どこぞのアホ提督と艦娘たち   作:バード鳥鳥

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提督と比叡、から始まる偵察

「はあああああああっ!! たぁっ!! ふあっ!! あたぁ!!」

 

 蹴りを放つ。拳を放つ、突きをうつ!

 ……よおし、完全回復! 熱も下がって、最強提督神話が再臨した! 執務室で暴れまわってしまうのは我ながら大人気ないが、見ている吹雪に提督パワーをアピールするには仕方がないのだ。

 

「司令官、治ってよかったですね!」

 

 吹雪も笑顔で祝福してくれた。ふふふ、こそばゆいぜ全く。

 

「本当昨日はびっくりしたんですよ。休んでいると思ったら急にいなくなっていて、時雨ちゃんや陸奥さんに看病されていて」

「……アレはすまなかった」

「えっ?」

「アレだけ大口叩いてあんなザマを晒してしまって。申し訳なかったな吹雪。本当に、申し訳ない」

「そ、そんな! 謝らないでください司令官! そんなの司令官らしくないですよ!」

 

 頭を下げた俺に慌てる吹雪。実際、昨日は時雨に世話になりっ放しどころか、あの後に来た吹雪や陸奥たちにも迷惑をかけてしまったしな。

 

「いや、こんなので済むなら安いもんだ。――だから俺が熱で倒れたってこと、絶対に言うなよ吹雪」

「司令官、まだそれ気にしてたんですね……」

 

 吹雪は苦笑いする。当然だ、エリートパーフェクト提督な俺がたかだか四十一度の熱に倒れたなど知られれば、全員落胆してしまう。「クソ提督なのにエリートでもなかったなんて、もうただの雑魚提督じゃん」とか「所詮、ボンクラ提督だったか」とか色々言われかねない。

 まあ、しっかりと威厳を保つ為に「我、精神統一中。執務室入るべからず。入ったらバーニングブリザードサイクロンストライクの刑」と書いた張り紙を執務室に張っておくよう吹雪に頼んでおいたから、三人以外にはバレていないはずだ。実際今日の朝、執務室に入れば張り紙もあったしな。ただ、朦朧な中でそれを書いて吹雪に渡したとき、何故か三人に呆れられたのは未だになぜかわからない。

 

「でも元気になったんでしたら良かったです! 司令官、疲れたら私に言って下さいね。司令官が休んでいる間は吹雪、頑張りますから!」

 

 純朴な笑顔を見せながら敬礼して元気よく言葉を出す吹雪。これを見ると少しやる気が出てしまうのは、吹雪という人となりの引き出す力かもしれないな。

 

「ああ、その時は任せるが。お前だって疲れたら俺に言えよ? 前も言ったが、お前に倒れられたら困る奴はいっぱいいるんだからな」

「そんな、買いかぶりすぎですよ司令官」

 

 両手を引っ込めつつ手を振って謙遜する吹雪。そうでもないから言っているんだがな。

 

「――まあとりあえず、俺も完全復活したことだし疲れたらいつでも休んでいいんだからな。お前が休んでいる間は俺の有能提督ポイントを稼ぐチャンスでもある、だから存分に休め。つうか別に今日は大してやることもないからもう休んでいいぞ」

「大丈夫ですよー。それじゃあ吹雪、今日も伝令してきます!」

 

 そう言って再度敬礼したあと、吹雪は執務室から出て行った。働き者だなあ、アイツは。

 さて、俺もアイツに負けていられない。地味な仕事だが、書類を片付けるとするか!

 

「ほい、ぽんっぽんっ、っと…………」

 

 ……ん? もう印鑑押す書類ないのか? いくら元々量が少ないとはいえ少なすぎやしないか?

 仕方ない、あのクソジジイ達に報告書でも――って終ってやがる! それも俺より綺麗に出来ている! それもきっちりとまとめられているだと!?

 

 ……ははあ、これはもしや吹雪の仕業だな? 通りで昨日ちょくちょく抜けたり入ってきたりしてた訳だ。全く、アイツ今度は強制休暇させてやらねば。本気で倒れかねん。この俺でもアイツには頭が下がる思いだよ本当に。

 

 さて……ならどうするか。むしろ俺がヒマになった。普通の提督なら恐らく次にやることとか思いつくんだろうが残念ながら俺は思いつかない。――よし、わかった。たまには地味な書類仕事やら命令を出すだけでなく、他に何かをして派手に艦娘達からの評価を高めなければな!

 

「よぉーしっ! 昨日は休みとはいえ倒れてしまったし、今日は気合、入れて! 行くぜぇ!」

 

 ははは、一度言ってみたかったんだよなコレは! やっぱり気合が入るぜ!

 

 

「司令っ! それは、それは違いますっ!」

 

 

 執務室のドアがバタン! と勢いよく開いた。

 振り向くと、そこにいたのは金剛四姉妹が一人、高速戦艦の比叡だ。以前子日祭りで一緒に正座で説教された榛名の姉の比叡だ。真っ赤な顔で俺達と共に叫びまくってくれた榛名の姉の比叡だ。

 

「気合っ! 入れて! 行きますっ! ……こうです!」

「いや、どう違うんだよ」

「一言一句に気合を入れるんです! さあもう一度! 気合っ! 入れて! 行きますっ!」

「くっ……気合! 入れて! 行きますっ!」

 

 ……!

 比叡の言うとおりに叫んだ時、何か変化を感じた。なんだ、この気合の入り方は。さっきまでの気合とは違う、今の俺なら深海棲艦を一人で殲滅出来てしまいそうな気合が入ったぞ……!

 

「まだまだ、と言いたいですがさすがは司令です! よい気の合いです!」

「ふっ、まあな。だがまだまだ本家のお前には敵わない、俺と言うバーニングエリート司令が言うのだ、誇っていいぞ」

「ありがとうございます、司令! ですが比叡は司令には負けませんよ!」

 

 拳を握って元気よく言い放つ比叡。言ってくれる奴である。だが実際にその実力は戦艦とあって確かなものがあるしな、期待はしている。

 

「それで、今日は何か用があって来たのか?」

「いえ、歩いていたら司令が私の言葉を真似て叫んでいたので、つい」

「つい、で入ってきたのかお前」

「す、すみません」

 

 まあ最早ノックして入ってくる奴の方が珍しいことは多いけどな。……やっぱり俺に威厳を感じてないんじゃないかアイツら?

 うーむ、これは由々しき事態だ、やはり威厳を知らしめて「きゃー提督イケメーン! 素敵ー! 司令官抱いてー!」って言わせなければ……。

 

「それでは司令、私はこれで――」

「待て比叡、お前に一つ問いたい」

「? なんですか?」

「俺はスーパーエリート司令、それは周知の事実だろ? だが、最近どうもその偉大さを他の連中は忘れている気がするんだが、どう思う?」

「そうですねー、私は今初めて知りましたよ」

「そうか。まあお前は金剛ばっかり追ってるから仕方ない、今からしっかりと俺がすごすぎて強すぎる司令だとわかってくれればいい」

「あ、いえ、そういうことではなくですねー」

「だが、他の連中は俺がもうエリート中のエリートだということは知っている。誰かに聞いてないか? 提督マジパネェとか司令官かっこいいとか、もう艤装をまさぐってもらいたいとか、駆逐艦からでもいいからそういうことは聞かないか?」

 

「はいっ! 皆無です!」

 

 真っ直ぐな瞳で残酷にはっきりと言いやがったこの野郎!

 バカな、誰一人言ってないだと? 有り得ない、どうしてだ……! 普通は言ってるはずだぞ……!

 

 そこで、俺はピンッと来てしまった。先ほども言ったとおり、比叡は金剛を慕いまくっている。故に他の連中など目に入っていない可能性がある。そうか、それなら俺の有能さの噂が聞こえて来ないことも仕方の無いことだな。

 ならば、この俺が司令として言えることは一つ。

 

「比叡…………少しはみんなと話すんだぞ。コミュニケーションは大事にな」

「ひええっ?」

「いいか、最初は大変かもしれないがいずれは慣れる。なあに、少し口の悪い連中もいるが慣れれば心地よくもなるさ」

「な、なんかとんでもない勘違いしてませんか司令!?」

「そして俺のいい風評を聞いてしっかりと報告するんだ、頼んだぞ」

「それ結局、司令が自分の良い噂聞きたいだけじゃないですか! 違いますってばぁ! 本当にそんな噂聞いたことありませ――あ」

 

 何か思い出したように比叡は言葉を漏らした。おお、なんだやっぱりあったのか?

 

「そういえば、エリートで優しくて強い提督の話、聞いたことありますよ!」

「おおっ! それは間違いなく俺の話だ!」

「いえっ! 別の鎮守府の提督の話です!」

 

 俺は昔のコントのように思いっきりずっこけた。俺の話じゃない――って何ぃっ!?

 

「別の鎮守府で俺よりエリートでイケメンでモテモテとか言う、ろくでもない提督がいるのか!」

「そこまで言ったつもりはないですけど、でも司令より良い噂が伝わるくらいには凄い方みたいですよ!」

 

 な、なんてことだ……! そんな奴がいたとは……コレは緊急事態に他ならない。深海棲艦が大量に襲い掛かって来るよりも緊急事態だ……!

 

「世の中凄い人もいるものですよねー司令。……司令?」

 

 俺は比叡から背を向け、部屋の端に置いてあった金属バットを手に持つ。主砲を打ち返そうとしたが失敗してへこんでしまった金属バットを近代化改装した、この金属バット改・エリート丸くん改めスーパーエリート丸くんを。

 

「――比叡、今からヒマそうな奴をとりあえず後二人連れて外出するぞ」

「……え、あの、司令? 何するつもりです?」

「決まっているさ。血の一滴も残さずに消滅さ――ではなく、ちょっとそのエリート提督さんとやらを見に行くだけだ」

「ひえええっ!? いえいえ、駄目です駄目です司令っ! それは流石にまずいって比叡もわかりますよ!?」

「なあに、失踪したという風に工作すればいいのさ、くっくっく」

「ひええええっ……」

 

 この金属バットのスーパーエリート丸くんも血に飢えて始めていた頃だろうしな……ちょうどいい獲物が現われたもんよ。くーっくっくっく。

 

「わ、わかりましたっ! 言いだしっぺは私ですし、金剛4姉妹が一人、比叡! 両方の意味で司令の警護をしますっ!」

「よし、よく言った! ……両方の意味?」

「いえいえ、気にしないでください! 気合! 入れて! やりますから!」

 

 焦っている気がするのは気のせいだろうか。まあ、比叡も俺というエリート司令以外の存在が許せないのだろう。なんだかんだで俺に心酔しているのかも知れないな、ふふふ。

 

「全く、頼もしい奴だぜ。よし、まずは他のメンバーを探しに行くぞ!」

「はいっ! 比叡、抜錨しますっ!」

 

 早速俺は、比叡を連れて他にヒマそうなの二人を探しに行った。

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