神●川の一画、海の見える街としてくらいしか評価することもない地方都市。海鳴市。
強いて挙げるなら、其処に住む『住人』の方が特徴的だというくらいだろう。
巫女・漫画家・大企業の社長令嬢・歌手・天才少女などを筆頭に、子供の時分でイケメン金髪・銀髪・赤・青・白とカラフルな頭髪でありながら平然と一クラスに収まっている小学生集団。無駄に対人スキルの高い戦闘民族一家に、技術水準が二十年近く先行していそうな一族の『党首』だという女子大生。
これらのさらりと挙げただけでも一癖も二癖もありそうなもの達が、平然とただの町民として収まっている。それが海鳴市である。
ちなみに、隣の市に移ってみれば一人暮らしをしている車椅子小学生女子という、隣家は何をやっているのかと問い詰めたくなるような現状に晒されている女児がいるらしいのだが、今は割愛としておく。
そんな海鳴市のもう一つの評価点である『海が見える』公園に、一人の少女がいた。
名を、『高町なのは』。
ツーサイドアップにした髪が歩くたびにぴょこぴょこと揺れる、一見すればどこにでも居そうな小学生女児だ。
しかし実はこの少女、この町ではそれなりに有名。
その理由の一つが、彼女の両親の経営する喫茶店『翠屋』。特にそこのシュークリームは絶品で、通い詰める女性客が店の手伝いをする彼女の姿をよく見かけるために、というのが一つ。
もう一つは――、
「「「「「なのはっ」」」」」
「――うわぁ……」
カラフルな小学生に群がられているという、逆ハーレムを形成している。ということも、理由の一つとして見られていると思われる。
もっとも、彼女自身はその逆ハーに辟易しているようだが。
「奇遇だな、なのは」
「今から帰りか?」
「今、翠屋へ行こうと思っていたんだ」
「別に、お前を追いかけてきたわけじゃないからな」
「『やあなのはちゃん』『元気かい?』」
一部微妙なキャラもいるようであるが。
一見すれば選り取り見取りなイケメン集団を、一先ずは一手に集めているように見える彼女は、ちょっと大人のお姉さん方からは微笑ましい視線で。同年代の女子からは「羨ましい」やら「大変そう」やら「ぐぬぬ」とか、様々に意見と羨望を集める日々。
なのはのらいふはもうぜろなの。と、少年らに対しては恋愛感情を覚える以前の問題で、彼女は思わず項垂れる日々。
恋より友情が欲しい、と何処か明後日の方向へと志向がシフトしかけている小学三年生。それが『高町なのは』であった。
「今日は一人でいたかったの……
あんまりしつこいなら御神の技で鎧袖一触なの」
ちなみにこの少女、モテ過ぎて危機感を覚えた父親によって戦闘民族的に無駄なレベルアップを果たしている。
大多数の女児との『普通の友情』が育まれていないのは、十中八九『それ』で派生したジャイ●ン的な要素が原因なのかもしれない。
「ま、まあまあ」
「今日は何か特別な用事でもあるのか?」
「そういう武力制圧はもうやめようよ……」
「別に、殴られたいわけじゃないからな」
「『なのはちゃん』『パンツみせてくれる?』」
最後二人、自重しろ。と言いたげな瞳で『全員』を見据えるなのは。
絶対零度の眼差しがフォースブリザードのように皆のライフをガリガリ削る。
「今日は大切な日なの。
なかなか来れなかったから、久しぶりの逢瀬なの。
邪魔したらプチってするの」
「「「「「『わかりました』……」」」」」
「本当にわかってるの?」
疑念の眼差しは消えない。
が、いつまでも構っていられない、と云わんばかりに、なのはは海へと視線を変えた。
思い起こすのは小学生に上がってからの日々。
女子の友情は特定一部を除いて中々育まれず、どこまでもついてくる五人組のお陰で普通の学生として生活するという常識すら、彼女には未だ備わっていない。
そんなときに遇えた大切なトモダチ。
それが、この海には眠っているのだ。
「………………」
寄せては返す、波の音だけが彼女を包む。
こういうときばかりは、五人も空気を読む。というか、三年弱ついて回って最低ラインだけは踏み込んでこないからこそ苛立ちもややある。というのがなのはの意見なのだが、まあ今はいい。
それ以上に大切なものがここにある。
感極まって、なのはは思わず声を上げた。
「――っ! このはーーーーーっ!!!」
「キューーーッ!!!」
「「「「「は?」」」」」
どっぱあああああああん、と海から跳び出して来たのは、白と黒のパンダカラーに彩られた丸みを帯びたスペシャルフォルム。体長3m弱はありそうな大型海洋生物。英名を『Killer Whale』。学名を『Orcinus Orca』。
要するにシャチであった。
「このはっ!」
「キュッ!」
「「「「「いやいやいやいや、おかしいおかしい」」」」」
ちょっとうるさい後ろの声は無視し、跳び出して公園のタイルの上へと上ってきたそいつに近寄る少女。
何気に極圏の氷河では氷上のアザラシなんかを追いかけることもあるので、脚も無いのに意外に器用な生態だったりする。
大きさの縮尺が奇妙で、遠近法を使っているのかと錯覚しそうな巨体のそれに、普通ならば恐怖を覚えるはずの少女は、実に嬉しそうに懐から取り出した包みを、『彼』に差し出した。
「このは、今日はクッキーを焼いてみたよ
食べてくれる?」
「キュー」
手作り、だと……? と戦慄を覚えるも、こういう場面では思わず及び腰になってしまう少年ら。
というか、人の食い物をシャチにあげても良いのかというツッコミは誰からも入らない。
それを平然と貪るシャチにもまた、お前それでいいのか、と天の声が呟いた気もする。
「おいしい?」
「キュー」
意思疎通ができているのか、なのはの言葉に一々鳴く海洋生物。
なんというか、海鳴市は今日も平和です。
~オリ主5人
上から順に赤・金・青・銀・白
基本系・オレ様系・ヤレヤレ系・ツンデレ系・這い寄る系
残る部分の各自詳しいキャラ設定は任せた!
~主人公(鯱)
漢字で書くと髭の喰種みたいだな
ちなみに普通のシャチは5.8~6.7m、最大では9.8m10tに及ぶと言う
実は半分ほどの大きさ。詳しくは次回
うん。平和だな(アルカイックに嗤い乍ら
此処までが既出版。改訂しましたが
次話が未発表作です