どこぞのアホ提督と艦娘たち   作:バード鳥鳥

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提督と深雪たち

「くそぉ、昨日も散々だったぜ……」

「無茶するからですよー、司令官」

 

 執務室で座りながら指で机をグリグリしている俺の言葉に、吹雪が心配そうな声をかけてくれる。

 ああ、昨日は惨敗も惨敗だった。陸奥と加賀の連携攻撃により俺は瞬殺コース。摩耶もあえなくやられた。そしてこうなった経緯を教えろというので素直に話したら摩耶共々説教された。誰だ、素直に言えば怒られないとかいう逸話を残した人物は! すっかり騙されたぜチクショウ! おまけに摩耶にも怒られて散々だったしよ! 由良が慰めの言葉くれなきゃ俺の心はへし折れてたぞマジで!

 

「チクショー、俺の威厳は下がる一方ではないか……こう、一発でみんな俺が好きになる必殺技みたいなのは無いもんか」

「流石にそんな都合の良いのはないですよ司令官」

「じゃあ、どうしろと言うんだよ吹雪」

「一つずつ真面目にこなしていきましょう! そうしたら司令官だって今以上に良い印象を持たれますし、着実な一歩が大事です!」

 

 うむ、実に説得力のある爽やかな笑顔だ。正答とも言っても過言じゃない発言がそれを際立たせてくれる。

 

「そうか……やっぱりそうだよな」

「はい! そうですよ! ゆっくりと頑張っていきましょう!」

「……だが、それは俺が納得行かない訳だ」

「えっ」

「何故なら!」

 

 俺は机を両手をダンッと叩いて立ち上がる。

 

「さっさとチヤホヤされた方がいいだろう! 俺はお色気があって伸びるタイプだからな!」

「……司令官、そういう発言が司令官の評価を下げてる気がしますよ……」

「それは吹雪、お前がまだ若いからだ。実際はこういう台詞を吐いてる奴はモテモテウハウハなのだ」

「な、なんだか納得しかねます司令官……」

 

 その言葉の通り複雑そうな顔をする吹雪。ふっ、吹雪もまだまだお子様だ。いずれは俺の言葉の意味もわかってくれるだろう。…………きっとモテるはずだ、間違いない。近所のモテないじいさんがそう言って――あれ、これつまりモテないって事では――。

 

「司令官ー! 吹雪ー! 遊び来たぜー!」

 

 ドンッと、ドアを開けて入って来たのは吹雪型4番艦、深雪だ。……性格上わかってはいたが、やっぱりノックしない。というか遊び来たってなんだ!

 

「コラ深雪! 遊びに来ただと!? お前は何しにここに来てるんだ!」

「え~、いっつもセクハラ沙汰でハプニング起こす司令官に言われたくないな~」

 

 手を頭の後ろに回して気楽に言ってくる深雪。全く、コイツはほんとにわかってないな。

 

「いいか深雪、アレはセクハラじゃない、スキンシップだ。それにセクハ――スキンシップも仕事の一環だ、勘違いはしないでもらうぞ」

「深雪ちゃん、全くの嘘だからね」

「うん、知ってる」

 

 ふ、吹雪ぃ!? 嘘と断じるか! ぐぬぬ。

 

「それよりさ、今日はヒマだしなんかしようぜ司令官。出撃もなくて深雪様も暇だしさー」

「駄目だ駄目だ、俺はエリートビジネス司令官だぞ? 遊んでたら威厳が下がるだろう。執務室で新世紀人造人間アニメに出る偉そうなグラサン親父ポーズをするので忙しいんだ」

「それ全然忙しくないじゃん!」

 

 深雪がツッコミを入れてくるがそんなことはない。肘を机に当てて顔の前に両手を組んでいるポーズを取ってると威厳率が非常に高くなるのだ。今も座ってやってるしな。

 

「いいや、立派な仕事だ。そう思うだろ吹雪、このポーズ威厳がヤバイだろ」

「いえ、司令官がやっても大して凄くなさそうです」

「マジか!?」

 

 うおおおっ、あの親父と俺の何が違うんだ! ヒゲか、服か! やっぱ黒系こそが正義か!

 

「ほら、吹雪もそう言ってるんだし外行こうぜ司令官! ほら吹雪も早く行こうぜ!」

「うーん、どうしましょう、司令官」

 

 行きたいのに行ったらいけない。そんな弱った表情でこっちを見る吹雪。……ふっ、そんな顔する必要なく行きたいと言えばいいのに、ド真面目な奴だ。

 

「……そうだな、たまには遊んでやるのもいいか。こもってても屈辱を思い出すだけだしな」

 

 主に昨日とか一昨日の屈辱をな。もう踏んだり蹴ったりだったし、外に出てリフレッシュするのも悪くないだろう。

 

「おおっ、ほんと!? やっりぃ! やっぱ司令官は話がわかるなぁ!」

 

 無邪気に喜ぶ深雪。だがしかし、それはすぐに後悔へと変わるぜ……!

 

「深雪……浮かれていられるのも今のうちだ! この眠れる獅子、スリーピングライオン司令官を起こしたことを後悔させてやるぞ! 吹雪! 俺の威厳を見せてやるからお前も行くぞ! 存分に遊べ!」

「は、はいっ! わかりました!」

 

 そう言って敬礼する吹雪。……別に命令のつもりで言ったんじゃないんだけどな、敬礼の必要は皆無だぞ吹雪よ。

 

「かったいなあ吹雪は。でもまあいっか! よっし、早く行こう司令官! 吹雪! 深雪スペシャルを見せてやるからさっ!」

「深雪スペシャルだと? なら俺も提督パーフェクトや司令官アタックを見せてやるぜ! さあ行くぞお前らぁぁぁっ!」

「おおーっ!」

「二人とも早い!?」

 

 俺と深雪はすぐさま運動スペースへと走っていった。

 

***

 

「ぜぇ、ぜぇ、お、俺が一番だったな。間違いないな」

「い、いいや、この深雪様の方が絶対早かったって」

「ぜぇ、ぜぇ。いや、俺が僅かな差で上だった。お前はよくやったよ深雪、誇っていい」

「い、いやいや、司令官こそよく頑張ったよ、深雪様の2番目に早いって認めるよ」

「二人ともそんな意地を張り合わなくても……」

 

 俺と深雪は息を切らしながら言い合うも決着がつかない。し、仕方ない。

 

「い、いいだろう、今回は引き分けだ。しかし今からが真の勝負だぞ深雪」

「わ、わかった。それでいいよ、こっからは深雪様の独壇場だからな!」

 

 ふっ、言ってくれるぜ深雪め。しかしその燃える心は俺の圧倒的な実力で折れてしまうのだ。我ながら自分を恐ろしい存在と思わざる得ない。

 

「で、何をするんだ? 鬼ごっこか? かくれんぼか? それとも提督スペクタクルアドベンチャーか?」

「最後の何っ!?」

「ああ、それはな――」

 

「あ、司令官じゃないですかーっ!」

 

 ん? 俺のファンか?

 そう思って呼びかけられた方を見ると、そこには軽巡洋艦長良型1番艦の長良が笑顔で手を振ってこっちに来ていた。トレードマークのハチマキが今日も似合っているじゃないか。

 

「おお、どうした長良。ついに俺の魅力に気付いたか?」

「え?」

「気にしない方がいいよ長良先輩! いつもの司令官の妄言妄言!」

「あ、そうなんですか?」

「いや、妄言じゃないからな!?」

 

 おのれ深雪ぃ! 人の台詞を妄言扱いしやがって!

 

「長良さんも今日はお休みなんですか?」

「うん! だから三人で蹴球してたんだよ。加古さんは寝てるけど」

 

 問いを投げた吹雪に元気よく返事する長良。蹴球――ああ、サッカーか。

 よく見ると奥の方に白露と三日月がいた。ついでに一人芝生で寝てる加古もいる。後でスカート引っ張ってやろう。

 

「ほう、3人か。――よし、ちょうどいい。長良、早速だが4対4でサッカー勝負だ!」

「えっ? 勝負ですか?」

「そうだ、俺のスーパーテクニシャンスペシャルプレイを見せてお前達に俺の威厳を教えるためにもな!」

 

 俺がそう言うと、またか、みたいな顔で固まる長良と深雪。ていうかなんでまたか、みたいな表情をするんだお前ら!

 

「司令官、もうそういうの諦めませんか?」

 

 吹雪が呆れ気味に聞く。やれやれ、半年――いや間違えた、一ヶ月と言う長い付き合いのくせに俺のことをわかっていないようだな。

 

「諦めん。俺は現状維持なんて真似は絶対に出来ん。モテモテハーレムは一歩にならずと言うが、一歩進めばなれるぐらいが最高だろうがっ!」

「そ……そんな気全然しないですよぉ~」

 

 何故ガックシとした態度を取るんだ吹雪め。覇気が全くないぞ。

 

「吹雪も大変だなー」

「く、くじけちゃ駄目だよ!」

 

 そして何故か二人に応援されている吹雪。なんか俺が悪いことしてるような気がするんだが、気のせいにしておこう。

 

「ところで司令官、4人って言ってましたけど加古さんは寝てますよ?」

「大丈夫だ長良、加古はスカート引っ張れば起きる」

「なんか酷い起こし方ですねそれ」

 

 吹雪がなんとも言えなさそうな顔でツッコミを入れてくるが、実際アイツにはそれが一番効果的だから仕方あるまい。アイツももう少し色気が増えてくれれば引っ張りがいもあるんだが。こう、大人の色っぽい感じになればたまらんな! ぐへへ。

 

「あ、司令官が助平顔してるぞ!」

 

 と考えていると急な深雪からの言葉。顔に出ていたか!?

 

「し、してないぞ! 俺がそんな助平な妄想をするエリート司令官に見えるか!?」

 

「うん、見えるぜ!」

「長良にも見えます!」

「いっつもそう見えてますよー」

「いっちばーん助平だよね!」

 

 うおおお! 満場一致で票別れ無し!? というかさっき遠めの所にいたくせに何故この話題になって急に来たんだ白露!

 いや、待て! あそこの寝ぼすけはともかく、白露が聞いていたということは三日月にも聞こえていたはず! まだ俺の威厳は終っていない!

 

 白露の横を見ると、まさしくそこには三日月。睦月型10番艦の三日月がいる!

 

「三日月、お前はそう思わないよな!?」

「えっ? あ、そうですね…………司令官はもうちょっとやらしいのを抑えて、頑張らないと、ですね」

 

 だぁぁぁぁっ! 完全満場一致ぃっ! ちきしょぉー! 

 

「うわーっ! 司令官は助平司令官だー!」

「いちばんえっちぃ提督ー!」

 

 頭を抱える俺の周りを円形になって回る白露と深雪。完全な敗北を叩きつけられている気分だ……。

 

「って、人の周りを回るなぁー!」

 

 俺が両手を真っ直ぐ上に立てると深雪と白露はバンザイしながら距離を取る。く、くっそ、完全におちょくられているではないか俺は!

 

「く、くっそぉ、ナチュラルエロ司令官ではなく、エロ妄想司令官と思われてるのは屈辱極まりなし……!」

「それ何の違いがあるんですか!?」

「何故驚く吹雪。この違いはいわば、エロいことが出来そうな男とエロいことしか考えられない男の違いって奴に非常に近しい違いだ。わかるだろう?」

「なんかあんまり納得したくない違いですね……」

「なんでだ!?」

 

 うぐぐ、これがジェネレーションギャップか! 世代間による意志疎通の大変さが身に染みる……!

 

「すっごい勘違いしてそうなところ悪いんですけど司令官」

「ん、なんだ長良」

「4対4でやるって言ってましたけど後1人はどうするんですか司令官?」

「ああ、それならまあヒマな奴なんて他にもいるだろうし適当に呼ぶさ」

「それで見つかればいいんですけどねー」

 

 苦笑しながら言う長良。まあ確かに、ヒマな奴も普段の任務に疲れて休みたい奴もいるだろうしな。無理に誘うわけにも行かない。

 

「なあに、勝利したチームには食事処の間宮のデザートで好きなものをおごってやるとか言えば――」

 

 

「聞きましたよ、提督!」

「聞いたわよ! 提督さん!」

「聞いたわ、提督っ!」

 

「っ!?」

 

 今普通の音声で長良と話してただけだというのに、聞いただとっ!? どうやって聞いた!?

 そう思いつつ見た先にいたのは――

 

 赤い一航戦こと赤城型1番艦の航空母艦、赤城。

 幸運の空母こと翔鶴型2番艦の航空母艦、瑞鶴。

 飢えた狼こと妙高型3番艦の重巡洋艦、足柄。

 

 そいつらが東西南の三方向から別々に、こちらへ叫んで来たのであった。

 ……距離、遠いのにお前らほんとにどうやって聞いたんだ……。

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