気がつくと知らない場所にいた。周囲には何もなく、ただ白っぽい空間が無限に広がっていた。どうしてこんなところにと考えようとしたところでどこからともなく声が聞こえてきた。
「来ましたか、×××」
女性らしい穏やかな声に目を向ければ、輪郭のはっきりとしない人型の何かが存在していた。それに違和感を感じることもなくとりあえず此処がどこかを聞こうとして声が出ないことに気がついた。そのことに気がついたのか何なのか目の前の何かはまた話し出す。
「あなたには今肉体というものが存在しません。そのため声を出したり自由に動くことができません。ある程度の思考はできるはずですのでひとまず私の話に耳を傾けてください」
仕方がないので相手の言う通りにおとなしく話を聞こう。おそらく今の状況とかも教えてくれるだろうし。
「とりあえずは私が誰かを話しましょうか。簡潔にいうと私は神です。といってもあなた方の信仰するどの神にも当てはまりませんが」
そういう神様はどこか自嘲めいた雰囲気を漂わせている。神様にもいろいろあるようだ。
「さて、ではあなたが今一番聞きたいであろう事に答えましょう。あなたが此処にいるのはあなたが現世で死を迎えたためです。そして、その死を与えたのが私になります。端的にいうと私があなたを殺しました」
なんとなく死んでしまったのは感覚でわかってはいたが、まさか神様自ら人一人殺すとは...なにか事情でもあったのかね?
「わかっていないようですから理由を説明します。あなたは前世不幸でした。それも、普段人の生に無関心な神が同情するくらいに。あなたは理解していなかったでしょうが、あなたには力があります。それも元の世界では不幸しか呼ばないような強い力を。私は世界にその力が及ばないようにあなたを犠牲にしたのです。ごめんなさい。私達の所為であなたには辛い思いをさせてしまう。許してほしいとはいわないけれど、どうか理解してほしい」
正直、いきなり俺に力があったなんて説明されても実感はわかない。でもこの神様が真剣なことは何となくわかる。だからって訳でもないが自分が死んだということは受け入れようと思った。俺が死んだことを受け入れると見計らった様に神様が話を続けた。
「これで簡単にですがあなたの死の理由を説明しました。そして今から話すのはあなたをここに呼んだ理由です。先にも説明したようにあなたは私たち神の都合で理不尽に死を迎えました。しかし、それはあくまでも私たちの都合です。ですのであなたには新たな生を享受できる機会を与えます」
どうやら死んでハイお終いという訳ではないらしい。それはありがたいが力がどうのって話を聞く限りじゃ奇天烈な世界なんだろう。元々はただの人間のつもりで生きてきた俺としてはあんまり気乗りしない。まあ、生まれ直せるのなら遠慮なくそうしてもらいますがね。
「詳しくはお話できませんがその世界にはあなたのように強大な力を持っているものが多く存在しています。きっと前の世界のようにはならないでしょう」
前の世界といわれてもその辺も曖昧なんだよなあ。いったい何があったのやら。
「さて、あなたも肯定的なようですし、今からあなたを転生させます。転生の前に一つ、私はあなたを転生させることが出来ますが、それだけです。いつの時代の誰の子として生まれるかはわかりません。お気をつけください。それでは、力を抜いて、そのまま身をゆだねてください」
神様がそう言うと自身に何かの力が加わったのが理解できた。この場所から徐々に消えていくような感覚と同時に意識が薄くなっていく。そのまま身をゆだねていると神様がまた話し出した。
「私にできることはもうありませんが、最後にひとつだけ。強くなりなさい。そしてそのための努力をしなさい。そうすればあなたはその世界で大切なものを見つけることができるでしょう」
その最後の言葉を聞き終えて、俺は新たな世界に転生した。