どこぞのアホ提督と艦娘たち   作:バード鳥鳥

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提督と威厳なんたら作戦

 現在時刻、ヒトハチマルマル。艦娘達も任務を終えていることが多い時間帯だ。遠征組や見回り組などもいるが、とりあえず今日は陸奥も加賀も特に予定がないのは確認できている。

 

「だが、今夜からは俺の部屋に毎回来て甘えるという予定が新たに出来てしまうがな。くっくっく……」

「ほんっとにウザキモいぞ提督」

「由良もちょっぴり同感かな、提督さん」

 

 ぐっ、摩耶だけじゃなくて由良もそんなことを言うか! い、いや、だから今は耐え忍ぶ時だ。今日、その印象は大きく変わるんだからな。印象によってはエロいことも普通に許される、と漫画で知ったしな!

 とりあえず、二人には執務室に集まってもらった。吹雪は白雪や深雪達のところで遊ぶように任務を発令したから問題ない。吹雪に聞かれたら止められかねないからな。

 

「では、任務名、俺の威厳は諸君らが思っていた以上にやばかった作戦を実行する!」

「うわっ、だっせぇ作戦名だなぁ」

「言いたいことを削りきれなかった感じの任務名ね」

「さっきから不評が多かないか!?」

 

 くそっ、せっかく考えたというのに。休憩時間や任務中も全力で考えていたというのに!

 

「で、どうやってアッと言わせるんだよ提督」

「ふっふっふ、とりあえず3つほど考えた。そのうちの1つは俺一人でやる」

「一人で大丈夫なの? 提督さん」

「ああ、もしかしたら俺一人で出来るかも知れないだろう? そしてそれを見たらお前達も俺に威厳感じまくるだろ?」

「いや、びみょーだ。ていうかそんなん絶対感じないぜ、うん」

 

 摩耶は手を横に振りながらそんなことを抜かし、由良も苦笑い。手伝うと言って置いてなんか全然期待してないなお前……!

 

「ええいっ! なら今から早速見せてやる! ついて来いっ!」

 

 ***

 

 現在位置、鎮守府の廊下。

 そこの通路の角に隠れる俺達。目線の先には一人で歩く加賀。赤城はいないようで好都合……!

 

「おっ、一人じゃん。どうすんだよ提督」

「まあ見ておけ。オペレーション1をな」

「なんですかそれ?」

 

 由良がポニーテールを揺らして聞いて来る。そう、オペレーション1……作戦名は――!

 

「スカートめくりされて恥ずかしがった顔を浮かべる加賀をいじりまくって俺に惚れさせる大作戦だぁぁっ!!」

「失敗しかしなさそうな作戦名!? って、提督さんっ!?」

 

 作戦名を告げたと同時に俺は駆け出す! 加賀はこちらを見るがもう遅い! そのスカートは俺の射程内よっ!

 

「加賀ぁっ! 覚悟ぉっ!」

 

 バシッ!

 

 ……なっ。

 

「何が、覚悟ですか?」

 

 めくろうとした俺の右手が、加賀の右手に止められた。バカな、抜群のタイミングとエロスでめくろうとしたのに……!

 

「……な、何故止められた」

「あんなうるさく叫んでおいて何故、と言われても。あっさり気がついて止められるに決まってます」

 

 し、しまった! 奇襲仕掛ける際に叫んで奇襲するのが普通だと思って叫んだのが仇となったか! それでも、止められるとは思っていなかったのに!

 

「それで、この手は一体なんですか」

 

 冷え切った加賀の眼光が俺を射抜く。や、ヤバイ、スカートめくりしようとしたなんて言った際には俺の威厳が下がる! あくまで、作戦名を全て実行してこそ威厳は高まるものだと言うのに!

 ……落ち着け、俺はクールスペシャル提督。今までの経験を生かして、切り抜ける為の言葉は……! これだっ!

 

 

「なあに、そう大したことでもない。お前の胸部装甲の近代化改修を俺自身でもみもみやってあげようと思ったのさ!」

 

 

 さあ、どうだ! ……って、違うっ! これは俺のただの願望だった! や、ヤバイ……!

 

「……そうですか」

 

 ……!

 加賀は手を放してくれた。も、もしかして……加賀は俺に近代化改修してもらいたかったのか!

 

「けど、今私に近代化改修は不要です。なので、私が提督を近代化改修してあげます」

「えっ」

「その性根、今のうちに叩いて是非改修――いえ、改造すべきだと思うので」

 

 加賀は左手に息を吐きかけてなんかやる気満々だ。なんかって言うか、殴る気満々だ。むしろそれ、解体する時にやりそうな感じなんだが。ていうかこれはやっぱり、駄目なパターンだよな。もう無理だよな、うへへ。

 

「では、いきます」

「す、ストッ――!」

 

 言い切る間もなく、加賀ナックルが俺の顔面を貫いた。

 

***

 

「残念ながら、オペレーション1は失敗に終ってしまったがまだまだこれからだ」

「提督さん、顔がめり込んだままですよ」

 

 執務室に戻った俺がそう言うと、由良は気遣うように声をかけてくる。確かに顔はめり込んだが加賀ナックルは奇跡的に一発で食らうだけで済んだからまだ作戦は行える。正規空母のパンチはなんであんなに強いんだ、蒼龍や飛龍達もあんなに強いのか。

 

「ったく、やっぱ提督一人じゃ無理だってことわかったろ? そら、この摩耶様が力貸してやるからまともな戦略教えてみろって」

 

 ぐっ……出来れば一人でこなしたかったが仕方がない。ここはあの二人にだけでも威厳を――いや、俺の方が凄いと言うことを教えなければ。摩耶と由良には今日の失態は忘れさせて後からゆっくりと教えてやればいい。……くっそー、悔しくてたまらん!

 

「よし、じゃあオペレーション2の内容を教える。これは俺と摩耶がコンビを組んで陸奥に勝つ方法だ」

「よーし、教えてみなよ提督。アタシもあのあらあら顔を少しは崩してみたいと思ってたところだしな」

「そんなこと考えてたんですか摩耶さん……」

 

 悪い笑みを浮かべる摩耶。どうやらモチベーションは十分らしい。怖いもの知らずな奴、それ故に頼もしいぜ……!

 

「オペレーション2の内容はこうだ。俺と摩耶が恋人の如くイチャイチャする。それに嫉妬した陸奥が俺達のところに来る。そこでドッキリと言うことを教えてやり、陸奥は安堵で泣き崩れる! そこを俺が優しく撫でてやって陸奥は俺のハーレムの一員になる! どうだ、完璧だろう!」

「おう。んで、も一個はなんだ?」

「感想すら無く次を聞くのかお前!?」

「あったり前だろ、そんな妄想は作戦ともなんとも言えないんだからな」

 

 お、俺の作戦が妄想扱い!? バカな、俺のこの作戦のどこに不備が……オペレーション1より成功率は非常に高いというのに!

 

「じゃあ由良、お前はどう思う!?」

「由良もそれはどうかなって思うな……」

 

 由良にすら却下された……。

 

「くっそぉ、どこら辺が妄想だって言うんだよチクショオ……」

「ほぼ全部だよ。んなことより早くも一個教えてくれよ、じゃないとアタシが考えたの実行するぜ?」

「え? お前も思いついてるのか摩耶」

「おう、これなら陸奥にも加賀にも一矢報いれると思うぜアタシは」

 

 自信満々に言い切る摩耶。な、なんて奴だ。そんな凄い作戦を立てていたのか! 

 

「それで、どんな方法なの摩耶さん?」

「ああ、そりゃあ――加賀や陸奥が入居中に提督が全裸でダイブさせりゃあ一矢ぐらいは――」

「バカかお前はぁぁぁっ!!!」

 

 思わず大声で叫んでしまう。全裸ダイブだと!? 誇りも威厳もないし、そんなことした後の結末がデッドオアデスじゃねぇか!

 

「ああ、やっぱ提督でも無理かそれ?」

「無理に決まってんだろ! したいという衝動には駆られるが、その後どうなるかなんてさっきのスカートめくりの結果の比じゃないだろうが!」

「あ、ちゃんと最低限には後の考えてたのね提督さん」

 

 当たり前である。死なない程度に勝つ、それは戦場でも一緒だ。故に最低限度死なないように作戦を立てて来ているというのに全く。――おお、今のカッコいい気がするな。よし、このままカッコよく行くぜ。

 

「ったく、これだから素人の作戦は困るんだよ、ふぅ」

「あぁ!? アタシにケンカ売ってんのか!?」

「うええっ!? ば、バカ! 落ち着け! 短気すぎるぞ今の言葉ぐらいで!」

「あの、十分挑発になってたと思いますよ提督さん……」

「うぐっ…………」

 

 た、確かに調子乗りすぎた発言だったかもしれん。

 

「ま、まあ冗談だから許せ摩耶」

「いいや、許さねぇ! さっきから変な作戦練ってたくせにんなこと言える立場か! あぁ!?」

「ま、摩耶さん落ち着いて」

 

 おお、摩耶の気迫が昂ぶっている。由良が宥めてくれているがこのままでは摩耶に先にやられてしまう!

 し、仕方ない、このままだとまたぶっ飛ばされかねんから最後の作戦を伝えるしかないか……。

 

「わかったわかった待て待てっ! 本気で悪かった! 今から作戦を言うが、正直このオペレーション3は大した内容じゃない。だからあまり期待せずに聞け!」

「人のこと馬鹿にしといてそれか……まあいいや、ほら言ってみろ提督」

 

 一応摩耶は落ち着いてくれたようだ。た、助かった……。

 

「最後のオペレーション3は――多段、スカートめくり大作戦だぁ!」

「結局またスカートめくりじゃねぇかぁぁっ!!」

「ぐぼぉあああっ!?」

 

 俺は摩耶のアッパーカットによって、宙を舞った。だから期待せずに聞けと言ったのに……ごふっ。

 

***

 

 アレから時は数刻ほど経ち、現在時刻フタマルマルマル。

 俺と摩耶は演習場で加賀と陸奥を待っていた。それも仁王立ちでだ。水面に浮きながらだ。

 

 そんな俺達のところに二人はやってくる。そう、俺がさっき呼び出したのだ。

 

「一体何の用かしら」

「ほんとよ、急にこんなところに呼び出したりして」

「なに、大したことじゃあない。俺と摩耶と演習してもらおうと思っているだけだ」

「……え?」

 

 陸奥は不思議そうに声を漏らす。

 

「そしてお前達に俺の威厳を知らしめる。それだけだ! さあ、ファイトしようぜぇ!」

 

 そう、これがオペレーション4! 演習で勝って俺の威厳を知らしめるだぁ! お互いに尽力しあって、力をぶつける! 王様心臓な俺の心がそう告げているぅ!

 既に今日演習をやることは皆には張り紙で知らせてある。吹雪にも意地と野望と夢と熱血の為と伝えてある、きっと納得してくれただろう。

 

「……な、なあ提督? これはちょっと単直過ぎだとアタシ思うんだけど」

「ふ、ふふふ、最早後には引けんだろうしお前も俺の作戦に駄目出しした。そしてお前の鉄拳を食らい俺は目を覚ましただけだ。――やはり、真っ直ぐ直線ストレートで戦って威厳をぶつけるべきだとな!」

「そ、そりゃあアタシもそういう考え方は悪くないと思うけど、さっすがに……」

「摩耶、俺はお前を信じているからこそ俺はこの作戦を決断したんだ!」

「なっ、提督……お前」

「見せろよ、お前のファイターとしての心意気を!」

 

 今の俺なら、常人を越えた戦いが出来る。内に燃えるハートが燃えに燃えているんだ! 例え陸奥と加賀だろうともやれる!

 

「ねえ由良、提督は悪いものでも食べたの?」

「打ちどころか悪かったと言えばいいのか……それが加速してしまったと言いますか……ちょっと由良にはなんとも言えないかな」

 

 審判役を任せた由良に失敬なことを聞く陸奥。だが、その余裕は続かないだろう。

 何故なら、摩耶の目に闘志が宿ったのは俺にもわかったからな……!

 

「……へ、へへっ、よぉーしっ! そこまで言われて怖気ついてちゃ摩耶様の名がすたるってもんだよな! よっしゃーっ! 二人ともかかって来やがれ!」

「よぉーし、いいぞその意気だ摩耶! では、行くぞ二人とも。艤装を構えろぉ!」

「知らないわよ、どうなっても」

「まあ、どうしてもと言うならやりましょう。由良さん、貴方は下がってて」

「は、はい」

 

 由良は後方へと下がる。さて、これで憂いはない。その冷静な顔もいつまで続くかな……! さあ、行くぜぇ!

 

「カンムスファイトォォォ…………レディィィィィッ、ゴォ――ヲッ!?」

 

 瞬間、俺の横を砲弾が通りぬけた。――撃ったのは陸奥だ。

 ……なんて轟音だ。横を通っただけでなんかやばいと確信したぞ。あ、あれ模擬弾だよな?

 

「……じゃあお姉さん、加減しないからね?」

「一航戦、加賀、参ります」

 

 声の質が静かに闘志を燃やしてる感じになってる! い、いかんいかん! なんか静かにめっちゃやる気になってる! いくらなんでも顔色切り替わるの早すぎだろ!

 や、やばい! 俺は何を考えて勝負なんて手段を取ったんだ! 何がファイターだよ! アホか俺はぁぁぁっ!

 

「っしゃあ、防空巡洋艦、摩耶! いっちょやるぜぇ!」

 

 さっき焚きつけてしまったせいで摩耶もやる気だぁっ!

 

 ああ、最初に正面から戦うのは無理とか言ってたくせに何か熱血的な心が憑依して暴走してしまった自分が恨めしい! くそ! え、ええいっ! もう下がるに下がれん! やってやらぁぁぁっ!!

 

「か、覚悟しろ陸奥ぅ! 加賀ぁっ! ――って、ま、待て! なぜ真っ先に艦載機を俺に先に飛ばすっ! ぐわっ! お、おいこれちょっとダメージ大きそうだぞ! もっと安全を考慮して俺に――うおおっ! 待て、なんで俺に当てるように撃つんだ陸奥! もっと提督の身を案じた接待演習をし――ぎゃあああああっ――!」

 

 

 こうして、オペレーション4も終わり俺の作戦は全て失敗に終った。

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