上野を蹴り飛ばした黒の化身を追う為、啓は建設中の建物から追撃に向かう。そして、そのまま戦闘に入る。
サンジの燃える脚からなる炎の攻撃を容赦なく発揮する黒の化身…啓は押され気味になってしまうが、男から逃げる選択肢は無かった。
その頃、にこ達μ’sは啓の帰りを今かと待っていたが…凛の耳から遠い方へ轟音が聞こえてきたと話が出始めた。その轟音こそ、啓ではないと確信したμ’sは現地に向かうのであった。
そして、場面は変わり‥黒の化身を眼の前にバンダナを施した啓。黒の化身の強さは澤井以下hunter以上であるとし、勝負を決めようと仕掛ける。
その挑発に乗った黒の化身は、炎の竜巻を生み出し啓を亡き者に変えようとするが…啓の高速を要いた作戦に上体と下体を両断され勝負を決められてしまうのであった。
かくして、転生の龍は…転龍会会長から奪われた悪魔風脚を取り戻すことに成功する。しかし、まだ五体の黒の化身が居る事を告げられての事だった…。
~桐生の視点~
黒の化身”悪魔風脚”との戦いが終わって、気絶から立ち直っていた隆から、本当の自分は今此処に居ないと告げられた。黒の化身に腹を蹴られたのは分身体らしい…。
兎も角、アイツはもう一度会うまで…μ’sの事を頼んでいき、消えていった…。
‥‥言われなくとも、そのつもりだ。
それから、にこ達と会ったんだが…いきなり水をぶっかけられそうになったので…
なんでも、暗闇で火が現れたと思ったら、俺の脚が燃えているのに気付いて、消火しようとしたらしい。
まぁ普通の人間からしたら、脚にいきなり火がついてたら驚きもするか…。そのせいで、にこに小言をくらう嵌めになった。
(後、絵里が怖がってた。 希に聞いたら、暗いのが怖いらしい。しっかりしてると思ったら…意外と可愛いとこあるんだな。)
取り敢えず、μ’sに事情を話した…。他の皆からしたら、嬉しい事に違いねェ。
単純に考えれば、俺達に味方してくれる存在が要る訳だ。
…とはいえ、俺にはどうも
μ’sが悪の転生者達に襲われているのなら…俺がこの世界に来る前に神龍会のメンバーが既に闘っていも可笑しくない筈だ。
だが、実際はその神龍会と俺は会っていない…神龍地と隆に会ったのが初めてだろう。
多分だが、ラブライブの世界はごく最近までは転生者に狙われていなかった世界かもしれねェ。…それが此処に来て狙われる事になった。
なにか、事情があるのだろうか…? まぁ…明らかな正解が無い以上は、安心は出来ねェ。
そして…俺は寝る前に、鷲尾さん達と東京港への最短ルートを再確認した。ローが使うワープみたいな事は出来ねェから、μ’sとその家族は車で移動になる。
その移動中は、俺と”奴ら”中心で護衛する事になる。(勿論、警察側も護衛に回る。)
因みに、奴らに夜は交替で見張る様に命令しておいた。見た目以上に賢い奴らだが、俺以外の言う事を聞きたくねぇみてぇだ。
見た目は違うが…アラバスタ近海に住む”クンフージュゴン”みてェだ。クンフージュゴンは、自分を打ち負かす奴には弟子入りする習性があるからな。まぁ、可愛いというよりは、凶暴という見た目だがな…奴ら。
よしッ‥‥今日は終わって、明日は決闘だ。明日次第でなにがどう変わるか…俺の勝敗次第だな。
待ってろよ、矢澤家‥‥。あの”堅物野郎”を倒すからよ。
冊冊冊冊冊冊
2015.4.2 東京港交渉当日(金剛山との決闘当日) ~警視庁”桐生の寝室”~
窓ガラスに日差しが注ぎ込まれ、部屋の内部を明るく彩っている。本日は快晴、風向きは南から北へ、温度湿度共に…日本列島の春を表す気候となった。
そんな日本晴れな天気を肌で感じながら、朝っぱらから身体を鍛えこむ青年がいた。
啓「4997、4998、49999…」
部屋の真ん中を陣取り、指先で倒立運動を繰り返していた。己の身体を指先で支えているのだ、人間が出来る技では無い。しかも…昨日、異形の存在らと闘った男である。
「5000ッ!!…よし、1セット目終いだ。」
啓は、倒立位のまま空で一回転して、立位に戻ると…手元のペットボトルで給水を取る。
そして、徐に右脚を自身の前方に傾けた。
「”悪魔風脚”。」
そう言うと、右脚に炎が灯された。
(わざわざ回転しなくても…着火が出来るのは、黒の化身に勝ったおかげだな。)
以前は、回転を要した悪魔風脚も…黒の化身との闘いでノーモーションで炎を発動できる様になった。地味に有利な話だ。
”コンッ、コンッ。”
啓が技の感想を思っていると…ドアをノックする音が耳に入って来た。
にこ「入るわよ、啓。」
ノックの主はにこであった。昨日と同じ様に音乃木坂時代の制服を着ての登場だ。
「きゃあ、火ぃ!?」
「よう、飯が出来たのか。 にこ。」
啓が軽く挨拶するが…にこはそれに応じず、手元のペットボトルの水を浴びせた。
だが、啓はそれを軽く避けた。
「おい、なにすんだッ。」
「火っ!! それ消してっ!!」
にこはすぐさま、啓の脚へ指差した。
「ああッ。」
そう言うと、啓は瞬時に炎を消した。
そして…それを見たにこは、啓へ怒った顔を見せる。
「あんたねぇっ!! 部屋で火出すなんてバカじゃないの!?」
「おい、俺が火事を起こす訳ねェだろ? そんなヘマしねェ。」
「ヘマとか、そういうのじゃないわよっ!? 火は色んな物に燃え移るんだから、簡単に起こしていいもんじゃないのよっ!!」
「‥‥分かった。」
にこの言葉を受けて、啓は首筋を掻く。
「もう…びっくりしたわよ。」
にこはそう呟くと…昨日の事を思い出す。
急に火が現れたので、啓を見つけたのは良いが…脚が燃えているのにはびっくりした。
啓本人が平気だというので、なんとか理解したが…こっちは火傷でもしたのかと思って気が気でなかった。
(う~ん、確かにこの怪力バカは…力は強いけど、なんていうか…
「おい行こうぜ、にこ。」
既に服を着替えた啓がドア越しから声を掛けてきた。平時でも戦闘時と変わらず、素早い男である。
「う、うん。」
そう言うと、今度は啓の声に応じて部屋を後にした。
冊冊冊冊冊冊
同日某時刻 ~庁内食堂~
庁内には、当然食堂がある。事態が事態だけあって、多くの警察関係者が出入りしていた。
そこへ着替えた啓とにこが横並びに食堂に入っていき、既に注文を待つ人の多さに少し驚いた。
「人が多いな。」
「大丈夫よ、先に注文してたし。 席も押さえてるわ。」
そう言い、にこは取っていた席を指差した。
「そうなのか。 俺が頼んでた”牛丼”と”サラダ”は?」
「言われた通りやったわ。」
「助かるぜ。」
啓はにこに礼を述べると、食堂の注文口に向かった。
「すいません、先に予約してたのものですが…。」
そう言い、にこは食堂のおばちゃんに声を掛けた。
食堂のおばちゃん「牛丼とサラダとオムライスだね。 はい、もう出来てるよ~。」
おばちゃんはそう言うと、にこと啓に出来上がった料理を差し上げる。
「待て、おばちゃん。」ドン!!
そこへ、啓が待ったと手で制した。
「量が足りねェ、もっと増やしてくれ。特に肉と飯。サラダもだ。」
啓の増量におばちゃんが驚いた顔になった。
「えっ…お兄さん。 そこに居るお嬢ちゃんからの注文通り、この丼は二人前以上は入ってるんだよ?」
「いや、足りねェ。 後、最低”8人分追加”だ。」ドン!!
「は、8人…? そんなに食べれるのかい?」
「ああ、早く入れてくれ。」
啓は依然と顔色を変えぬまま、早く入れるように催促した。
「‥‥うん、分かったよ。 お兄さん男前だから、サービスするわね!!」
おばちゃんは啓の変えようとしない態度を見ると、瞬く間に丼を何杯か用意し、同様にサラダの分も用意する。
「はい、お待ちどおさまっ!! 取れない分は後で取りに来な。」
「どうも。」
そう言うと、啓はおばちゃんから手渡された盆を受け取ると悠々と席に向かっていく。
その堂々とした歩き方と手に持つ量の多さに行き交う人は驚きの目で眺めていた。
啓の行動を見ていたにこはと言うと。
(あんなに恥ずかしそうしていないのを見ると、私の方が恥ずかしくなる…。)
と、にこは内心そう思った。
席についた啓は勢い良く食べていた。しかも、にこが席についている間に既にサラダ1皿目と牛丼1杯を平らげていた。
「ちょっと!? もう食べたのっ!!」
「ああ、俺は青い覇気使ってるからな。 噛むのと箸を動かすのにな。」
よく見ると、啓の身体は青い靄の様なものがかかっており…常人のスピードではない。
「あんた、早食いと大食いの大会に出て見たら? 絶対優勝出来るわよ…。」
「そうか? 昨日は動いたからな。」
「μ’sの時は花陽が一番食べてたけど…花陽の比じゃないわね。10代の男ってそんなに食べるの?」
「そんなの俺に聞かれても分からねェよ。 ただ、強くなりてェなら飯を喰わねぇとな。」
「ふーん、あんたが言うと説得力がありありね…。」
「それより、それ喰ったらどうだ。 俺が貰うぜ。」
「ばかっ。 あげるわけないじゃない。」
啓の言葉ににこはオムライスに一口運ぶのであった。
「なんだ。食欲あるじゃねェか。」
「ふん、絶対にあげないから。」
「ハッ、別に取って喰わねェよ。」
啓は少し笑うと、手を振り回す。
「お前が元気じゃなかったら、俺の調子が出ねェからな。」
「…。」
啓の言葉ににこはスプーンを止めた。
「だって、あんたに言われたから。」
「俺がか?」
「昨日の病院の時、私が目覚めた時言ったでしょ?」
”捕まってもない人間が捕まった人間より混乱するのは、可笑しい話じゃねぇか。”
「ああ、確かに言ったな。」
啓はにこの言葉から、病院での事を思い出す。
「びっくりしたわよ。 混乱してる人間に向かって、よくあんな厳しい事言えるわねって。」
「…。」
「けど…確かにあんたの言葉通りかもしれないわ。 実際、捕まってるのはこころ達とママ。捕まって無い私が騒ぐなんて、甘えたことだし。」
「それに、私には
「応、そうだぜ。 それがお前のするべきことだよな。」
そう言うと、啓は残りの丼をより速く平らげていく。
”ガタンッ!!”
勢い良く丼を置き、口を拭う。
「行くか…この戦いの先に進むために。」ドン!!
「うん。」
そうして、食事を終わらせた青年と少女は食堂を後にした。
冊冊冊冊冊冊
~警視庁”出発車両前”~
あれから、防具を着込んで…軽くストレッチをした啓とにこは遂に出発する車両まで急いだ。
そこには、東京港へ無事護衛する為に掻き集められた車両や人員が居り、既に乗り込んでいた。
木ノ内「桐生君ッッ!! こっちだッ!!」
声の大きい木ノ内隊長が啓をオーバーに手招きしていた。
「応。」
それに応じると、そこには沢山の警察関係者…つまり、啓と同じく護衛に回る人達だ。既に挨拶自体は終わってるので、啓は軽く一礼していく。
歩んだ先には、鷲尾警部が他の隊員と最終確認を話し込んでおり、啓とにこは鷲尾に声を掛ける。
「待たせた、鷲尾さん。準備は出来てるッすか。」
「お待たせしました、警部さん。」
鷲尾「来たか桐生と矢澤さん。 そうだ、お前の注文通り…”あれ”も乗り込ませたぞ。」
「ありがてェ、あれはもしもの時の保険だからな。」
「私は出来たらあれには乗りたくないけど…。」
「安心しろ、俺に離れない様にしてればいいぜ。」
「その自信はなんなの…。」
「ハハッ…まぁ、それにしても問題は敵の動きだな。」
鷲尾が怪訝な顔付きになる。
「敵…啓、やっぱりあんたの考えてる通り襲ってくるのよね。」
「そうだな…100パー奴らは移動中の俺達を襲ってくる筈だ…。 それに奴らは、μ’sを奪うのに手段を選ばねェ筈だ。」
「”手段を選ばない”…妨害があるという事か。」
「そうだ、移動中は街中…奴らがその気ならえげつない事をしてくるに違いねェ。」
「もし、事が上手く運ばないと…俺達の中に死人が出るかもしれん。」ドン!!
そう言い、厳しい顔になる啓。
「「‥‥。」」
「そうならない為にも、俺は車の上で備えておく。」
「そこで、あんたの覇気ね。 確か、見聞色の覇気と覇王色の覇気を使うのよね。」
にこは啓の役割を言葉に告げた。
「そうだ。 …今日の流れは大きく分けて、二つだ。」ドン!!
ここで説明を入れると、啓の言葉通り…四月二日の流れは大きく分けて二つに分けられる。
一つが、東京港への移動だ。警視庁から中心街を抜けて、東京港へ辿りつく。その為の車両には、防弾などの仕様施された数十台で向かう。また、攻撃を備えて銃座などを備えた車もある。
だが、あくまで高速移動で向かうのが大事で、戦闘は二の次だ。
闘うのは啓の役目…。と言っても、啓が直接手を下す場合がある。それが前途ににこが言った覇王色の覇気と見聞色の覇気の兼ね合いだ。
見聞色の覇気で相手の位置を掴み、そのまま覇王色の覇気を食らわせる。サーチ&デストロイと言ったところか‥。これだけで、相手とわざわざ戦闘を起こさずに済む。しかも、啓には音乃木坂白いドーム事件で発揮した赤い覇王色の覇気がある。この赤い覇気に加えて、緑の覇気と青い覇気については近い内に説明するとして…。
そして、二つめは東京港でキラキラの実の転生者…金剛山 強との決闘である。これが”メインイベント”…!!
この男をどうするかで、今後の戦いの先が見えると言ってもいい。だからこそ、啓は負けらない…その為に作戦や力を考えて、取り戻してきたのだ。
「啓…。」
「なんだ、にこ?」
「あの金剛山って男…あんたから見てどう思う?」
「…金剛山は今の俺とぶつかるには、まだ時期が早い野郎だ。 けど、実現しちまったッもんなら闘り合うしかねェ…。」
「奴を倒さないと…先の未来が見えてこねェのも事実。 だから、俺は闘って先を手に入れる。」ドン!!
依然としてぶれぬ…固い決意を言い放つ啓。それをみたにこは内心、安心した。
「怪我したら、怒るから‥絶対に。」
敢えてにこは…啓の顔を見ず、先に車両に乗り込んでいった。
「‥‥鷲尾さん、そろそろ時間だな。」
「その様だ…俺も乗り込むとしよう。 じゃあ、桐生頼んだぞ…。」
鷲尾は肩を叩くと、大振りで車両に入っていた。
「…よし、行くか。」
啓はそう言うと…そのまま車両の上にジャンプした。
「行くぜ、移動開始だッ!! 目指すは東京港!!」
かくして、一向は決闘の場へ赴くのだった。
”ズドオオオォッンン‥‥!!”
そして、爆発が東京の街を襲った。
続く…。
仕掛けられた爆発…閉じられる陸路…啓は突破口を開き、金剛山との闘いを臨めるのか?
次回、第55話 急行、東京港へ急げッ!! 次回も乞うご期待b