「今日は何の日~!」
「へーいっ! 子日だぜー! へ~いっ!」
「へーいっ!」
艤装解除済みで身軽そうに動くピンク髪の駆逐艦、子日と俺はハイタッチをした。気持ちのいい音が執務室に響く。
「わーいっ! 提督、今日はリズムが抜群だね!」
「ばっかだなー! 俺はいつでも最高の提督でリズムも最強さ! 今日は子日だしなぁ!」
「そうだねー! 今日も一日子日だよ~!」
再び子日とハイタッチ。あっはっは、楽しいなぁ! 楽しいなぁ!
「わぁ、凄いですね提督! ここ3日間はあんなことがあったのに子日さんとこんなに動いて……榛名、尊敬しちゃいま」
「言うな」
今日の秘書官である、高速戦艦の榛名が喋っているところを俺は途中で割り込むように呟いた。
「て、提督……?」
「言うな、言うんじゃない。昨日までの3日間のことは何も言うな……」
ああ、断片的に思い出しただけでも物凄い3日間だった。古鷹型は勿論のこと、妙高型から高雄型、青葉型、利根型の全機の良さを教えてあげますとかもう気合入れまくってた古鷹を止められるはずもなく、俺は重巡洋艦達による出撃祭りにつき合わされた。
それも古鷹だけではなく、同じ重巡洋艦の那智に摩耶、足柄は勿論のこと出撃をあまりさせていなかったこともあってか普通は止めるポジションの妙高や鳥海まで張りきりまくっていた。24時間、重巡洋艦の良いところ教えちゃいますスペシャルとかいう特番組めるレベルに重巡洋艦達は張り切っていた。途中死に掛けていたのは俺と加古と青葉ぐらいだったのが恐ろしい話である。最上や熊野、鈴谷達が航空巡洋艦になっていたのは幸いだった。
だが重巡洋艦良いところスペシャルが終っただけでは留まらず。最近出撃させていなかった軽空母に正規空母、潜水艦メンバーまでもが良いところを教えますとかいうもうありがた迷惑極まりない地獄に……ああ、もうこれ以上は思い出すのはよそう。止めよう。
「あまり無理はしないでくださいね提督? 提督が倒れてしまったら榛名、心配しちゃいますから」
「子日もだよ、提督と子日を祝えないのは寂しいよ」
「ははは、ありがとう榛名に子日」
にっこりと笑みを向ける二人組。というかあれ、祝ってたのか子日。
「だがな、俺はエリートパーフェクト提督だ。並の提督ならそれに参って、お前らに看病してもらっていたりしただろう、そこでなんかケッコンカッコカリに近づく為のイベントもある可能性だってある。ぶっちゃけ俺もしたい。だがだ! 俺は違う! そんなものを苦にせず、ちょろいぜヘイヘイって感じに提督業をこなす! だから俺はモテるのさ……!」
机の上に立って、演説するように俺は言い切った。自分で言うのもなんだが今のはかっこいい、これはかっこよすぎて子日も榛名も「提督好き好き愛してるー!」と抱きついてきてもしゃあない程のかっこよさだ……!
「えっ、提督ってモテてるのー?」
「子日さん、それは触れちゃいけないことです! 提督の心の支えが壊れてしまいます!」
シッと、口元に指を立てて子日に言う榛名。……どうやら俺がモテていることにこの二人は気付いていないらしい。まあ、俺からすれば二人とも子供だしな、仕方ないさ。俺の良さが分かるにはまだまだ幼い。吹雪も摩耶も天龍も龍田も筑摩も瑞鶴も加賀も日向も陸奥もみんな幼い、まだ見ぬ外国艦か大和型しか俺がモテるということはわからないのだ。絶対そうに違いない。
「でもやっぱり無理はしてはいけませんよ提督。私達の提督は一人しかいないんですから」
「お前は心配性だな、気にしすぎだって。ただの提督ならそれは気遣いだが、俺にとっては嫌味にしか聞こえん。何故なら俺は最強で天才で究極だからだ」
「ですけど……」
「だが――お前がそこまで言うのであれば、俺の願いを聞いてくれれば休もうと思う。聞いてくれるか?」
「は、はいっ! 榛名でよければ何でも聞きます!」
思わず口元をニヤっとする。何でもと言った、古今東西、その言葉を吐いた人間はどんな目に会ったかもわからずにな……。
「よし、本当に何でも、だな?」
「はいっ! 榛名は何でも大丈夫です!」
緊張したように声を張る榛名。その声には若干の不安も混じっているように聞こえるが、俺は心を鬼にする。やってもらうぞ、アレを。
「よおし、んじゃあ――――――子日を祝ってもらおうか、俺と子日と三人でなっ!」
「はいっ! ――はいっ?」
「にゃっほーいっ! 榛名も祝ってくれるの! 嬉しいなー!」
「えっ、ええ! えーーーっ!?」
喜びで右手をあげて跳ねる子日。予想外と言わんばかりの驚愕の表情を見せる榛名。しかし、出した言葉は戻せないぞくっくっく。
「て、提督? それは――」
「えっ、祝ってくれないの……? 子日、子日と一緒に祝ってくれないの?」
「ね、子日さん……」
上目遣いで榛名に聞く子日。真面目で優しい榛名がその視線から逸らして断るなど出来やしないだろう。
「おいおい、一度言った言葉は責任を持ってくれなきゃ困るぞ榛名。うちの最高練度の戦艦なのに、前言撤回なんてされちゃあ俺の顔に泥がかかっちまうしなぁ……」
「で、ですが、提督。他にも榛名はいっぱいしてあげられ――」
「榛名、祝ってくれないの? ねえ、ねえ?」
「ううーっ……」
子日の純な言葉に断りきれない榛名。ふふふ、もう無理だろう。
そして――
「わ、わかりました! 本日秘書官を務める、金剛4姉妹が一人、高速戦艦榛名っ! 全力で、全力でっ! 子日さんの子日を祝います!」
榛名は、俺の要望に答えた。いよぉぉぉぉぉぉぉっし!!
「よっしゃあああああっ! 良くぞ答えた榛名っ! さあ子日、今日は執務室で子日祭りだぁぁぁぁっ!」
「わーいっ! 子日、全力でやっちゃうよー! 今日はーー! 何の日ーーっ!!」
「ね、子日ーっ」
「違うぞ榛名ぁ! もっと装甲を貫くように叫ぶんだ!」
「は、はいっ! 今日は、今日は――! 子日でーーーすっ!」
「そうだ、いいぞぉ! 今日は子日の日ぃーー!! やっほぉぉぉー!」
「にゃっほーーーーいっ!! 子日だよーーーっ!!」
こうして、俺達は叫んだ。叫んで叫んで祝いまくった。
その数分後、陸奥と摩耶と神通が来て子日祭りは終了した。だが俺は忘れない、今日と言う日が、子日だったことを――。