どこぞのアホ提督と艦娘たち   作:バード鳥鳥

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提督と木曾と響と比叡で偵察ですね

「という訳でだ、早速この3人で噂の提督をまっさ――見に行くぞ!」

 

「今物騒なこと言おうとしてなかったかな、司令官」

「ふっ、他の指揮官がどういう奴なのか見ものだな」

 

 軽巡洋艦、球磨型の木曽と駆逐艦、暁型の響は互いに違う感じだが静かに言った。木曾も響も戦闘時は熱いハートを持っているがな。

 

「ほんとに適当に声かけましたね司令。一緒に歩いてただけのお二人を見た瞬間に偵察任務行こう、と言うなんて流石に思わなかったですよ」

「出来るだけ早めにあんさ――いや、ただの確認にそう時間もかける訳にもいかないし危険な任務でもないからな。それに人選によっては噂の提督をぼくさ――ではなく、見に行くことすら出来ないかもしれないしな」

「司令! さっきから物騒なワード出そうとするの止めませんかぁ!?」

「なんのことかさっぱりだぞ比叡。とりあえず、さっきスマホで調べたところ噂の提督はここからそう遠くない地点にいるらしい。噂で広まった知名度は時に命をも危険にさせるということを教えてやらねばな……!」

「おお、今日のお前は一段とやる気に満ち溢れているな……!」

 

 木曾は嬉しそうな声をあげる。そりゃあ満ち溢れるさ、絶対に倒さねばいけない相手という奴だからな……!

 

「比叡、さっきからなんで司令官は殺気をたぎらせているんだい?」

「私が発端で司令がなんかおかしい方向に暴走してるんですよ、響たちを巻き込んでしまってほんっとうにすみません……」

「……大変だね、比叡も」

 

 なんかしんみりとしながら話している二人。木曾を見習ってもう少し気合を出せばいいのに、何故比叡は消沈したかのように気合が下がってるんだ。

 よし、ここは気合を入れるべきか!

 

「お前ら、整列だ!」

「は、はいっ!」

 

 比叡、響、木曾は横一列に並ぶ。流石というべきか、その並びはきっちりとしている。

 

「比叡! 響! 木曾! 俺達は今から任務に行く、偵察任務とはいえ全力で取り組むべきだ! だからこそ、気合は重要だ! さあ、比叡の決め言葉をみんなで叫ぶぞ!」

「ひえっ?」

「ほお、あれか。確かにアレは気合を入れるには十分だな」

「ああ、うん。それは私も言っては見たかったな」

 

 そう言って、俺と響と木曾は比叡を一斉に見る。

 

「あれ? あれぇ!? なんか言う流れですかコレ!?」

「流れじゃない、決定事項だ! さあ、叫べ比叡っ!」

「ううっ……で、では! 皆で一緒にぃー!」

 

 

「「「「気合っ! 入れてっ! 行きますっ!!!!」」」」

 

 

***

 

「って、どーして深海棲艦のいるルートで行ったんですか司令っ! 近いといいつつ遠かったですし! なんかいつもの任務で見たこと無い感じの深海棲艦までいましたよ今っ! 見つかったらヤバイ感じでしたよ、アレェッ!」

 

 比叡は今にも泣き出しそうな必死な声で抗議してくる。そう、今俺達が通ったところは深海棲艦がいたのだ。それも大量に。

 だが俺達は全力で息を殺し、何とか見つからないぐらいの距離を保ちながら海面を進んでいき、噂の提督のいる鎮守府の港について何とか事なきを得た。ほんとに、なんとかである。

 

「ま、まあ、四人ならみ、見つからないとし、知っていたからな。そ、そんな泣きそうな声を出すなよ、ひ、比叡」

「し、司令官、声が震えてるよ」

「お、俺のはか、歓喜の震えだ。あ、あんな連中と今後戦っていくという、な」

「ふふっ、流石じゃないか。それでこそ俺達の提督だ」

 

 木曾は嬉しそうに言ってくれるが実際は相当ビビッた。なんだあの深海棲艦ども! 噂のなんちゃら姫型とかなんとか空母とかああいうのか!? 正直、死を覚悟したぞ……! 帰りはもっと安全なルート調べて帰らねば……!

 

「ま、まあ噂の鎮守府にはついたしな。いいじゃないか、なっ?」

「ああ、そうだぞ比叡。お前らしくもないじゃないか、いつものように前向きに行こう」

 

 俺の言葉に木曾が便乗してくれる。というかお前、なんでそんな涼しい顔ができるんだ。響ですら少し不安がっているというのに。

 

「木曾……そ、そうねっ! すみません! 比叡、少しは弱気になってました! 改めて、気合入れます!」

「ああ、その方がらしいぞ比叡。響も心配するな、不安なら俺がいる」

「…………うん、ありがとう。大丈夫だよ」

 

 涼しい笑顔で二人を宥める木曾。そういうのは俺の役目だったというのに、流石としか言いようが無いな……。くそっ、まだまだ俺も自信不足だ。ちょくちょく俺より提督が似合っている艦娘が俺の泊地にいる気がするのは気のせいじゃない気がしてきたぜ。

 

「さあ提督、お前が気になると言っていた提督の面(つら)でも拝みに行こうじゃないか」

 

 親指で鎮守府を指す木曾。いちいちカッコいいのがちょっと妬ましいぞお前。

 

「あれっ! 誰ですかー!」

「!?」

 

 俺たちは一斉に声のあった方向を見る。

 そこにいたのは――確か、朝潮型の2番艦の大潮だ。ウチにもいるからよくわかる。

 

 だが、まずい。これは非常にまずい。今俺達は半ば侵入者に等しい。何せアポイントメントも取っていない。どうする、どう乗り切る……!

 俺達はまとまり、身体を屈めて集まる。

 

「ど、どうします司令?」

「どうもこうも、見に行くだけだから大丈夫だろう。なあ提督」

「……司令官が入る許可を取っているとは思えないな」

 

 響の言う通り過ぎてヤバイ。……ええい、考えろ俺! 木曾だけに良いとこを見せたままではパワフルエリート提督の名折れ!

 

「聞こえてますかー?」

 

 大潮が大声で話しかけつつ、こちらへ近づいて来る。――こ、こうなれば。用意しておいたとっておきを使うしかない……!

 

 俺は大潮の方を向き直り、仁王立ちのポーズをする。

 

「ど、どうする気ですか司令!?」

「まあ見ておけ。――俺の、とっておきをっ!」

 

 俺は左手を十五度辺りにシャキンと伸ばす。見せてやろう、今まで隠していた力を!

 

「…………はああああっ! メタ、モル、フォォォォォォォゼッ!!」

 

 叫んだ瞬間。俺はつけていた服を脱ぎ捨てた。

 

 続いてワイシャツにネクタイをつけて、その上に黒のスーツを羽織った後にサングラスを瞬時に装着。その装着は、まさに閃光。我ながら究極を自負して良い速さ。俺の周囲に謎の光が発生してしまう程にだ。

 その光が収まった頃には、俺の着替えは既に完了していた。そう、俺と言うエリート提督は最早別の存在となったと言っても過言ではない。どこぞのエージェントと間違われかねない程になってしまった。

 

「ひえええええっ!?」

「……わあ」

「なっ!」

 

 そして俺の早着替えっぷりに驚く三人。大潮も口をポカンと開けている。ふふふ、快感だ。

 ポカンと驚いている大潮に俺はゆっくりと歩いていく。

 

「やあ、我が名はエリートスペシャリストの検査官だ。呼びたければ夜の皇帝――さしずめ、ナイトカイザーと呼んでくれたまえ」

「な、ナイトカイザーさん、ですか」

 

 あまりのかっこよさにあの大潮が元気な声を出さずになんか困惑したような驚き方をしている。仕方ない、これは俺も自分が凄すぎて自画自賛しまくってしまったからな。まあ、うちの大潮と違って奥ゆかしい可能性もあるが。

 

「し、司令、そのネーミングセンスはあんまりにも――」

「比叡っ! シレイ、なんて名前ではない。今の俺はナイトカイザーだ、しっかりと呼ぶがいい」

「ええっ……?」

「いいぞっ! 良い名じゃないか、提と――いや、ナイトカイザー!」

「ひえええーっ!? な、なんでノリノリなの木曾!?」

 

 木曾は俺の良さが即座にわかったようだ。比叡にはまだわからないようだな、この大人の渋みって奴が。

 

「英語とドイツ語が混ざってるのは言って良いのかな」

「響、名に混在など気にする必要はない。気にしてはならない」

 

 ポツリと呟いた響に言葉の釘を刺す。な、ナイトが英語だよな? カイザーも英語でいいんだよな? もしかしてカイザーはドイツ語なのか……? ええい、気にせんぞ俺は! ノリだノリ!

 

「あ、あのー、検査官さんはどうやってここに来たんですか? 船とかないみたいですけど」

 

 動揺しつつも聞いてくる大潮。ナイトカイザーと呼ばないのは少しショックだがまあいい、仕方あるまい。

 

「決まっている。この、生を受けて母上から頂いた足でだ」

 

 俺は足をバシッと叩いてアピールする。

 

「徒歩ですか!? 海を徒歩で!? そこの比叡さん達に引っ張られて来たわけでもないんですか!?」

「うむ、そんな情けない真似をこのナイトカイザーがする訳なかろうて。検査官とは並大抵では出来んのだ」

 

 俺のところに検査官とか来たことないから知らないがな。だが、俺ですら海を歩けるんだから奴らも歩けるだろう。

 

「君は艦娘だろう? 少し君達の提督の噂を聞いて検査しに来たんだが……君達の提督の所に連れて行ってくれないかね」

「え、えーと、そうですね、す、少し待っててください!」

 

 そう言ってトテトテと走り、少し遠ざかってスマホを取り出して話している大潮。噂の提督と連絡を取っているのだろう。

 そして話し終えると再び俺達の方へ向かって来る。

 

「今、司令官から許可を得ましたっ! ようこそ、大潮たちの鎮守府へ! ついてきてください!」

 

 大潮は元気いっぱいな声で俺達の前を歩いていく。よーし、とりあえずは侵入成功だ。

 

「ふふっ、どうだ俺のナイトカイザーっぷりは」

「ああ、流石としか言いようがない。お前のことはわかってたつもりだったが、まさかそんな切り札を持っていたとな、アリとしか言いようがない」

「ふふふ、あまり褒めるなよ木曾。俺がいくら変幻自在のエリート提督だからと言っても言いすぎだぞ」

「はははっ、そう謙遜するな提督!」

 

 木曾は上機嫌に笑い声をあげる。全く、コイツはいつも褒めすぎて俺を駄目にしてくれそうだぜ。

 だが、それに反して響と比叡は微妙な顔をしている。

 

「どうしたお前ら? もしかして俺がずっとナイトカイザーになってしまうのか不安におもっているのか? なら心配するな、ナイトカイザーの名は今しか使わん。戻れば提督なんだからな」

「いえいえ、そうじゃなくてですね。なんか嫌な予感がすっごいですよ司令」

「うん、私もそう思うな。あっさりすぎる」

「ははは、なあに問題ない問題ない。いざという時には切り札もある。さあ、噂の提督をぶっこ――拝見しに行くぞ!」

「だからその危険なワード出そうとするのやめましょうってぇ!」

 

 俺達は大潮の後に続き、鎮守府へと向かった。

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