という訳で現われたのは、赤城と足柄と瑞鶴だ。三人は集結するように俺の方へ来る。
「よく聞き取れたな。どうやってわかったんだ?」
そう聞くとまず言い出してきたのは瑞鶴。何故か自信満々だ。
「ふふん、艦載機を実はこっそり飛ばしてたのよ。提督さんに爆撃しようと思ってね!」
「そうか。瑞鶴、お前あとで加賀ナックルの刑な」
「ええっ!? 勘弁してよ提督さん!」
弱ったようにあたふたし始める瑞鶴。ふっ、むしろそんなこと頼んで加賀ナックルを食らうのは俺かも知れないと気付かずに哀れな奴よ……くっくっく。
「あ、提督が情けない悪そうな顔してるー」
「あの顔をする時っていっつも格好悪いこと考えてるよなー」
「それ以上は禁止だ、そこの二人ぃ!」
人の心を見透かすように言いやがって白露と深雪め! だから無邪気な奴はタチが悪い!
「ええい、じゃあ次だ。足柄はどうやってわかったんだ」
すると、自信に満ち溢れた顔をする足柄。
「決まってるじゃない! 勝利が私を呼んだのよ!」
「……え?」
「だって、提督さっき長良と話してる時に《勝利》って言葉出してたでしょう?」
「そんだけで来たのか!?」
「いいえ、私にとっては十分な理由よ提督。どんな戦いがあろうとも私は勝利するわ!」
ぐっ……! なんという勝利への渇望! 足柄め、俺の想像以上に飢えた狼よ……! なんかカッコいい異名だし羨ましさがたまらん!
「あ、いいですよね勝利って言葉! 長良も大好きです!」
「わ、私も嫌いじゃないです……!」
「ふふっ、わかってるじゃない長良、三日月! けど、勝利に対する思いは負けないわよ!」
そして、何故か勝利同盟的なものが出来た雰囲気になっている。ええい、足柄め。なんて熱い艦娘だ。これは俺も負けていられないな……!
「よし、最後に赤城! お前はどうやってわかったんだ!」
昂ぶる心を抑えきれないままに赤城に聞くと、目を閉じたまま凛とした表情をする赤城。
「提督、そんなのは聞くまでもありません」
そして赤城は目を開き、俺を真っ直ぐと見た。
「――食あるところに赤城あり、私の領域内でそんな話をすれば耳に届くに決まっています」
「! …………成程」
「今ので納得しちゃうんですか司令官!?」
吹雪が驚く声をあげる。まあ、普通は驚くところであるが赤城だしな……以前、赤城と食べ比べした際にそのポテンシャルを肌で感じ取った俺にとっては違和感など全くにない。
「吹雪さん、私を甘く見てはいけませんよ?」
「み、見てません! でもやっぱりさっきの理由はおかしくないですか赤城さん!?」
「ええ、ですが私は一航戦。その誇りにかけてこれぐらい容易くこなせて見せます!」
「さ、流石赤城さんです! って、やっぱり納得するには難しいですよぉ……」
再び疲れたように肩を落とす吹雪。そんな吹雪を首を傾げて不思議そうに見る赤城。生真面目な奴は大変である。赤城も普段は生真面目な奴なんだけどなー。
「でもどうします司令官? 三人も来てくれましたよ?」
長良がそんなことを聞いてくる。人が増えたなら、人数も増やせば良いだけだ。
「なら、5対5で勝負だ。そして勝った方は食事処、間宮にあるメニューに好きなものが食べれる無料券を一人ずつにやろう! 俺がお願いして作ってもらった非売品だ!」
おおーっ、という嬉しそうな声が聞こえて来る。ふふふ、俺の提督力も捨てたもんじゃないなやはり。前に間宮から無理言って買って置いて良かったぜ。奢るよりも威厳力が高い気がするしな。
「提督!」
そんな中、一人挙手をする赤城。
「なんだ赤城」
「超豪華絢爛、菓子特殊全門一斉射一式セットも、勿論一点として頼むことは出来ますよね?」
……なっ。
俺はその名を聞いて、一瞬で汗を噴出してしまう。
「何ですかその凄そうな名前?」
瑞鶴がのんきそうな声で赤城に聞く。こ、コイツは状況を掴めていない……コレを知っていることに、俺がどれだけ恐怖を感じているかも知らずに……!
「それを頼むことで間宮さんのお手製お菓子のフルコースを食べられるんですよ瑞鶴さん。ただし、その量は計り知れないと聞いています。そして残した者には、注文の代金以外にも多大な請求額が発生すると言う――いわば、裏メニューというものですね」
「へー、なんだか凄いんですねー」
や、やはり、間宮の裏メニューまで知っていたか……! 恐るべし、恐るべし赤城! 何故瑞鶴がそんなドのんきに聞き流せるのか分からない程に恐るべし!
「それで、どうなのですか提督?」
「――ま、まあ、出来なくもない」
「それなら、安心しました。思う存分――戦えます」
ぐっ……なんて威圧感だ……! 赤城の目が真剣そのもの! これが、一航戦!
「あ、赤城先輩、い、いっちばーん凄い気迫……」
「くっ……やるじゃないこの足柄に威圧感を与えるなんて……!」
「ううっ……なんかこの深雪様も燃えてくるぜ……!」
白露と足柄と深雪もそれを感じ取っている。……ヤバイ、ちょっとしたレクリエーションのつもりが負けられなくなった……! もしくは、負けなければいけない状況になってきたぞ……!
何故ならそんな裏メニューを考えたのは俺だ。給糧艦の間宮に言って、冗談で裏メニューとして入れてみようぜー的なノリで、誰も頼まないと思い考えて取り入れるようお願いしたのが仇になった! と言うか、今の今まで忘れていた! くそっ、赤城に負けたあの日にとっとと取り止めておくよう伝えておけばよかった!
そして今日、赤城に勝たせてみろ…………俺は間宮に泣かれる。いいや、殺される……! 「無料券なんて作ってないですよ」と言っていたのに無理にお願いして高めの値段で作ってもらったが、あの裏メニューの代金比べればはした金にも程がある! 下手をすれば間宮の営業に支障が出てしまう……! かと言って、おごるにしても俺の財布が轟沈する! だが、今更それは勘弁してくれとも提督の威厳にかけて言えやしない!
今までの加賀や陸奥の仕置きですら生ぬるい状況だぞこれは……! 負けられん、絶対に赤城には負けられん!
「赤城さん、気合入ってますね司令か――って、どうしたんですか司令官までそんな険しい顔して!?」
「吹雪、俺は絶対に勝つぞ。威厳と誇りと――命の為に」
「命!?」
こうして、運命の戦いが始まろうとしていた――。
***
現在地点、運動スペースのサッカーのゴールがあるエリアだ。コートとしては、普通のサッカーコートの半分程の大きさだが5人でやるにはいいぐらいの広さだ。手作り感満載なゴールなのは最早ご愛嬌だ。
既にチーム分けも完了し、吹雪たちも体操着やジャージなどの運動できる服に着替えてきて準備が万端だ。駆逐艦組と長良はブルマ体操着、俺と重巡洋艦・空母組はジャージズボンに体操着だ。
「ふああ~、ねむっ。無理やり起こして酷いよ提督さー」
さっきスカート引っ張って起こした重巡洋艦、古鷹型2番艦の加古が寝ぼけ眼で俺に言ってくる。
「まあ、勝てば間宮の無料券やるから頑張れ加古。同じチームなんだしな」
そう、俺のチームは吹雪、深雪、加古、瑞鶴、そして俺。相手チームは長良、足柄、三日月、白露、赤城だ。長良はこっちに引っ張っておきたかったがまあいい、俺と言うスポーツエージェント提督がいるんだ、負けはない。というか負けられん!
「えっ、ほんと!? よーし、目が冴えてきたよーっ!」
そして元気になってくる加古、現金な奴だ、やる気出してくれただけでありがたいが。
「とりあえず、ルールは簡単にしよう。先にゴールに入れて1点取った方が勝ちだ」
「1点だけですか?」
「そうだ」
長良の言葉にそう言って頷く。長期戦になって負けたらヤバイからな……短期決戦に限る!
「とりあえず他のルールは白線の外にボールを出さなきゃいい。出したら、相手チームが出したところから蹴ったりボールを投げる。それだけでいいだろう?」
「提督さん、艦載機や主砲は使っていいの?」
「ああ、使っていいぞ瑞鶴」
「え、いいんですか?」
三日月が聞いてくる。その疑問ももっともだろう。サッカーなのに良いのか、と。
「ああ、その方が楽しそうだろう! ただし、撃っていいのは俺が用意したこの痛みもない、粉弾薬だけだ。ちなみに艦載機も飛ばしていいのは一つで、この粉を使った奴にしてもらう。そんで、使えるのは攻撃されている時だけ、つまり相手がボールを持って自軍側へ入ってきた時だけだな。線の左側が俺達、右側が長良たちと言ったような感じだ」
俺はわざわざ持ってきたダンボールに指を差す。ちなみにアレは開発で失敗した物をリサイクルしたものである。撃ってぶつけると身体に悪くない軽い煙が発生すると言う遊び用の代物である。
「つまり、目くらまし程度の防衛弾幕が使えるって訳ね。でも、ボールを取るなら確かにそれで十分ね」
「そういうことだ足柄。ちなみに俺は使わん、このハイパースポーツマン提督には不要だからな」
「大層な自信ですね提督。けれどこの足柄、勝利の二文字を得る為負けないわよ!」
強気な発言をする足柄。だが俺も負けられん――自分の命の為にもだ!
「さあ、行くぞお前たち――勝負だぁぁっ!!」
そして、ついに運命の戦いが開幕した――。