「あらすじ。大潮に連れられた俺達はナイトカイザーの手により無事危機を脱した。しかし、そう思っていたのは俺達だけであり、実際――俺達は、罠にかかっていたのであった」
「誰に言ってるんですか司令ぇぇぇっ……」
比叡は今の状況のせいで少し声を抑え気味に言って来る。だが、その言葉はいただけない。何故なら今の俺は別の存在だからである。
「シレイ? いいや、俺はナイトカイザーだ」
「まだそれ引っ張るんですかぁ!?」
比叡はうろたえつつ俺に言葉を放つ。だが、それも仕方ない。何故なら――俺達は今、艦娘たちに主砲を向けられているのだから。
そう、何故こうなったかというと実に簡単だ。
大潮が俺達を鎮守府に入れてくれた。その鎮守府はもう広すぎて入り口もでかくて妬みと怒りが更に強化された。
早速スーパーエリート丸くんで噂の提督の寝首を掻きにいこうかと思うと、ドアが閉まって広い入り口の所に6人程の艦娘が俺達に砲を向けてきた。たったそれだけのことだ。とはいえまさかこんな即行でバレるとは、もう少しスパイ的な動き出来ると思ってたんだが認識が甘かったか……!
「すみません、でもあなた方はちょっと怪しすぎます!」
連れてきた大潮も俺達から少し離れて右手につけた砲を俺達に向ける。一体どこが怪しいと……?
「うん、正論だね」
「相手の言葉に頷くなよ響!?」
お前も怪しすぎると思っていたのか……! いや、きっとバレないと思っていたがバレてしまったから相手に同意したんだろう。負けず嫌いな奴だ。
「ふっ、どうやらお前を警戒しているようだな提と――ナイトカイザー」
「ああ、そうだな。俺の力が分かるほどにはそっちの提督もやるらしい」
「どうしてそういう考えを持てるんですかぁ!?」
木曾と俺の会話に何故か驚く比叡。さっきは俺もビビッていたが今はそうでもない。
囲んでいるのは大和型1人、軽空母1人、重巡洋艦2人、駆逐艦の朝潮型が大潮を覗いて2人と合計6人だが問題ない。むしろあのおっぱいは目の保養だ。こんなところで大和に会えるとはな……いや、たまらんな。前の演習戦の時はしっかりと見れなかったからガン見しとこう。
「あ、あの人の目線に何か淫的なものを感じるんですけど……」
「ああ、即座に撃ってしまった方がよいかも知れんな」
大和の言葉に重巡洋艦の艦娘が物騒な返しをしている。摩耶や大井の攻撃を何度か受けたことはあるが大和型の主砲なんて食らえば跡形も残る気しないぞ俺は……!
「さあどうするナイトカイザー、俺達に刃向かう馬鹿をやっちまうか?」
「ひえええっ!? これは無茶ですって!」
「そうだね、流石にこの状況で暴れては下手したら轟沈だ。司令官以外は」
「何故今、俺をはぶいた響」
「…………あ。それはまあ、司令官は人間、だからね。」
目を合わせずに少し言いづらそうにそんなことを言う響。そうか人間なら轟沈とは言わないよな、だがお前らも轟沈と言いづらい見た目してるからそんなん気にしなくてもいいというのに響め。気を使ってくれる奴だ。今にも口笛を吹いてごまかそうとしているようにも見えたのは俺の見間違いだろう。
「随分と余裕じゃない。なに? もう諦めてるから談笑してるって言うの?」
朝潮型の霞がこちらを今にもあっさりと撃ってきそうな態度で声をかけてくる。
「いいや、この状況をどうとでも出来るからコミュニケーションを取っているだけだ」
「なんですって!?」
「何故なら俺は検査官ナイトカイザー…………夜を支配せし悪夢の原点。お前達艦娘であろうとも、そう容易く潰えはしない存在だ。深海棲艦よりも深き暗黒の力、受けてみるか……?」
俺は右手を手前に出しながら語る。俺の台詞に噂の提督の艦娘どもも恐怖で静寂してしまっている。
「しれ――じゃなくて検査官。呆れられてますよ……」
「違う。恐怖で声も出ないだけだ。あとナイトカイザーと呼べ」
比叡はまだまだ相手の反応を知るのが苦手らしい。どうみても全員恐怖して――
「そっちの言うとおり、アンタがバカすぎて呆れまくってるのよみんな」
「な、なにぃ!?」
半眼で睨んでくる霞。完全に人を馬鹿にした顔である。
「霞、言ったら駄目よ。あの人は真剣なんだから、私達も真剣に答えないと」
「あんな惨めなのに真面目にとかそれこそ無理よ朝潮! あんなのとっととくたばった方が身のためよ絶対!」
こっちを指差して酷いことを言ってきやがって……! お、おのれ霞。ウチにもいるがここの霞も口が悪いなほんとに!
だが迂闊に手を出せないのは確か。ちゃらけて話せるのもそろそろ限界な感じはある。俺はともかく比叡、木曾、響はどうにかして逃がしてやらなきゃならない。こんな陸で轟沈なんてさせちゃあ、艦娘の名に泥を塗らせてしまう。
どうするかと考えていた、そんな時であった。
「悪いなお前達、待たせた」
奥の方から何者かが歩いて来る。あの提督らしい軍服に帽子は……もしや、噂の提督か!
「大和と大潮、霞以外は戻っていいぞ。あと、全員主砲を降ろしていい」
「いいのですか?」
「ああ、お前が――大和がいるんだ、不安なんてないさ」
「提督…………」
おいおいなんだあのスケコマシ野郎は! 俺のおっぱい――もとい大和を! あのスケコマシ提督野郎!
「まだ若そうだが、男前だな」
「ひえー、司令より凄そうですねー」
「司令官、これは負けだよ。大人しく退こう」
「お前らもう少し俺の方が凄いとか言えよ!」
ぐぬぬ、確かに見ただけで中々出来そうな奴とおもったりはしたが納得行くかぁ!
「……司令官?」
げっ。
目をパチクリさせてそう呟くスケコマシ提督。見た目は俺よりも若そうで、クールな印象をみせるのがまた腹立つ。階級は――どうやら胸の勲章を見る限りは少将だな、つうか俺より全然上かよ!
だったら尚のこと正体は隠しておかねば……!
「いや、俺は検査官ナイトカイザー。どこかのエリート提督やパーフェクト司令官とは何一つ関連性の無い男だ」
「艦娘もいるし、アイツ多分どっかの提督よ」
霞がズバリなことを言って来る。なんて鋭い意見をぶつけてくるんだコイツは……! 人がバレない言い訳を並べているというのに!
「ああ、そうかもな。とりあえず3人以外は戻って訓練に戻ってくれ。手を煩わせて悪かったみんな」
「今度一緒に飲んでくれれば構わんさ」
「流星とか天山とかの用意よろしくぅ!」
「わ、私は間宮アイスがいいです!」
「……お前ら中々要求してくるな。まあ、検討しとくから戻ってくれ」
そう言うと霞、大潮、大和を残して艦娘たちは戻っていく。砲も下げてくれたんで、気に食わないが少し落ち着く。
そして噂の提督は俺の方を見る。
「とりあえず……何故侵入してきたんだ? 正規の方法を取ってくれれば、こんな真似をせずにすんだというのに」
「ふっ……そりゃそうよ。この俺、ナイトカイザーは――」
瞬時に俺は背中に隠していた金属バット、スーパーエリート丸を取り出し――
「貴様を抹殺にしに来たんだか――ぶほぉっ!?」
「司令ー!?」
が、顔面に弾丸ヒット! ぐおおお、い、痛い……!
「か、霞、お前いくら模擬弾とはいえ人間相手に撃つなよ……」
「だって今コイツ、司令官を狙ったわよ」
「いや、まあ、そうだけどなぁ……」
弱った声を出すスケコマシ提督。そうか、今撃ったのは霞か……だが、
「ぬるいな……っ!」
俺はその一発を食らっても、余裕の笑みを見せた。
「なっ……! 当たりが悪かったって言うの!? 昏倒させる気で撃ったのに!」
「くっくっく、残念ながら俺は35.6cm連装砲の直撃までなら耐えることがギリギリ出来る鋼の肉体の持ち主…………駆逐艦の主砲かつ模擬弾じゃあ、俺を倒すのは出来ない。出直してもらおう」
「本当に人間なのアンタっ!?」
驚きに驚く霞。ふっ、まあ俺と言うアイアンボディ提督相手に驚くのも無理はない。
「さ、流石司令です! 霧島の主砲を受けて再生しただけありますね!」
「ああ、大井の主砲を受けなれてるだけあるぜ」
「ハラショー。流石司令官」
ふふふ、流石の三人も俺を褒め称える。そうだ、いつもそう言えばいいのに噂すらしないなんて奥ゆかしい奴らだよ。褒められてないようにも聞こえるのはきっと気のせいだろう。
「……あー、やはりどこかの提督なんですか貴方?」
……はっ!
「それなら何故なおのこと正規の手続きで来なかったのですか? まさか金属バット一本で殺しに来た、とは思えませんし」
「うぐぐ……」
「こちらとしても、信頼できる方であればともかくお遊びで無断で入られても困ります。今でしたら冗談で済ませますので、今日はお引取り頂いて後日手続きをしてこちらに来て頂くと言うのはいかがでしょうか」
「…………だ、だが、こっちにも面子が」
「面子云々以前の問題でしょう。申し訳ないですが、お引取りください」
そう言って、帽子を取って頭を下げてくる噂の提督。……こ、こんな真面目に対応されちゃあ、もう嫉妬でぶっ倒しに来たとか死んでも言えないじゃないか……。
迷っていると、比叡が俺の肩に手を置いてくる。
「司令、戻りましょう。これ以上迷惑かけたら良くないですよ」
「…………っ……ああ、そうだな」
流石にこんな対応をされてしまえば俺だって折れざる得ない。
俺もサングラスを取り、頭を下げる。
「本日はご迷惑をかけて申し訳ない。いずれ改めて、正式にお約束させていただいてもよいでしょうか」
「ええ、構いません。私としても提督同士の交流を深めていくのは賛成ですから」
にこやかに笑みを浮かべる少将提督。いい笑顔だ、なんつうか、イケメンだ。
「ありがとうございます。次訪問させていただく際はお詫びの品を持って行かせていただきます」
「いえ、お気遣いなく。わかっていただければ構いませんよ」
なんて良い方だ。こりゃあモテるのも分かる、大和も乙女モードな顔でボーっとこの少将提督を見ているしな。ただずまいしてからも育ちの良さを感じる。まさしく噂どおり。ああ、なんと好青年だろうか。素晴らしい。
だが、まだ一つ確認していないことがある。
「なので――」
「?」
「――本当に強いか見せてもらうぜぇヒャァッハァー!」
「しれぇぇぇぇぇっ!?」
バットを持って突撃する俺に対してか、比叡の叫びが聞こえた。だが悪いな! 俺はこの男を排除しておかなければいけないのだぁ! ふははははっ! ぶっ飛ばしてやるぜぇヒャハハハハッ!
「……やれやれ、仕方ないか」
噂の提督は溜め息を吐いている。随分余裕じゃねぇかぁ! 狙いは顔面! ……だと流石にまずそうだな、よし、膝だ! 弁慶の泣き所を狙ってやるぜぇ!
「海戦法術、壱の型」
ん? なんだ、何を呟いてる? ええい構うか! 手加減はしてやるからそのままもだえて情けない所をさらせぇっ!
「砲雷、撃戦」
「……え?」
ズドォォォォォォンッ!!
***
「……ここ、は?」
「あ、気がつきましたか司令?」
気がつくと、俺は執務室の椅子に座っていた。
窓から夕焼けの日が差し込んでおり、部屋の中には比叡がいた。
「今日は私が秘書官だったんですけど、司令があんまりにもぐっすりと眠ってたので今日は私、テレビ見てました!」
「そうか…………いや悪いな、まさかずっと寝てたとは。そうか、通りで記憶が飛んでる訳だ。なんかどこかに行って来たような気がするんだがな……」
うーむ、思いだせん。
「い、いやー! きっと気のせいですよ司令! そんなことよりご飯を食べに行きましょう! お腹すきましたよね! 金剛お姉様や吹雪さんも呼んで、気合入れて行きましょう!」
「ああ、そうだな。吹雪のおかげで今日はゆっくり休めたしな。他に仕事やろうと思っていたのに情けない限りだぜ……。うーん、寝る前には何しようと思ってたんだっけか……」
「ほら、思い出すのは忘れて行きましょう司令っ! 今日は寝てただけですから! それ以外司令は何もやってなかったので!」
「その言いようもお前中々酷いぞ」
まあ事実だから言い返すことも出来んが……そうだな、たまには大勢と食べるのもいいかもな。
「よし、それじゃあ飯に行くとするか!」
「はいっ! あ、でも私が腕によりをかけてカレーを作ってもいいですよ!」
「いや、飯にしよう! 外食にしよう! さあ行くぞー!」
「あ、待ってくださいよ司令~!」
こうして、俺は比叡の発言を聞かないようにどんどん進んでいった。……にしても、なんか身体のふしぶしが少し痛い気がするのは気のせいだろうか。まあ、いいか。