「成程、潜水艦の連中は夜戦に強く、戦艦やら重巡洋艦のセンサーに反応しないようになっているのか」
摩耶に撃たれたあと、俺は吹雪と共に廊下を歩きながらスマホを見て潜水艦の情報を得ていた。恐るべし潜水艦連中。泳ぐのが好きなだけだと思って、あまり起用せずに遊ばせてばかりいたがこれは考えを改めなければ。
まあ、そもそも泳ぐのがどうして好きなのか不明すぎたがようやくわかった。アイツら潜水艦だったのか、通りで泳げる訳だ。全く、イムヤだのハチだのゴーヤだのって名前が特徴的過ぎて艦種の方は覚えられなかったぜ。
「それにしても司令官、摩耶さんの砲撃食らってもピンピンしてるって凄いですね」
「ピンピンしとらんわ! むしろ死ぬかと思ったわ!」
あはは、と笑顔で語る吹雪。俺が昔、初めて摩耶に撃たれた時は驚いていたというのに。もうちょっと俺を心配せんか吹雪め。
「全く、アイツらには敬意ってものを感じないな。俺は提督で司令官だぞ? もう少し上を敬うだの、俺に抱きついて来て好意を見せるだのしないもんか」
「そういう考えしなければ司令官も良い感じだと思いますよ、私」
「ほう、流石は吹雪だ。俺のエリートっぷりをよくわかっている、俺は凄いからな」
「……司令官、いま、半分しか聞いてなかったですね?」
「ふっ、半分聞けば十分だろ」
「十分じゃないですよ~」
はあ、と溜め息をつく吹雪。駆逐艦でおっぱいも無いのに大変そうな奴である。
「それにしても、司令官もあの頃に比べたら少したくましくなりましたね」
「あの頃…………? ああ、女吸血鬼と勝負して惚れられた時の話か」
「いえ、違いますよ!? なんですかそのエピソード!」
「聞きたいか? 俺の妄想伝だが」
「妄想の話ならいいです! そうじゃなくて、初めて司令官がこの泊地に来た時のことですよ!」
「ああ、そういえばそんなこともあったな。いやー、来た時は不満しかなかったな。ハーレム作れると思ったら資材も無ければ部屋もボロボロ、工廠もサビだらけ、俺をこんなオンボロ泊地に飛ばしたジジイどもをどうやって暗殺しようか迷ったもんよ」
「そんなこと考えてたんですか司令官……」
少し呆れ気味に吹雪は呟く。そりゃそうだ、あのジジイ共め、何が君には艦娘達をまとめられる力がある。故に、君には提督をやってもらいたいだ。艦娘なんて吹雪以外に最初寄越さなかったくせによ。おっぱいボインの艦娘もいると言ってながら吹雪だけ。どこまでも嘘をつきやがってあのジジイどもめ……!
「でも、司令官が来てくれたおかげで私もこうやって活躍できてます。だから、私は司令官が来てくれて嬉しいって思ってますよ」
ニコッと笑ってこっちを見る吹雪。その純真そうな目に思わず俺は目を逸らしてしまった。コイツはなんでこうも恥ずかしいことをあっさりと言えるのか。
…………まあ、こういう奴だったから俺もここまで何とかやれたって言うのもあるんだよな。と言っても、まだまだ自慢の艦隊と言えるほどコイツらの練度も上げてやれてないから今からだが。
「あっ、なんで目を逸らすんですか司令官?」
「いや、お前があんまりに単純な頭してるからつい目を逸らしたくなってな」
「そうですか? でも、本当のことですよ?」
だから、なんで真っ直ぐと恥ずかしいことを言えるんだお前は。
「……ほら! さっさと第二艦隊の遠征の通達をしてこい吹雪! 遠征先は高速修復剤を拾える場所ならどこでもいいから伝えてくるんだ!」
「えっ!? は、はい! わかりました! 吹雪、伝えてきます!」
一瞬動揺するも敬礼した後、吹雪は走って母港へ向かって行った。アイツ、将来詐欺に遭いそうで心配だぞ。
さあてと、俺も行かなきゃな。しっかりと――――近くの提督が連れている大和やら愛宕やら長門たちの演習を風景をなっ!
その提督の相手も武蔵やら高雄やらの巨乳揃い! いっやー、この好カードをどれほど待ちわびていたか! 中破大破状態になるのは間違いなし! アイツらには悪いが、俺は少し留守にしておっぱいファイトを楽しみに見に行って来――!
「あ、提督~」
……っ!?
この力が抜けたような声は、北上かっ! 重雷装巡洋艦、北上か!
「どこ行くのさ~」
「あ、ああ、ちょっと別提督同士の演習を見にな。俺はウルトラスーパー提督だが、たまには演習を見るのも勉強になると思ってなー、わはは」
「へー、いいねー、ちょうどいいねー。じゃあ私も行くよー、今日ちょうどヒマなんだよね~」
お前、こんな時に限って……! いつもは「へ~、そ~、じゃあ、まっ、頑張って~」とか気の抜けたエールを送るくせしてこんな時に……!
い、いや、落ち着け。演習を見るだけだ、別に不安に思うことなんて特に無い。無いぞ。
「そ、そうか。お前がそういうなら仕方ない、ついて来ていいぞ。ただし、気を引き締めて見ろよ? けして俺の方を見るな、いいか?」
「はいはい、わかったよー。任せて任せてー」
よーし! ここまで念を押せば――!
「という訳で駆逐艦どもー、提督と一緒に演習見に行こうかー」
……なに?
「はーいっ! わかったわ!」
「仕方ないわね、司令官と見に行くのもレディの嗜みだものね!」
「うん、たまにはいいかもね」
「はわわっ、よろしくお願いしますなのです」
いつの間にか北上の後ろにいたのは、駆逐艦の雷、暁、響、電の四人。いわゆる第六駆逐隊メンバーだ。
「いやー、よかったよかった、提督のおかげで楽になったよ~」
ニヤニヤしてる北上。コイツ、恐らくこの四人に戦闘方法だか何かを教えるように吹雪か神通だかに言われたが面倒と思ったところ、ちょうど俺がいたから面倒さを分けにきやがったな……! くそっ、戦闘訓練について他の奴に任せていてスケジュールを把握していなかったツケがここで来るとは……! 何がヒマだからだ、ヒマになるからの間違えじゃないか!
「いやー、やっぱ若いうちに楽を覚えちゃ駄目だよー、提督~」
「お、お前に言われたくないんだがねぇ……!」
うちのサボろうとするランキングベスト3に入るお前にはな……!
「ほら、司令官! 早く行きましょ! この雷と一緒に見たら凄く楽しくなるわよ!」
ああ、雷が元気よく俺の袖を引っ張る。くそう、くそう! 響はともかく、他三人が中破と大破を見せないように俺の目を隠す未来しか見えない! せっかく吹雪に仕事させに行ったのに、これじゃあ、これじゃあ何の意味もない!
ち、チクショウ、チクショウ、俺の、俺のおっぱい演習観戦プランがぁぁぁ……!
「ど、どうしたのですか司令官、体調がわるいのですか?」
電が心配そうな声を出す。……ふ、ふふふ、もういいさ、諦めよう。将来有望な連中のため、諦めてやるさ。くっそぉぉぉぉぉっー!
「いいや大丈夫だ電! 俺は最強提督だからな! さあ行くぞお前ら! 演習を見てしっかり戦闘のイロハを学びに行くぜチキショウォォォォォッ!!」
「……何故涙目なんだい、司令官?」
響の呟きに答えず、俺は5人の先頭に立ちヤケクソ気味に演習を見に行った。
***
――――その結果は概ね予想通りだった。
「おおーっ! 中破状態き――!」
「だ、駄目よ司令官っ! 司令官にはまだ早いわ!」
「ぬあーっ!?」
見えそうになった瞬間に雷に両手で目を隠され。
「うっおー! 大和が脱げ――!」
「は、はわわわっ! あ、危ないなのですー!」
「おああっ!?」
驚いた電が目の前で立ち上がって飛び跳ねて視界を塞がれ。
「っしゃあー! 脱げまく――!」
「は、はしたないわ司令官! 見ちゃ駄目なんだからぁ!」
「ぐおおおぉぉぉっ!?」
「さっきからうるさいよー、提督ー」
暁によってチョキで目潰しされた。そのうえ、北上に怒られた。
こうして、大和のおっぱいも愛宕のおっぱいも高雄のおっぱいも武蔵のおっぱいもまともに見れずに演習は終った。第六駆逐隊率いる北上戦隊によって完全に敗北Dで、俺の演習観戦は終了した。
終ったあとに響が肩に手を置いてきたため、なんとなく少し救われた気がした。本当に、なんとなくだったが。