こんな、横島忠夫はどうでショー!   作:乱A

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第二話「瀬戸と水穂と兼光と」

後に魔神大戦と呼ばれる戦いは人類側の勝利で終りを告げ、アシュタロスの宇宙改革装置(コスモプロセッサ)による次元宇宙転覆の危機は去った。

その一連の戦いを樹雷皇家第二世代艦「水鏡(みかがみ)」の中で見つめていた存在が居た。

樹雷最高評議会の一人でもあり、樹雷の裏の最高権力者と言われている「神木・瀬戸・樹雷」である。

 

 

 

             第

             二

           瀬 話

           戸

         水 と

         穂

       兼 と

       光

       と

 

 

 

 

「とりあえずこれであの次元宇宙の危機は去った様ですね」

「ええ、しかしその代償は決して軽い物では無いでしたが……」

 

そして彼女の後ろには神木家第七聖衛艦隊司令官で、「瀬戸の剣」と呼ばれる「平田兼光」と神木家第三艦隊司令官兼情報部副官で、「瀬戸の盾」と呼ばれる「柾木水穂」の二人がそう語る。

 

「そうね、忠夫ちゃんにも辛い思いをさせちゃったし百合子ちゃんも母親として辛かったでしょうね」

「我々が出向き、彼奴(きゃつ)めを倒せばあの様な悲劇を起こさずに済んだのでしょうが」

「ですが倒すだけでは世界の理に囚われている彼の者はすぐに復活してしまう。だからこそ、滅ぼす事が出来る忠夫殿に全てを託すしかなかった。それ故に瀬戸様もご息女の百合子様を人柱として彼の世界へと送られたのですから」

 

もし、アシュタロスによって宇宙変換がなされれば全ての平行宇宙がその影響を受けてしまう、その対抗策としてアシュタロスを倒し得る力を持つ横島を誕生させる人柱として瀬戸の実の娘である百合子をGS世界へと送った。

それ故に横島は樹雷の力を使えたのである。

 

兼光はGS世界を映し出すモニターから横島を何とも言えない様な表情で見つめながら思う、人柱となったのは百合子では無く彼ではなかったのかと。

確かに彼の世界は救われ、その他の平行世界の危機も取り除かれたがその結果、彼のみが悲しみと苦しみを背負う事となったのだから。

 

そう、ただの自己批判と分かっていながらも懺悔をしていると何処か楽観的な声が聞こえて来た。

 

「そうだ、いーー事考えた♪」

「「うえっ!」」

 

瀬戸のその声に兼光と水穂の二人は顔を顰める。

当然であろう、彼女の良い事とは間違いなく他人にとっては確実に迷惑な事なのだから。

 

「令子ちゃんが言っている様にルシオラちゃんは忠夫ちゃんの子供として生まれて来る筈だから折角だし私が産んであげましょう♪」

「は、はぁ?………」

「なっ、なななななななな、何を言っているんですか瀬戸様!」

 

兼光は呆れた感じで溜息を付き、水穂は慌てて責める様に言う。

 

「あら、どうしたの水穂ちゃん。何か問題でもある?」

「も、も、問題だらけです!」

「ふ~ん。だったら水穂ちゃんが産む?」

「ふえぇっ!」

 

そう返された水穂は顔を真っ赤にしてうろたえる。

何しろモニター越しとはいえ、子供の頃から長年見ていた相手であり、言うなれば美神やおキヌ達よりも横島の事を熟知している。

その煩悩は父親譲りで一言で言えばスケベで一見女の敵とも言える行動をとる事もあるがその本質は優しく、怖がりで痛がりでありながらも誰かの為に戦う事が出来る強さも持っている。

特に霊能力を得てからの彼の成長は凄まじく、トップクラスのGSにまで成長してアシュタロスとの戦いでも常にその中心に居た。

敵である魔族の女性と恋に落ち、その女性を救う為に魔王に戦いを挑む。

もし、御伽噺や英雄譚であればどんな少女でも一度は憧れを抱くであろうがあれは物語などでは無く紛れもない現実、別離の時の慟哭は瀬戸ですら涙を流す程であった。

そんな彼を見守る内に水穂は何時の間にかその胸の内に淡い想いを抱く様になっていたのである。

 

もっとも瀬戸はその事にはとっくの昔に気付いており、先程の発言も水穂を挑発する意味合いがあったのだ。

まあ、六割方は本気なのだろうが………

 

「兎に角、しばらくはそっとしておいてあげましょう」

「いや、しばらくなどと言わずにこのまま関わらないでおいた方が彼の為なのでは」

「だ、そうだけど水穂ちゃんはそれでいいの?」

「うう~~~」

 

水穂もその方が良いとは思ってはいるが、一刻も早く横島に会いたいというのも偽らざる本音である。

 

「まあ、会いに行くか迎え入れるかは追々考えるとして今日の所は樹雷に帰るとしましょう」

「了解しました」

「忠夫殿、何れお会いする日を待っています」

 

そうしてGS世界を見ていた次元モニターを閉じ、水鏡は樹雷星へと帰還していった。

 

 

 

 

だが、目を離していた隙にあの様な事が起きるとは流石の瀬戸にも気付く筈が無かったのである。

 

 

 

 

―◇◆◇―

 

一連の事件が過ぎ去って数ヶ月、横島もルシオラの事に一応の折り合いを付けて世界はゆっくりと元の日常を取り戻しつつあった。

 

そんなある日の事、横島忠夫は朝から焦っていた。

寝坊をしてしまった為に事務所への出勤時間に遅刻しそうなのだ。

 

『横島よ、早くせぬと遅刻だぞ』

「わーっとるわい!くそー、今日遅刻したらまた時給を下げられる!!」

『だから目覚ましの電池を変えておけと言っておいたであろう』

「その電池を買う金が無かったんやからしゃーないやんか!みんなビンボが悪いんやーーーっ!!」

 

そんな彼と会話しているのは頭に巻いてあるバンダナに宿っている“心眼”。

 

今現在、彼の体の中の『力』を制御する為に再び小竜姫に与えられた竜気で現界した存在である。

二代目ではあるが、横島の体の中に以前の心眼の竜気が僅かながら残っていた為に記憶などを受け継ぎ、基本的な人格は初代とほぼ変わりは無い。

そして美神達の待つ事務所へと行く為に部屋から一歩を踏み出したその瞬間…

 

「あれ?」

『どうした横島?』

 

何故か部屋の外へと踏み出した筈の横島の足元には雲海が広がっており、ニュートンが発見した万有引力が遥か彼方の地面から「おいでおいで」をしており、横島の体は物理法則に従って落下を始めたのであった。

 

「何や、それはぁ~~~~~~~~~~~~~っ!?だから物理は嫌いなんやーーーーーーっ!!」

 

横島は何処かのピンクなショックで聞いた様なセリフを叫びながら一直線に落ちて行く。

 

其処に居る、彼らへの元へと………

 

 

=続劇=

 

 




(`・ω・)と、ゆー訳で横島が樹雷の力を使えるのは樹雷皇家である瀬戸の孫だという本作独自の設定だからです。
しかし百合子が瀬戸の娘であるという無理やりな設定であるのに違和感を感じないのはオイラだけであろうか?

(・ω・)何故、瀬戸達がアシュタロスの企みを知りえたのか?
それはアシュタロスが「宇宙のタマゴ」を作り出した事による次元干渉が切欠です。

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