転生の龍が如く 〜女神の守護者~   作:kantarosu

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μ’sの曲には、それは僕たちの奇跡という第二OPがあるが”僕”では男性の一人称では無いかと思う。これはなにか‥男性目線なのか? ガールなのに僕。‥僕っ娘? けど、μ’sで一人称が僕って使うのは居ないと思うけど…。まさか…幻のテンガール!? ※違います、黒〇のバスケではありません。 では、前回のあらすじをどうぞ。 

~前回のあらすじ~
穂むらの前で、穂乃果を襲いかかる金獅子会のtyrantに立ちふさがったのは、転龍会直系麦野一家の組長…”常夏のダン”であった。
ダンは穂乃果に噛みつかれようが、それを笑い飛ばすと高坂一家を逃がして…以前交戦したtyrantと闘うべくサシの勝負を挑んだ。
‥だが、tyrantが麦野の猛攻に一歩も動かず、触手群だけで拘束してしまう程の実力を見せつけるのであった。
更には、逃げていた高坂一家に緑のクリーチャー…hunterが襲いかかろうとしていた。

そこへ、穂乃果の窮地を救ったのは見回りに来ていた桐生啓であった。その後、そのhunterを倒し、穂乃果から麦野が自分を助けたと話し…他の一年生メンバーである花陽も大剣男から馬羅垣が救ってくれたと話を受ける。

何故、助ける様な真似をするのか…?

μ’sを狙う転龍会の真意を解せぬまま…啓は他の家族と警視庁に移動し、作戦成功の為の最終調整を行うのであった。


第51.5話 ベンチで語る少女の夢。

 同日、某時刻 ~多目的訓練施設”グラウンド”~

 

 警察との救出会議、hunterの撃退を終えた桐生。

 その後…μ’sとその家族を警視庁に呼んだ後、作戦成功の為の”最終調整”を行っていた。

 

 その最終調整を行っていた場所とは、”国防”に関わる人間達が訓練として使っている多目的訓練施設。

 ”キラキラの実の転生者”である対金剛山戦を考えた啓は、待機しているμ’sを見回る間に予め鷲尾達に使わして貰う様に頼んでおいたのだ。

 

 その場所で啓が行っている”最終調整”とはというと…。

 

 

「いつでもいいぜ、柿谷さん。」

 上下半身ともに防具を身に着けた啓が…柿谷に合図を出す。

 

「いいけど…本当にこれで最後だよ、桐生君!!」

 渋々…柿谷は相手に合図を出した。

 

 

 

 柿谷が合図を出したその相手というのが…”クレーンの運転手”であった。

 運転手は既に諦めの境地に達しながらも、与えられた仕事をこなすべく…クレーンを左右に振りだした。

 

 ”ブオオンン…”

 左右に降り始める事で、吊られていた貨物もその挙動に合わせて大きく振られていく。その豪快な様子はさながら、ハンマー投げの選手の様だった。もしくは重戦士が振り回すモーニングスター。

 

 明らかに人間に当たりさえすれば、”即死必然の凶器”を見据えた啓は…両脚に緑の覇気を纏い、迎撃の構えをする。

 

 そうしているうちに、振れは最高潮に達していき…これ以上というところで、運転手はあろうことか‥目標をに合わせる。

 

 

 

 ”ビュオオオンッ!!”

 

 大きく空を切る音が辺りに響く。

 …この音こそ、今まさにクレーンから解き放たれた貨物ならぬ”質量のある凶器”なのだ。

 

 その凶器が今‥啓自身に向かう。

 

 ‥当たれば、重傷どころか即死必死の障害に対し…啓もタイミングを合わせる様に側転し始めた。

 つまり、啓は凶器に自分から当たりにいっている事になるが…。

 

 

 これこそ、啓の”対金剛山戦の鍵”であった。

 

 側転し、加速しているという事は…啓自身の足技に威力を上げる事に他ならない。

 …迫りくる”凶器”に対して、啓は急速に逆立ちの姿勢をとり、凶器は啓の頭上を通った。

 

 と同時に、逆立ちのままで力を込めた啓は…思いっ切り両脚を突き上げた。

 

 

木犀型斬(ブクティエール)シュートッ!!」

 

 自身の身体をバネの様に突き上げられた両脚による蹴撃は、迫り来ていた凶器を逆に上空に押し上げた。

 そして、間髪入れずに青い覇気を纏わせ、空へ追撃に向かっていく。

 

「青脚…一級挽き肉(プルミエール・アッシ)ッ!!」

 青い覇気によって、速度が増しに増した啓は通常の”一級挽き肉”のヒット数を優に超える激しい攻撃を空中の貨物に蹴り叩きこむ。

 かくして、蹴り叩き込まれた貨物は特に蹴り込まれた箇所が蹴りによって削られていき、遠方へ破片が蹴り飛ばされていく。

 

 ”ガシャンッッ!”

 

 正にそれは人間削岩機というべきなのだろう。ものの数秒で人の手に収まらない貨物は只の破片群と化し、グラウンドの一か所に集まるのであった。

 かくして最後の破片を遠方に蹴り飛ばした啓は、そのまま着地すると一呼吸をついた。

 

 

 ”人間削岩機”の現況をじっと見ていた柿谷は恐る恐る啓に近づき、飲料水を渡した。啓は礼を一言添えて、飲料水を飲み込んでいく。

 

「全く、ここまで常識を超える事が出来るんだったら…”色んな仕事”が出来るね、桐生君。 …これを誰かが知ったら世界中の色んな業種の人間が君をスカウトしに来るよ。」

 おおよそ…魔法などといった超然としたものが一切無い…この平凡な世界であれば、啓の力は決して無視できないものだろう。

 

「いや…流石にそんな器用な事は出来ないぜ、柿谷さん。」

 柿谷の言葉に対して、否定の意を表わす啓。

 

「謙遜することないさ…その力を賢く使う事が出来れば…自分に出来る事や助けられる事も広がっていく筈だよ。」

 

「それに現在進行形で、君はμ’sやその家族を手助けようとしていうじゃないか…。」

 

 

「それはとても”立派な力”さ。 誇っていいものだよ。」ドン!!

 柿谷は簡潔に桐生啓のその力を褒めてみせた。

 

 それは強力な力もその使い手によって、多くの人を助ける事が出来ると同時に…多くの命を奪う事が出来るということなのだ。

 啓自身‥今後も強くなっていくこの力を上手く活用しないといけない。これは力ある者の責務といってもいい。

 

 某アメコミ漫画のある人物の言葉を要いれば…。

 

 

 ”大いなる力には大いなる責任がつきまとう”という事だ。

 

(そうだな…確かにこの力を賢く使う事が出来れば、色々出来ていくだろうな。)

 啓が自身の拳を握りしめ、言葉を噛みしめる。

 

 

(…!!)

 その時、自分の拳が血にまみれた錯覚に襲われた。

 あくまで、錯覚である為‥心が動揺する事は無かった。

 

(今の血は…俺の記憶に関係がある事なのか? 俺の前世は一体…?)

 今の錯覚は何故に出たのか…?突発的な現象には今すぐ答えが出てこないが‥失われた記憶に関係する事なのは間違いないだろう。

 

「桐生君…どうしたんだい? 拳を痛めたのか。」

 

「いや、問題ねェ。 ‥‥少し休憩する。」

 

「そうか、痛めてないならいいが、まだ続けるつもりかい?」

 

「ああ。」

 

「けど…休む時間がないんじゃないか?」

 柿谷は腕時計の時間を見る。

 時刻は夜九時を回ったところだった。

 

「大丈夫だ時間はある。」

 

「‥金剛山は明日東京港に来いとは言ったが…”具体的な時間”は指定して来なかった。」

 東京港での交渉は、金剛山の口から日付は指定したが…時間は指定して来なかった。

 その意図は、啓自身に自分のコンディションを見極めさせ、最高の状態で闘わせる腹積もりなのかもしれない。

 

「時間を指定してない? …確かにその話は出てなかったね。」

 

「俺から言わせれば、明日闘わなくても…昨日の時点で終わらしてもいい筈だ。」

 

「昨日の時点で…? 昨日の奴の行動に疑問があるのかい?」

 柿谷は啓の疑問に追及の意を示し、啓もその追及に理解を示した。

 

 

「…”堅物野郎”の強さであれば、昨日の音乃木坂学院で俺を殺してμ’sを奪えた筈だ。 なのにそれをしようとしなかった…。 可笑しいじゃねェか。」

 

 音乃木坂白いドーム事件で、啓は澤井と闘った後…消耗した状態であった。金剛山もそれを分かっていたのに、啓を本気で仕留めようとせずに…何処か試す様な素振りをみせた。

 

 啓にとってそれは疑問が晴れぬ苛立つ話であり、そして‥…啓にとって転龍会に対する最大の疑問が次の言葉にある。

 

 

 

 

転龍会がμ’sを奪うのが目的なら…転龍会全員で攻めればいいだけの話だろ。」ドン!!

 

 

 

 

「馬羅垣の事件も麦野の事件もそうだ。 わざわざ…人数を減らす必要も計画を立てる必要もねェし…明日の交渉もする必要がねェんだ。」

 

「警視総監が言ってた通り…地球を滅ぼしつくせる力を持ってるんだったら、力押しで目的を達成出来る力が‥”奴ら”にはある。 奴ら全員いれば…世界中の軍隊が相手でも一瞬で殺せる。」

 

「それに闘わないまでも、μ’sの家辺りを”覇王色の覇気”で発動させれば…それでにこや穂乃果達を誘拐出来る話だ。 …物凄く簡単にな。」

 

 

 ‥…啓の最大の疑問とそれは…転龍会が本気を出さないという事だった。

 

 奴らの実力なら、疾うにμ’sを奪取する事自体…簡単な仕事だ。だというのに本気で実行しようとしないのは…どういう風の吹き回しなのか?

 

 その疑問こそがコレまでの過程で…啓自身が考えた疑問なのである。

 

 

「…成程、そこが桐生君の考えてる疑問なのか。 つまり、今日聞いた君の作戦はその疑問を晴らして、先の戦いを見据えてるって事なのか?」

 

「そうだ。奴らが何故に本気で攻めないのかは俺の”最大の疑問”になにか関係があるに違いねェ。 そして奴らの答え次第で、俺達に出来る事が広がるんだ。」

 

「そうか、君の言わんとしてる事が分かったよ。 …あっ、多分鷲尾さんから連絡だ。」

 

 柿谷は鷲尾からの連絡を確認する。

 

「そうですか…警視総監はまだ気絶してるんですか。 全く誰がこんな事を…。」

 柿谷が啓の方を目線を移しながら、誰かが近づいて来た。

 

「じゃあ、”バトンタッチ”だね…。 俺は鷲尾さんの所に行ってくるよ。」

 

 そう言い、スマホをしまい走っていくと…啓が飛ばした貨物の破片に足が当たり‥躓いて転倒してしまう。

 腹を抑えつつ…痛みながら走っていた。

 

「大丈夫か‥柿谷さん。 あの人、警察にしてはどうも鈍そうな感じがするぜ。」

 

「転ぶ方がまだマシよ。 ‥‥知らない間に大けがする奴よりね。」

 

 そう言い、啓の言った事を皮肉交じりに返したのは…上着を羽織ったにこであった。

 

 

 

 

 

 

 冊冊冊冊冊冊

 

 ~多目的訓練施設”休憩ベンチ”~

 

 啓に近づいてきた…にこは”立ち話も気が落ち着かないから、ベンチで休憩しながら話さない?”と向こうのベンチを指差した。

 それに応じた啓は休憩を兼ねて2人してベンチに座り込んだ。

 

 …すると、にこが白いフェイスタオルを啓に渡す。 

 

「これで、顔拭きなさいよ。」

 

「ワリィ‥気が利くな。」

 にこからタオルを受け取った啓は豪快に顔を拭いていく。

 それを眺めるにこ…その顔は何処か不安気な様子であり、疲れている様に見えた。

 

 

「此処に来たのは、なにか話す事があるからか‥?」

 そんな中…啓はタオル越しににこへ言葉を投げ掛けた。

 

「タオル渡してくるだけなら、そんな顔しねェだろうし、他の皆も連れてくるだろう?」

 

 もし、啓の所へ行くのであれば…様子が気になるにこ以外の何人かもやってくるだろう。

 ”明日の作戦”が啓に掛かっている以上…その作戦の要である啓の所へ来るのは、気になってくるのが人の性だ。

 しかし、誰かと一緒に来る事はせず、元気のない表情を隠そうとしないのは…にこが自分になにかしら聞いて欲しい事があるから、来たのでないかと啓は気付いた。

 

 

「俺に聞いて欲しい事があるなら黙って聞くぜ、にこ。」

 

「…。」

 

 啓の言葉を受けたにこ。そこから何を言うか…考えていた。

 そして、しばらく経った後…言うべき事が決まったにこはゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

 

 冊冊冊冊冊冊

 

「じゃあ、啓…聞いてくれる?」

 

「‥ああ。」

 啓は肯定の意を現すと、自分より身体が小さな少女の言葉に気を集中させる。

 

 ”桐生啓と矢澤にこ”…極めて筋肉質である精悍な青年と小さな身体にアイドルとしてのプライドを大きく秘めるツインテ少女…そんな2人が初めて出会ったのは、先月の三月中旬。

 だが、2人の出会いは入学先で出会ったとかの類の多くの人が体験するシチュエーションとは違う。

 

 

 2人の出逢いは…言うなれば、”少女を救った青年と救われた少女”という出逢いであった。

 

 

 数少ない出逢いを果たした2人は…それを端とし、復活ライブでの救出劇や転龍会会長との競り合い等といった”超然とした経験”ばかりが2人へ現実として起こってしまっている。

 

 そんな2人なのだが、実は此処に来て”ベンチに座って話をする”という事が無かったのだ。超然とした経験ばかりが現実として起こっているのに、腰落ち着けて話をした事が無かったのである。

 如何に2人が特殊な関係である事がうかがえる。

 

 

 長々と続けたが…つまるところ、ここに来て()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 だからこそ、にこがこの状況でどの様な事を話すのか凄く気になり、今はこの小さな少女の話に耳を傾けて聞いてあげるのが、自分の務めだと考えたのだ。

 一体…にこは何を話すのか?

 

 そうして、にこは自分の胸の内を話始めた…。

 これこそが…転生者達の争乱に巻きまれた”矢澤にこ”の心の叫び。

 

 

 

「色々あったから忘れてると思うけど…私は音乃木坂学院をもう卒業してるのよ、啓。」

 にこはそう啓に言い放った。

 

「”卒業”…そうか、お前はもう音乃木坂の生徒じゃねェのか。」

 にこの言葉に思わず、頷く。

 

「うん…μ’sに入って、皆で放課後に練習したり、新曲のアイディアを出し合って…喧嘩とかもした事があるわ。」

 

「それで、あの”ラブライブ”を優勝出来たわ。 …本当に嬉しかったわ…トップまで皆で駆け上がってこられて、皆で喜べる事が出来たわ。」

 

 

 

「ほんと…にこは皆に囲まれて幸せ者よ。」

 にこの口ぶりは嬉しさがこみ上げられている。

 

 

「応…お前がそこまで言うのか。 …俺は直接見たわけじゃあねェが‥その顔を見て良く分かるよ。」

 

「大好きなんだな…μ’sが。」

 啓もにこの正直な気持ちに共感の意を示す。

 

 

「うん、沢山のファンが会場まで足を運んでくれて…凄いオーバーアクションで、にこの名前を呼んでくれる子もいたんだから。」

 

「スゲェな…そんな熱心なファンがいたのか。」

 

 

「そう、今言えるなら‥‥μ’sの活動は私に思い出を残してくれたわ。 楽しい思い出、笑った思い出、悔しくて泣いた思い出…皆でやり遂げた思い出もね。」

 

「例えるんだったら‥宝物、私の青春。 あはっ…にこのボキャブラリーが追い付かないぐらいによ。」

 

「‥‥。」

 

 

 

 

 

「けど…μ’sは私の人生の全てじゃないっ。」ドン!!

 

「”人生の全て”じゃない?…どういう意味だ。」

 

 

「そんなの言葉の通りよ。 μ’sは確かに解散して、私に大切な思い出と仲間も残してくれたけど…それで”私の人生”が終わった訳じゃないわ。」

 

 にこはそう言うと、ベンチから立ち上がった。

 

 

「μ’sでの経験は…私に自信と諦めない心を意識させてくれた。 …だから。」

 にこは強く手を握ると、啓の顔を強く見つめた。

 

 

「音乃木坂を卒業した今…”アイドル専門学校”に入ろうと思うのよ。」ドン!!

 

「‥!!」

 

「それで誰かに認められるまで…芸能界に入って()()()()()()()()()()。 パパが応援してくれた夢を続けていきたいのよ、私のこれからの人生を…。」

 

「そうか…。 それが俺に聞いて欲しい話だったのか。」

 

 

「そうよ。 私があんたに聞いて欲しかったのは、μ’sで叶えた(アイドル)を続けていくのが…私の夢。」

 

 にこが啓に聞いて欲しかったのは…自身の夢である事。

 それを包み隠さず話した事を今、告白したのであった。

 

「その上で、私が一番怖いのは‥‥。」

 

 

「私達を襲ってるこの事件が()()()()()()()()()なの。」

 

 

「!!」

 

「ママとこころやここあに虎太郎。 そして、μ’sにその御家族…。 皆の命が大切なんて事は…わざわざ話に起こさなくても、大切だって事は。」

 

 

転生者(あんた)なら…分かるでしょ啓?」

 

「‥‥ああ、命が大切なんていちいち言葉に出さなくても‥そんなもん()()()()()()()()()()。」

 

「それが分かってるなら、話が早いわ。 …いい? 次に言う言葉を忘れないで聞いてね。」

 

「おう、分かった。」

 啓はにこのお願いにしっかり頷いた。

 

 

「啓…闘えない私の代わりにママ達や皆の命を助けて欲しいの。 出来るだけ早く…この悪夢(転生者の戦い)からわたしの(アイドル)に戻して欲しいのよ。」

 

「それが…頼りない私のお願い。」

 

(‥…”悪夢から夢に戻す”か。 ‥それがにこの願い。 ‥‥!?)

 

 にこの嘘偽りない言葉を…啓は心で噛みしめた。その言葉を心に留めようとしたその時だった‥‥。

 

 

「にこ、舌を出さず俺に掴まってろ。」

 

 

「えっ…な、なに?」

 

「話は後だ。 驚いて舌出すなよ。」

 そう言うと、素早く啓はにこを抱える。

 

「ちょっと!! きゃっ!!」

 啓はにこを抱えたまま、近くの建物内に入り込んだ。

 そしてにこを下ろすと、遮蔽物に身を隠して”ある建物の屋上”を睨んだ。

 

「啓、なんなの!? 急に私を抱え込んで…?」

 

「‥静かにしろ。」

 そう言い、にこの眼の前に沈黙のハンドサインを見せつける啓。

 

 啓のサインに理解を示したにこは小声で話した。

 

 

 

「まさか…がいるの? 昼に襲ってきたあの緑の気持ち悪いの? こ‥怖いじゃない…。」

 

「いや、昼間のhunter…あの”ツメトカゲ”じゃねェ…気配が違う。」

 

「気配が違う? じゃあ、別のなにか‥?」

 

 

「それも違うな。 大軍で来てねェようだ。…1人だけだ。」

 

「1人…たった1人だけなの‥。 もしかして、1人って事は。」

 にこは思い出す。深夜の西木野病院で襲ってきたあの黒衣の男の事を…。

 まだ、六武術が使えた啓でさえ歯が立たなかった…厄災が服着たような男を思い出した。

 

「嫌ぁ…ひ、1人で来るって事はすっごく強いんじゃないのよ…。」

 そう呟くと、にこは怯えだす。まだ、奴のトラウマは拭えてないからだ。

 

「落ち着け。 まだ答えを出すのははえェぞ。」

 啓はにこの肩をタップして、落ち着かせる。

 

 

「あの気配‥、あの黒ずくめ野郎(転龍会会長)とは全く違う…。」

 

「えっ‥それも違うの?」

 

「…ああ、あの黒ずくめとは‥…全くの正反対だ。」

 

(正反対って…? それって黒とは逆だから白って事…?)

 にこが安易に黒の反対が白では無いかと考えた。

 

 

「…!! 奴の”覇気”が強まりだした。」

 

「えっ強まりだした? それってやばいじゃない…なにかやってくるんじゃ…。」

 啓の言葉に…にこの顔は引き攣っていた。

 

「充分有りえるな…。 俺を誘ってんのかどうか分からねぇが…。」

 

(……。)

 

 

 啓は”一考”を考えると、すぐさまにこに指示を入れる。

 

「兎も角だ、にこ。 お前は絵里に連絡を入れてくれ。 その間に、俺は奴の注意を引き付けておく。」

 

「頼んだぞ、にこ。」

 

 ”…キュインッ!”

 そう言い終えると、啓は両脚に青い覇気を纏わせて、問題の建物へ急いでいった。

 

「…頼んだわよ、啓。」

にこは啓が向かった方向を見ながら、スマホから絵里に連絡を入れるのであった…。

 

 続く…。




ここで、にこの進路について書きました。色々と考えた結果…。

”夢を続ける”という事にしました。にこの進路は原作でも確定している訳ではないですが、この小説ではアイドル専門学校に通い…本格的に芸能界を目指す様に決めました。
他のμ’sメンバーは将来アイドルになると言及はしていないので、ある意味ではにこは唯一アイドルを続けている”生き残り”になるかもしれません。

因みに、この話自体は次話の”助太刀少年”に入れるつもりでしたが…長くなるので単独した話にしております。
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