こんな、横島忠夫はどうでショー!   作:乱A

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「横島くんの逆行で行ってみよう!・唐巣神父編」

 

 

『天寿を全うした横っちやけど過激派のアホ共は相変わらず横っちの魂を狙うとるようやな』

『はい、こうなっては予定どうりに横島さんを逆行転生させましょう。転移先の時代の私達にも記憶と事情を送っておけば横島さんは安全でしょう』

『そうやな、転生後の再会を楽しみにしとる奴らには悪いけどこれも横っちの為や。悪う思わんといてや』

『では、横島さん。今度は穏やかな人生を送れますように』

 

そうして横島の魂は時を遡って行った。

 

 

 

―◇◆◇―

 

「神よ、今日も恵まれない子羊を無事救う事が出来た事を感謝いたします。アーメン」

 

そう祈りを捧げた唐巣神父の腹からグググ~~~ウと大きな音が鳴る。

彼は除霊の代金が払えない人達の為に無料で除霊をしたり、あるいは払えてもあえて受け取らないといった生活をしている為に何時も赤貧に甘んじているのだった。

 

「ははは、大丈夫大丈夫。たしかまだ食パンが一枚残っていた筈、それだけあれば後五日ぐらいは…」

 

やつれた顔で一人笑う彼の耳に、何か聞こえて来た。

 

「ほぎゃあ、ほぎゃあ、ほぎゃあ」

 

「こ、これは赤ん坊の声。何故こんな所に?」

 

教会の外に出てみると大事そうに布に包まれた赤ん坊が泣いていた。

 

「可哀想に。何を考えてるんだ、こんなに小さな赤ん坊を」

 

泣いている赤ん坊を抱き抱えると唐巣はぎょっとした。

何故ならばその赤ん坊を包んでいる布からは今まで感じた事が無い様な聖なる波動を感じたのだから。

 

「な、何だこれは?此処まで清らかな波動は感じた事が無い。この赤ん坊は一体…?」

 

唐巣は赤ん坊を見ると何時の間にか泣きやんでいた。

赤ん坊は唐巣の顔を見るときゃっきゃっと笑いながら手を伸ばして来る。

 

 

ニヘラ

 

 

その屈託のない笑顔に彼は陥落した。

 

「判りました神よ!貴方は私のこの子を立派に育て上げると、そう仰るのですね。ならば私は全身全霊を持ってこの子を立派に育て上げて見せます。おお神よ、我等親子に祝福を」

 

唐巣はマリア像の前に跪き、祈りをささげた。

その姿には何処からともなく光が射していたそうな。

 

 

 

 

『キーやん、あんな事言うとるけどホンマにあの神父の所でよかったんか?』

『……少し、不安になりました』

 

 

 

 

―◇◆◇―

 

唐巣は次の除霊から料金を受け取る事にした。

それでも他のGSよりは安く、何より彼の所にいる赤ん坊が話題を呼び食事などの差し入れをしてくれる人もあり、彼の生活は安定し、後退し始めていた髪も元通りふさふさに戻っていた。

 

そんなある日、「彼女」は子供と共にやって来た。

 

「今度の依頼はかなり厄介だからね。まあ、先生なら引き受けてくれるでしょう、タダ同然で」

 

その女性とは美神美智恵であった。

 

「先生、唐巣先生。いらっしゃいますか?美神美智恵です」

 

教会に入り、そう呼ぶと忠夫を抱いた唐巣がやって来た。

 

「やあ、久しぶりだね美智恵君。今日はどうしたんだい?」

 

その以前より若返った姿(特に髪)と彼が抱いている赤ん坊を見て美智恵は固まった。

 

「せ、先生?そ、その赤ちゃんは…まさか…」

「ああ、この子は此処に捨てられた子でね、神より預けられた子供として私が育てる事にしたんだ」

「そうなんですか?こんなに可愛い子供を捨てるなんて…」

「あかちゃん?みせて、みせて、れーこにもみせて」

 

子供の令子は美智恵の隣でぴょんぴょん飛び跳ねながらねだる。

 

「ああいいよ。ほら忠夫君、令子お姉ちゃんだよ」

「あかちゃん、かやい~。よしよし」

 

唐巣はしゃがみこみ、令子に忠夫を見せると、令子は忠夫の頭を撫でる。

忠夫も気持ちいいのか、きゃっきゃっと笑っている。

 

 

「じゃあ令子ちゃん、忠夫君を見ていてくれるかい?私はお母さんとお話があるからね」

「うん!れーこ、あかちゃんをみてう!」

 

唐巣は忠夫を揺りかごに寝かすと令子はゆっくりと揺らしながら忠夫をあやす。

 

「頼んだよ、令子ちゃん。さあ美智恵君、本題に入ろうか。除霊の依頼なんだろう?」

「は、はい。これが資料です」

 

唐巣は受け取った資料を真剣な目で読んで行く。

 

「なるほど、これは厄介だね。分かった、私も協力をしよう」

「有り難うございます先生」

 

美智恵は唐巣に頭を下げるが、唐巣が発した言葉に一瞬呆然とする。

 

「では、私の取り分は1000万という事で」

「……はい?」

「これだけ厄介な霊症だ、依頼料もかなりの高額なのだろう?」

「は、はい。それはそうですが……いつもの先生でしたら」

「忠夫君の将来の事を考えると金はいくらあっても足りないからね。貧しい人達からは高額な依頼料は取れないけど余裕のある人からは貰える物は貰わないと」

「そ、そうですね……(ちっ、予定がくるったけど依頼料は5000万。その位なら仕方ないか)」

「と、言う訳で1500万だね」

「先生!上がってます、金額が上がってます!!」

「気のせいだ」

「で、でも……」

「キノセイダ」

「は、はあ……」

 

慌てふためいている美智恵をよそに、唐巣は忠夫を抱きあげてあやしている。

 

「忠夫君、お父さんは仕事に行って来るからね。何しろ2000万の仕事だ、頑張るぞ!」

「キャッ、キャッ♪」

(だ、駄目だ……何かを言うたびに金額が上がって行く。妥協するしかないのね)

 

 

美智恵はもはや諦めて、除霊後に言われた通りの金額を唐巣に支払った。

 

しかし、彼女の悪夢は此処から始まったのであった。

彼女が高額の依頼を受けると何故か何処からともなく唐巣が嗅ぎつけて来て強引に共同での依頼にし、依頼料を持って行った。

その割合は徐々に増えて行き、今では8対2にまで膨れ上がっていた。(勿論、唐巣が8)

 

そして令子が中学生になったある日、美智恵は来るべきアシュタロスとの闘いの為に姿をくらませる事にした。いや、理由はそれだけではなく……

 

(これ以上此処に居てはどんな依頼を受けても唐巣先生に儲けの殆んどを持って行かれる)

 

正直、唐巣の相手をするのが苦痛になって来たのが本音らしい。

美智恵は令子が眠りに付いているであろう自宅を見ながら小さな声で呟く。

 

「令子、ゴメンなさい。貴女を一人にするお母さんを許してね。でも貴女の傍には忠夫君も居るし寂しくないわよね、お母さんも頑張るから貴女も頑張ってね」

 

空には雷雲が近付いて来て、雷のエネルギーで時間移動をしようとしたその時、突如暗闇の中から手が伸びて来て美智恵の肩を“ポンッ”と叩いた。

 

「何処に行くんだい、美智恵君?」

「ヒイッ!」

 

その手も持ち主は唐巣神父であり、もちろん近づいて来る時の気配などは美智恵に微塵も感じさせなかった。

 

「か、唐巣先生……な、何か?」

「忠夫君には霊能力の才能があってね、将来GSとして独立させてやりたいんだ。その為には事務所設立などの諸経費が必要だからね」

 

そう言い、唐巣はニッコリと微笑んだ。

 

 

みちえはにげだした。

しかし、まわりこまれてしまった。

 

 

「しかし私には令子の為にやらなければならない事が……」

「大丈夫、令子君は忠夫君が守ってくれるよ。だから……」

 

美智恵はガタガタと震え、泣きながら首をぶんぶんと振っている。

しかし、唐巣はそんな美智恵を眩い限りの笑顔で見つめながら語りかける。

 

「さあ、お仕事のOHANASIをしようか?」

「嫌ぁーーーー、誰か助けてーーーー!」

 

その、心からの魂の叫びは雷鳴に掻き消されて誰の耳にも届かなかった。

 

 

 

 

―◇◆◇―

 

それから数年後のアシュタロスとの闘いは、共に競い合いながら成長した令子と忠夫と仲間達のおかげで何とか勝利を勝ち取る事が出来た。

 

「父さん!勝った、勝ったよ!」

「ああ、よくやったぞ忠夫」

 

忠夫は義父の唐巣に駆け寄る。

唐巣のその姿は正史とは明らかに違い、若いままであった。

 

「ママ、見てた?私達勝ったわよ!」

「ええ、見てたわよ令子」

 

令子も美智恵に駆け寄った。その姿も正史とは違い、かなり老け込んでいたとさ。

 

「本当にアシュ様に勝つなんて、さすがねカラス」

「カラスーー、無事で良かったでちゅーー!」

「アシュ様を……、父さんを“救って”くれて感謝してるよポチ、いや唐巣」

 

 

“唐巣”忠夫に寄り添うように近づいて来たのはルシオラ・ベスパ・パピリオの三姉妹。

 

アシュタロス陣営のスパイの為に魔族側に投降した際に知り合った、アシュタロスに創られた人工造魔の少女達である。

その哀しい運命から救い出す為に忠夫はアシュタロスを倒す決意を更に高め、彼女達もそんな忠夫に徐々に惹かれて行った。

何しろ、弟弟子のピートからしてバンパイアハーフなので、魔族や妖怪などと言った括りは彼にはあまり関係無かったらしい。

 

「ちょっと、何なれなれしくしてるのよ!忠夫と私は前世からの恋人なのよ、横から入り込んで来ないでよ!」

「前世はしょせん前世でしょ。そんなモノを理由に正妻面しないでよ」

「そうでちゅ、カラスはパピのおムコさんでちゅ!」

「パピリオ、勝手な事を言うな!唐巣は私と…」

 

「「其処の二人、抜け駆け禁止!!」」

 

 

もしかしたら、有り得たかもしれない“未来で過去”のお話。

 

 

めでたしめでたし?

 




(`・ω・)と、言うわけで逆行した横島が唐巣神父の下で成長したら?
そんな設定でのお話でした。
ちなみに此処では横島忠夫ではなく唐巣忠夫ですからルシオラ達の呼び方もそれに合わせて変わっています。

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