どこぞのアホ提督と艦娘たち   作:バード鳥鳥

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提督と金剛

「ふう、今日もつまらん事務処理終了と……」

 

 昨日まではボロボロドッカンドッカンだったはずだが元通りになっている執務室で俺は呟いた。

 しかし昨日はある意味災難だったがある意味助かった。三隈と鈴谷がいなければケーキもDVDも吹雪たちにあったものを選ぶことが出来なかった。

 

 だが、それだけに俺のセンスを炸裂させたものを渡したらどれだけの反応をしてくれたか聞きたいという気持ちもあったな。

 

 例えばDVDについては、年頃の女子だからファンタジーな魔法ものとか割と好きだろと思い、魔法マッチョ・ゴリカルゴリマンとハイパー少女・ドラゴンブレイカーあかねちゃん! という、文字だけ書かれて内容は一切書いておらず、聞いたことも見たこともない会社が作った実写ドラマを借りようとした。

 だが三隈に「そ、それよりこちらの方が吹雪ちゃん達も楽しめると思いますわ提督」と苦笑いで言われ、トッピングケーキというオリジナルのトッピングが出来るケーキで俺オリジナルのトッピングを思いついたのでそれを鈴谷に話してみると「ちょっ! どうやったらそんなトッピング思いつくわけ!? ケーキをゴミにしようとすんのマジ勿体無いから! 普通の市販のケーキの方が吹雪たちも絶対喜ぶし!」と言われてしまった為、今回は渋々と二人に従った訳だ。

 

 事実、ケーキについては吹雪も若葉もあの叢雲も喜んでくれており、DVDも他の駆逐艦メンバーを集めて楽しく見ていた。

 それについては俺も三隈と鈴谷に感謝をしたさ、だがやはり俺のセンスが最高だと言うことを今度証明する為にもまた今度DVDのレンタルをし、ケーキを買いに行って、吹雪達に俺のセンス溢れる提督な感じを教えてやらなければな、ふふふ。

 

 それにしても、吹雪たちのおかげで部屋も綺麗になったな。だが、もうそろそろ夏、いやもう夏か。だから部屋に砂でも撒いてしまおうと思うんだが、それやったら吹雪に怒られるかもしれねーしなー。もう少し我慢するか。

 さってと、今日は吹雪も出撃しているので今は執務室には俺だけだ。俺も出撃したかったが書類処理をしなければならんせいで出撃できなかった。今日こそ駆逐級の砲撃ぐらいなら金属バットのスーパーエリート丸くんで打ち返して俺自身で深海棲艦にダメージを与えたかったというのに。そしてそれを見た艦娘たちは俺にサインをねだってくるだろう。サインの書き方はわからんが。

 

 はっ、そうだ。そうなるとサインの書き方を覚えなければいけないじゃないか! なんたる失態、サイン頂戴といわれた時に、盗塁のサインかな? バントのサインかな? なんてギャグを言えば冷めた目で見られるのは必然! これは早々に覚えなければいけない!

 よし、早速サインを書く連中をしなけれ――

 

「ヘーイ提督ーっ! オハヨーゴザイマースッ! 今日の秘書官は私、金剛デースッ!」

 

 手にサインペンを持とうとした瞬間、俺の右真横の壁が回転したかと思えば金剛型1番艦の高速戦艦、金剛が元気よく登場して執務室に入ってきた。おはようというにはちょっと時間が経ってる気がするぞ。

 

「って、お前どっから入ってきてるんだ!」

「見ての通りデスヨ? ジャパニーズニンジャカラクリルームなこの執務室の仕組みぐらい、私にはお見通しデースッ!」

「な、何ぃ!?」

 

 さ、流石は金剛型1番艦かつバーニングラブな艦娘! 俺でも知らなかった執務室の仕掛けを見抜いているとは……。

 

「ほ、他にもあるのか? こんな仕掛けが」

「フフーン、モチロンわからないデスッ!」

「さっきお前自分がなんて言ったか覚えてるだろうなオイ」

 

 ウインクしつつサムズアップして自信満々に言う要素がどこにあるんだ。

 

「まあまあ、そんな細かいことはダストボックスに投げ捨てマショウ」

「自分から言っといて投げ捨てるか……。まあ、だがそういうお前の思い切りの良さは嫌いじゃないぞ金剛」

「オーッ! ホントですか提督! 嬉しいデースッ!」

 

 屈託ない笑顔で喜ぶ金剛。これぐらいでも大喜びしてくれるぐらいに金剛は俺の事を好いてくれている。ぶっちゃけ言うともう俺にメロメロと言っても過言ではないだろう。これは流石に勘違いではないだろう。

 だが、問題が一つだけあるのだ。そう、この一つさえなければ時間と場所を弁えて触りまくれるのに……!

 

「でだな、来て早々聞かせてもらうが金剛。いい加減に納得してくれたか?」

「ホワット? 何のことですカー?」

 

 首をかしげる金剛。なんだ、忘れてしまったならもう一度言ってやるしかないな。

 

「俺のハーレム要員の1号になってくれること、だ」

 

「アッハッハッ! ――ノーに決まってるデショ提督ーっ!」

 

 両手でバツを作られて否定された。くそ、やはり駄目か!

 そう、一番の弊害――それは、金剛がハーレムに否定気味なことだ。

 

 だが、俺としてはハーレムにしたい。勿論、金剛もハーレムの一員にしたい。

 しかし金剛はオンリーワンこそが好みらしいのだ。だが俺はとりあえず全艦娘をハーレムの一員にする予定の提督、金剛一人のものになる訳には行かないのだ……!

 

「もーっ、提督はほんとにハーレムが大好きですネー。でも大丈夫デス! 提督のハートは私がわし掴んで見せマースッ!」

 

 元気よくそんな発言をしてくれる金剛。正直そんなこと言われてしまうと、ハーレム諦めてお前一筋でいくぜ! と心が揺らいでしまいかねないが、そこで屈せず、ハーレムの意志を固く持つのがオールラヴァーな俺提督よ!

 

「くっくっく、それはこちらの台詞だぞ金剛。いずれハーレムの一員でも全然オッケーと思わせる大活躍を見せてやるからな」

「チッチッチ、甘いネ提督」

 

 にやけて言う俺に人差し指を軽く振りながら言う金剛。

 

「なに? どういうことだ、金剛」

「私はそう簡単にマインドチェンジはシマセーンっ! むしろそんなの見せられてしまったら私のバーニングラブパーセントは更にアップするだけデースッ!」

「な、なんだとっ……!?」

 

 お、俺の活躍によって更にハーレムに否定的になってしまうだと! バカな、有り得ん……! だが俺が活躍しなければ他の艦娘たちに威厳を見せ付けラブラブキュンさせられない! こ、これは俺至上最大のピンチか!?

 

「ぐっ、中々の策士という訳か……流石は金剛四姉妹長女なだけあるな!」

 

 いつの間にか部屋に侵入する知的好奇心溢れるメガネ霧島、優しいが口癖で墓穴を掘ってる感が否めないダイジョーブ榛名、カレーが凄いツッコミ比叡という個性的な連中の長女。それをまとめる金剛はやはりクセ者だぜ……!

 

「フッフッフ、提督にはソーリーと思うばかりですがこれもラブタクティクスデース。さあ、大人しくハーレムは諦めて一緒にショッピングしたり、テーマパークに行ったり、海行ったりするネーッ!」

「海はいつも行くだろう?」

「オーッ、ソーリーソーリー。って、そういうのとは違いマースッ! ――ハッ!」

「な、なんだ、どうした!?」

「……い、今のやり取り、有名なメオトマンザイって奴なのではないデスカ提督!?」

「っ!?」

「もーっ、ハーレム大好きと言っておきながらそんな風に誘導してくるなんて、急なラブアピールには困っちゃいマース!」

 

 ぐっ!? 俺は知らずのうちに夫婦漫才をしてしまったというのか!? おかげで金剛は頬を両手で押さえてクネクネしている始末! その姿は可愛らしいがこのままではいかん、このままでは俺のマインドハートは金剛にキャッチされてしまう!

 なんたる強敵……! 俺に積極的アピールしてくる艦娘はそう多くないが故に俺も戸惑ってしまう……!

 

 しかし、負ける訳には行かない。普通の奴なら金剛一人で全然オッケーとか言ってしまうだろう、俺も提督でなければあっさりと了承していただろう。

 だが今や俺はインフィニティラヴァー提督! そしてヒーローはカラーをアイラビュー! 故に、スーパーエリート提督として、一人だけに身を捧ぐわけには行かない……!

 

 今、この状況は完全に金剛の独壇場。それでも、この形勢を俺には逆転させる義務がある! 考えろ、俺のクリアブレインで考えるんだ……!

 ……そうだ! 戦況を逆転させる方法……これだ!

 

「……ふう、《また》、漫才をしてしまったか……」

「……ワッツッ!? どういうことですカ提督!?」

 

 俺が遠い目で窓の外を見ながら言うと、喜んでいた金剛が驚くように聞いてくる。

 

「どうもこうもない。また、俺はみんなと同じように夫婦漫才をしてしまったのさ」

「わ、私だけじゃなくて他の艦娘にもやってたって事ですカ!?」

「まあ、そうなるな」

 

 思わず日向の口調を真似ながら俺は返答した。そう、金剛もハーレムの一員だから皆と同じように夫婦漫才していたという逆転の一手を俺は打ち出したのだ!

 

「う、嘘デースッ! 提督は嘘をついてマースッ! 霧島が分析して言ってマシタ! 提督はまだ夫婦漫才が出来るほどモテモテじゃないって言ってマシタ!」

 

 ぐぬっ、霧島め、あらぬ事を金剛に吹き込みおって。後で俺の威厳を伝えなおさないといけないな。

 だが悪いな金剛、その返しはお見通しだ。他の連中にも言われ慣れているからな!

 

「甘いぞ金剛、日本にはこういう素晴らしい日本語がある。男子三日会わざれば刮目して見よ――とな」

「ワァッツ!? ――って、提督とは一昨日も顔合わせましたヨ?」

「っ!」

 

 そうだった……! 金剛が出撃から戻ってきた時に会っていたんだった! くそっ、このカッコいいことわざを使う機会が来て内心嬉しかったがまさかこんな返しをされるとは!

 

「……ふっ、真の俺の姿は3日間見せてなかったのだ金剛。アレはいつもの俺に過ぎん」

「うーっ、なんか難しい感じですネー」

 

 よ、よし。ちょっと渋っているがある程度納得してくれた気がするぞ。よし、流れは何とかこちらにあるぞ!

 

「でも、残念デース。せっかく提督と私だけのメオトマンザイが出来たとおもったのデスガ」

 

 ううーっ、と声を出して本気で残念そうな顔を見せる金剛。……ちょっと否定しすぎてしまっただろうか。自分で言っといてなんだが、少し心が痛む。

 ……そうだよな、やっぱ金剛には笑顔の方が似合っているとは思うよな。どうも落ち込んでいる金剛はらしくないって言うか、見ていて調子も狂ってしまう。自分勝手ではあるが、なんとか元気を出してもらう方法はないものか。

 

 そう思って時間を見ると、現在時刻はヒトヨンマルマル。――そうだ!

 

「なあ、金剛」

「……なんですカ、提督?」

「とりあえずな、今回の話はここまでにして――少し早いが、ティータイムにしようぜ?」

「ティータイム、ですカ?」

「ああ、たかだか事務処理とはいえ、このゴッドハンド提督の手も少し疲れたし休憩を取りたいと思ったからな。そこで、なんか甘いものと紅茶があれば、この俺は更に無敵になってしまうと思って――」

 

「オッケーデース!」

 

 俺が言い切る前に、金剛は目を輝かせて嬉しそうに声をあげた。

 

「まっかせてクダサーイッ! 私が今スコーンと紅茶を準備しますヨーッ! 提督はそこでストップして待っていてクダサーイ!」

 

 俺が全て言い切る前に、金剛は颯爽と準備をしに行ってしまった。ちゃんと全部聞いてからいけよ。

 でも、いつもの元気な顔にすぐ戻ってくれてよかった良かった。あの姿を見ていると俺もやっぱ落ち着くぜ。

 

 けど、金剛のスコーンはほんと美味いからなー。食ったら元気出るのも事実だしな。いやー、楽しみ楽しみっと!

 さて、待っている間はサインの練習でもしておくとするか!

 

 なんだか妙にウキウキした気分になりながら、俺は金剛の戻りを待つことにした。

 

 

 ――――約30~40分後。金剛が準備してくれたスコーンの中になんか妙に変わった色のスコーンがあったので口にすると、俺の意識は吹き飛び、目の前が真っ暗になった。

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