こんな、横島忠夫はどうでショー!   作:乱A

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十時間目「いいかネギ?後悔には二つある by横島」

良心の呵責から対決を放り出して逃げ去るネギを見つめる茶々丸。

そして飛び去って行くネギを見ていたもう一つの視線があった。

 

「ネギ?どうしたんだアイツ、こんな真昼間から」

 

 

 

十時間目

「いいかネギ?後悔には二つある by横島」

 

 

 

 

ネギはひたすら空を飛んでいた。いや、逃げていた。

 

(僕は、僕はどうすれば……僕のせいでみんなに迷惑が。もうこのまま何処かに行っちゃいたいな)

 

そんな風に考えていると前を良く見ていなかったのか、山の中に迷い込んでいた。

 

「でも何時までも逃げていたって…て、うわあっ!!お、落ちる~~~。ぶわっ!!」

 

気がついた時にはすでに遅く、ネギは木にぶつかった衝撃で杖から振り落とされ、そしてそのまま川の中へと落ちる。

川に落ちたネギは起き上がり、杖が何処に行ったのかと捜し回るが影も形も見つけられなかった。

 

「ぼ、僕の杖!何処にあるの?うう、そんなぁ~~。僕の大切な杖、あれが無いと帰れないし魔法だって使えない~~」

 

地面にへたり込んで涙ぐんでいると後ろの草むらからガサガサと草をかき分けて来る音が聞こえて来た。

 

「ひ、ひいい~~~!な、何?オオカミ?それとも熊?に、逃げなきゃ…あうっ」

 

ネギは其処から逃げようとするが慌てれば慌てるほどワタワタとうろたえ、顔から地面へと転んでしまう。そしてネギの耳に足音が聞こえて来る。

 

「僕なんか食べても美味しくないよ~~。た、助けて~~!!お姉ちゃ~~ん!!」

 

「…美味そうじゃないのは見れば分かる。それに…そうか、ネギには姉ちゃんが居るのか……美人か?」

 

「え、お姉ちゃん?お姉ちゃんは美人だけど…え…タダオ!?」

「よ!!」

 

ネギが振り返ると其処には何時の間にか横島が居て、右手を軽く上げて挨拶をしていた。

 

「何でタダオがここに?」

「いや~、ネギが飛んで行くのが見えたから着いて来たんだがお前、木にぶつかって落ちただろ」

「う、うん。考え事してたら前を良く見るのを忘れちゃって」

「何があったんだ?」

「そ、それは……」

「拙者も知りたいでござるな」

「うわあっ!!」

「どわあっ!!」

 

気配を殺して何時の間にか二人の後ろに居た楓であった。

 

「か、楓さん?」

「き、君は確か……(あの時のバトルモンガー予備軍)」

「ネギ坊主に横島殿ではござらぬか。奇遇でござるな」

 

 

 

 

ー◇◆◇ー

 

その後、ネギは二人に問いただされるが横島だけならともかく楓が居るのでそのまま話す事は出来ずにただ、悩みがあるとだけ言っておいた。

 

「そうでござるか。まあ、悩める時に悩んでおくといいでござるよ。思いっきり悩んで悩み抜いて、それから出した答えなら間違いは無いでござろう。逆に悩まずに出した答えなら必ず何処かで間違えてしまう、拙者はそう思うでござるよ」

「そんな物でしょうか?」

「そ~ゆ~物だ。まあ、楓ちゃんの言う通り悩める内に悩んでおけ」

「それより二人共食事は済んだでござるか?」

 

楓がそう聞くと横島は腹に手を当てて空き具合を確かめる。ネギの腹からは思い出したようにグーと鳴る。

 

「そー言えばまだ昼飯を食って無かったな。ネギは?」

「僕もまだです」

「ならば今から一緒に岩魚でも獲って食べぬでござるか。丁度拙者も獲りに行く所でござるよ」

「そうするか。ネギ、お前も来い」

「え?は、はい」

 

ネギが答えるより早く楓は走り出し横島もその後を追う。

 

「ま、待ってくださーい!!」

 

楓は森の中、道なき道を飛び跳ねながら進んで行き、横島も女の子が通る所だからと別に気にせずに後を追っている。

ネギもまた置いて行かれない様に魔力を足に集中させてごく普通に後を追っている。

 

(ほほ~~。横島殿だけでなくネギ坊主もなかなかやる様でござるな。これは後が楽しみでござる。古菲には悪いでござるが横島殿とは一足先に拙者が手合わせをしてもらうでござるよ、ニンニン♪)

 

何気に楓の罠にはまっている横島であった。

 

 

 

 

 

ー◇◆◇ー

 

「さて、着いたでござるよ。此処なら岩魚は獲り放題でござる」

「うわー、魚が一杯居る」

「ほほー、中々だな」

 

楓が示す先にある川には沢山の魚が泳ぎ、ウエールズとはまた違う自然の姿にネギは目を輝かせている。

 

楓はクナイを使い魚を獲り、ネギはそれを真似しようとするが当然中々上手くいかない。

横島はそんな二人を後目にガチンコ漁(※禁止されています)で魚を獲って行くが楓に思いっきり殴られていた。

楓曰く、『それは邪道でござるよ』らしい。

 

山菜採りではネギがキノコを一つ二つと採って行く間に楓は16人に分身してあちらこちらで採って行き、横島も短時間でかなりの量を採っていた。

横島曰く、野草は薄給の彼にとって飢えから逃れる為の生命線らしい。

 

 

 

 

 

 

 

その後、三人は焚き火を囲み食事で腹を満たしていた。

 

 

 

「ふう~、美味しかった。お腹一杯です」

「満腹満腹、しかもタダなのがまたいい」

「あいあい♪ではそろそろ始めるでござるよ」

 

そう言うや否や、楓は横島に襲いかかる。

 

「どわあっ!か、楓ちゃん行き成り何を!?」

 

当然横島は避けるが楓の猛攻は続く、横島は攻撃を避け続け、楓が攻撃を繰り返す。

横島は猿神や小竜姫の指導を受けている為、霊波刀などを使わなくてもかなりの強さを秘めていた。

 

「思った通り中々の御仁でござったな」

「しまったぁーーーっ!!初めからこれが狙いやったんか、謀ったなーーーっ!!」

「何の事か解らぬでござるな、ニンニン♪」

 

そんな二人の闘い?をネギは眺めていた。

 

(二人共凄いなぁ。…僕もあんな風に強くなれれば、でも今の僕じゃ)

 

それから数時間、ようやく満足したのか楓は「いい汗を掻いたでござる」と言いながら額の汗を拭い、横島はうつ伏せに倒れて肩で息をしていた。

 

「さて、拙者は風呂の用意をして来るでござるから忠夫殿とネギ坊主は休んでいるでござる」

 

「あ、はい」

「言われんでも一歩も動けんわい」

 

 

 

 

ー◇◆◇ー

 

そして空が夕闇始めた頃、ネギはドラム缶風呂に横島と一緒に入り夕焼けを眺めていた横島に話しかける。「男同士、積もる話もあるでござろう」と楓の粋な計らいらしい。

 

「ねえ、タダオ。僕は間違っていたのかな?」

「何が?」

「さっきは楓さんが居たから詳しく話さなかったけど僕は茶々丸さんをアスナさんと一緒に倒そうとしたんだ」

「……そうか…」

「確かに茶々丸さんはエヴァンジェリンさんと一緒に僕を襲って来たけどそれはマスターのエヴァンジェリンさんの命令だったんだし、逆らえなかったんだろうし…」

「お前は自分の意思で闘ったのか?」

「ううん。責任を擦り付ける気は無いけどカモ君っていう僕のペットというか使い魔というか、そのカモ君が最初に二人がかりで片方を倒した方がいいって」

「それで後悔してるって訳だな」

「……うん」

 

風呂の淵に寄りかかり項垂れているネギの頭に手をやり、横島は語りかける。

 

「いいかネギ?後悔には二つある」

「二つ?」

「そうだ。ああするしか無かったという後悔と、ああしなければ良かったという後悔だ」

 

哀しげな瞳で話を続ける横島をネギは見つめ、その話に耳を傾ける。

 

「ああするしか無かったという事は選択肢は一つしかないという事、もし他にもあったとしてもそれは絶対に選んではいけない物だ。そしてああしなければ良かったという事は他にも選ぶべき選択肢があったという事だ」

「……あっ!!」

「解った様だな」

 

(そうだ、行き成り闘いを嗾けなくてもまだ話し合いをする余地はあったんじゃないか?あんなにみんなに慕われてたし、猫の世話をする時だって…)

 

「そのカモとか言う奴の事はこの際どうでもいい。お前自身はどうなんだ?お前自身はどうしたいんだ?」

 

(僕のしたい事、僕は立派な魔法使いになりたくって…僕は、そうだ僕は!!)

 

ようやく迷いが晴れたのか、立ち上がったネギの目は晴れやかだった。

そして目を瞑り意識を集中させると頭の中に無くした杖が木に引っ掛かっている姿が浮かんだ。

 

(来い、僕の杖)

 

そう念じると杖は一直線にネギの手の中へと飛んで来た。

そしてネギは杖に跨り飛び立とうとするが…

 

「ありがとうタダオ!僕、頑張ってみるよ」

「頑張るのはいいが素っ裸で何処に行くつもりだ?」

「え?…うわあっ!!」

 

裸のまま飛び立とうとしたネギは慌てて服を着込むと改めて杖に跨って飛び去って行った。

 

「タダオー、楓さんによろしくーーーっ!!」

 

 

 

 

 

 

「何とか立ち直ったか」

「その様でござるな、しかし魔法使いとは本当に居たんでござるな」

「ばれると色々と面倒らしいから内緒にしてやってくれな」

「あいあい。では拙者も風呂をいただくでござる」

「ああ、丁度いい湯だぞ………へ?」

 

衣擦れの音が聞こえてきた所で横島はようやく誰と会話をしていたのかに気がついた。

そして、湯に浸かってる為とは違う嫌な汗が流れてきている事にも……

 

今すぐに振り返り、そのあられもない姿を見たい気持ちは山々だが相手は中学生という事実はさすがに彼の理性にストップをかける。

 

「ちょっと…か、楓ちゃん?」

「何でござるか?」

「今はワイが風呂に入っとるんじゃが」

「見れば分かるでござる」

「いや、分かってるんなら入ってきたらダメじゃろがっ!!」

「何故でござるか、これは拙者の風呂でござる」

「だからその風呂には男のワイが入っとるじゃないか、もっと恥じらいも持ちなさい!!」

「大丈夫でござるよ。ちゃんと水着は着てるでござる」

「そ、そうか。なら……ごぶはっ!!」

 

その言葉に安心して振り返るが彼は即座に後悔した。

なにしろ彼女は中学生には見えないプロポーションに際どい黒のビキニを着けただけの姿だったのだから。

 

 

 

「いやいやいやいやいやいやいやいや、違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う、ドキドキしとらん、ドキドキしとらん、ドキドキしちゃダメだ、ドキドキしちゃダメだ、ドキドキしちゃダメだ、ワイはロリや無い、ワイはロリや無い、ワイはロリや無い、ロリはダメだ、ロリはダメだ、ロリはダメだ」

 

頭を抱え呪詛の様に呟く横島の肩に楓は手を置き耳元にそっと呟く。

 

「折角だから背中を流してあげるでござるよ。さあ、風呂から出て来るでござる」

「いやいや、いいからっ!! 女の子がそんな大胆な事をしちゃイカンッ!!」

「遠慮は無用でござる、さあ」

 

楓は慌てふためく横島の腕をとって引き寄せようとするがそうすると彼の腕は楓の胸に沈む事になる。

まさに横島にとっては地獄(ヘル)天国(ヘブン)でウィータである。

 

「ああ、腕に何やら温かくてやーらかいモンが。……嫌じゃ嫌じゃっ!!このままでは堕ちてはいけない所に堕ちてまう」

「何でござるか?コレがいいんでござるか、ほれほれ」

 

調子に乗った楓は横島の背中に自分の胸を擦りつけて行く。

 

「いーーーーーーーーーーやーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

 

その横島の雄たけびは星が瞬き始めた空に虚しく木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、エヴァのログハウスでは。

 

「茶々丸、何かあったのか?少し様子が変だぞ」

「い、いえ、何もありませんマスター」

「そうか、ならいいんだがな。クチンッ!くそっ、始まったか。全く忌々しい」

「マスター、今日はもうお休み下さい」

「そうだな、そうさせてもらおう。クチンッ!!」

 

部屋に上がって行くエヴァを見送った茶々丸は窓から空を見上げネギの言葉を思い出していた。

 

『茶々丸さん、僕を狙うのはもう止めてもらえませんか?茶々丸さんの事見させてもらいましたがあんな優しそうな心があるのなら…』

 

 

「ネギ先生……私はガイノイド、私には心など……」

 

一人呟いたその言葉を聞く者は誰も居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、美神除霊事務所では……

 

 

パキンッ

 

「ああっ!! 横島さんのお茶碗に罅が」

 

 

続く…かな?

 

 




(`・ω・)ネギが茶々丸を襲ったという告白ですが横島はあえてネギを責める様な事は言いませんでした。
ネギが心底後悔してる様でしたからね。もっとも実際に目にしていたら本気で怒ってただろうけど。

(・ω・)そして、尻切れトンボですがまたまたストックが切れてしまいました。
スクナとの戦いの場面では書いて見たい話があるので何とか続きを書こうと思いますので気長にお待ち下さい。
次回からは天地無用とのクロスを晒そうと思います。

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