どこぞのアホ提督と艦娘たち   作:バード鳥鳥

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提督と名取

「し、失礼いたします!」

「んー?」

 

 吹雪も今日はゆっくりしているぐらいののんびりとした日。執務室で露出の多い艦娘リストを椅子に座りつつ肘をついて眺めていると、軽巡洋艦で長良型3番艦、名取が入ってきた。

 

「て、提督! 水雷戦隊旗艦、名取! に、任務完了いたしました!」

 

 緊張しているかのように敬礼して俺に言ってきた。そうか、今遠征任務から戻ってきたんだな。だが――――ううむ。

 

「うむ、ご苦労――と言いたいが、お前そろそろそんな強張って話さなくてもいいんじゃないか?」

「ふえっ!? す、すみません!」

 

 名取は頭を下げてくる。いや、何故謝る。

 

「いや怒ってないって。確かに俺はレジェンドクラスの提督だが、気を張りすぎてるぞ名取。まあ、俺があまりに高貴かつエリートだから強張ってしまうのも無理はないが。気軽にイケメンエリート提督とでも呼んでいいぞ?」

「そ、そういう訳ではないんですけど……で、でも、提督さんがそういうのでしたらその通りにが、頑張ります!」

「いや、それは俺が悲しくなるから辞めてくれ……」

 

 なんか命令でそう呼ばそうとしているみたいじゃないか。俺をエリートと呼べ、これは命令だ! と言わせるとか、どんだけ悲しいんだよそれ。スルーされてる現状より悲しみを覚えるぞ俺は。

 それだったら名取には提督ちゃんとかお兄ちゃんとか呼ばせ――ってええいっ! 何考えてるんだ俺は! 威厳の欠片もないこと言わせて何がしたいんだ! 平常心、平常心!

 

「まあなんだ、お前もうちでは吹雪に次いで古参だ。軽巡洋艦の中では川内と天龍と龍田よりも高い練度を持っている、もっとエバっていいぞ。特に大井と龍田と曙辺りはもうギャフンと言わせてやってくれ、俺がやるとギャフンと言わされるからな」

「わ、私もギャフンと言わされます……」

「そうか…………まあ無理だよなぁ」

 

 確かに名取ならギャフンどころか泣き出しかねん。そして、そんなことをしろと言った俺に矛先が来かねん。って結局ギャフンと言わされるのか俺は!

 

「それはともかく――」

「そ、それじゃあ私はこれで……」

 

 そう言って俺から背を向ける名取。って!

 

「いや待てぇ! まだ話し終わってないって!」

「ふええぇ!?」

「なんで驚くんだお前は!?」

 

 こ、コイツの帰ろうとする癖も全然治る気配がない。初めて会った時もすぐに部屋に行こうとしていたせいで、俺が考えていた提督ハイパーウルトラスペクタクルストーリーという武勇伝を1ページ分も話せなかったからな。吹雪には言わなくてよかったですね、とか言われたがそんなことは絶対にない。

 

「ま、まだ何か御用でしょうか……」

「ああ、とりあえず一つだけな。――なあ名取、疑問なんだが…………俺は提督として尊敬できるか?」

「は、はいっ! 提督さんのおかげでいつも私、が、頑張れています!」

「そうか――――お前、いい奴だよなぁ……」

「ふええっ!? な、なんで目元を隠してるんですか!?」

 

 こんな真っ直ぐ言われるともう、ね。なんか面白いこと言おうと思ったが、なんか何故か心打たれちまったよ……。こんなの、俺を好いてくれてる可愛い後輩じゃないと言ってくれないぜ…………学生時代に名取がいれば青春も明るかっただろうに。

 ……はっ! 待てよ……俺を好いている可愛い後輩じゃないと言わない、いうことはもしや、もしかして……!

 

 名取は俺に心酔しているということ!? つまり、俺にいつだって求愛してたってことか!

 

 瞬間、脳内の稲妻が走った。くっそぉ……古鷹の時は勘違いだったが今回は間違いない、俺の提督レーダーがコレマジっすわとか言ってる。そうか、いつもさっさと帰ろうとしていたのも俺に会うのが恥ずかしかった為か…………恐ろしい、名取が一目ぼれして俺への恋心を募らせていたのに気付いていなかった俺が恥ずかしい。

 よし、今回は誤解させないためにも遠回しに言わずに直球で言おう。俺の気持ちを、名取へ!

 

「名取!」

「は、はいっ!?」

「お前の気持ちに気付いてやれなくて悪かった。だから――――!」

 

「水雷戦隊、五十鈴、帰投し――」

 

 

「俺に名取のおっぱいを揉ませてくれぇっ!!」

 

 

 ……言った。言ってしまった。ついに、名取が入った時から言いたかったこの台詞を。

 最早告白、と言ってもいいだろう。おっぱい揉みたい、それはもう押さえきれない欲求。

 

 そう、好いてくれているならおっぱいを揉ませてくれるのではないか。それが俺の導き出した、答えっ!

 そしておっぱいから始まり、名取は俺にメロメロになってそりゃもうハーレム要員一号になるのだ。うむうむ。見ろ、名取も顔真っ赤だ。可愛らしいじゃないか。

 

「ふええっ…………あ、あの、その、それは、気合を入れるため、でしょうか……?」

「気合? ああ、そうだ。そりゃもう俺も気合高まるし名取も気合、というかもうあちらこちらが高まってしまってうっふっふって感じでそのままヒャッハーでだな……」

「へぇー、ふーん、ほぉー……? 名取に何をうっふっふっでヒャッハーしてやろうと思ってるの、提督……?」

「そりゃあさっきも言ったろ? 気合を入れるために胸部装甲をふにふにっとだな、というかちょっと怒ってないか名取――ぃじゃなくて五十鈴ぅ!?」

 

 何故、名取の隣に五十鈴が……!? 長良型2番艦の五十鈴がいるんだ! お、俺の目でも気付くことは出来なかったぞ!?

 

「い、いつの間に……まさか、瞬間移動!?」

「普通にノックして入ってきたわ。そんなことよりウチの名取の何をふにふにするって言うのか、五十鈴にもう一回教えてくれる?」

「な、なぜ両手の爆雷投射機を俺に向ける五十鈴……!」

 

 声色は優しいのにどうして俺を親の仇の如く睨みつけるんだ五十鈴……! 一体もう一丁はどこから持ってきたんだ五十鈴……!

 

「バカね、それは五十鈴的に当然だと思わない?」

「さ、さっぱりわからんな。そ、そんなことより名取が慌てふためいてるじゃないか。その怖い顔は止さないか? 穏便に行こうじゃないか。そ、それに俺が本気出したら世界がやばいぞ、なんかもうやばくなるぞ。町一つ吹っ飛ぶぞ」

「ふええっ……ほ、本当ですか?」

「嘘だから大丈夫よ名取。だって提督だし」

「なんだその言い様!?」

 

 まるで俺が嘘しか言わないハッタリ提督みたいな言い方を……! まあ、たまに誇大表現する時はあるが。

 

「とりあえず提督の本気はどうでもいいけど……。まあそうね、名取を怯えさせるのは不本意じゃないわ。だから何故あんなこと言ったか教えてくれたら銃を降ろすわ」

「ほ、本当か? まあ、それならいいんだ、お前も聞けばすぐに納得する」

「へぇ、じゃあ教えなさい」

 

「ああ、良いだろう。まず、俺を尊敬してるか名取に聞くと尊敬していると言ってくれた」

「いい子ね名取は。それで?」

「そんなこと、普通は自分を好いてくれてる学校の後輩の子しか言ってくれない、そう思った」

「なんかもう雲行き怪しくなってきたけど、うん」

「つまり名取は俺に恋して大好きになっていると気付く」

「……うん?」

「つまり好きならおっぱいを揉ませてくれる! そして揉むことから始まるハーレム道! 納得しか出来ない最高の理由だ! わかってくれたか五十鈴!」

 

 俺は思わず立ち上がって右拳を握って主張した。どうだ、これなら反論できまい……!

 すると――五十鈴は二丁の爆雷投射機を降ろしてくれた。熱意が、伝わったか!

 

「ええ、五十鈴には分かったわ」

「そうかっ! よし、ならば五十鈴のおっぱいも揉ませてくれても――」

「元々知ってたけど、提督は頭のネジが完全に壊れているってことがね……!」

 

 あ、あれ? なんか怒気的なものがどんどん高まっている? ははぁ、もしや五十鈴も名取のおっぱいを揉みたかった訳か。まあ気持ちは分からん訳でもない。自分のだけでは物足りなさを感じる、誰にだってあることだ。

 

「落ち着け、お前にも名取のおっぱいはいずれ揉めるさ。だが今回名取は俺を選んだ、それだけだ。ちゃんと五十鈴にも揉ませてやってくれ、名取」

「ふええっ!?」

「ううん大丈夫よ名取、ただの戯言に耳を貸さなくてもいいの」

「戯言っ!? お、おいっ、お前も名取を揉みたいんじゃないのか!?」

「そんな訳ないでしょう。さてと、うちの名取にいかがわしいセクハラしようとするような提督には――修正してあげるわ、この五十鈴がね」

 

 再び銃口をこちらに向け直す五十鈴! な、なんだと! あの台詞で和解出来なかっただと!?

 

「ま、待てぇっ! は、話が違っ――!」

 

 

 ドオォォォーーーーンッ!!

 

 

 ――そこで、俺は気付いたんだ。

 壁に穴が空いて、爆風によって空に投げだされた俺は気付いたんだ。

 

 おっぱい触るより、キスが先だったんだな。って。

 

 ふっ、今日も空が青い。だが五十鈴、残念ながら俺はこの程度では死なん。それこそもっと火力のあるものもなければな。

 

「て、提督ー! 危ない! あぶなーいっ!」

 

 ん? 下から超弩級戦艦の伊勢の声がする。なあに、ここから落下したところで俺には何の問題も――

 そうやって伊勢の方がした位置を見ると、そこには戦艦級の砲弾がこちらへ来ていた。――ふっ、もうよける時間もな――

 

 

 ドオオォォォォーンッ!!

 

 そこで俺は気付いたんだ。

 

 これ、今回も俺の勘違いだったんじゃないかと。

 

 薄れ行く意識の中、そんな悲しい結論が脳内に浮かんで意識が飛んだ。ぐふっ。

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