では、前回のあらすじをどうぞ。
~前回のあらすじ~
啓は“赤い闘気”を纏い、転龍会会長を倒すことに成功する。しかし、そこへ再び現れた黒装束の人物に彼がこれぐらいで倒されるはずがないと言い放つ。
そして、その言葉通りに現れたのは“本物の転龍会会長”であった。実は啓と最初に逢っていたのは会長の作り出した分身体であり、能力も使えないほどであった。
啓は会長の言葉と先ほどの苛立ちを感じて、一気に桐生錐釘で勝負を掛けるが、本物の会長には最強の技がびくともしなかった。
更には、会長の技を受けてしまうも何とか持ちこたえるが、ヤミヤミの実の転生者であることを明かし、啓へ自身の能力の技で放つが、そこへ謎の金色の男が啓を助けるという予期せぬ事態に。
かくして、様々な謎を残して、啓を襲った転龍会会長は金色の男と何処かへ消え、そして黒装束の人物も消えるのであった・・・。
2015.3.28土 AM12:00 ~西木野病院”啓の病室”~
空は明るく、窓の傍に置かれた花は綺麗に咲いていた。天気は快晴、ことりは囀り暖かな春の一日であった。
啓「9994・・・9995・・・9996。」ググッ…ググッ…。
本来なら病気や怪我をした病人や怪我人が身体を休め、治療に専念する場所である”病院”で何故か”指一本”で身体を支え、”倒立腕立て”ならぬ”倒立指立て”をする青年…”桐生啓”がいた。
啓「9997・・・9998・・・9999・・・!!」
啓「10000!!」
そして、そのまま立ち上がる啓。
啓「…ふぅ。」
深呼吸し、用意してくれた水を飲みほす。
啓「はぁ~。」
息を吐く啓。その身体には”今日の深夜”で出来た傷が包帯で巻かれていた。
啓「・・・。」
啓は巻かれた包帯に触れて…。
啓「・・・ちっ。」
拳を握りしめると、ベッドに腰かける。
啓の表情は窓の外の天気と違って、その表情は曇っていた…。
啓「・・・・・俺の”記憶”か。」
啓は1人呟いたのだった。
・・・・・・・あの後、啓はにことともに西木野病院に帰ると、病院内で先ほどの出来事で寝ていた真姫と西木野夫妻が起きて、啓の身体に大きな切り傷が出来てそれに驚いた西木野先生はすぐさま処置を施したのだった。
そして、翌日の朝に啓は西木野先生と真姫…それににこを呼んだ。
西木野「桐生君、傷の具合はどうだろうか?」
白衣をきっちり着こなした、いかにも先生といった風貌の男性…”西木野 渉”がそう、呼び掛ける。
西木野病院院長にして、μ’s”西木野 真姫”の実父 ”西木野 渉”ドン!!
啓「はい、おかげ様で何とか…。」
啓は西木野先生の問いに答える。
真姫「全く、昨日のライブで闘ったばかりで怪我して”一日”も経ってないのに、また怪我するなんて…意味わからないわよ。」
娘の真姫は髪をクルクルしながら、言った。
啓「すまないな。」
啓は頭を下げる。
啓は本来、安静に休まなければいけないのだ。
真姫「いいえ、啓さんが謝る必要ないですよ。悪いのは襲ってきた人達よ。」
真姫「…現に啓さんがいなかったら、にこちゃんが捕まるところだったから…。」
にこの方へ視線を向ける。
しかし、真姫に視線を向いているとはいえ、にこは心あらずという感じであった。
にこ「・・・・・・・。」
真姫「にこちゃん?」
にこ「・・・!?‥な、何?」
真姫「大丈夫?」
にこ「う、うん。」
にこは返事をするも何処か元気がない。
それをみた啓は思う。
啓(無理もないか。…これで未遂とはいえ、攫われたのは2度目だからな…。)
そう、既ににこはこれで攫われそうになったのは2度目である。普通の女の子であれば、トラウマになりかねないことだ。
啓「…にこ、調子が悪いなら休んでおいたほうがいいぞ。」
にこ「だ、大丈夫よ。」
にこ「そ、それに…。」
啓の方へ視線を向ける。
啓「…何だ?」
にこ「一人で休むより、啓の傍で居たほうが落ち着くの…。」
にこは少し、赤面しながら言う。
啓「…そうか。」
啓はにこの傍に座る。
にこ「…!?」
啓「これで落ち着くか…。」
にこ「う、うん。」
にこはより一層、赤面しながら頷く。
それを見ていた西木野親子は・・・。
西木野「真姫…ひょっとして桐生君と矢澤さんは‥‥?」ボソッ
真姫「そうね、パパ。心配した私が杞憂だったわ。」
西木野「そうか…。」
西木野先生はそんな2人を微笑ましく呟く。
真姫(ふふっ、もうにこちゃんには心配してくれている”男の人”が傍にいる。)
真姫(ちょっと‥‥羨ましいな。)
啓「さてと…西木野先生。良いですか?」西木野「そうだな…始めようかね。」
啓「単刀直入に言います。」
啓は次の言葉を言い放った。
啓「俺の”記憶”はどうなっているんですか?」
西木野「そうだな…桐生君。」
西木野「君の場合は、”エピソード記憶”が喪失している。」
啓「”エピソード記憶”?…つまりは俺の思い出という事ですか?」
西木野「そうだ、記憶は主に短期記憶と長期記憶で分けられていて、長期記憶の分類としてエピソード記憶がある。」
西木野「君の話を聞いて、私は画像診断でエピソード記憶の責任領域である海馬、大脳皮質などを見たが…異常は見られなかった。」
西木野「記憶喪失には頭部への外傷やトラウマなどで、記憶が喪失してしまうことがあるが…。」
西木野「桐生君には、それらが医学的に見られないのだ。つまりは、頭部にダメージがないにも関わらずな。」
真姫「けど、パパ。啓さんは自分の名前や総合格闘家であることは覚えていたわ。」
にこ「そ、そうです。啓は最初、私に会った時、自己紹介してました。」
西木野「うむ…、恐らくは部分的な記憶が喪失しているのだろう。」
西木野「ともかくだ…、記憶喪失の原因がはっきりしない以上は記憶を戻せる治療は出来ないだろう‥‥。」
にこ「そ、そんな‥‥!!」
啓「・・・・。」
西木野「だが、方法があるとしたらだ…。」
真姫「方法が‥‥?」
啓「そこからは俺が言います…。」
啓は立ち上がった。
啓「俺の記憶は完全に喪失したわけじゃない…実は俺の記憶を戻す方法があるんです。」
にこ「”方法”…一体何なのよ‥‥啓。」
啓「簡単だ‥‥転龍会と闘い続ける。」ドン!!
にこ「えっ…!?」
にこは驚き、そして言い放つ。
にこ「ちょっと、待ちなさいよ!!啓!!」
にこ「あんた、今までどんな目に会ったか分かって言ってるの!!」
啓「ああ‥。」
にこ「だったら…!!」
啓「にこ…俺はな。」
にこ「な、何よ。」
啓「”転龍会”のメンバーを俺は知っているかもしれない…。」ドン!!
にこ「えっ…。」
真姫「ほ、本当なの!?‥‥パパ!!」
西木野「ああ、桐生君から聞いた。」
西木野「桐生君のいうμ’sを狙った転龍会の幹部の”馬羅垣”と”麦野”を桐生君はぼんやりだが、会ったことがあるかもしれないとな。」
にこ「‥‥!!??」
啓「つまりだ、俺はその会ったことがあるかもしれない”奴ら”と接触することで思い出そうって訳だ。」
啓「そして、記憶を思い出すには最も大きい刺激…要は”闘う”ってことだ。」
啓「ただ、話してもダメだと俺自身思う、俺の記憶とやらはどうやら相当の刺激がいるんだと…。」
にこ「そ、そんな…!!」
にこも立ち上がった。
にこ「啓…あんたね。死ぬかもしれないのよ!!それだったら、逃げたほうがいいじゃない!!」
啓「・・・・けど、それはあくまで”ついで”だ。」
にこ「えっ…!?」
啓「俺のやることは‥‥!!」
啓「”μ’sを守護する”こと。」ドン!!
にこ「・・・!!」
啓「にこ、お前が俺を心配するのは分かる。・・・けどな、今日の深夜、転龍会会長が直接攫おうとしてきた。」
啓「そして、あの時”金色の男”が居なかったら、俺はお前を助けられなかった。」
真姫(”金色の男”?)
にこ「・・・・。」
啓「だから、俺はもう絶対に負けないように自分を鍛えて闘わないといけないんだ。」
啓「それに奴らはやろうと思えば、いつでも攫えるはずだ。」
にこ「‥‥。」
にこは啓の傍から離れる。
啓「・・・どうした?」
にこ「ちょっと席を外すわ。」
にこは部屋から出ていった。
啓「‥‥。」
真姫「今はそっとしておきましょう‥‥。」
真姫「にこちゃんは啓さんに”遠く”へ行ってほしくないようですね。」
真姫「どんな理由でも、近くにいてほしいじゃないですか…?」
啓「…ああ。」
にこは真姫の言葉を頷いて肯定したのだった‥。
啓「・・・・・記憶、それにμ’sを護るか…。」
どれも大切なことだ。なのににこは何故、ああいう”態度”を取ったのか?
啓(それにしてもだ…。)
あの時、啓は”金色の男”が居なければ、にこを攫われていたのではないかと思った。
そう思うと啓は自分の不甲斐なさに情けなく、悔しく思う。
何としてもこの失態は忘れてはならない。
啓(それにまだある…。)
啓は深夜の事を思い出す。
一つは転龍会会長の事だ。
啓(最初、奴と闘った時は分身体と闘った時、普通の掌底を喰らった。しかし、今度は本物と闘った時は俺は奴の技を受けた…。)
啓(分身の時点で掌底一発で俺を数キロ飛ばせるのに、本物の技を喰らったのに俺は生きている‥‥。)
啓(奴の目的はμ’sの筈だ…だったら、最初の手刀で殺せるはずだ。)
啓(それに奴のヤミヤミの技を繰り出す前に奴は確かに・・・。)
”死んでくれるなよ・・・桐生啓。”
啓(そう、確かにいった。そして奴の俺を攻撃した最後の技…暗術”黒行封印”という技、どう考えても何かを封印する技だろうな。)
そして、二つ目は黒装束…いや、”ハルカ”という女性。
啓(奴は転龍会というのに、まるで俺のことを心配していた素振りをしていた。・・・・でも、奴からは何も感じない。)
啓(何処かで会ったという事なのか・・・?)
そして、最後の三つ目は”金色の男”…。
啓(こいつはもう、何が何だか。何で俺達を助けたんだ…?)
啓(それに…。)
啓はその男から貰ったあの”紙”を貰う。
啓(手紙の様だが…開けてみるか。)
開けてみようとするが・・・。
啓「‥‥んっ?・・・・”開けれねぇ”。」
啓はもう一度開けようとするが、開かない。
啓「…?」
啓は怪訝な顔をして手紙を見つめる。
啓「ダメか…はっ!!」
啓はなんとなく、手紙に覇気を込めた。
すると、どうだろう。手紙の表にある文字が浮かび上がる。
”開けたくば、女神の力を借りよ。”
啓「女神・・・μ’sか?」
啓が呟くと、”コンッコンッ”とドアをノックするのが聞こえる。
にこ「入るわよ。」
入ってきたのはにこだった。
啓「にこか…。」
にこ「啓、西木野先生が言うには啓の退院は少なくとも”三日”は掛かるらしいから安静でいるのを含めてね。」
啓「そうか。」
にこ「それと・・・。」
にこは部屋の外へ一旦出ると…。
啓「?」
にこ「ちょっと、ミスったわね・・。」
にこが出してきたのは・・・。
啓「”ハンバーグ”?」
にこが出してきたのはハンバーグであった。しかし、若干焦げていた。
にこ「ちょっと焦がしちゃったわ…それ、昼ご飯よ。あと、サラダは真姫ちゃんが作ったわ。」
にこはそう言うと、部屋を出ていこうとする。
すると、にこは啓の方へ向くと。
にこ「ああそうそう、退院したその日に、穂乃果たちがあんたの歓迎会をするって言ってたわ。」
にこは今後こそ出ていこうとする。
啓「おい…にこ。」
にこ「ごめんなさい。今はちょっと、答えられないわ…。」
啓「・・・分かった、無理に聞かない。」
にこ「…ありがとう、啓。・・・・ハンバーグ美味しくなかったら、ごめんね。」
にこは出ていった。
啓「‥‥。」
啓はにこが出ていくのを見届けると、ハンバーグに手を伸ばす。
”ガツッ…パクッ…パクッ。”
啓「・・・ちょっと、苦いぞ・・にこ。」
そう言いつつも、啓は用意したハンバーグとサラダを食べたのだった。
啓「このハンバーグ…もっと喰いたいな…。」
啓は呟くのだった…。
啓の病室から出たにこは実はまだドアの傍にいた…。
”このハンバーグ…もっと喰いたいな…。”
にこ「‥‥。」
にこはその言葉を聞くと、その場を後にした。
・・・・・三日後。2015.3.31火曜日、”龍”は退院する。だが、ここから退院するという事は啓は、今後もμ’sを護るために闘うという事だ。
啓の新たな生活が始まろうとしていた。続く…。
ここから退院するという事は今後もμ’sを護るために闘うという決意を表している。
これから、啓を待ち受けるのはどう転んでも困難な道のりがあるだろう。それでも、漢は前に進む・・・!!
次回、第34話 女神達の歓迎。次回も乞うご期待