「よっ、提督! 昨日は随分派手にやってたじゃん!」
食堂で飯を食っていると、重巡洋艦、高雄型の摩耶が声をかけてきた。今日は機嫌が良さそうだな、俺はなんとも言えないけどな!
「ああいう楽しいことやんならさぁアタシも誘ってくれても良かったのによぉ」
摩耶は俺の正面に座って飯を置く。牛丼か、美味そうだな。
「そうか、お前は加賀に爆撃されて陸奥に説教されて、赤城から誤射された俺の状況を楽しいというか」
「うわっ。まあ、いつものことだし気にすんなって提督!」
「少しは同情しろよお前!」
くっそー、吹雪がせっかく俺達を擁護してくれたのに構わず説教されて爆撃されたし、敵影と勘違いした赤城に撃たれるし。いつもあんな勘違いしないはずの赤城が誤射した時には、頭の中のあれが因果を巡って撃ってきたのかと思ったわ。ていうか今でもそう思っている、話のネタにするもんじゃないな、ああいうのは。
「んで、聞いた話じゃ花火はまた今度やんだろ?」
「ああ、一応な」
説教された後に話を分かってくれた加賀や陸奥によって改めて花火大会をすることになったのだ。花火自体は悪いアイディアではなかったとのことで、俺と伊勢は助かったのである。本当なら三人同時説教攻撃をしてたわよ、とか言う陸奥の台詞には畏怖すら感じたものだ。同時に胸部装甲に目が行っていたのは俺の心の中だけの秘密だ。
「でもやっぱこういうのサプライズがあってこそだと思うんだよな、俺は」
「あー、わかるぜ提督。やっぱ驚かせてなんぼだよなー!」
「だよなっ! やっぱ第二次サプライズ花火大会を――!」
「また加賀さん達に怒られちゃいますよ、提督さん」
穏やかな声で誰かが話しかけてくる。俺と摩耶がその方向を見ると、そこには長良型軽巡洋艦の4番艦の由良が来ていた。
「おお、由良か。おし、俺の隣に座って――」
「摩耶さん、お隣いいですか?」
「おう、いいぜ」
…………座っていいと思うなよって言おうとしたんだし、座っていいぞなんて言おうとしてないし。ぐぬぬ。
了解を得た由良は、摩耶の隣に座る。飯は摩耶とは反対で野菜が多めの定食だ。
「遠征任務からの帰りか、由良?」
「はい、提督さんの大好きな海上護衛の任務の帰りです」
「ああ、あの任務ね。ほんとは提督はあの任務好きだよな」
「好きって訳でもないが……護衛任務ってのは短い時間で中々もらえるものも多くてなー。似たような遠征ばっか行かせて悪いな」
「ううん、大丈夫ですよ。でも、たまには由良の良い所を見せる機会もくださいね? ねっ?」
ポニーテールを揺らし、ウインクをしながら言う由良。全く、グッと来る言い方してくれるぜ。もう少し俺が若ければイチコロになってたかもな。
「ああ、是非とも見せてもらうぜ。しっかりとその機会を作ってな」
「この摩耶様にもな! 前みたいに潜水艦組と演習させるなんて真似、次やったらぶっ飛ばすからな!」
「ああ、わかってるさ。この有能すぎてひがまれてしまう提督に任せておけっ! ――って、お前確かあの時を俺をぶっ飛ばしてなか――」
「で、怒られるって言うけどよぉ。やっぱアタシとしちゃあサプライズでやった方が面白いと思うぜ由良?」
急に話題を戻す摩耶。慌てもせずに話を戻す摩耶に俺は少し感心する。……なんか違うことを考えるべきなのだろうが、まあいい。
「でも、由良はやっぱり駄目だと思うな。2回目となると、妥協してくれないと思うし……」
「そうだな…………いや、待てよっ!」
「おっ! なんか良い案でもあるのか提督?」
「良い案? そんなものは必要ないな。何故なら、俺はフリーダムジャスティス提督! 提督権限でやりたい放題出来るから、許可など得る必要が無い! うははははっ!」
……瞬間、由良の顔が悲しそうな顔になり、摩耶の顔が呆れたような顔になった。
「な、なんでそんな顔をするんだお前ら! 実際そうだろ!? 普通は説教されるのもおかしな話な訳だろ? そうだ、よく考えたら威厳に満ち溢れたこの俺がなんで説教されねば行かんのか! 俺こそが正義だと言うのに……!」
「これ無理そうだな。普通に花火大会でも楽しみにしとくか」
「ええ、楽しみね」
「おい、なんで期待の期の字すらしない態度を取るんだ二人とも!」
「いや、あったり前だろ? 提督が陸奥や加賀に勝てるわけねーじゃん」
「そうね、提督さんじゃなくても分が悪いって由良は思うな」
摩耶はふてぶてしく、由良は苦笑しつつ言ってくる。摩耶に至っては牛丼を食い始めた。なんてことだ、由良や摩耶の中では俺の方が陸奥や加賀より下と思われている。これは由々しき事態……!
だが、あの二人は実際に恐ろしい。前にセクハラしようとしたら加賀の鋭い眼光で手が止まってしまったし、俺が持っていたエロ本も陸奥に隠されてしまって未だに見つからない。まさに、手を出そうとしたら応報されてしまうのだ。
だが……!
「成程……。いいだろう、そこまで言うなら俺も本気を出さざる得ない。俺がトップエース提督だということ、思い知らさねばならないらしい……!」
「おーっ? もしかしてあの二人と戦うのかぁ提督?」
「それは無謀と思うけど……」
「ふっふっふ、俺はスーパーエリート提督だぞ二人とも。流石の俺でも正面から戦えば勝てない、だが――俺の知能があれば、陸奥や加賀ですら子猫同然よ! 俺の手の中でゴロにゃんされるメスネコに過ぎんのだぁ!」
そしてもう、提督大好きにゃんにゃんにゃんともう猫のようにデレまくるのだ。そして俺のハーレム計画は更に進行して行く! 完璧だ、威厳も増やしあの二人をハーレム要員にする、完璧すぎて俺がヤバイぜ。
「メスネコ? 多摩のことか?」
「いつも猫じゃないって言ってるのにそんな言い方したら、多摩さんに怒られますよ摩耶さん」
「違ぁうっ! 誰が多摩の話をした! 加賀や陸奥のことだ! 俺のパーフェクトブレインであの二人を骨抜きにするって言ったんだ!」
俺が力強くそう言うと、牛丼を食っていた摩耶は飯を飲み込んでニヤリと笑う。
「へぇ~っ、ならやってみろよ提督。ちょっと面白そうだし、手伝ってやんないこともないぜ?」
「なにっ!?」
「ま、摩耶さん!?」
「だって、奇跡的にでもあの二人が驚くとこ見れる可能性あるんだぜ? ちっとは面白そうだしな」
ケラケラと笑いながら言う摩耶。だが、それは心強いぞ。流石に一人では勝てる気はしなかったが、これなら勝ち目が見えてくる……!
「うーん。由良は辞めた方がいいと思うけど……」
「いいや、大丈夫だ由良。何度も言うが俺はデンジャラスゴールデン提督。勝ち目のない戦いなど存在しないっ! 何より、自分の部下に負ける上司などあってはならん!」
「提督さん、その台詞はちょっと説得力ないなって思うなぁ」
「ふふふ、今までは確かにそうだったかもしれんが今からはその認識が変わる。全艦娘が俺に胸部装甲を揉まれたいと思うほどに威厳溢れる提督となるのだ」
「提督、お前キモイ」
……手伝ってくれると言ったくせに突き刺さる言葉を言ってくれるじゃないか摩耶め。まあ、今は仕方ない。まさに耐え忍ぶ時、と思っておこう。
「よしっ! そうと決まれば飯を食い終わってから早速スケジュールを確認して実行に移すぞ! 由良、摩耶!」
「えっ、由良も来るの?」
「おうっ! たまにはやってみせろよ、提督!」
「はははっ、任せろ摩耶ぁ! 俺の凄さを見せつけてやるぜぇ!」
くっくっく、見ていろ陸奥、加賀ぁ! 俺の下克上――じゃない、俺の威厳を思い知らせてやるぜぇ!