どこぞのアホ提督と艦娘たち   作:バード鳥鳥

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吹雪と提督の日誌?

「今日は司令官は外出中かぁ……」

 

 私は思わずそんなことを呟いてしまいました。いつも騒がしくて、なんだか楽しいこの執務室が静かだとちょっとさみしいな。――普通はもうちょっと重苦しい雰囲気とかある気がするんですけど、他の鎮守府だとどうなんだろう? とりあえず、こんなにも修繕箇所の見える執務室はあんまり無いとは思うなぁ。

 

 今日は司令官はお休みで外出しています。こんな日だからこそ、気を抜かずに頑張らないと! 吹雪、司令官がいなくてもどんどん頑張ります!

 ……でも、いないとやっぱり寂しいなぁ。って、ううん、そんな風に気落ちしちゃいけないいけない! 前向き前向きーっ!

 

「よ、よーしっ! まずは執務室の掃除でもしよう! うん、そうしようー!」

 

 おーっ、と思わず拳を握って上に突き出す私。

 

「一人で何をはしゃいでるんだ、吹雪」

「ほんとよ、掃除一つに気合入れすぎじゃない?」

「ふえっ!?」

 

 声が聞こえたのでドアの方を振り向くと、そこには若葉ちゃんと叢雲ちゃんがいた。は、恥ずかしい……!

 

「ど、どうしてここに? 司令官ならいないよ?」

「知ってるわよ。べ、べつに司令官もいなくてアンタもヒマかなとか思って来た訳じゃないんだからね」

「そ、そうなんだ……」

 

 私がヒマしてると思って来てくれたんだね叢雲ちゃん。いい子だなぁ。

 

「ちなみに私は凄くヒマだから来た」

「若葉ちゃん、ザックリした理由だね」

「何もしてないと時間が勿体無くてな、訓練をしようとも思ったが休むのも訓練と神通さんに言われてしまったのだ。おかげで身体がムズムズして仕方が無い、だが休息も大事だと言われている以上は無理に動けないジレンマに捕らわれているのだ」

「難儀な考えしてるわね、アンタ」

「本当だね」

 

 叢雲ちゃんの言葉に同意しつつ苦笑いする私。若葉ちゃんって実直だよね。

 

「掃除するんでしょ? だったら私も手伝うわよ吹雪?」

「えっ、でもいいの?」

「うむ、むしろこの身体の疼きを止める為にはいい。早速始めよう」

「ありがとう、叢雲ちゃんに若葉ちゃん」

「お、お礼なんて言われる筋合い無いわよ。あくまでヒマだから手伝うだけ、それだけよ!」

 

 ツンと顔を背ける叢雲ちゃん。本当優しいなぁ。

 

「よーしっ、じゃあ早速やっちゃおう! まずは机の上から――あれ?」

 

 私が司令官の机に目線を向けると、なんだか見て欲しいと言う感じでポンと置いてあるノートが一冊。他の書類とかを端に押しのけて、わざわざ中心にわかりやすくおいてあった。

 

「何よこれ?」

「うーん、司令官の日誌か何かかな?」

 

 すると若葉ちゃんがそのノートを手に取る。

 

「……提督超列伝日誌~天才提督最強の歴史~。見てはいけないが、まあどうしても見たいというなら見てしまってもいい。いや、むしろ見ないと後悔するかもしれないから、見ていいぞ。だが正直見てしまうと俺の威厳にメロメロになってしまう効力があるというのが最大の難点だが、それでも見たいなら見てもいい。いいや、もう見たくて仕方ないだろう? なら見るしかないな――と書いてあるぞ」

「長いっ!?」

 

 思わずツッコミを入れてしまったけど、これは間違いなく司令官の日誌。それも、これしまい忘れたとかじゃなくて完全に見せびらかす為に出してる!?

 

「相変わらずあの司令官はアホね……」

 

 叢雲ちゃんが呆れた声を出す。この言いたいことを全部書いてしまう書き方するのは本当に相変わらずだなぁ司令官。らしくて安心しちゃうけど。

 

「だが、こんな風に書かれていたら見たくなるな」

「見たいの若葉ちゃん!?」

「燃やした方がいいわよ」

「燃やしたら駄目だよ叢雲ちゃん!?」

「そうだ、見たいのに燃やしたら見れないだろう」

「仕方ないわね、じゃあ見てから燃やしましょう」

「成程」

「いやいや、納得しちゃ駄目だよ若葉ちゃん!? 見ないとか他のところに直すとかの選択肢もあるよ!?」

「いや、その選択肢はおかしい気がするぞ吹雪」

「おかしくないよ!?」

 

 お、おかしくないよね? で、でもやっぱり私の方が間違ってるのかなぁ……ううっ。

 

「内容によっては燃やすのは冗談よ吹雪」

「そ、そっかぁ、でも内容によっては燃やすんだね」

「時には燃やさなきゃいけないものもあるわよ」

「そうだな、近隣の提督も艦娘燃えーと言ってるしな」

「そ、それ私達を燃やしたがってるってことじゃ……!」

「なんか色々ツッコミどころあるけど、とりあえずそういう意味じゃないから安心しなさい吹雪」

「えっ? そ、そうなの叢雲ちゃん?」

「じゃあ、どういう意味なんだ叢雲」

「わ、私に聞かないでよ! と、ともかくその司令官のノート見るならさっさと見るわよ!」「ああ、わかった」

 

 何故か顔を赤くした叢雲ちゃんに言われて若葉ちゃんは机の上にノートを置いて1ページ目を開く。その内容は――

 

《○ガツ×ニチ。摩耶の火力が今日も今日とて俺に炸裂した。恐るべし。だが、これを食らっても俺は怯まなかった。何故か、摩耶の愛が伝わったが故だ。俺を撃ったあと、摩耶は俺に抱きついてきた。本心で撃ったんじゃなかったのと、泣きながら言ってきた。俺はそんな摩耶を優しく諭すと摩耶はもう俺に求愛をしてきたが俺は断ってしまった。何故か、俺の身体は艦娘全員に愛される為にあるからである。ふっ、人気者は辛いぜ。

 その後、北上率いる第六駆逐隊メンバーに出会い、一緒に演習を見に行った。真剣に演習を見る俺の視線にみんな釘付けだった。やれやれだぜ》

 

「「「………………」」」

 

 そのページを見た私達は思わず沈黙してしまいました。

 こ、これは……えーっと……日記? た、多分摩耶さんが潜水艦と演習で戦わされたから撃った時のことだよね、これ……。なんか私の記憶と全然違うような……。

 

「よし、燃やすわこれ」

「ええーっ!?」

 

 というか叢雲ちゃん、その構えてる12.7cm連装砲じゃ燃やす以上の惨事になるよ!?

 

「完全にこれアイツの都合よく改ざんされただけの日記帳でしょ。こういうのはさっさと処分してあげた方が世の為アイツの為私達のためよ」

「そ、そうかもしれないけど、司令官も頑張って書いたんだし……それにあんなこと書いてあったけど勝手に見てるのは私達だし……」

「そうだぞ叢雲、実は提督がこんなに人気者だったという真実がわかって――」

「どう見ても捏造でしょ! ど・う・み・て・もっ!」

 

 若葉ちゃんに指を差しながら怒る叢雲ちゃん。司令官には悪いけど、多分私も事実じゃないと思うなぁ。

 

「そうか……そうかもしれないが、次も見てみよう」

「見るんだ!?」

 

 驚く私を気にせず次のページを開く若葉ちゃん。そこに書いてあった内容は――

 

《×ガツ×ニチ、古鷹が秘書官だった。重巡洋艦の良いところを教えてくれるというので、重巡洋艦のみんなに身体の隅々まで良さを教えてもらった。その後は軽空母や正規空母、潜水艦達にすら言い寄られてしまう始末だ。やれやれモテモテすぎるのも考え物だ! はっはっはっはっはっ! ……はぁ》

 

「な、なんかさっきと違って文体からして悲壮感が現われてるんだけど」

「うむ、文字も震えているしな。なぜだ?」

「多分、司令官にとっては捏造し切れないぐらい大変だったんじゃないかと……」

 

 それも司令官見栄っ張りだから、疲れたとか弱音言わずにむしろ「この程度で良さを教える? は、はははっ! お、俺はまだまだ余裕だぞぉ!」とか震えた声で言ってたんだろうなぁ。行く前は何度も逃げようとしてたみたいだけど……。

 

「案外アイツも大変なのね」

「ああ、だがモテモテだったのは初耳だった。こう言うのもなんだが、意外だ」

「だからそれは捏造って言ってるでしょ!」

 

 若葉ちゃんの言葉に叢雲ちゃんがツッコむ。今更だけど、捏造って言い切られてる司令官に違和感がない。本当にごめんなさい司令官。

 

 そして、その後も若葉ちゃんはページを開いて行った。ここ数週間の出来事が沢山書いてあったけど、どれもなんだかちょっと歪められて書いてあったと思うのは私の気のせいなのかな。ブリザードシュートのことだけなんだか力説して書いてあったけど、そんなにあのネーミング自信あったんですね司令官……。

 

 そして、

 

「むっ、ここまでみたいだな」

「やっと最後ね……というか若葉、アンタよくここまでげんなりもせず読めたわね」

「提督の新しい側面を見れた感じで楽しかったからな」

「ああ、そう……」

 

 ぐったりする叢雲ちゃん。もう訂正する気力も無さそう。

 

「じ、じゃあ最後の文章読んでみようか」

 

 そして私は、文章に目を通した。

 

《ここまで読んでくれた俺の威厳力に惹かれし艦娘へ、ここから先はまだ記載されていないが今後も書いて行こうと思う。惚れたとは思うが、まあその場合はこっそりと俺に告白しに来て構わない。いや、むしろ大胆に来てもいい。待っているぞ! byスーパーエリート提督、もしくはハイパーエリート司令官、司令でもいいぞ。》

 

 ……どうコメントしたらいいんだろう。……し、司令官……。もうこれ日誌でもなんでもないですよ……。

 若葉ちゃんも叢雲ちゃんも、誰も言葉を発さない状況だったそのとき、ドアがバタンと開きました。

 

「スーパーエリート司令官な俺が一度帰投したぞーって、うおっ! な、なにをかってに読んでいるんだおまえらー、はずかしいなー、俺の威厳がバレバレに浮き彫りになってしまうじゃないかー。これは恥ずかしいなぁー、てれまくるぞはっはっはー」

 

 司令官、すっごい棒読みですよ。

 

「って、司令官、今日はお休みなのに来たんですか?」

「ああ、まあどうせ暇だったしちょっと様子も見たかったしな。で、どうだった三人とも! この俺の威厳の凄さに惹かれまくったか!」

「うむ、全く気付かなかったが提督はモテまくるということがこの日誌でよく理解したぞ。今まで全然わからなかったのだが」

「そうだったか若葉、それに気付けてよかったな。お前は今人生の半分は得したぞ」

「ほお、そうだったのか」

「若葉ちゃん、素直すぎるよ!?」

 

 司令官の言うこと信じすぎだよ!

 

「で、叢雲はどうだった? ようやく俺がすごすぎることを理解したか? ああ、吹雪には言わずとも俺の威厳が伝わってることは知っている、皆まで言うな」

 

 司令官の中で私が威厳が伝わっていることにされてる!? 確かに、司令官のことは頼もしく感じますけど威厳があるかと言われると首を傾げちゃうんだけどなぁ……。

 

「さあ叢雲! 言え、言ってしまっていいぞ! 司令官最高、大人になったらハーレムに加えてくださいってな!」

「一体どこからそんな自信が――」

「言うわけ――ないでしょうがこのアホ司令官がぁっ!」

「ヨブォッ!?」

 

 私が言葉を発しきる前に、叢雲ちゃんは司令官の腹部に飛び蹴りを与えてました。なんか悲しいぐらい見慣れた光景過ぎます、司令官。

 

「お、おのれ叢雲。だがいい蹴りだ、威厳を感じた裏返しの蹴りとして受け取っていいんだな?」

「良い訳ないでしょ! どんだけ前向きなのよアンタ!」

「最近知ったんだよ、暴力は愛情の裏返しってな。死に掛けるレベルの痛み、つまりその分愛情度が高いとな!」

「はぁっ!?」

 

 叢雲ちゃんが驚きというか疑問混じりで声をあげる。というよりもまた司令官に変な知識が加わってる。どうしよう、訂正すべきかなぁ。

 

「成程、深いんだな愛は」

「だから若葉ちゃん素直すぎるよ!?」

「さあ来い叢雲ぉ! そのツンデレアタック、どんどん食らわせてみろぉ!」

「誰がツンデレよこのアホ司令官! いいわ、酸素魚雷から主砲まで全弾食らわせてやるからそれでその緩んだ頭治してやるわ!」

「叢雲ちゃんそれは司令官が死んじゃうよ!?」

 

 ……た、多分だけど。

 

「わかるぞ提督。痛いのは自身に何かしらの実感を感じるものな」

「その実感と司令官の受けようとしている実感きっと違うよ!?」

「……ま、待て叢雲。前言撤回だ、もうちょっとやる気を抑えるといいぞ、例えば水鉄砲を使うとか水風船を投げるとか」

「ほら、あんなこと言ってるし!」

 

 

 艤装を構える叢雲ちゃんに右手を出して弱気な発言をする司令官を見つつ若葉ちゃんに私は言う。相手に強気な発言して強気な発言で返されるといっつもヘタレちゃってる気がしますよ司令官。

 

「むっ? 水が好きなのか、提督は?」

「そっち!?」

 

 なんかちょっとずれた解釈しすぎだよ若葉ちゃん――って、ああっ! 叢雲ちゃんが主砲とか魚雷とか撃ち始めた!

 

「ちぃっ! だが、甘い! 甘いぞ叢雲! 既に俺はこんなものあっさりと避けてしまえるほどのハイスピード司令か――って、うぐぉ! なんか無駄に正確じゃないか叢雲!? 実戦の時よりもなんか上手くないか!? あっ、待て! お前の実力と愛情はわかった! だが俺はお前だけのものにはなれない! 後胸の大きさも足りないしな! だから許せ――ってなんで攻撃強めてるんだお前はぁーっ!」

 

 司令官、なんとなくその理由は私にもわかります。

 そして叢雲ちゃんの攻撃が壁やドアに当たってドンドン執務室が壊れていってます。普通は、この状態に慌てなきゃいけないんだけど……。

 

「また執務室がボロボロになっていくな」

「うん、でも――これぐらい騒がしい方が私達の執務室みたいで落ち着く、かな。……へ、変、だよね?」

「……いいや、若葉もそう思うよ。だが」

「?」

「掃除は大変になりそうだな」

「……う、うん。そうだねー……」

 

 どんどん壊れていく執務室を見て、どうやって掃除しようかなって思う自分がいました。

 

 

「というかお前ら俺を助けろぉぉぉぉっ!!」

 

 

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