真犯人として捕まり、刑務所から釈放されたが、職を失ったあの刑事の心境が一人の青年との関わりで変わっていく。
ねぇ、真実って何?
この作品は、P4G(ペルソナ4 ザ・ゴールデン)の以下の項目のネタバレが出ます。ご注意ください。
・敵の名前(ボス二匹)
・真ENDルートのお話
・戦闘中の流れ
・足立の心情設定
・セリフ
また、このお話は真ENDルート後、何年か経った後という設定になっています。つまり、妄想いっぱいです。
そんなもの見たくないわ!って人はこっそりと戻ってください。
※5/15 20:24 一部内容、タイトル修正しました。
※作者が時々、行段落を直しています。そのため、前回観覧してくださった方にとっては、違和感を持つ可能性があります。
※指摘してくださった部分を訂正いたしました。
よろしければ下へお進みください。
あの事件が起きてどれくらい経過したのだろうか…。
悠君達がTVの中まで僕を追ってきて、戦いに挑んで…気づいたらジュネスの家電売り場にいて…。
警察は僕を捕らえに来たけど、証拠不十分と言っていた。確かに、あんな証言をしたところで信じてくれる人はいないだろう。
悠君宛に出した手紙を、悠君は読んでくれたかな。密かに返事を待ってるけど、まだ一通も来ていない。
いや、望んでいても仕方ない事だけど、せめて元気かどうかだけでもいいから知りたいよ。
稲羽警察署に飛ばされて、田舎で退屈な毎日を過ごすかと思っていたけど、堂島さんに会ってからは毎日楽しい日々だったなぁ。
厳しい人だったけど、たまに僕を家に招いてくれたりご飯に誘ってくれたりして…本当に嬉しかった。
そういや、堂島さんが酔っていた時は、僕が堂島さんの家まで連れて行って、菜々子ちゃんに布団出してほしいと言った日もあったっけ。あの時の堂島さん、すごく酔っ払っていたなぁ。
お寿司のウニを取ったら、堂島さんに
「おい足立、それ一つしかないじゃないか。」
って言われた日もあった。
手品を見せた日もあった。
菜々子ちゃん、すっごく驚いていたなあ。
今となっては懐かしい思い出ばかり。
堂島さんと菜々子ちゃん、二人とも元気かな。あの家族とは多く関わっていたから、気がかりで仕方ないや。
しかし、警察官をクビにされてフラフラしている日々。
今は釈放されて自由の身になったけど、何もやる気が起きない。何も身に入らない。
ねえ、悠君。堂島さん。菜々子ちゃん。
こんな僕に生きている意味はあるのかな。
苦しくて苦しくて、でも涙は出ないんだ。
これから先どうすればいいんだろう…。
ふと、玄関先から音がした。
僕はぎこちない足で少しずつ玄関に向かう。ドアを開けてみた。
ーー誰もいなかった。
外は暗かったけど、月がぼんやり顔を出していたことがあって、多少ではあるが周りを見渡す事は出来る。
ポストの中に何か入っている事に気がついた。カタンと蓋を開けて中を見てみる。
一通の封筒。
足立透様 と綺麗な文字で僕の名前が書いてあった。裏を見ると、宛名の方には 鳴上悠 と書かれている。
手紙の出し主が分かった途端、緊張感のようなものが走った。期待も不安もあったから。恐る恐る中を見ると…一通の手紙が入っている。
ー 足立さんへ お元気ですか?
叔父さんから、足立さんが釈放されたと聞いてこの手紙を書いています。急で申し訳ございませんが、今から鮫川の河原に来ていただく事は可能ですか?そこで今まで体験した事を…真実を教えましょう。久しぶりに足立さんの顔を見たい事もありますし…。お待ちしています。 鳴上 悠 ー
ハハッ…。相変わらずだなあ。いつも唐突だなあ。
でも、する事もないし、僕も悠君の事を知りたいし行こうかな。
コートを取りに部屋に戻って、悠君からの手紙を静かに机の上に置いて、外に出た。一体どんな真実を教えてくれるのか、気が気でない。
少し肌寒い。風が頬を撫でる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
鮫川に着いて石階段を降りると…いた。
外見は多少変わってはいるけど、雰囲気で分かる。
あの悠君だ。コートを着ていて、鞄を持っている。
「悠君」
少し弱々しく声を掛ける。
「足立さんですね。」
そう言ってこちらに振り向く。
「足立さん、来てくれたんですね。昔も今も変わりはないようですね。」
彼はそう言ってはにかんだ。あぁ、どこかで見たなぁ、この顔を。何故かとても懐かしく感じる。
「ここで立ち話もあれだから、そこの石の階段に座って話をしないかい?」
「いいですね。そうしましょう。」
僕と悠君が共にそこに腰掛ける。
「しかし君から手紙が来るとは珍しいね。で、僕にどんな真実を教えてくれるの?」
そう質問して僕から話を持ちかける。
「結論から言うと、あのマヨナカテレビを創り出したやつが、事件の元凶でした。」
鋭く、けれど静かに悠君はそう答えた。
「僕があの場で倒れた後、何かあったのかい?」
「足立さんが倒れた後、足立さんの中から“アメノサギリ”というのが現れました。」
「アメノ…サギリ?」
「簡単に言うと、街の霧を操っていたやつです。」
「それが僕の中に潜んでいた。というのかい?なんだか信じられない話だなあ。」
「俺も嘘だと言いたいです。しかし『真実』なのです。」
『真実』という言葉にズキッと僕の胸に刺さる。
「じゃあ、そのサギリってやつが元凶だったのかい?」
「いいえ。別にいます。」
「じゃあ誰が元凶だというんだい?」
「イザナミという女の人です。彼女が、俺や足立さんに力を授けたのです。」
「力って…ペルソナを使う力のこと?」
「そうです。どうやら足立さんと対面した事があるようですが…。」
僕と会った事がある…?思い出せない。
「そうなんだ…。記憶に残っていないや。」
「あれから結構時間が経ってますしね。無理もありませんよ。」
知らない間にそんな事が起きていたなんて信じられないけど…でも、悠君の目は嘘を言っていない。僕から見ても分かる。
「実はイザナミと戦っている時、一度イザナミの手によって地に引きずられて堕ちてしまいました。」
「…は?」
「引きずられて意識を手放しそうになった時…声が聞こえてきたのです。叔父さんに菜々子…仲間や友達…そして、足立さんの声も聞こえてきたのです。」
「ぼ、僕の声?」
なぜそこで僕が出てきたんだ。よく分からない…。
「声を聞いて思ったのです。確かに足立さんにあれだけ言っておいて、自分はあっさり眠るなんて事は出来ませんからね。立てよって言われた時、まだ立つことは出来るんだって。そう思ったのです。」
ーーそれは、僕が君の役に立てたっていうことかい?悠君。
「それからは相手の猛攻撃にも耐える事が出来ました。どれだけ攻撃されても、歯を食いしばって粘る事が出来て…そして、イザナミを倒す事が出来たのです。」
予想を遥かに超えていた。
元凶が僕や悠君に力を与えて、そしてどんな展開になるのかを静観していた。その元凶を悠君が自らの手で倒したということ…?
「…凄いね。すごい立派だね。君には頭が上がらないや。」
「そんな事ありませんよ。皆との関わりがあって今の俺がいるんですから。」
彼はそう言って少し照れたような表情を見せた。
「…ねえ、悠君。」
彼に問いかけるように話す。
「どうかしましたか?」
彼は僕の顔をジッと見つめている。
「僕の素直な気持ち、話していいかな?」
「構いませんよ。」
ありがとう、とお礼を言ってから話し始めた。
「僕さ、いつも君の事が羨ましかった。堂島さんや菜々子ちゃん、そしてお友達に愛されてて…君の良いところが沢山あって…正直妬んだ事もあった。君と堂島さんと菜々子ちゃんの三人で歩いている時、僕は後ろでその様子を見ていた。あの時、僕の大切な居場所を取られてしまったような感じがして…。なんだかとても悔しかった。悲しかった…。」
…何故か声が震えてしまっていた。全く僕らしくない。
「…そうだったんですね。」
彼はそう呟いた。
僕は彼が何を考えているか分からない。
「足立さんがTVの中に逃げ込んだ後、追いかけながらこう思っていました。足立さん、そうとう何かに対して追い詰められて狂ってしまったのでは…って。ずっと考えていて。今、こうして答えが聞けて、やっと分かりました。素直な気持ちを話してくださり感謝しています。ありがとうございます。」
僕の事を思っていてくれた…?
「そうなの?僕の事を考えているなんて君らしくないけど。」
「足立さんは加害者ではありますが被害者でもありますし。そこまでに至るまでには必ず何か原因がないと起きません。何も知らなかった俺がそこまで足立さんを追い込ませていたんだって…今まですいませんでした。」
突然の事に慌てふためく。
「ええ!?な、なんで悠君が謝るの!?悠君は悪くないじゃん!僕が勝手に思い込んだのがいけなかったのだから…。」
「こうして足立さんと話す時まで、心配していました。手紙も、足立さんが来てくれなかったらどうしようって思っていました。」
何故かは分からないけど、胸の内から何かがこみ上げてきそうな感じがしていた。
「そう…なんだ。心配してくれて…ありがとう。悠君。」
彼は何も言わず、ただ僕を見ていた。彼の顔は少し穏やかに見えた。
「そうだ、堂島さんや菜々子ちゃんは元気かい?堂島さんとは会うけど、菜々子ちゃんとはあれ以来会っていないから…。」
「二人とも元気です。叔父さんは相変わらず元気に仕事をしていますし、菜々子も大きくなって…ピアノを習っているんですよ。」
二人とも幸せになっていたんだな。
心が少し軽くなった。
「そうなんだね。ありがとう。教えてくれて。」
「お礼なんていりませんよ。」
彼は微笑んでいた。
「あ。足立さん。やっと笑いましたね。」
「え?嘘?」
僕は自分も知らないうちに笑っていたようだ。
「足立さんには、笑顔が似合いますよ。」
「そ、そうかな…そう思った事ないんだけど…。」
「俺がそう言うんだから間違いありませんよ。」
「どんな根拠で言ってるのそれ…。やっぱり悠君は、悠君だな。」
呆れ口調でそう話す。彼は何故か笑っていた。
「今のも足立さんらしいですよ。その呆れ口調。」
「全く…まるで君の手のひらに転がされているようだよ。ハァ…。ていうより、君は笑いすぎ!」
悠君はまだ笑っている。
「す、すいません。でも少しの間、あの頃に…戻ったなって実感していまして。」
「はいはい、そうですか。」
クシャクシャと悠君の頭を撫でる。
「足立さん、意外に手が大きいんですね。」
「どういう意味だよ!」
僕と悠君は互いに笑いあった。
この瞬間が愛しく思えてしまったのは何故だろうか。
「あ、足立さん。足立さんにプレゼント持ってきました。」
「プレゼント?」
悠君がガサゴソと鞄の中を漁る。
「どうぞ。」
僕に少し小さな箱を手渡してきた。
「何これ?開けていいの?」
「いいですよ。」
悠君に了承を得て、箱を開ける。
「…コップ?」
箱の中には、黄緑色のコップが入っていた。
「マグカップです。」
「へぇー。ところで何で黄緑色?」
「足立さんがキャベツ大好きだからです。」
「…随分あっさりした理由だね。どうしてこのマグカップを僕に?」
「俺が足立さんを家族みたいな人だと思っているからです。」
「…それは僕の素直な気持ちを聞いたからだろ?」
「それもありますが、叔父さんの事を本当に大切に思っているんだなって感じまして。」
…疑問に思った。
「え?僕そんな素振り見せた事あったっけ?」
「警察署に叔父さんに用があって訪れていたんです。その時警察の人の話し声が偶然耳に入りまして。」
「…?」
「足立は、足立自身が悪く言われてもニコニコ笑っているのに、堂島さんの事を悪く言うと一瞬だけ怒った顔をするよな。って話しているのを聞きまして。」
「そうなんだ…今まで知らなかった。」
無意識に顔に出ていたことは知らなかった。でも周りはそれを見ていたんだな。僕の事、まだ覚えていてくれていたんだ…。
「僕も足立さんの言葉を聞いて気付いたのです。俺達の事を悪く言っても、叔父さんの事は悪く言わなかった。信じる心がなければ、そんな事は出来ませんから。」
「堂島さんは僕の上司だし…。今までお世話になっているから…。」
俯きながら呟く。
悠君は嬉しそうに話す。
「だから、とても嬉しくなって…家族が使っているマグカップと同じ物を足立さんにプレゼントしたのです。」
僕はマグカップを箱に戻し、体を動かしても当たらないところに箱を置いた。
「ありがとう。でも僕にプレゼントなんていいのかい?僕は価値がない人間だよ?」
パァン!
不意に悠君に頬を叩かれる。
「な、何するの!いきなり叩くなんて!」
「価値がないなんて言わないでください!」
悠君は怒った顔でこちらを見つめる。
「価値がない人なんていません。少なくとも俺には足立さんが必要なのです。」
また正義が発動したのか。
そう思った時にはもう口から言葉が出ていた。
「そんな綺麗事はもううんざりなんだよ!いっぱい聞いてきたんだ!うざいんだよ!」
「ならばもっと本音をぶつけてください!足立さんの本当の言葉を!」
「言われなくてもぶつけてやるさ!心と体にたくさん刻みつけてやる!」
「受け止めて見せる!全部!」
僕達はお互い立って激しくぶつかり合った。
長い間お互い殴り合って睨み合った。
本音もたくさんぶつけ合った。
「君の事を心配してたのは事実だ!自由になってまず先に思ったのは君と堂島さんと菜々子ちゃんの事だ!」
「前より素直になってますね足立さん!今の言葉は嬉しかったです!」
「素直だねって言われても嬉しくないよ!でも迷っているのも事実だ!本当に!こんな僕に未来があるのかどうかってね!」
「未来があるから俺達は足立さんを見放さなかったのですよ!」
また派手に大きなパンチを顔に受けた。
その衝動で後ろに飛ぶ。殴られた部分がヒリヒリして痛い。悠君はジッと僕を見つめたまま話す。
「あそこで置き去りにする事も可能でした。…しかし放っておく事は出来ませんでした。足立さんには随分お世話になりましたし…。生きてほしいと願っていましたから。足立さんにお礼を言いたくても会えなくて、それが心残りで仕方がなかった。だから今言います。」
待って。言わないで。
悠君がしゃがんで僕の顔を覗き込む。
「足立さん、ありがとうございます。大切な事を学ばせてくれて。貴方に会えて本当に良かった。」
今まで出すことが出来なかった感情が一気に溢れ出てきた。
「バーカ…ヴァーカ!君は本当にバカだな!」
倒れたまま涙を零した。どんなに悲しくても出なかったのに。
こんなに泣いたのはいつからだろう。
「俺はバカですよ。何分かりきっている事を。ここにいますから。泣きたい分だけ泣いてください。」
「素直に泣けるわけないだろ。君の前で…二人とも大人なのに…僕がすごく情けないよ。ハァ…。」
「泣いたらその分、心がスッキリしますよ。」
「あぁ、そう…。うぅ…。」
あの後、僕は悠君の言う通りに泣いた。思いっきり泣いた。止めてたくても止まらなかった。悔しかったけど、泣いた後は少しスッキリした。
僕は服についた汚れを落としながら悠君の話を聞いていた。
「俺が贈ったマグカップは、家族が使っているのと同じ物です。ですから、俺の心の中での足立さんは、家族みたいな存在なんですよ。」
「それさっきも聞いた。…悠君の言う事、信じていいんだよね?もう一度だけ信じるよ?」
「はい、もう逃げたりしません。しっかり向き合って一緒に歩んで行きましょう。ね、足立さん。」
無言のままコクンと頷き、マグカップが入った箱を大切に持った。僕の事をそんな風に思ってくれる人もいたんだ。
世の中クソだなって思っていたけど、もう少しだけ頑張って生きてみようかな。
「一緒に帰りましょう。足立さん。家まで送ります。」
河原を後にして、僕と悠君は肌寒い道を二人で歩いた。月が僕達を明るく優しく照らしてくれた。歩いている間、僕と悠君は何も話さなかった。
けれど、不思議と居心地は良かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
悠君と家の前で別れた後、静かにドアを開けて電気を付ける。
「ただいま。」
誰も答えない。誰もいないから返事があるはずもない。
「おう、おかえり。」
「おかえりなさい!」
耳に残るあの声。僕に聞こえたその声。そこにいる事なんてない。いないはずなのに。
なんだか嬉しくなって少し微笑む。
悠君から貰った黄緑色のマグカップにコーヒーを入れて、静かな夜を過ごす。なんだか今日は、ぐっすり眠る事が出来そうだ。
今まで得る事がなかった、言葉では言い表せない大切な何かを掴み得た気がする。
「ありがとう、悠君。真実を知ることも悪くはないね。…君の事、信じてみる事にするよ。」
僕は一人、部屋の中で小さく呟いた。
心も体もほのかに温かくなったのを感じた。
悠君との絆がより深まった気がした……。
初めまして。作者のにゃ助です。
初めて小説を書いて投稿してみましたが、まだまだだなって思うところが多々あります。
足立さんを主人公に書いてみました。キャラ崩壊しているところがありましたら、大変申し訳ございません。
皆様の作品を読んで参考にして、良いところをたくさん取り込んで、次に繋げていけたらなと心掛けています。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。