「ゲームセット、だ」
言葉が告げられると同時に、全身から力が抜けていく。
ああ、これで終わりか、とそう思うと同時に、最後の力を絞り切って
「…………次は…………絶対…………負けない、から」
腹に穴が開いた状態で精一杯絞りだした声。
けれどそれが限界。最早声は出ない、呼吸は途切れた、心臓も…………多分もうそろそろ動かなくなる。
視界が閉ざされていく。耳も急速に遠くなっていく。
最後に見えたものは。
目の前の彼女の少しだけ悲しそうな表情で。
最後に聞こえたのは。
「……………………期待しないでおくよ、人間」
感情を押し殺したそんな声だった。
* * *
ふと目を開く。
気づけば自身はそこにいた。
薄暗い部屋。散乱する物。
そして目の前のベッドにはこちらを見て、大きく目を見開く少女。
天使だ、一目見た瞬間にそう思った。
最初の邂逅、俺の頭は真っ白に塗りつぶされた。
黄金に輝いているのだと錯覚するような金糸の髪を短くサイドテールにし。
紅玉ルビーのように鮮やかに光る真紅の瞳。
そして背から生え出た宝石の成った木のような羽。
さきほどまで自分の部屋にいたのに、とか、ここはどこだ、とか。
そんなことを考えていた脳内が、彼女を見た瞬間、その全ての思考が吹き飛んだ。
そして代わりに思うことは一つだけ。
天使だ。
まるで何年、何十年、何百年と貯め続けてきた想いが一気に溢れるよう、気づけば自身は、たった一目見ただけの少女に心を奪われた。
「――――――――」
少女の口から何か言葉が語られる。
そんな少女に、自身の口はたった一つの言葉を吐き出した。
――――――――■■■■。
そうして夢は続く。
終わらない夢幻が、また続く。
何度でも、何度でも。
そう…………いつかの日まで。
バッドエンド① 永劫続く夢の中で
分岐条件①美鈴から話は聞いておきましょう。終盤における主人公の理解が変わってきます。理解が遅いと最終局面突入前に死亡します。
分岐条件②パチュリーから魔道書をもらいましょう。読んでない場合、最終局面で詰みます。
分岐条件③フランへの好感度、フランからの好感度を高めておきましょう。どちらか片方でも足りていない場合、最終局面でエンディングが派生しません。
分岐条件④主人公の過去編をこなしておきましょう。何か忘れていることがあるかも?
分岐条件⑤メイド長を説得しましょう。確定で最終局面に到達できます。
分岐条件⑥小悪魔とイベントを起こしましょう。新しい契約が獲得でき、終盤と最終局面に変化が起きます。
以上6つのうち、3つ以上をこなせばエンディング変化が起きます。
以上の条件を満たしたら次の話に進みましょう。
「あーあ…………やっぱり今回もダメでしたか」
呟く門番の顔にはいつもの笑み。変わらない、この門番にとって、この程度気にもならないことだと言うこと。
だがそれも魔女にとっても同じだろう。
「…………これで何度目、だったかしらね」
主役の片割れが死亡し、急速に白んでいく世界を見つめながら魔女が呟く。
「色々やってみましたけど、ダメでしたね」
「そうね…………やはりあの人間では無理なのかしらね」
「本当にそう思います?」
「さあ? けどまあ少なくとも、彼以外でこの先妹様を変えることのできる存在がいるとは思えないけれど」
だからと言って、彼が彼女を救えるか、と言われるとそれはまた別の話。
「そもそもそんな簡単に話が進むのなら、レミィだって苦労しないわよね、って話」
有限の中に可能性が見いだせないから無限を求めたのだ。
そうそう簡単に結果が見いだせるはずもない。
「…………まあまだ諦めていないみたいだし、もう少し様子見かしら、ね」
再構成させていく世界。何度となく見飽きたその光景を見つめながら、魔女は呟く。
「あの人間の想いとレミィの能力と私の魔法を混ぜて作ったこの夢幻分岐の世界で、本当に未来は見つかるのかしら」
果たしてそんなものは存在するのか、魔女は考え。
けれど、すぐに止めた。知識を求める魔女としては本来あり得ないことなのだが。
「他人の問題を奪い取ってまで解くほど趣味は悪くないわ」
呟き、空を見上げる。
白んでいた世界が徐々に輪郭を持ち始める。
見慣れた図書館へとそれが変貌していき、気づけば隣にいたはずの門番は居ない。
恐らく門へと移されたのだろう。
「…………さて、今度はどうなるかしら」
いい加減、変化が欲しいわ。そんな呟きをしつつ、ちょうど手元にあった本を開く。
魔女の日常がまた始まる。