おのれ、ゴルゴム!
カチカチカチ・・・・・・
時は少しだけ巻き戻り、此処は異空間にある鷲羽の研究室。
辺りには鷲羽の叩くキーボードの音だけが響いていた。
《白眉鷲羽》
見た目は10代の少女であるが実は2万歳を超える自称宇宙一の天才科学者。
五千年の間、かつての助手であった
(研究対象とされる側にして見れば、はた迷惑な話だが)
「う~ん。ここがこうなってと…」
鷲羽がデーターの整理に集中していると、其処にアレがやって来た。
「鷲羽さ~ん、おやつ持って来ましたよ~、一緒に食べましょ~」
「うるさいわねーー、一人で食べて……って美星!?」
処にやって来たのは九羅密美星。
様々なトラブルを持ち込む危険人物ではあるが、トラブルを解決する切っ掛けにもなる、役に立つのか迷惑でしかないのか良く分からない人物でもある。
「あれ~。これってなんですか~?」
そう言いながら美星は、ふと目に付いたボタンを押そうとする。
「アンタは触るんじゃないわよ!だいたい何でいつも何重にも掛けているプロテクトを突破して此処に来るのよ?」
答え・美星だからです。
「……誰の声よ、今のは?…と、それより早く此処から…」
「ポチっとな!」
出て行きなさいと言う前に美星の指は吸い込まれるように一つのボタンを押していた。
「あ、アンタって娘は……とことん酷い目に合わなけりゃ解らないようね……」
そう言って鷲羽は空間にパネルを呼び出しスイッチを入れる。
すると無数のマジックハンドが出てきて美星を拘束し、最後に出てきたハンドが美星のお尻を叩き始めた。
「あ~~れ~~!」
パーン!パーン!パーン!パーン!
「え~~ん、ごめんなさ~~い!!」
美星の悲鳴を聞きながら鷲羽はシステムのチェックを始めた。
「どうやら何も起こらなかったみたいね。まったく一時はどうなるかと」
しかし、鷲羽の考えは甘かった。
美星が鷲羽のメカをいじって……
何も起こらないはずがなかった!!
第
三
横 話
島
来
襲
!?
―◇◆◇―
その頃、青空の下で一人の青年が爽やかな汗を流しながら鍬を振るっていた。
《柾木天地》
彼は数ヵ月前までは何処にでも居る様な普通の高校生だったのだが、柾木神社の近くにある祠の封印を興味本位で破ってからは押し寄せて来る様々なトラブルの為に慌ただしい日々を送っている。
現在は学校には通っておらず、最近では家の近くの人参畑を耕すのが日課となっている。
実は銀河連合でも最大規模を誇る“
「天地兄ちゃーん、お弁当持って来たよー!」
「ミャーン、ミャーン!」
「ふうっ。ありがとう砂沙美ちゃん」
笑顔を振りまきながら砂沙美と呼ばれた少女が駆けて来る。
《柾木・砂沙美・樹雷》
彼女は樹雷皇家、第二皇女で姉の阿重霞が行方不明になった兄の遙照を捜す為に樹雷星を飛び立とうとした際に彼女の船、《龍皇》に密航して着いて来たのである。
今では柾木家の家事全般を仕切る、まさに縁の下の力持ちであった。
そんな彼女の肩に乗っているのは魎皇鬼。
見た目は兎みたいな動物だが、実は宇宙船の生体コンピューターユニットでもあり、辺り一面に広がる人参畑は“彼女”の為の物なのである。
天地は汗を拭きながら砂沙美の所まで行くと腰を下ろした。
すると、其処に。
「ほら、天地~。美味そうだろ、ほらあ~~ん♪」
砂沙美が水筒から冷えた麦茶をコップに注いでいるとテレポートで現れた魎呼が天地の首に手をまわし、砂沙美が作って来たサンドイッチを食べさせようとしている。
《魎呼》
彼女こそが柾木神社の祠に封印されていた存在である。
白眉鷲羽によって創られた人工生命体で、鷲羽が封印されていた間は神我人に操られるままに海賊行為を重ねていた。
樹雷本星を襲った時に樹雷第一皇子の遙照と戦闘になり、その後地球での闘いで力の源である三つの宝玉を奪われ、この地に封印されたのである。
祠に封印されている間はアストラル体で外に出ていて、その際に少年時代の天地と出会っており(天地は知らないが)彼を見守っている間に強い恋心を抱く様になっていた。
「ちょっと魎呼さん。天地様に何なれなれしくしてるんです。それは私の役目です」
そして其処に、阿重霞が二人の間に割り込んでくる。
《柾木・阿重霞・樹雷》
樹雷の第一皇女で砂沙美の姉である。
700年前に樹雷を襲った魎呼を捕える為に行方知らずになった兄、遙照を捜し、地球に辿り着いたが、ようやく出会えた兄、遙照は既に地球人として暮らし老人となっていた。(その姿がカモフラージュである事には気付いていない)
そんな中でかつての兄への想いが憧れに過ぎなかった事に気付き、今では天地への想いが全てにおいて最優先されている。
「何だと!お前こそ引っ込んでな。天地はあたしに食べさせてもらいたいんだよ」
「そんな事はありません。天地様は私に食べさせてもらいたいにきまってます」
「ふっふっふっふっふっ」
「おほほほほほほほほほほ」
第一ラウンド開始!
そんな二人の小競り合いを眺めながら天地と砂沙美は軽く溜息を付く。
「はあ……。また始まったか」
「あはは、まったく相変わらずだね。お姉様達は」
「そうだね、仕方ないお姉ちゃん達だね」
「ミャンミャン」
そんな時、彼等の遥か頭上から何やら声の様なものが聞こえて来た。
「ぅゎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「ん?ねえ、天地兄ちゃん。何か聞こえない?」
「そう言えば何か叫び声みたいなのが…」
「ぅゎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「な、何か変だよ。お空の上から聞こえてくるよ」
「ああ、確かに」
その頃、天地達の遥か上空では……
「どわああああああああああああ、な、何が起こったんじゃーーーー!? 心眼、何か分からんか!?」
『いや、我にも何が何だか訳が分からん。部屋を出たと思ったら、いきなり空の上にいたのだからな』
我等が横島忠夫が目から涙、鼻から鼻水を撒き散らしながら地面へ向かって全速力で自由落下をしている最中であった。
そして、そんな二人が何故行き成りこの世界に、そして上空に放り出されたのか?
そう、説明する必要もなく美星が鷲羽のメカを弄った事が原因である。
恐るべきは『偶然の天才(天災?)』
「し、死ぬ。このままでは真っ赤なトマトになって死んでまう!!」
『落ち着かぬか、お前には文珠があるであろう』
「あ、そうやった」
そしてその頃地面では砂沙美と天地は上空から人が落ちて来ると言う事態に慌てふためいていた。
「天地兄ちゃん!やっぱり誰か落ちて来るよ!!」
「な、何とかしなきゃ。おい、魎呼…魎呼ってば!!」
この事態を何とかしようと魎呼を呼ぶものの……
「天地はあたしんだ!さっさと樹雷に帰れ!!」
「貴女こそ海賊らしく宇宙の旅にお出になりなさい!!」
その声は聞こえないらしく頭上で両手を合わせて力比べをしていた。
「お姉様、魎呼お姉ちゃん!二人ともケンカなんかしてる場合じゃないよ!!」
「早く、早く何とかしないと」
「ミャンミャーーン!!」
―◇◆◇―
『早くせぬか、地面はすぐそこだぞ!』
「よし、文珠が出たぞ。後は【柔】と書きこんで、地面に…」
投げつけようと体を下に向けると………
「あれ?……」
横島のすぐ目の前には地面があったそうな。
「そうなじゃねぇーーーーーっ!」
そして、地の文にツッコミを入れた横島はけたたましい轟音と共に地面へと激突し、そしてようやく魎呼と阿重霞は事態に気付いた様だ。
「な、何だ!?…なあ天地、何があったんだ?」
「天地様?」
「あ、あのなあ…二人とも……」
「てっ、てっ、天地兄ちゃん!」
「どうしたんだい、砂沙美ちゃん?」
「あ、あれ…穴の中で何か動いてるよ…」
土煙がおさまり、天地達が落下場所である人参畑に出来上がったクレータへとやって来て、砂沙美が指さす方に目を向けるとモコモコとクレーターの中の地面が蠢いて土が盛り上がったかと思うと。
ボコオッ
と、人影が現れ、
「あ~~、死ぬかと思った」
地面からはい出した横島が呟いた。
『何故生きてる!?』
そんな光景を見ていた全員の気持ちが一つになった瞬間であった。
=続劇=
(`・ω・)横島が無事だったのは落下の直前に発動した【柔】の文珠が地面を柔らかくしたからでしゅ。
まあ、原作のアレも無事だったのはマリアが護ってくれてたからだし。