雷鳴が鳴り響く、夜のように暗く荒れた天気。風に押されているように見える木がその荒れてる感じを最大に引き出している。そして部屋の電気は消灯済み。
今日、俺は二人の艦娘を呼び出した。
1人は伊168。海大VI型1番艦潜水艦。通称イムヤ。
もう1人は伊58。巡潜乙型改二3番艦潜水艦。通称ゴーヤ。
名の通り二人は潜水艦であり、二人とも俺の前に立っている。提督指定の水着をつけており、その濡れた色っぽさは今から将来を楽しみにさせる。大人になったイムヤとゴーヤからセクシーダイナマイトなグラマーボディで甘えられたら俺は一瞬で狼になる自信がある。――ではない、そんな悲しき男の妄想のような事はどうでもいい。今日の俺は、鬼提督なのだから。
某新世紀人造人間アニメの親父のように肘を机に置いて口を隠すように両手を組んで俺は座りつつ、二人を見る。ちなみに今日の俺はグラサン装備、以前のように深雪に馬鹿にされることもない程に今日の俺は渋い。
「ねえ司令官、なんで電気消してるの?」
「その方が渋いからだぞ、イムヤ」
「暗すぎててーとくの顔が見えないよー。暗いの怖いでちー!」
「雷が俺の顔を照らしてくれるから、その瞬間を見逃さなければいいんだぞゴーヤ。そうすれば俺の威厳がお前の不安を打ち壊すからな」
そう、雷鳴の音と光が俺の渋さを演出するのだ。完璧、これは完璧すぎ――
バタンッ!
「かみなりじゃないわ! いかづちよ司令官!」
「うおっ!?」
音とともに外からの光が暗黒の執務室を照らす。ドアを開けてそこにいたのは駆逐艦の暁型3番艦の雷だった。なぜここに!
「あっ、いかずちでもいいのよ! でも、かみなりじゃないのよ!」
「い、いや別に今のは間違えた訳じゃないぞ雷!」
「もう、名前間違っちゃうなんてしれーかんったら仕方ないわね! でも、私を頼ってくれたからには頑張るわ! だから早速司令官を照らしてあげるわ! 探照灯、しょうしゃー!」
「まぶしっ!」
俺の話も聞かず、雷はドアを閉めて両手で持った探照灯で俺を照らしてくれる。グラサンかけているから実際眩しくないが…………そうじゃない、そうじゃないんだ雷……!
「これで司令官の顔がよく見えるわよ!」
だが、そう言った雷の顔が八重歯も可愛く見せつつ凄く嬉しそうで俺には違うと言い切れない。……ま、まあ想像とは違ったがまあいいか。
「あ、ありがとな雷。おかげで明るくなった」
「これくらいしれーかんの為ならなんでもないわ! 私がしっかり明るくしてあげるからね!」
満面の笑みで答えてくれる雷。もうなんか雰囲気とかどうでもいいから明るくはっちゃけたくなるが、まだこの緊迫した空気を保っていけるはずだからその気持ちは抑える、耐えるぞ。
「ねえ、なんで雷に探照灯持たせて明るくさせたの司令官?」
「……え、演出だ。それほど重要な話なんだ……!」
「そ、そうなの?」
イムヤは不思議そうに首を傾げているが、そこはともかく話の本題に入ろう。
「それでだ、俺が二人を呼んだ理由……わかるか?」
「えーと、あっ! 明日のデザートがアイスでちっ!?」
「いや、違う」
「あ、イムヤのカレーが食べたいとか?」
「違うぞイムヤ」
「しれいかん! それなら任せて! 雷がいっぱい作ってあげるわ!」
「いやだから違うぞ!? 飯の関連じゃなくて作戦で呼んだんだ!」
そう言うと、なんだーそうだったんだー、って三人とも言う。何故だ、なんか慣れない役をやっているようなこの変わった気分は一体なんだ! 三人に押されているのか!?
くっ、負けられん……と言いたいところだが落ち着け、クールアイス司令官な俺だ。ここでコイツらと一緒にはっちゃければまた威厳が低下してしまう。心を鬼にした作戦、それを伝えてこそ一流の提督!
「そう、俺が二人を呼んだ理由はお前達潜水艦にしか出来ない作戦だ。ハチとかイクにも後ほど伝える予定だが、まずは潜水艦メンツのベテランなお前達二人にこの作戦の内容を聞いてもらい、受けてくれるかどうかを聞こうと思ってな……危険を伴う、作戦をな」
その瞬間、ドガーンッ! とカミナリが大木を破壊するような音が聞こえた。そうだ、この任務の凄惨をゆっくりと物語るような自然演出。完璧――。
「ひえーっ!? 爆弾ドッジボールしてた伊勢と霧島が建物に爆弾当てて爆発したーっ!?」「ち、ちょっ! 比叡! そういうことは静かに!」「てやんでぇーいっ! 花火かー! 祭りかー!」「祭りでもなーいっ!」
……騒がしい伊勢達の声が聞こえて来る。カミナリじゃなくてアイツらの仕業かい! 名演出を迷演出にしてくれおって、アイツらは後で呼び出し決定……!
「で、任務って何でち?」
とりあえず罰として日向による瑞雲講義でも受けてもらおうか、と考えているとゴーヤが任務内容を聞いて来る。危ない危ない、話が脱線しそうになったぜ。
「よし、しかして聞き届けろ…………作戦名は――――オリョクル!」
「「!」」
「おりょくる?」
潜水艦の二人は驚くような顔をするが雷は不思議そうな顔をする。
「それってどういうものなの、しれいかん?」
「ああ、教えよう。正式名称はオリョールクルージング、東部オリョール海をクルージングする作戦。同時に――潜水艦を酷使する、作戦でもある」
「えっ!」
雷もその作戦を聞いて驚いてしまう。
そう、俺がネットで調べた内容ではどうも燃料などの消費を抑えやすいの皮切りに、敵に狙われづらい状態での戦闘可能地点が多く、おまけにクソジジイ共率いる上の出す任務を色々と多くこなせる有能な作戦らしいのだ。
しかし、その欠点はまさに潜水艦を酷使すること。この作戦によって、あらゆる鎮守府の潜水艦の艦娘が精神的に潰れてしまったらしいとも聞く。精神的には耐えれても、体調を崩してしまうものも多いとも。
勿論適度にやれば、そう問題になることではないだろう。しかし、艦娘の体調とか知らんと思いつつやる提督やその適度具合が分からなくなる提督も多い。それ故にオリョクルは潜水艦達から恐れられている作戦……。だがそれ故に、多くの経験を潜水艦達に積ませるチャンスでもあるのだ。
しかし、この作戦を切り出そうと思う前には、俺は少し迷った。
こんな厳しい内容の作戦を、イムヤ達にさせてしまっていいのか。経験をさせるのはいいが、それによってイムヤ達潜水艦がどうなってしまうのかわからないというのに、と。
だがっ! ここで俺が迷うのは艦娘としての、戦うものとしての潜水艦達を愚弄する事になる。故に今回は話を切り出し、作戦を受けるか受けないかはコイツらに委ねたいと思った。
受けてくれるのなら、俺は全力で手を貸す。受けないのなら、実力をあげることの出来る他の方法を考えるだけだ。それが、スーパーエリート提督である俺の役目……!
「という訳でだ、このオリョクル作戦を受けてくれるかどうかの相談の為に俺は2人を呼び出した。別に、今すぐ決めろとも言わん。さあ、どうす――」
「やるわ!」「やるでち!」
「!」
俺が言い切る前に、2人は即答した。
「……本当に、いいのか……!」
「大丈夫、司令官の為なら、あの噂のオリョクルだってこなして見せるわ!」
「イムヤ…………」
「怖いのはきらいだけど、てーとくの為なら頑張るよ!」
「ゴーヤ……!」
くっ、思わず目から涙が流れてしまいそうだ。俺はなんていい部下を、仲間を持ったんだ……!
「あーっ! 司令のエロ本が壊れた場所から出てきた!」「むむっ! これは霧島的には見なければいけませんね!」「でも、もうほとんど燃えて読めない状態になってるわよ」「こいつぁ、火の用心ってぇ奴だねぇ!」
……その反面というべきか、提督イヤーに屋外で話している霧島たちの失言オンパレード会話が聞こえて来る。……アイツらは本当に後で叱らないとな……! 俺のエロ本秘蔵場所に爆弾ぶつけるって嫌がらせか! せっかく陸奥にバレないように、そしてこっそりと見れる場所に隠したのにチクショウ!
い、いや、それは後だ。今はゴーヤとイムヤの心意気を汲み取らなければいけない。
「……いい返事だ! よし、なら早速行くぞ……!」
「行くぞ……って、司令官も!?」
「ああ。――いや、言い方が違ったな。むしろまずは俺だけが行くんだ」
「ええっ!?」
イムヤは驚くような声をあげる。そう、まずはオリョクルの効率とやらが如何ほどのものか、自分の身で確かめなければいけない。ネットだけの情報では、実際はどんなものかわからないからな……!
「で、でも、潜水艦しか出来ないんじゃなかったでち? それより、てーとく一人じゃ危ないでち!」
「ふっ、心配は無用。俺は提督にして司令官にして司令だ、潜水服をつけることにより、潜水艦と同一の存在にしてそれを凌駕しうる深海を司る存在、ダイバーエックスとなり、あらゆる魚雷も砲撃も恐れおののき土下座する」
「えっ、なんか色々おかしいわよ!?」
「細かい詮索は要らないぞイムヤ。そんな疑問よりもこの危険な作戦をシュミレートする事で、更なる効率を生み出すことにお前達は努めるんだ!」
「えっ、う、うん……」
「さあ、早速オリョクルに行ってくる! だから雷、もう探照灯は消していいぞ!」
「はーい! って、今から行くの!?」
雷がびっくりしつつ聞いて来る。
「そうだ、今だからこそいいんだ。このオリョクルの厳しさが一番分かりやすい良い天気だ。なに心配するな、必ず帰るぞ」
「しれーかん……。約束よ、絶対嘘ついちゃ駄目よ! ちゃんとカレーも準備するから帰ってくるのよ!」
「ああ、わかってるさ。――よしっ、お前達は執務室にあるモニターを見てオリョクルがどんなものかを見ているんだ! そして見せよう、ハイパーエリート提督と呼ばれるが所以をな……!」
こうして、俺はこの荒れた海を出た。目的地、東部オリョール海へと……!
***
そして、俺は海に出る。そう、オリョクルは熾烈を極めた……!
『て、てーとく!』
「なんだ、ゴーヤ!」
ゴーヤの声が俺の持つ通信機から聞こえて来る。恐らく執務室のモニターについていたマイクを使って話しているんだろう。そして船にはあらゆる場所にカメラを配備しているが故に状況の確認もあっさりと出来る。見せる為の配備も完璧だ。
『これ、本当にオリョクルなんでちか!?』
「そうだ、間違いはないぞ!」
くっ、なんと荒れた海だ! だが、今日のような天気を越してこそだ! この程度こなせずして、オリョクルはやっていけない!
『で、でもこんな荒れた天気じゃ深海棲艦もいないわよ、司令官!』
「いや、いるぞ! 奴らはこんな荒れた日にも俺達を倒す為にいるはずだ! 俺からイ級が波に流されてるのも見える! 甘く見てはいけないぞイムヤ!」
ぐわっ! 波が襲い掛かる! 強烈だ、これを毎日やるだと……? なんて凄い、凄すぎる。他の鎮守府の潜水艦の艦娘たちは凄すぎる!
『ね、ねえ司令官! これ本当にイムヤ達みたいな潜水艦じゃないと出来ないの!?』
「そうだ!」
だが、俺は決めたんだ。コイツらの力を伸ばす為に力を貸すと! 負けるものか、海に負けてなるものかぁ!
『で、でもてーとく……! ――――――それ、船に乗ってるだけでちよ!?』
そう、ゴーヤの言うとおり――俺は船に乗って東部オリョール海を回っていた。
オリョールを航海する。故にオリョールクルージング!
ネットで聞いたらそう言っていたが……俺も実は半信半疑な面はあった、故に効力を確かめに来たが、想像を絶している……!
「そう、この船に乗っての航海というのが重要なんだ2人とも……!」
『そうなの!?』
「ああ、船に乗ることで平衡感覚を鍛える。そして潜水艦にとって重要な、回避能力を高める為に魚雷の発射を禁止する為でもある。無論、潜水してもそれは出来るかもしれない、だが潜水してしまえば思わず撃ってしまうだろう……それゆえの、その為の船による航海……! そして船は深海棲艦による攻撃であっさりと破壊されてしまう、故に、一度の攻撃のヒットも許されない! それは回避へ神経を一点に集中させ、緊張感を持たせることにも非常に重要!
いかに船に乗りながら、潜水艦としての勤めを果たせるか……これは効率と心身、両方を鍛える為の試練であり、究極の作戦なんだ……!」
『な、なんか全然わからないけど、正しい気がしてきたわ……!』
『ご、ごーやも全然理解できないけど当たってる気がしてきたでち!』
なんとなくだが、話している執務室の2人の目がうずまきを描いている気がする。だが俺自身も正しいのかわからないような気がする。だがこれは気のせい、俺の判断が曖昧になってしまえば二人はこの行動が正しいのか不安になり、オリョクルに不安を持つ。故に、正しい! 任務的に効率いいのか燃費も抑えられるのかもさっぱりわからんが正しいのだ!
「さあ見ていろ2人とも! まずは俺が……オリョクルを……こなすぞぉぉぉぉっ!!」
そして、俺はオリョールと言う大海原を航海し始めた。
そうさ……俺の、俺達のオリョクルはこれからだ……っ!