例えばこんな結婚生活(仮)   作:水代

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これにてお終い

 

 

 

 ぱちん、と泡が弾ける。

 

 泡沫の世界に終焉が訪れる。

 

「一つ、フランを泣かさないこと」

 

 世界の終わり、色を失っていく、色彩を欠いていく、そんな世界の中で。

 

「一つ、未来永劫離さないと誓いなさい」

 

 崩れ行く世界の中心で、少女はそう告げた。

 

「…………ああ、誓う…………いや、()()よ」

 

 そして自身もまた、そう返す。そんな言葉に少女の目をすっと細まり。

 

()()…………のね?」

 

「うん、そうだ…………俺は、絶対にフランを離さない。未来永劫。だから代わりに、フランもまた俺から離れないで、未来永劫…………それが契約だ」

 

 だから対象は、自身の傍らの少女。

 

「フラン」

 

 少女の名を呼び、手を伸ばす。

 

「…………うん、いいよ、タカヤ」

 

 少女もまた、自身の名を呼び、その手を取る。契約の宣文は…………きっと、これしかないだろう。

 

「病める時、健やかなる時、苦しい時、喜びの時、悩める時、楽しい時、どんな時もキミと分かち合いたい、キミと共に居たい、だから、高瀬深谷の名を持って、私はいかなる時もキミと共に生き、キミと共に悩み、キミと共に苦しみ、キミと共に悲しみ、キミと共に笑い、キミと共に楽しみ、キミと共に喜んでいくと誓うよ」

 

 だから。

 

「どうか愛しい人、私と縁を繋いでください」

 

 差し出したのは親指と人差し指で作った輪っか。

 

 その意味を、けれど彼女は理解してくれていた。

 

「誓うよ。神でなく、私自身に、そして私と共に居てくれると言ったキミに、そしてずっと私を守り続けてくれたお姉さまに。この道行の先に、どんな苦しみがあろうと、どんな辛さがあろうと、どんな悩みがあろうと、私は私を必要としてくれる限り、タカヤと共に未来永劫歩み続ける」

 

 だから。

 

「大好きだよ、これからもずっと一緒だからね」

 

 フランが左手を差し出す。そしてその薬指に手で作った輪を通す。

 

 それは契りである。

 

 約束である。

 

 契約である。

 

「改めて言うことじゃないとは思うけどさ」

 

 それでも、言わせて欲しいんだ。

 

「あなたが好きです、俺と結婚してください」

 

 それはすでに一度交わされたはずの契約。

 

 だから、本当に今更だし、改めて言うことでも無いんだ。

 

 けれども…………そう、同じ言葉のはずなのに、同じ内容のはずなのに。

 

「…………うん…………私も、大好きだよ…………結婚したい、ううん、結婚してください」

 

 うん…………何だか、違うんだ。以前交わしたはずの言葉とは、何かが違う。

 

 何が違うんだろう、そんなことを考えながら。

 

 世界が崩れ落ちる。

 

 フランと繋いだ手は…………決して離れなかった。

 

 

 * * *

 

 

 ぱちん、と唐突に意識が戻る。

 

 気づけば、すでにここ数週間ほどで見慣れてしまった地下室の天井。

 

「……………………夢…………じゃない、よなあ」

 

 つい先ほどまでのはっきりと記憶に残るあれやこれは、決して現実の出来事ではない。

 だがかと言って、夢、と言うわけでもない。

 

 言うなれば可能性の未来。

 

 最後に会った時、図書館の魔女は言った。

 

“可能性を見せてみろ”と。

 

 最初に会った時、館の主は言った。

 

“ゲームをしよう”と。

 

 館の主レミリア・スカーレットの運命を操る程度の能力と称される未来事象へと干渉する力と、図書館の魔女パチュリー・ノーレッジの持つ魔導書から生み出された結界によって可能性を孕んだ世界を生み出し。そこに自身、高瀬深谷の記憶を読み込ませ、()()を行う。

 

 そうしてゲームが始まる。

 

 敗北条件も、勝利条件も分からない。世界を形作るのに個々人の記憶を提供してしまったせいで、自分がこの世界でどういった役割を持っているのかも自覚できないまま。

 

 何度となく繰り返した。

 

 百度となく、千度となく、一万度となく。

 

 その全ての記憶は朧げだ、何せ時間にすれば千年近い時間の記憶だ。人間が留めて置けるものではない。

 

 だから覚えているのは最後の一回だけ。

 

 何が琴線に触れたのかは分からない。

 

 ただ、いつも通り俺は殺されかけ。

 

 そうしてフランと繋がった。

 

 理由も理解も追いつかないまま。フランが姉に負け。

 

 そしてもう一つ、契約を交わした。

 

 その直後、レミリアは確かに言った。

 

 “降参よ”と。

 

 そうして目が覚めた、と言うことは勝った、と言うことでいいのだろうか。

 

「…………よく分かんないな」

 

 そもそもどう言う状況なのかさえ把握しきれていないのだから、仕方のないことかもしれない。

 

 ただ、一つだけ分かることがある。

 

 …………それは。

 

「…………ずっと一緒だ」

 

 隣に眠る少女と居ることを、生きることを、自身は許された、その事実だけは理解した。

 

 そして、それ以外は構わない…………有り体に言って、どうでもいいことだった。

 

 今になって気づくが、あの世界で繋いだ自身たちの手は、けれど今になっても繋がれたままである。

 

「…………大好きだよ、フラン」

 

 呟き、ぎゅっと手を握る。

 

 眠ったままの少女へと向けた言葉は。

 

 けれどぎゅっと握り返された手に驚く。

 

 視線を向ければ、いつの間にか紅玉(ルビー)のような綺麗な瞳が自身を見つめていた。

 

 ゆっくりと開かれる、桜色の唇に、自然と吸い寄せられ。

 

「…………私も、大好きだよ」

 

 そうして二人の影が重なった。

 

 

 

エンディング① ずっと一緒に




短いけれど、エピローグ的なやつなんでこれで終了です。


最近感想なくて少し寂しいけど、これで妹様との結婚生活は終了。

ホントはあと二章くらい続いて、7つか8つのエンディングパターンがあるんだが、これ以上伸ばすのは蛇足と判断したので本編はこれで終わりにします。

ただ響二次と違って、日常編的なのを思いついたら投稿するかも。
ぶっちゃけイチャコラ成分が足りない。まるで足りない。
そっちは基本一話完結の短編になるので、一応本編終了と言うことで完結にしときます。
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