった時は一昼夜生死の境を彷徨ったでござるよ」

「ほーーーっほほほほほほほほ!横島ちゃんの正体を知っている西条さんでさえこの有様なんだから美神除霊事務所の看板娘としては申し分ないわ。さあ、稼ぐわよ!」

 

どうやら、罰と言うよりそれが目的だったらしい。

 

「うう~~。何でワイがこんな目に…」

 

 

それからというもの、美神除霊事務所は美神の作戦通りに大繁盛した。

美少女メイド事務員がいるという事で依頼者が殺到したのである。

美神に逆らえない横島は泣きながらもメイドとして対応せざる他なかった。

 

とは言え……

 

「ママに似ているーーー!」

と、飛びかかって来るマザコンや、

 

「う、美しい…」

と、首筋に牙を突き立てようとするバンパイアハーフや、

 

「やあ、今日も綺麗だね横島ちゃん」

と、花束片手にやってくるエセ紳士や、

 

「横っち、俺と一緒に芸能界に入らんか?」

と、アイドルとしてデビューさせてあわよくばスター同士の結婚を企む幼馴染や、

 

「お…うへへへへ、オンナーーーーー!」

と、野生に還る薄い影の虎などは遠慮なしに半殺しの目に合わせられていた。

 

(特に、女性陣の手によって)

 

 

     ―◇◆◇―

 

「ああ~、今日は疲れた。汗で体中ベトベトっすよ」

「そう?ならシャワー貸して上げるから浴びなさい」

「そうさせてもらうっす」

 

そうしてシャワー室へと消える横島の後姿を眺めていた四人は、足音を立てない様に近づいて行く。

 

(ドキドキでござるな)

(静かにしなさいよ、このバカ犬!)

(犬ではござらん!狼で…)

(二人共静かにしなさい!横島ちゃんにばれるでしょ)

(す、すまぬでござる)

(ごめんなさい)

(でもいいんですか?横島さんがシャワーを浴びている所を覗くなんて)

(別に構わないわよ、私は散々覗かれてるんだから偶には意趣返ししなくちゃ。気が咎めるんならおキヌちゃんは止めてもいいのよ)

(そんな~、仲間はずれはズルイです)

 

そう、小声で話しながら横島にばれない様にシャワー室の扉を開いて行く。

 

(さて、横島先生はと…)

(こらシロ!私を差し置いて先に覗くんじゃない!)

 

美神の言葉を無視してシャワー室を覗き込むシロだが、肝心の横島の裸を目にした瞬間。

 

(…ぐはっ!)

 

鼻から赤い液体を噴き出して倒れ付した。

 

(シ、シロちゃん、どうしたの?)

(め…女神でござる。拙者、もはやこの世に思い残す事は何も無いでござるよ、ぐふっ!)

(ち、ちょっと、しっかりしなさい。傷は浅いわよ、シロ!)

(み、美神さん…)

(上等よ、…どれ程の物か見てやろうじゃないっ!」

 

赤い液体を流しながら倒れているシロを横目に、美神は覗きなどという姑息な真似は止めて、立ち上がりながら扉を勢い良く開く。

 

バターーンッ!!

 

「な、何だ?…って、美神さんにおキヌちゃん?タマモにシロも何してるんじゃ!?」

 

そう言いながら横島はシャワーを止めて振り返る。

その黒髪に付いている水滴は宝石の様に煌き、そのボディーラインは非の打ち所の無い見事な造形であった。

 

「「はうあっ!」」

 

美神、そしてシロを抱き抱えていたタマモはあまりの光景に一瞬固まり、二つの穴から赤い液体を噴出しながら倒れて行く。

 

「ちょっと美神さん、どうしたんですか?タマモも大丈夫か?」

 

突然倒れた二人を心配した横島は裸のまま駆け寄る。

当然、二人から流れる赤い液体はその激しさを増していたりする。

 

「よ、横島さん、とにかく体をかく…し、て……」

 

比較的冷静だったおキヌは美神達の様に醜態を晒す事は無かったが、まじまじと横島の裸体を見ると「パキンッ」と石の様に固まってしまった。

 

その、”ボンッ、キュッ、ボンッ、”のパーフェクト・ボディを。

 

「おキヌちゃんもどうしたの?」

「へ~~~~ん、横島さんのバカ~~~~ッ!裏切り者~~~~っ!」

 

おキヌはそう泣き叫びながら走り去るのであった。

 

「裏切り者って、何が?」

 

 

     ―◇◆◇―

 

そんなある日……

 

『美神オーナー、お客様です』

「お客?仕事の依頼者なの」

『い、いえ。横島さんの…』

「俺の何だ?」

 

人工幽霊が返事をする前に部屋の扉が開く、横島は条件反射で挨拶を………してしまった。

 

「お帰りなさいませ、ご主人様」

 

ペコリ

 

『……お母様です』

「…………何をしてるんだい?……忠夫…」

 

自分の母親、横島百合子(グレートマザー)に。

 

「へ………お、お袋ーーーーー!?」

「た、忠夫……お前は、お前は……」

 

百合子はメイドの姿をしている横島の全身を見ながらワナワナと震えていた。

 

「せ、先生の御母堂でござるか?拙者は横島先生の一番弟子のシロと…」

「このバカ犬!今はそんな事を言ってる時じゃないでしょ」

「犬ではござらん!それに初対面での挨拶は弟子として当たり前の事でござるよ!」

「よ、横島さんのお母さん。こ、これには深い訳が…」

「わ、私は止めたんですよ。でも横島クンがどうしてもやりたいと」

「アンタって人はーーーー!」

 

事務所のメンバーが混乱に陥っていると百合子はゆっくりと近づいてきて横島の肩をがっしりと掴む。

 

「忠夫、お前は…」

「堪忍やーーー、おかーーーん!これにはチョモランマより深い訳がーーー!」

 

横島は母親のお仕置きの名を借りた死刑執行に怯えていたが、百合子の反応は横島達の考えの遥か彼方の斜め上を行っていた。

 

「お前って子はなんっって、親孝行なんだい!」

 

「…へ?……」

「私達は娘が欲しかったんだよ、そんな私達の為にわざわざ娘になってくれるなんて……ああ、私はお前を誇りに思うよ」

「あの~~、もしもし…お母様?」

「こうしちゃいられない、さあ忠夫!買い物に行くよ。女の子には色々と買いそろえなければならないのがあるからね!」

「ちょっと、落ち着いてくれよ母さん!俺は別に本当に女になった訳じゃ…」

「こらっ!女の子がそんな乱暴な言葉使いをしちゃ駄目じゃないか!!」

「話を聞いてくれーーー!」

 

美神達が口を挟む暇もなく、横島は百合子によって連れられて行った。

 

「み、みみみ、美神さは~~ん!横島さんが」

「はっ!あまりの事に動けなかったでござる」

「どうするのよ美神!?」

「どうするって…どうすればいいのよーーー!」

 

 

閑話休題(それからどうした)

 

(どうしたもこうしたも、何で俺がこんな目に?)

「さあ唯緒(ただお)、次はこのドレスを着てごらん」

「だからな、母さん!俺は別に本当に女になった訳じゃなくて…」

「私」

「だから、今は文珠で女の姿になってるだけで、俺はもうすぐ元に…」

「わ・た・し」

 

チャキッと首筋に柳刃包丁が当てられる。

 

「わ…だ、だからね、私はもうすぐ元の男に戻る予定なんだから」

「その事なら心配はいらないよ。ちゃんと考えがあるからね」

「な、何の?」

「だからお母さんに任せておきなさい。あっ、このミニスカートも似合いそうね」

「うう、ワイは一体d」

 

チャキッ

 

「…私は一体どうなるの~~?」

 

 

     ―◇◆◇―

 

村枝商事において。

 

「ケンちゃん、お久しぶりね」

「おおっ!横島君、どうしたんだい?」

「実はある事情があって日本で暮らしたくなったんで専務を何処かにやってうちの旦那を本社勤務に戻してくれない?私会社に復職するから」

「コラーー横島っ!何勝手な事を!」

「う~~む、そうだな」

「社長!何を悩んでるんですか、私は反対ですよ!」

「社長、丁度タンザニア支社総務部係長のポストに空きが」

「クロサキ、てめえーーーー!」

 

 

某・異空間。

 

「と、言う訳で唯緒を本当の女の子に出来ないかしら?」

『そうやな~、どうやキーやん?』

『幸い、今は文珠を使っていて女性の姿ですからね。因果律を歪めて女性のまま性別を固定する事はそう難しくありません』

『ならやるか?』

『やりましょう!』

「ありがとう、お二人なら解ってくださると思ってましたわ」

『ええ、解りますとも』

『おもろくなって来たで』

「ほほほほほほほほほほ」

『『ははははははははははは』』

 

「『『わーーっはははははははははははははは!』』」

 

三柱…もとい、一人と二柱が笑っている後ろで百合子の送り迎えを担当していたジークはそのプレッシャーに耐えきれず、立ったまま気絶していた……泡を吹きながら……。

 

 

     ―◇◆◇―

 

それから暫くの時が立ち、横島忠夫改め、横島唯緒は完全な女性体になっていた。

言葉使いなども百合子の手によって変えられていた。

そして横島はというと何時も通りに事務所でメイドをしていたのだが。

 

「何でこんな事になっちゃったのよーー!」

 

彼女は今、全力で逃げていた。

何からと言うと……

 

「横島さーーん!僕は雪之丞達と違ってフリ―です。僕が貴女にルシオラさんを産ませてあげます!」

「そんな直接的な表現はやめてーー!」

 

「待ちたまえピート君、君はまだ高校生だろ。ここは社会人である僕が」

「アンタだけは何があっても絶対に死んでもイヤッ!」

 

「横っちーー!俺はずっと以前からお前の事をーーー!」

「それはずっとホモだったって事じゃないーーー!」

 

「横島ーー!弓とは別れて来たぞ。俺がお前をママにしてやるーーー!」

「何を考えてるのよ、このド外道ーー!」

 

「横島サーーン!ワッシはーーー!」

「獣姦はいやーーー!」

 

男達に連日追いかけ回されていた。

その裏で美神達はと言うと、

 

「ふふふふふふ。横島ちゃん、安心しなさい。貴女は私が」

「そうはいきません。横島さんの相手は私が」

「先生は誰にも譲らぬでござるよ」

「ヨコシマは私の物よ。この九尾の名に賭けて」

 

そんな彼女達の手には【男】と文字を刻まれた文珠が握られていた。

 

「ルシオラーーー、助けてーーー!」

 

―――ヨコシマ、早く私を産んでネ♪――――

 

「ルシオラーーーー!」

 

その叫び声は夕陽の空に何処までも響いたといふ。

 

《終わってあげよう》

 

 




(`・ω・)ちゃんちゃん!

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