まずは読めるかどうか、ですね。
地に足が付いた瞬間、光の幕が剥がれていく。現れたのは瀟洒な石造りの街並みで、プレイヤーが最初に降り立つ事になる『はじまりの街』の広場だった。街並みに目を向けると、すでに多くのプレイヤーが店の陳列棚を興味深そうに眺めたり、装備を整えた冒険者達が大通りを行き交っている。広場ではさらにログインしてくるプレイヤーの光があちらこちらで出現し、さらに混雑してくることは予想できた。
「すげえ、公式の画像通りだ」
自分の喉からびっくりするほどの嗄れた声が出た。キャラクター作成のボイスエフェクターで調整した声で、そうだったと思い出して咳払い。気を取り直して息を吸った。
「俺の名前は、アイガイオン」
渋みのある声が出た。おお、と感嘆の気持ちを逸らせ、自分の躰を確認する。アバター名はアイガイオン。神話の巨人の名前だっだ。反して身長は低く、行き交う人々から見下ろされる形になっていて、それは新鮮な驚きだった。肌はやや浅黒くハリは失われていないが、それでも老齢を感じさせる肉感をしている。アバターのコンセプトは熟練老戦士だった。何故かそういうキャラクターが好きなのだ。顔にも幾つも皺と傷痕が刻まれているといった作り込みで、時間をかけた末に満足出来る完成度となっている。
「おっちゃん、良いキャラしてるよ!」
長身の女性が声をかけ走り過ぎた。自分の事を褒められたのだ、とわかると自然に嬉しくなる。見ると、その女性は方々に声をかけながらどこかを目指して走っているようだ。間違いなく可愛いと言える女性アバターで、声をかけられた男性アバターも気恥ずかしそうに嬉しがっている。やはり可愛い子に声をかけられるのは嬉しい。男として。そういえば、と軒並み目に映るプレイヤーであろうアバターはほとんどが容姿端麗といった姿形をしている。ある意味、美醜の偏りが酷いのだが、折角だからと皆考えることは似たり寄ったりなのだろう。その中身は如何と考えるのは、ゲームを楽しむ事としていけない事なのだ。
広場の中央に設置されている時計台を見ると、時刻は午後二時に差し掛かろうとしている。アバター作成に少々時間をかけ過ぎたかもしれない。サービス開始が午後一時で、ちょうどにログインしていたから一時間近くキャラ作りをしていたことになる。右手の人差指と中指を合わせて下に振る。チリンという効果音と共にメインメニュー・ウインドウが現れて、自身の装備を確認する。それを終えると、やはり自分の腕を試したくなる気持ちが出て来る。とりあえず、最初なのだから楽しめることをすればよいのだと思い、最初にすることはフィールドに出ることだと決めた。
◇
フィールドに出た途端、街で流れていたBGMが消えた。若干の静寂感に包まれながら、脚は草原を踏みしめている。草を踏む音が妙に心地を躍らせ、己の得物を握る手に力が入る。なだらかな丘を一つ越えると、視界にイノシシのようなモンスターが現れた。それに視点を合わせるとイノシシの上にカーソルと緑のライフバーが現れ、名称に≪フレンジーボア≫と言う表記が示される。この敵は非攻撃的モンスターに設定されており、こちらからちょっかいをかけない限り、襲われることはない。ちょうど良い練習相手を見つけた、と思い、草を食むイノシシには悪いが、と得物の槍と盾を構える。
「Charge!!」
突撃。ガチャガチャと金属鎧が動く度に鳴り、こちらの雄叫びに反応したイノシシが顔を上げる。その横腹にぶつかり、槍が突き刺さると思いきや、毛皮に弾かれ体勢を崩し横転する。急いで立ち上がり、立て直した所にこちらを敵と認識したイノシシがお返しの体当たりをかましてきた。
「うおっ!」
がんっ! という衝撃音。咄嗟に盾で防御したものの、意外な突進力に後退する。視界の左隅に表示される青いHPバーが、僅かに空白で埋まっていた。
「これがダメージ」
仮想現実だからこそ体験できる初めての経験だった。現実の方では、そんな荒っぽい経験などほとんど無いのだ。これが戦闘。恐怖と高揚が身を包み、何故だかぼうっとしたような感覚が胸にある。イノシシを見ると、可視化されたHPバーが僅かに減っている。同じように、ダメージを与えたのだ。
「面白いなあ、これ。面白いなあ」
イノシシの突進。紙一重で避け、後ろを見せた所に槍の穂先を合わせる。ログに示されるアドバイス表示に合わせ、足を一歩引き、腰を落とすと、切っ先が僅かな光に包まれた。
「ぜい、やあっ!」
システムが躰をアシストし、自動的な動作で槍が突き出される。槍系統共通単発スキル≪スピア≫は振り向いたイノシシの首に突き刺さるとそのまま肉を貫いた。
「うあっ!?」
ざくりと貫いた肉が動く感触が、槍を通して手に伝わってくる。気持ち悪い感触がそのまま背筋まで通り抜け、反射的に手を離そうとしたが、技発動後の硬直時間で動けないでいた。与えたダメージによりイノシシのHPバーは減退し、レッドゾーンになっていたが、その時は若干の恐慌状態に陥っていて気付かなかった。気付いたのは硬直が解けて、槍を手放した後だ。
「馬鹿やったなあ……」
突き刺さった槍を振り払おうと暴れるイノシシを見やって呟いた。あと一撃入れれば、あのイノシシを倒せたのだ。イノシシのHPバーは今でも僅かずつ減衰している。槍が貫通している事で継続ダメージが入っている状態で、放っておけば勝手に死ぬだろう。少し痛々しい光景だが、肉を貫く言いようのないおぞましい感覚は御免こうむりたい。慣れなければゲームを楽しめないが。データのくせに、と悪態をついて見守っていると、ついにHPバーが消失した。パリンと破砕音。次いで青白く光った、と思ったらガラスのような欠片となり宙に霧散する。これで敵を倒したという事になる。目の前に紫色の文字で加算経験値とドロップアイテムが出現し、それを確認すると地に落ちた槍を拾いあげた。
「武器変えよっかな」
初期装備で選んだ槍だが『はじまりの街』の武器屋に行けば違う装備が並んでいる。アドバイス表示によれば、初期装備用の武器は売却値と購入値が一緒なようだ。つまり、実質交換し放題で、それで自分に合う武器を見つけてくださいという事だろう。初期装備で選べた武器の他に、細剣やら片手棍やら違うカテゴリの武器も存在するようで、それらを試す楽しみもあるのだ。一先ずはこの片手槍をある程度使いこなす事を決め、練習に何回か振ってみたり、この仮想世界に於いて必殺技に位置するソードスキルも出してみて具合を確認する。
「うん」
なかなか調子は良い。アドバイス表示の説明文やモーションに従うだけだが、難なく、とは言わないが使いこなせるような気はしてくる。先ほどのイノシシにも、ダメージを少し受けただけで勝てたのだ。間合いの取り方も、割と性に合ってるのかもしれない。そうして槍を使っていると――
「おじさん!」
――と元気な若者の声が聞こえた。間違いなく自分の事だろうな、とかけ離れた年齢の呼び名にこそばゆい感慨を抱きながら振り向く。
「見てたよ! よかったらなんだけど、ボクにも技の出し方とか教えてくれないかな?」
何だこの作り込みは、と言いたくなるような貴公子然とした金髪の青年が、にこやかな笑みでこちらを見下ろしていた。
◇
「そりゃ、
「アイガイオンだ。で、お前さんも同じ初心者なんだな、チャーリー?」
「うん、そうだよ」
自分のアバターは小さいので、必然的にこちらが見上げる形となる。ちょっとしたドワーフみたいな作りの自分のアバターに蓄えられた髭を撫でながら、チャーリーと名乗る貴公子の話を聞く。
「しかし、何も確認せずにいきなりフィールドに出るとはな」
「えへへっ、何だが止まらなくなっちゃってさ」
「わからないでもない」
チャーリーの装備は片手剣、盾、皮防具というデフォルメだが、整い過ぎた容姿のせいでどこかアンバランスなイメージになっている。これで煌びやかな装飾が施された鎧でも着れば、聖騎士か王子のように着こなすのだろう。
「アドバイス表示をONにすれば、ログ画面に色々と説明が書かれるから、それを見るといい」
「アドバイス表示? どうやって出すの?」
「オプションからだ。まず、メインメニュー・ウインドウを出すんだ。こうやって」
右手の人差指と中指を合わせて下に振って見せる。凛とした音と共に半透明の矩形、メインメニュー・ウインドウが現れた。同じ動作をしたチャーリーの前にも同様のウインドウが現れている。
「初期設定では、左側にメニューの項目、右側に自分の装備や状態を表すシルエットが表示される。左のメニューを下にスクロールしてみろ。オプションの項目があるはずだ」
「ええっと……あった。凄いね、同じ初心者のはずなのに、すっごい経験者みたい」
「年の功、と言えばロールプレイ出来るんだがな。アドバイス表示を呼んだだけだ」
説明している間にメインメニュー・ウインドウのカスタマイズをしていく。メニュー項目を右側に持っていき、装備シルエットを左側に。アイテム等の頻繁に使いそうな項目を上から並べていったり、ログアウトボタンをショートカットに設定したり。
「アドバイス表示をオン!」
「元気だなあ、若者は」
「本当におじさんみたい。実際は幾つなの?」
「チャーリー。それはマナー違反だ。ネットなどでは、現実の事を聞いちゃいけない」
「そうなんだ。ごめんなさい」
とは言うものの、チャーリーの年齢は大体見当が付いていた。おそらくまだ十代前半。年齢制限に届くか届かないか位だろう。プレイヤー同士が直接対面するこのVR世界では、話し方や、仕草、そういった挙動にどうしてもサインが現れてしまうようだ。仮に年齢制限を満たしていなくても、そう言った我慢しきれない子供が出てくるのは、しょうがない事なのだろう。もちろん、見当を付けたとしても口に出すことはしない。
「と言うわけで、ネットでのマナーは守るように」
「はーい。なんだかアイガイオン、教官みたい」
「訓練場にでも居そうだよな、俺みたいなの。いや、儂と言うべきかな?」
「あははっ、本物だ!」
チャーリーは、見た目こそ貴公子然とした容姿だが、それが不自然じゃない懐っこさがあった。こいつとなら仲良くやれるかもしれない、と期待を抱きつつ、お互いにあれやこれやとアドバイスを確認しながら動作を確認する。
「へえ、ボーナスポイント、HPと筋力に振ったんだ」
「こういうのって性格が現れるのかな。いかにもって感じのが好きでね。レベルアップ時に選択できるのは筋力か敏捷だけらしいけど」
「あれ、HPは?」
「たぶん、どちらを選ぶかで上がりやすさみたいのがあるんだろう。あとは選択したスキルによって細分化されるらしいし。HPを選べるのは最初のあの時だけかも。まあ、これはステータスの差別化みたいなので、今のレベルじゃほとんど変わらないんじゃないかな」
「ふうん。あ、スキルスロットの二つ、何選択した? ボクは片手用直剣だけ選んで片方開けてるけど」
「片手槍と防御で埋めたよ、俺は。そういやチャーリー。そのアバター作るのどれくらい時間かかった? なんか凄い作り込みだけど」
「一時間くらいだったかな? 姉ちゃんがβテスターでね。その時のデータが使えたんだって」
「マジか。えっ、マジか。アレって確か当選人数が」
「限定千人だね。もうすっごい喜んでたよ。ボクも嬉しくなっちゃって、一緒に飛び跳ねたなあ」
「すげえな、お前の姉さん。じゃ、なんで今、えーっと……お前さんが?」
「最初の一時間は姉ちゃんがプレイしてたけど、用事があってね。帰ってくるまでやってていいよって、IDとパスワード教えてくれたんだ。始める時、ナーヴギアのキャリブレーションやり直したけど」
「へえ」
「βテスト時のアイテム引継ぎとかは出来なかったって言ってて、あっちの森にあるホルンカの村って場所に、重いけど使える片手剣があるんだって。余裕あったらそれ取っといてって言われたよ」
当初のマナー違反はどこへやら。まあ聞き出そうとして聞き出した事じゃないし、と深く考え込まない事にする。自然な流れで聞いていたから、そこまで違反だと言ってもうるさいだけだし、と考えるのを止めた。
「ふうん、じゃあ手伝おう。邪魔じゃなかったらだけど。あんなこと言った後で色々聞いちゃったし、悪いな」
「ううん、構わないよ。ボクも話しちゃ駄目な事言っちゃったんだね。ごめんね」
と現実との身長差に隔たりのあるアバターを動かしながら、気が付けば様々な事を話していた。動きも慣れた頃、マップのカーソルにアイコンが三つ現れた。色は敵である事を表す赤色だ。
「敵だな。こっちに向かって来る。行けるか?」
「うん。初めてだけど、頑張るよ」
確認を取ると、緊張を滲ませた表情で、だが確かな力強さでチャーリーは頷いた。戦う前に、とメニューを操作し彼にメッセージを送る。
「パーティー申請?」
「嫌ならいいぞ」
「まさか」
チャーリーがウインドウを押すと、視界左上。自分のHPバーの下に【Charlie】と表記が出現し、その横には青いHPバーが並んだ。パーティー申請が受理されましたのメッセージを消し、ログに表示されたアドバイスを流し読む。マップでは、チャーリーのアイコンカラーが非敵対の緑から、友好的、仲間を示す水色に変わっている。彼も同じで、視界左上に【Aigaion】と出ているはずだ。
「これでアイガイオンって読むんだね」
「古代ギリシア語で書いてやろうかとも思ったけど、それじゃ読めない人がほとんどだからな」
「古代ギリシア語? わかるの?」
「いや、ネットで調べてそれだけしか知らないけど。それに流石にそこまでネームバリューに対応はしてなかったよ。さて、俺が前衛かな」
「二人だけなのに、意味あるの、それ?」
「わからんが、やってみたいじゃない、こういうの」
「まあいいよ。どきどきしてきたなあ」
視界に映る敵は≪ウルフ≫Lv.1は三体だ。チャーリーを背にする格好で一歩前へ出る。自分が戦士になったような気分で、落ち着かないというより不思議な高揚に変わっていた。
「ガウッ!」
狼が一匹、突出して飛び掛かる。構えた盾を引き、裏拳のようにそれに合わせた。
「ぎゃんっ!」
顔面に直撃し、血の代わりの赤いエフェクトが狼の口から僅かにこぼれる。狼は即座に体勢を立て直すと、撃退を警戒したのか、三匹で様子をうかがう様に回りを囲んだ。
「ど、どうしようっ!」
「慌てるなっ、とりあえず……っ!」
一匹がチャーリーに飛び掛かる。躰が動いていた。槍系統共通単発スキル≪ホーン≫の上段突きが、宙にいた狼を突き飛ばす。
「やばっ……!」
ソードスキルの硬直時間を忘れていた。すでに遅く、他の二匹が即座に躰に噛みついてきた。ずぶりと歯が鎧の露出された部分に食い込んでいる。システムのおかげで痛みを感じることはないが、不快な痺れが喰らい付かれた場所にあり、ダメージのエフェクトが噴き出ていた。
「離せぇっ!」
青い光が。チャーリーのソードスキル≪ホリゾンタル≫が一匹を払い落とした。硬直が解け、脚に喰らい付いていた狼を槍の石突きで殴り振り払う。
「アイガイオン、HPが」
言われた通りHPバーを見るとイエローゾーンに突入していた。しかし、それは狼の方も同じことだ。内一匹はレッドゾーンに入っている。
「後でいい。押し切るぞ」
「赤くなってる奴からだね。ボクがやるよ、敏捷あるし」
「二匹は俺が引きつけよう」
盾を構えながら槍を突き出す。レベルが低く最初の階層だからだろうが、上手い具合に二匹だけが反応した。冷静に対応すれば、これ位はどうということはない。盾を構えて、牽制に槍で突こうとするだけで時間は稼げる。序盤はどれもこんなものなのかもしれない。気を抜かなければ、二匹も倒せるだろう。ばしゃんと砕けたポリゴンが一つ。最初の一匹をチャーリーがやったのだ。
「よし」
負けてはいられない、ソードスキルは発動せずに、レッドゾーンにまで追い込んだ狼のHPを削りきる。それから即座にソードスキルを発動させ、もう一匹を貫いた。
「せいっ」
狼を貫いた槍を頭上に掲げる。宙で静止した狼はやがてポリゴンとなり爆散し、破砕片がきらきらと降り注いだ。
「わっ、かっこいい」
決まった。チャーリーが賞賛の声を上げた。それに満足した瞬間、とてつもない羞恥が襲った。何をやっているのだ、俺は。フルフェイスの兜が無性に欲しくなった。
「顔、赤っ」
「SAOは感情エフェクトが過剰なんだってさ。きっとそれのせいだな」
「恥ずかしかったんだ」
その言葉に反応せず、アイテム欄から回復ポーションの小瓶を取り出す。物珍しそうな顔をしているチャーリーを横目に、栓を開け中の半透明の液体を一気に呷る。味はスポーツドリンクに近い。
「どんな味?」
「自分で確かめろ」
「意地悪だ」
「どうせ、今後嫌と言う程飲むことになるんだろうさ」
体力の回復は緩慢だった。ポーション系はすべからく時間経過による回復らしい。
「チャーリー。よかったら、後で街まで行かないか? アイテムの補充をしたい」
「いいよ。お金が貯まったらだね。このゲームじゃコルって言うんだっけ」
「さっきみたいにモンスター狩ってればそれなりに貯まるだろう。防具とかも揃えたいな」
「ボクは何を買おう? 楽しみだな」
連携は、最初こそぎこちなかったものの段々と形になってきていた。こちらが引きつけている間にチャーリーが数を減らし、二人で蹴散らす。チャーリーより筋力に振っていたので、多少無茶な戦い方も可能だった。回復ポーションが底をついた頃、街には夕日がかかっていた。はじまりの街の外壁が遠くに見え、かなり離れていた場所で戦っていた事に今更気付く。
「うへえ、帰れるかな」
「死に戻りっていう手もあるけど」
「なにそれ?」
「そのままの意味だ。死ぬと、街の教会とかで復活するんだ。それを移動手段として使う方法だな」
「倒されるのは嫌だなあ」
「SAOでは死んだらペナルティとして経験値が引かれるらしい」
「駄目じゃん」
「お勧めはしないな」
「でも詳しいよね、アイガイオン。アドバイス表示じゃないでしょ、それ?」
アドバイス表示は基本的に、ソードスキルのチャンスなどその状態になったら表示される。まだ実際にデスペナルティを体験したことはないが、これくらいは基本情報だった。
「発売までに、SAOの攻略サイトとか雑誌を毎日見てたからな。βテスト時の情報とかは公開されたものは多分ほとんどチェックしてる」
「うわ、凄いねそれ」
「割と多いと思うぞ、そういう人は」
目にかかる夕焼けが眩しかった。こちらから見るチャーリーは背に夕日がかかる格好で、容姿と相成って完成された絵になっている。自分は、さしずめ従者だろう。そんな談笑をしながら街を目指していた。おそらく、自分たちが知っている遊びと言うのはそこまでだったのだ。
「ねえ、アイガイオン。友達にならない?」
「いいぞ。フレンド登録だな」
「そうじゃなくてさ、本当の友達。なれると思うんだ、ボクたち」
「……ふうん?」
「ね、いいでしょ?」
「まあ、フレンド登録だとまだ線引いてる感じなのかな。友達と言うならもうなってると思う」
「なってる?」
「俺は、友達というのは作るじゃなくて、なってるものだと思うんだ。作るとか、なろうと言われたからなるって聞くと、機械的に聞こえちゃってな。だから、俺たちはもう友達になってるって言いたい」
「なってる……か。確かにそうだね。うんっ、なんかいい感じ」
「ほら、申請出しといたぞ」
「また顔赤いよ?」
「気にしないでくれ。今は変なスイッチ入っちゃってる」
「あははっ」
チャーリーが表示されたウインドウを押し、チャーリーとフレンドになりました、という文字が浮かんだ時だった。鐘が鳴った。あそこでしか、鐘は見ていない。始まりの街の広場の時計台を咄嗟に思い出した。そして青白い光に包まれる。ゲームが遊びだったのはそこまでだ。