どこぞのアホ提督と艦娘たち   作:バード鳥鳥

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提督と改二のに

「全く、ああいう悪ふざけは止して下さい提督。思わず九十三式酸素魚雷で提督の息の根を止めようと思ってしまったんですから」

 

 アレから数十分後。さあ北上さんを名乗る不届き者、演習しましょうとか俺を殺しにかかるような目で言われた後に演習場で色々と撃たれた俺はかろうじて致命傷も受けることなく生き延び、食堂で吹雪と大井と軽食をとっていた。

 

「そうか、さっきの主砲での連撃は息の根を止めるつもりではなかったと言うかお前は」

「ええ、わざと外してましたから」

「じゃあこの顔面にめり込む模擬弾は一体なんなのか教えてもらおうか」

「素敵なアクセサリーのプレゼントですよ、提督」

 

 プリンを食べつつ、にっこりと微笑む大井。成程な、連れて行かれた訓練場で撃って来た砲撃は全てわざと外してくれていたあげく、弾丸風なアクセサリーまでおまけしてくれる心遣いを見せてくれた訳かはっはっは。……嘘をつくにしてももう少しマシな嘘があるだろ嘘が!

 

「ですが提督が悪いんですよ、遠征に行って数日会えて無い北上さんの真似をしてきた提督が……」

 

 大井は恨めしそうにこちらを睨む。

 そうか、だから妙に攻撃的だった訳だ。やぶ蛇をつついたって奴だった訳だな……。蛇と言うより、あの迫力は竜だったが。

 

「確かに、それなら俺も多少悪いとは思う。しかしだ、心の同志たる俺に対してこの仕打ちはあんまり過ぎないか?」

「誰が心の同志ですか。前にも言いましたけど私、提督の同類じゃないんですけど?」

「ああ、そうかもな…………だが深層心理では同類だと、俺は未だに思っている。何故ならさっきの北上の声がした時にこちらを見た目は完全に野獣のソレだったからな」

「勝手な想像で決め付けは止めてくれません?」

「いや、決め付けではな――――そうだな、決めつけだったような気もしなくない。だからその主砲は置こうじゃないか。て言うかだな、その主砲を毎度俺に向けるのは癖か!? 悪癖だからそれは直すべきだと提督としては言わせてもらうぞ!」

「うふふ、そうですね、提督に対してだけの悪い癖です」

「俺、限定だと……!? そうか、なら仕方ない――とは言わんぞ! 嬉しくないからすぐさま直せ!」

 

 確かに甘美で一瞬心躍りそうになったが、主砲向けられるのが俺限定なんて何一つ嬉しくないわ!

 

「ちっ、提督なのに良識的な発言を……」

「舌打ち聞こえてるぞオイ」

「えっ? 気のせいですよ」

 

 ぐっ、この期に及んでまだ白々しい嘘を吐くか。……ええいまあいい、大井はこういう奴だ、むしろ最近はこの行動に関しても愛いと思うようになった。何故なら、俺に対して悪い部分を少しでも隠したいという乙女心を感じ取れるからな。ふっ、モテる提督は辛い。

 

「……まーた壮大な勘違いで余裕ぶった表情してるわね提督め」

「このポジティブさは司令官の良さだとも思うんですけどね」

「吹雪さん、その考えの方がポジティブと思うんだけど」

「えっ、そうですか?」

 

 人が心地よさにひたっていると吹雪と大井のそんな会話が聞こえる。ポジティブか、やれやれ、良い事実をポジティブに考えるのは当たり前だと言うのにな。

 ……っと、そうだ。ちょうどいいから2人に少し聞いてみるとするか。……バレないように、それとなくな……!

 

「な、なあー、ところで2人とも……カイニ、って知ってるか?」

「えっ、はい! 勿論知ってますよ司令官!」

「北上さんも私もなれるものですから、当然知ってます。もしかして、提督は知らないんですか?」

「なっ……! ば、バーカを言うな。俺が知らないことなんて何一つないぞー。しいて言うなら、まだ着任してない艦娘がいつ来るのかぐらいしか分からないことは無いぞフハハハハハッ」

 

 と言うと、もう見透かされたかのように2人に溜め息を吐かれてしまった。何でこんなすぐにバレるんだ…………! ぐううっ、恥ずかしいと情けなさがコラボレーションして襲いかかって来る! なんて誰得コラボだ!

 

「まあ、潜水艦の事も知らなかった提督だから別にそこまで驚く事はないですけどね。とはいえ、改になってる艦娘も何人かいるのに改二を知らないとは思いませんでしたけど」

「確か改二計画はよく大本営からも連絡通知として来てたので流石に司令官も知ってると思ってました。……最近は霞ちゃんの改二通知来てましたし……」

「……そ、そういえばそんなのがちょくちょく来てたような……」

 

 思わず焦りながら俺はそう呟く。そうだ、確かにあったぞ。最近、霞が載ってるプランみたいなのを目に通した覚えがある。

 

「い、いやー、知らないことは無いぞ。だが、お前達がしっかりと覚えているか聞いておこうと思って質問したんだ。決して俺が覚えていないとかではないぞ!」

「ほんとに知らないくせに……このアホ提督。――っと言いたい所ですが」

「思いっきり言ってるぞ大井」

 

 そしてそのボソッとした本音じみた発言は忍び寄る魚雷のごとく俺の心にクリティカルヒットしているぞ。

 

「揚げ足を取らないで下さい。ともかく、今回はそういう事も言わないであげます。そして、そんな無能を二度と晒さないよう改二について今から教えてあげます」

「なに!? それは素晴らしい考えじゃあないか大井! 流石俺の心の同士!」

「吹雪さん、やっぱりこの人撃っていいですよね」

「ええっ!? お、落ち着いてください大井さん!」

 

 主砲を構えようとした大井を止める吹雪。対して俺はどしんと動じる事なく座っている。そう、これこそ俺の威厳。主砲一発にビビらない俺の強心臓っぷりを見せているに他ならない。実際は逃げてもどうにもならないと知っているだけだが。まさに逃げられるものか、って気分に等しい。

 なのでそのまま俺は傲慢に話していこう。それこそが提督、そして覚悟を決めた者の態度だ!

 

「では重雷装巡洋艦大井、このエリートキング提督にカイニについて教えるがいい。いや、教えてくだされい」

「何ですかくだされいって」

 

 いぶかしげに見てくる大井。そう、覚悟を決めたからと言って偉そうな口を叩くのはよくない、教えを請う時は例え俺が奇跡の天才提督であろうと真摯に、あくまで教えてもらう立場として聞くのが正しいことなのだ。偉そうに言い切ろうとした後、大井の目が光った気がしたから言い直したとかそんなんでは全然ない。

 

「とりあえず提督のような小難しいの嫌いな人用に大雑把に言うと、改二というのは改からの更なる改装の事です。あと、改造の改に漢字の二で改二と言うんですよ」

「おいおい、それぐらいは知ってるぞ。あまり俺を甘く見ないでくれ」

「司令官、冷や汗すっごい出てます……」

「い、いやこれは汗じゃないぞ、提督や司令官にのみ発生するエキス、提督汁だ」

「余計気持ち悪いですよ!?」

 

 危ない危ない、何とか事なきを得る言い訳が出来た。まったく吹雪め、話の腰を折ってなんてことを聞いて来るんだ、おかげで大井にバレそうになったじゃないか。

 

「おっとすまん大井、話を続けてくれ」

「ええ。と言っても、これ以上は対して言う事もないんですけどね。しいて言うなら改二になることで更なる戦闘能力の向上をする改二もあれば、私達のように艦種を変更する改二や艦種変更の有無を選択して、状況に応じて艦種変更も出来る改二もある、というぐらいですし。というよりそれ以上は提督が理解出来ないですよね?」

「ああ、よくわかっているじゃないか大井」

 

 既に俺の頭はオーバーヒート状態だ。これは改めて知識を詰め込まなければな……。

 

「後は改二になるには相当な練度が必要です。改二の艤装というのは通常の艤装より強力ですからね。練度に見合わない艦娘がつければ、自壊してしまうとも聞いています。だからこそ、練度が上がれば、改二の艤装に耐えうる為の改装を施すんですけどね」

「ほう、その辺は俺の想像通りだな」

「普通の提督でしたら改二って言葉だけで大体察するんですけどね」

「まあ、天才はいつの世も理解されないものだ」

「吹雪さん? やっぱりこの寝言はいてる人は撃っていいですよね?」

「だ、駄目です! こらえてください大井さん!」

 

 またも主砲を構えるも焦る吹雪に止められる大井。俺は逃げる動作も見せず、余裕を見せて座っていた。単に足が動いてくれなかっただけだが。

 

「とりあえず改二については大方理解した。知ってしまえばこんなもの、としか思えないほどに簡単な内容だったな」

「わからなかった人が何を……」

 

 呆れたように声を出す大井。だが最早改二について大方わかった俺に死角はない。残りは取るに足らない知識を脳みそにインプットするだけ。今ここにハイパーエリート提督が爆誕してしまったのだ。

 

「ありがとな大井、お前の説明のおかげでよくわかったぞ」

「これぐらいは誰でも説明できます、お礼も言われるほどじゃありません」

「感謝をすれば礼は言うさ。なあ吹雪?」

「はい! 私も大井さんの説明を聞いて、改めて改二のことがよくわかりました!」

「はいはい、大した説明もしてないのに大げさに言わなくていいですよ吹雪さん。でも、吹雪さんに言われると少し嬉しい気分になる気がするわ」

「ふっ、隠すな大井。俺に言われた時は胸がトクンッ……となっただろう?」

「全くなってません」

 

 いつもの笑みで言ってくる大井。ほんと正直じゃない奴だ、ははは。

 

 

 こうして、俺達はそのまま飯とかおやつを食いながら時間を過ごした。そして、北上の話を何回聞かされたかは、また別の話だ。

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