迂闊っ……! 迂闊、迂闊ぅぅぅぅっ!
「だぁぁぁぁぁぁっ! うああああああっ!!」
なんてことだなんてことだなんてことだぁぁぁぁっ!
昨日の記憶を忘れていた自分が恐ろしい! 最悪だ! あの少将提督に敗北D判定をもらってしまったぁぁぁぁっ!!
それどころか比叡や響、木曾に気を使われる始末! それにあろうことか、自分から椅子に座って眠り始めたというではないか! アホか! 俺は奇人変人ド阿呆太郎か!
ぐぁぁぁぁぁっ!! もう最悪だ! 威厳が、俺の威厳が下がった! おのれぇ、あの少将提督めぇ! 変な必殺技で一撃で俺をぶっ飛ばすとかアイツ人間か! 強いって聞いてたが、想像のイメージと全然違ぇじゃん! 心が強いとかそういう類でもなく物理的に強いとかマジかちくしょぉー!
「…………駆逐艦、満潮入るわよ――って何してんのよ、執務室でゴロゴロ転がって、遊んでるの?」
もう轟沈したい。そう思っている時に入ってきた満潮は呆れた目で見てくる。相変わらずツンケンした奴である。
「遊んではいない、だが、自分の不甲斐なさに情けなさを覚えてな……」
「はぁ? 今更なことを言うわね。司令官が不甲斐ないのなんて過去から今までずっとそうでしょう」
「な、なんだと……?」
俺はそんな風に思われていたというのか……! ば、バカな、ありえん……!
「自覚なかったってのが凄いわね。むしろ不甲斐なさの大盤振る舞いも大げさじゃないぐらいは不甲斐なさが極まってたわよ」
ば、バカな……そんなに不甲斐なかったのか俺は。いや、確かに不甲斐ないのは知っていたが満潮にも知られていたとは。こ、これは他の連中も知っているのか……!
「……なあ満潮、それは他にも周知の事実か?」
「当たり前じゃない、クソ提督とかアホ提督とかバカ提督とか言われたのに気付かなかったの?」
「なににににぃぃぃっ!?」
ぐあああああっ! な、なんという衝撃の事実! し、信じたくない、俺がエリートデラックス提督と思われていなかったなんて……!
その事実に、俺は膝を折ってしまう。なんてことだ、悲しみが広がっていく。
「そんな…………アレは俺の有能性に皮肉を利かせてつけていた愛称だと思っていたのに……」
「そんな風な発想が出来る司令官の前向きさを知りたいわよ」
通りで比叡が噂を聞いていなかった訳だ……。そりゃあ聞かねぇ訳だよチクショウ……。
「……終った、俺の提督ロード……」
よく考えたら俺いなくても吹雪がこの鎮守府まとめてくれそうだし、むしろ吹雪を提督にして俺は雑用でもしていた方がいいのかもしれない。ザコイージー提督、いいや、一般人にはお似合いかもな。
満潮も俺を地面に伏すを俺を見下すし、もう――
「…………別に有能な必要とかないし、気にしなくていいんじゃないの」
「……え? なんだって?」
「っ…………だからっ! 司令官は有能じゃないしアホだしバカ、もう救い様無いけど、無かろうと司令官はなんだかんだで私達をまとめられてんだから、そんなウジウジ落ち込んでるんじゃないって言うのよ!」
何をコイツはいきなり怒ってるんだ。というか、俺を激励してくれているのか? いや、その割には悪口多い気がするぞ。
「いや、でもお前が俺にトドメさしたもんだぞ……」
「事実を言っただけで勝手に司令官がへこんだんでしょう。いいからそんなこと言われようがいつも通り、アホみたいに元気にすればいいのよ。司令官のそういうとこについては、みんな呆れつつも落ち着くんだから。駄目も、やっていけばちょっと駄目ぐらいにはなってくでしょうしね」
ふんっ、とそっぽを向く満潮。――どうも、本当に叱咤激励してくれているようだ。
……ふっ、全く情けないぜ。どう見てもロリな満潮に叱咤されるとは、ていうか言葉の攻撃してきたのもやっぱり満潮なんだけどな、罵倒されて激励されるって一体何がなんなのかさっぱり分からんな。
だが、何となく気分が晴れている俺自身もわからんな。何一つ褒められた気がしていないのに。マゾか俺は。
俺は晴れやかな気分でゆっくりと、立ち上がる。
「……ふっ、悪かったな満潮。どうやら俺としたことが、失態を晒してしまったようだ」
「だからいつも晒してるって言ってるじゃない」
こ、コイツ……。人がかっこよく台詞を言ったというのに。
「お前ほんっとに気を使わないな! 俺は司令官だぞ司令官! ようやくらしくなった、とかそういう良さげな言葉を贈らないか普通!?」
「はぁ? なんで司令官に気なんて使わなきゃいけないのよ、意味わかんない。だったらもっとしっかりとやるのね」
「ぐぬぬっ…………。――――はぁ、わかってらぁ、そんなもんは」
「え?」
「わかってる、そんなもんは余裕でわかってる。俺はスーパーエリート提督でハイパーエリート司令官なんだからな、どいつもこいつも不安にならねぇぐらいの威厳に実力を持つのは当然の目標だ。――だから、いずれお前にも俺に気を使わせてやる! 覚悟してろよ満潮!」
そして、その生意気な口から尊敬的な言葉しか出させないぐらいにメロメロにしてやるぜ! 成長したらハーレムにも入れてやろう! ふははははっ! ……と言うのは流石に辞めよう。次こそは鋭い視線にくじけてしまう。
「……ふんっ、落ち込んだと思ったら立ち直ってと、なんかウザイわね」
「おい」
お前は俺を激励したいのか貶めたいのかどっちなんだ。それとも俺の感情を上げ下げして楽しんでいるのかお前は。
「……まっ、せいぜい出来るものならやってみなさいよ」
満潮は相変わらずへの字口で語る。だが、もうこの方がこいつらしいな。逆に安心するぜ。
「それじゃ、私は戻るわ」
「おう、そうか。ついでに今の失態は言いふらすなよ、マジで!」
「言わないわよ、こんなくだらないこと」
そう言って満潮は執務室から出て行った。って、くだらない扱いか俺の失態は!
ええい、絶対アイツはいずれ俺の威厳に心酔させねば。噂もまだされていないとか言うし、更に俺のエリートっぷりを全艦娘に見せ付けなければな! ふははははっ!
……ん? ……そういやアイツ、何でここ来たんだ?
そう思った時、時計の音が鳴る。時刻はヒトヨンマルマル。
「っと、そろそろ書類でも片付けなきゃな……」
まっ、用事があったんならまたこっちに戻って来るだろ。もしかしたら俺が転がって騒がしかったから入ってきた可能性もあるしな。
さー、今日もやってやるかー!