転生の龍が如く 〜女神の守護者~   作:kantarosu

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今回は敵視点で読むと良いでしょう。

~前回のあらすじ~
遂に四月二日…その時が来た。転生の龍…桐生啓はストレッチと悪魔風脚の調整をしている最中…にこから食事の用意が出来た事を伝えられ…食堂に向かうのであった。

そして、青い覇気を発しながら牛丼を食していく啓は…にこ自身の気持ちを聞く。彼女は混乱する前に自分の立場を思い、その前に啓に助けて貰おうと述べた。
その言葉は、彼女自身が自分を見失っていけないという心の表れとも言うべき発言であった。
その言葉を胸に啓とにこはついに出発車両に乗り込む事になる。今日の注意すべき事は二つ。一つは東京港までのルートともう一つは金剛山との決闘。

再確認した一行は東京港へ出発するが…その”瞬間”の事であった。



第55話 急行、東京港へ急げッ!!

 同日某時刻~東京港旧第3倉庫(team”iflit”のアジト)~

 

 此処は、東京港旧第3倉庫…この旧倉庫は海外からの積み荷やコンテナを置く為に、他の倉庫より広めに建てられている。

 それだけのスペースがあった為か、都内を中心に違法運転を犯す暴走族達の溜まり場になっていた。

 しかし、その暴走族の姿は無い…一昨日の内にある”男一人”に壊滅されたのだ。

 

 壊滅を受けた暴走族の若者の1人は、”蒼い隕石が眼の前に降って来て、気が付いたら気を失った”と言う。この怯えた若者の証言もあって、街に迷惑をかけた付近一帯の暴走族は解散したと言うのは別の話…。

 今からするのが本題…その暴走族達を壊滅させ、アジトを乗っ取った男達こそ、四大勢力…転龍会直系team”iflit”。そして、単身で壊滅させたのが…副総長”蒼羽 浩二”という転生者であった。

 

 その副総長…蒼羽の元に一報が届く。

 

 蒼羽「なにィ…東京で火事ッ!! ッてェ!!、もっと具体的に言えよいッ!!!!」ドン!?

 

 ”バキッ…!!!”

 副総長の拳をモロに受ける報告係。

 

 報告係「いてェッ…!! すいませんッ!!」

 報告係は頬を抑えずに、むしろ非礼を詫び頭を下げた。

 

「さぁ、入れたんだからハッキリ言わんかよいッッ!! 返事は押忍だッ!!」

 

「押忍ッ!! 具体的に申し上げますと…桐生達がこの港まで向かうルートッ!! それが火事や建物の倒壊で道路を塞ぐ…敵組織の妨害行動に遭ったようですッ!!

 

敵組織の妨害行動…!! そりゃ俺らのチームじゃねェなッ!! …俺はそんな命令出してねェし、総長も今は不在だしな…。」

 

 

 金剛山「それはどう考えても…”奴ら”しかおらんでしょう…。 ここに来ての妨害行動…己等で正体を晒したも同然だ。」ドン!!

 話し込んでいる2人の後ろで、”ダイヤモンド”を食す巨漢の男が居た。この男こそ、啓が今日決闘をする男…team”iflit”特攻隊長‥”天山角の金剛山”と呼ばれる転生者であった。

 

「うしッ、おめェ下がってもいいよい。 それで、金剛山…オメェもそう思うのか?」

 

「なに、簡単な話ですよ‥副総長。 奴らは俺達と同じ転生者…。この世界に財産も思い入れがない…だから建物や地形が壊れようが知った事ではない。」

 

「だから、思い切った行動が出来る。」

 

「…ふむ、一理あるよい。 ‥だが、やり方が乱暴だな…。μ’sを巻き込んで死んじまったら、意味がねェだろうに…。」

 

「‥そもそも火事を起こして、無駄な労力を使わずとも…桐生に勝る強者一人居ればμ’s奪還は出来る筈だよい。」

 

「ええ、そうですね。 つまるところ、敵側に奴を倒せる程の戦力が居ないからこそ、火計を仕掛けたのでしょう…。」

 

 

「それに加えて、桐生啓は…覇王色の覇気の所持者である事。」ドン!!

 

 

「一昨日の音乃木坂の件を覚えてますか?…奴は”覇王色の覇気”を使った。それだけなら、俺達転龍会の幹部クラスは全員使えるが…奴の場合は違う。」

 

「”どういう訳か奴の覇王色の覇気は…蛇蝋や澤井組組員の武器を壊す働きがあるのです。”」ドン!!

 

「その事か…一昨日の報告にあったな。 考えようによっちゃ…異常な話だよい。 言うなれば覇気で敵の武器や利き手足を破壊する様なもんだろう。」

 

「自分で言って妙な話だが‥そんな”覇王色の覇気”は聞いた事がねェなッ。これが事実なら、奴の眼の前に雑魚は立てねぇよい。」

 そう言って、蒼羽は自分で言って言葉に閃きが走った。

 

「一つ分かったよい…()()()()()は桐生の覇王色の覇気にビビッてるんだな…。奴の覇王色の覇気なら、例え意識を保てても身体や武器を破壊される。」

 

「だから、桐生に正面でぶつかる事を捨てて…街に火を点ける事にしたのかよい。」

 

「…あくまで推測に過ぎませんが…。フンッ…ずる賢い奴らよ。」

 そう吐き捨てると、金剛山はソファーから立ち上がる。

 

「まあ、どちらにせよ…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 俺の元へ辿り着けねば…所詮”弱き世界”。遅くとも早くとも…そんな世界は消えるのが定め。」

 

(桐生啓よ…お前がここまでたどり着けるかどうか、ここで高見の見物とさせて貰おうッ…。)

 かくして、転龍会が率いるteam”iflit”は東京港へ居座り、その腹はまるで桐生を含めたこの世界の住人を試す様に待ち構えていた。

 そこへ辿り着くには、桐生とこの世界の協力が必要不可欠なのは明白。

 

 …では、肝心の桐生達はどうなっているのか…?

 

 

 

 

 

  冊冊冊冊冊冊

  ♪One Piece Burning Blood BMG 6

 

 ~都内第二十三区内街道(東京港への移動ルート)~

 

 ”ガラガラッ…!! ズウゥ――ンッッ!!”

 突如として都内のビル群に連鎖爆破が襲い掛かった…。その連鎖爆破の威力は凄まじく、如何に頑丈に建てられているビル群と言えど内外部への爆破にはなすすべもなく…崩れてしまうのであった。

 そして、この連鎖爆発によってビルの倒壊が起きたことによって、出発車両が通行するルートが閉ざされる事になった。

 更に…追い打ちをするように、爆破から生じた炎はそのまま他の建物に延焼を起こしてしまい…未曽有の大火事が発生‥!!

 

 結果…これら火災と倒壊事故は、桐生達の進行ルートを妨害するかの如く起き、車両が通行出来ない事態となってしまった…。

 

 まさかの事態に…警察側の人間は愕然としていた。無理もない…如何に訓練されている警察と言えど、爆発にビルの倒壊のダブルパンチの轟音と惨状は余りにも衝撃的過ぎたのだ‥。

 

「なんだ…こりゃまるで”ディザスタームービー”じゃあないかッ…。」

 

「それに凄い炎だッ…とても近付けねェッ…!!」

 眼の前の燃え盛る炎に怖気づいてしまう隊員達…。その現状に鷲尾は額に汗が出て、焦っていた。

 

(不味いぞ…隊員達の士気が下がってる。それにこのままじゃあ…港まで辿り着けんぞッ!!)

 そう、”彼等の作戦”を遂行するにはそもそもの話…。team”iflit”が待ち構える東京港へ向かわなければならない。だからこそ、ここで出鼻を挫かれたままで終われないのだ。そうなれば…彼等の運命は…。

 

 その時である…!! 皆が驚いているその時…周囲の轟音に負けていない”転生の龍”の咆哮が周囲を轟かせたッ!!

 

 

 転生の龍「立ち止まるなッッ皆!! 俺達の闘いは始まってるッ!!!!」ドン!!

 瞬間、桐生は出発車両の上から飛び出し…回転しながら障害物と化したビルの破片へ向かったッ!!

 

武装色硬化ッ!! 黒足(ブラック・ジャンブ)‥粉砕ッッ!!ドン!!

 

 ”バゴオンッッッ!!!!”

 啓の凄まじい回転蹴りは一撃で障害物を壊し、その衝撃の余波は凄まじく出発車両が通れるスペースを作り出した。

 

「「「「!!!!!?????」」」」

 

 驚愕とはこうも続けて起こるというのか…。この惨状に一人動じず、その圧倒的な脚力で障害物を壊す”規格外の青年の姿”に皆その迫力に呑まれていた。

 

 障害物を破壊した啓は瓦礫の上に立ち、その身体から目で確認出来るほどの”赤いオーラ”が纏われていた。

 そして、眼下の隊員達を見下ろして勢い良く腕を振り上げる。

 

「皆聞けッ!! 敵が俺達を妨害してくるなんて始めっから分かり切ってた事だッ!! サッサと目ェ覚まして自分の仕事に集中しろッ!!」

 

 「俺達はもう…とっくに踏みだしてんだぞッッ!!!」ドン!!

 

 啓の大発声は自身の覇気を発しつつ…全員の警察の隊員に波及していった。

 啓の言葉の真意は自分の現状を確認させ、敵の妨害があろうとも眼前の道へ踏み出す事…その他にあり得ない事であった。

 

 啓の言葉を聞いて、その意図を汲んだ木ノ内隊長は他の隊員を呼び付けた。

 

 木ノ内「中澤、大久保ッ!! 待機していた消防隊へ連絡しろッ!!」

 

 隊員「「は、ハイッ!!」」  

 その言葉を端として、それまで立ち止まっていた隊員に活気が生まれた。それぞれがこの現状を打破する為に動き始めたのだ。

 そして桐生もまた、鷲尾の元へ話掛ける。

 

「鷲尾さん、このまま俺が先頭に立って障害物を壊す。却ってバラけたら、敵の格好の的だ。」

 

 桐生は出発車両を護衛しながら進んでいる。この護衛団で一番の戦力は桐生啓に他ならない。つまり、桐生こそがμ’sとその家族を護り抜ける事に長けていえるだろう。

 だからこそ、敵からしてみれば…()()()()()()()()()()()()μ()()s()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。もし、車両数をバラけて分断したとしても…そこに桐生が居れば、μ’sの場所はすぐに探知される。

 

 なにより、敵がむざむざと出発車両を無視するとは思えない…必ず、桐生の居ぬ間に攻撃を仕掛けてくるだろう。

 

「分かった。お前の見聞色の覇気に何か気配があったか‥?」

 

「敵は潜んでいるみたいだ。多分、俺の覇王色の覇気を警戒して近づかないつもりだろう…。」

 

「…そうなると、敵は遠距離や空から攻撃もあり得るな…。港に辿り着くだけでも至難だな。」

 

「大丈夫だ…俺も居るし、”あいつら”も仲間にしてある…なにより。」

 

「俺の仲間はあんたを含めた”国”ッて組織なんだ…だからこそ、心強い。」ドン!!

 

「…ああ、必ずお前を港へ送り届けてやる。 よし、行くぞッ!!」

 

 かくして、いきなりのアクシデントに見舞われた一向だが…早急に立て直す事に成功したのだった。

 

 

 ~~敵の妨害を跳ね除け、東京港へ急げッ!!~~

 

 

 冊冊冊冊冊冊

 

 一方…~都内”ビジネス街ビル屋上”~

 

 国の徹底的な外出禁止令は凄まじかった。特に出発車両の移動ルートには一般人が人っ子一人居ない程に徹底的に人の排除を収めていた。

 それだけ、今日の東京港で行われる交渉への国の本気具合が垣間見える事だろう。

 

 …だが、国が出した禁止令に全く従わない連中がビル街屋上に集まっていた。その連中の手にはそれぞれの得物と銃器を抱え込まれており…その場に居る連中の顔の苛立ちと焦りは全く隠そうとせず、周りを怒気が帯びた空間になっていた。

 

 そう、この苛立っている連中こそ…都内に爆弾を仕掛けた元凶もとい正体である‥‥”蛇蝋”の構成員であった。

 連中には前途に述べた通り…余裕が無かった。

 

 胴元「クソッ…まさかこんな事態に…この世界に来てどれもこれも事を上手く運べんッ…。」

 そう言い、蛇蝋の胴元はボヤいていた…。

 

「一昨日の音乃木坂で、蛇蝋と澤井組混合2万で囲んでも…何も奪えず、奴の覇王色の覇気で失敗…!! 2万人も何処かへ消えてしまった‥。」

 

「…昨日の金獅子会のhunter共も居なくなって、またも失敗!! …()()()()を払ったと言うのに、なんたるザマだッ!!」

 ボヤきつつ、鉄柵を凹ませる胴元。

 蛇蝋側からしてみれば…失敗続きのあり様であり、苛つかない方が可笑しい問題であった。

 

「だが…頭痛の種はあの男だッ!! 桐生啓…!!

 

「転龍会会長から技を奪えたと言う話だが…全く弱体化しておらんッ!! むしろ、前より強くなっているではないかッ!!」

 

「しかも…意味分からんのは、あの”覇王色の覇気”だッ!! なんなのだ、あの覇気は…どれだけ兵を呼んでも意味がないッ!!」

 胴元の怒りは留まる事を知らなかった…。

 蛇蝋は覇王色の覇気への対抗訓練を受けているからこその言葉であった。だが、覇王色の覇気を耐える実力を持っていたとても…あの覇気の前では手足や武器が壊れてしまうのでは実質戦闘不可と言っても良いぐらいだからだ。

 

「クオオオッ…!! 総統閣下になんと申し上げれば良いのかッ‥!!」

 そんな頭を抱え込んでしまっている胴元は手元の蝋茶が見えた。

 

「いやいや、落ち着け…こういう時こそ落ち着くのだ…蝋茶を一杯飲めばいい。」

 胴元は蝋茶を優雅に飲み、苛立つ気分を落ち着けようとした。

 

 連絡役の男「おい、胴元ッ!!」

 そこへ一報が届く。連絡役の男が胴元へ駆け寄った。

 

「…来吧(オイオイ)、そんなに慌ててどうした?」

 

「火急の知らせだッ!!」

 

「火急の知らせ? まさか、桐生がくたばったのか?」

 胴元はケラケラとせせら笑う。

 

「馬鹿野郎ッ!! 飲んでる場合かッ!!」

 直後、連絡役に杯を割られてしまう。

 

「おい…いくらなんでも割る事はないだろ。」

 のんきに地面へ落ちた杯を取ろうとする胴元へ痺れを切らした連絡役は頭ごなしに怒鳴った。

 

 「いい加減にしろ!! 作戦の要である狙撃隊が次々と壊滅しているんだぞッ!!」ドン!!

 

 その言葉を受けて、胴元は腹の中に溜めていた茶を吹き出した。まるでボディブローを喰らった如く…。

 

 

 

 

 冊冊冊冊冊冊

 

 胴元は吹き出した茶で思い切り蒸せるが‥それを一切無視し大声で怒鳴った。

 

「バカなッ!? 俺達の作戦の要だぞッ!? ()()()()()()()()()()()()()()()()!!!???」 

 その声量は先程の連絡役の声に負けない程であった。

 

 連絡役の一報は連中にとって大打撃を与えた。それまで、怒りと焦りの表情をしていた蛇蝋の構成員達は怒りが無くなり、代わりに恐怖が加わり…空気は一気にざわめいた。

 蛇蝋の連中がここまで空気を変えてしまう程、奴等にとって…桐生啓という漢がその”怪物”たる所以だからだ。

 

 桐生を怪物たる理由とするには、二つの理由がある。一つは胴元が唸っていた桐生が発する”覇王色の覇気”だ。先程も同じ様な説明をしたから省くが…もう一つの理由も桐生を”怪物”と言えてしまう理由。

 それが…一昨日の音乃木坂白いドーム事件で見せた銃弾を素手で止めてしまうというとんでもない超人技であった。

 拳銃だろうが、機関銃だろうが…銃弾を素手で掴めるという明らかに超人染みた技であり、これを許してしまうと…余程の隙を突かない限り、桐生に銃は意味が無いという結論に至ってしまう。

 

 つまり、結論を言えば…通常より強力な覇王色の覇気を持ち、銃弾すら効果が無い桐生啓という漢は蛇蝋にとってまさに”怪物”。μ’sにとって、頼もしい漢でも…奴等にとっては天敵に過ぎないのだ。…正面衝突は絶対に避けたい、避けなければならない強力な敵でしかないのだ…。

 

 だからこそ…蛇蝋が選んだ”対転生の龍”への対策は…遠距離からの攻撃。…狙撃と妨害工作を要いた作戦に懸けたのだ。

 奴らにとって最も脅威である桐生の覇王色の覇気を受けない様に、遠距離で構える。そして狙撃隊が頃合いを見つつ、通行中の建物を爆破し、足止めを狙う。

 

 そして、その足止めは…桐生ではなく警察の方を狙う為の妨害工作であった。桐生は脅威であるが、警察が相手ならば話は別。

 蛇蝋にとって攻めどころであり、桐生にとって弱点になり得るからだ。

 

 それに彼等はあくまで…サポート。桐生の体力を奪い‥東京港へ近づくにつれて待ち伏せしている…ある組織に潰して貰えればいい。だから、この一帯で脅威である桐生の体力やダメージを出来るだけ削りとる。

 そう、考えていたのだが…。

 

「待てよ…じゃあ、狙撃隊は誰にやられたんだ? まさか、桐生の奴にやられたのか?」

 

 

「それが…金獅子会のhunter共の仕業だ。」ドン!?

 

 

「ハッ、hunterだとッッ!!…どういう事だ!? あの化け物共がなんで俺達蛇蝋を攻撃するんだ!? そもそも、生きていたのか!?」

 

「そ、それが…まだ判明したばかりで。」

 

「おい、話は此処までだッ!! 俺達のエリアにも来るぞ、()()()だッ!!」

 双眼鏡を覗き込んでいた蛇蝋の観測員の1人が、奴等にとっての”脅威”が来ることをその場にいる構成員に大声で知らせた。

 その知らせを受け、それまでざわめいていた空気は一瞬で静まり返り…慌ててその先に居る脅威を各自が覗きこむ。

 

 ”ドゴオンッ!!”

 盛大な音が遠く離れた蛇蝋の構成員の耳にも聞こえてきた。その盛大な音こそ、奴等が仕掛けた障害物であるが‥音が正しいモノであれば、明らかにモノが壊れる音にしか聞こえなかった。

 

「おい、この轟音って‥‥瓦礫を砕いてんのかッ!!」

 観測員の1人がそう呟いた。その言葉に他の構成員も反応する。

 

「ああ、どう考えても奴がやってるとしか思えん。 だが、此処に来るまで瓦礫の山は1つや2つじゃない筈だ…。それをこの短期間で壊して進んでいると言うのかッ…!!」

 

 蛇蝋は桐生達を東京港へ進ませない様にする為に、障害物となる瓦礫の山を爆破工作によって…いくつか用意していた。この瓦礫の山は確かに通行する車両の邪魔にもなるが…むしろ、桐生の体力を奪うという事に重点を置いていた。瓦礫の山程度…桐生の進行を阻止するなど出来ないと蛇蝋の連中は考えていた。

 だが、それを出来るだけ用意していけば…桐生自身を倒せないにしても、それを破壊する体力を減らせる事は出来ない事もない。結果的に桐生をへばらせる事が出来る。

 

 しかし、最初の爆発からそれ程時は経っていないというのに、このエリアの蛇蝋の地点まで辿り着いたという事は…あまり壊すペースが落ちていないという事になる。つまり、桐生はまだまだへばっていない可能性が高いのだ。

 

 再々改めて、”転生の龍”の恐ろしさを感じた蛇蝋は砂埃から現れた脅威を遂に見る事になった。

 

 …脅威(そいつ)は頭部から踵に至るまで…全身を防具で身体を包み込んでおり、顔は完全にフルフェイスで一切の表情が他者からは分からなくなっていた。つまり、誰がこのフルフェイスなのか分からないと言う事なのだが…だが、蛇蝋の観測員達は直ぐにこのフルフェイスが誰なのかは分かった。

 

 よく観察すれば、手足の装備に土などの汚れが付いていたのだ。それも黒色の装備でも分かる程の汚れが…。

 そう、このフルフェイスの防具を着込んだ人物こそ…紛れもない”桐生 啓”その漢であった…。

 

「ま、間違いねェ…あのヘルメット野郎が桐生だッ!! あの防具を着込んで瓦礫の山を進んでいやがったんだッ!!」

 

「あの野郎…手足に装備を着込んで、直接肌に触れない様に瓦礫を破壊していたのかッ‥。」

 

 そこへ、胴元は怒鳴り散らす。

「バカ野郎共ッ!! 今はそんなのはどうでもいいだろうッ!! 観測員は位置を割り出し、狙撃員は狙撃しろッ!! 全員ターゲットは”桐生只一人”だッ!! 」

 そう言い、胴元は早く攻撃態勢へ移る様に指示を出した。奴等にとって天敵は桐生只一人。個々で車両を狙うよりも、一番厄介な桐生を全員で狙えば最も作戦はスムーズに進む。

 桐生は能力者でもなく、それに転龍会会長に六大武術を封じ込まれたので、嵐脚といった遠距離技を出す事が出来ないのが現状。遠くから桐生を攻撃するのがベストなのだ。

 

 なにより、覇王色の覇気も人の身体から発動される以上…遠くに離れれば離れる程に、その勢いは失速するのは自明の理。

 だからこそ…狙撃がこれ以上ない程のベストワンなのだ。

 

「よし、位置割り出し‥風向きも重力も計算出来たッ!! 何時でも撃てるッ!!」

 

「同時射撃だッ!! 一気に仕留めろッ!!」

 胴元の狙撃令を発令し、狙撃隊がトリガーを押す。

 

 ”バンッッ!!”

 

 遂に放たれた弾丸は桐生啓への一斉射撃がなされ、絶対絶命の危機が訪れようとしていた!!

 

 

 

 

 …とはいかなかった。

 

「ぐああッ!!?? め、眼がああ…。」

 

「ギャアア…体に火が!? 誰か消してくれッ!!」

 自身の眼が…体に火が…口々に悲痛な叫びをあげる蛇蝋の連中達。先程の”バンッ”と響いた音は銃声ではなく…”炸裂音”。

 連中が撃とうとした銃器や双眼鏡自体が急に炸裂した際に生じた音であった。

 

 そう、狙撃しようとした瞬間…連中の狙撃は撃つことが出来ずに、失敗に終わったのだ。

 

「な、なんだ一体何が起きたのだ…!? 急に武器が壊れるなど‥。」

 胴元は突如の事態に驚いてしまい、対処を起こせないでいた。

 

 それが…奴等の運のツキ。眼の前の混乱に気を取られてしまい…後ろから染まる闇討ちに全く気がつく者は1人も居なかった。

 

 ”べキャッ…”

 またしても、突如として起こったその妙なその音は…硬い物が折れ曲がる時に生じる音と似た音であった。

 そして、同じ様に幾つかのなにかが…地面に落ちていく。最後の落下音が周りに響いた時…そのビル屋上は直ぐに‥静かになった。

 

 そこへ、暫くして…ある人物がビルとビルの間をジャンプで移動し、先ほどのビル屋上へ辿り着いた。

 その人物が到着すると‥そのビルに先に辿り着いていた何体かの影は、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ?「これで残りの蛇蝋の連中も片付いたな…。 いい連携だった、何より速さが良い。」

 

 

 

 啓「流石はhunterだ。 それでこそ、俺が仲間にした甲斐がある。」ドン!!

 

 

 その言葉にhunterは只…頭を下げるのであった。

 

 

 

 

 冊冊冊冊冊冊 

 ~取り戻されたビル街の屋上~

「鷲尾さん…hunter達が言うには今倒した蛇蝋の連中が最後みたいだ。」

 無線機で鷲尾に報告しながら、啓はペットボトルの水を飲み、体温を冷やしていた。

 

「そうか…しかしまさかな。爬虫類の化け物を仲間にするとはな…。」

 

 hunter「guooouuu!!」

 

「うおッ!? なんだッ!!」

 無線越しに驚く鷲尾。

 

「鷲尾さん、あまりそう言う事は言わない方が身の為だぜ。 こいつらプライド高いから、邪険に言われると腹が立つみてェだ。」

 

「そ、そうか…確か今の所はお前の言う事しか聞かないんだったな。」

 

「guo!!」

 

「‥その通りだといってるみてェだ。」

 その言葉を聞いて、鷲尾は少し溜息を吐いた。

 

 そう…これまで、話の中で出てきた桐生が仲間にした連中…。その正体こそ、なんと高坂一家を襲った金獅子会のhunter達であった。

 

 それは転龍会会長に技を封じられた事が発覚していた時からだ。

 …短いながらも使ってきた技を奪われた啓は…敵と戦う為の攻め手が大幅に減少してしまい、相手によっては苦戦を強いられる可能性が高まってしまった。

 なにより、…強大な組織を相手にして、μ’sを護り切れるのは実質…桐生啓タダ一人という極めて不利な立場にあった。

 

 もし…そんな現状で、覇王色の覇気を全く受けない軍勢が襲い掛かったりすれば…想像を絶する話になるだろう。

 だからこそ、自分の技をもう一度使えるようになるのと同時に…戦える戦力を手に入れるのは最優先事項でもあった。

 

 そして、そのチャンスは近い内に訪れた…そう、高坂穂乃果を迎えに行く途中から…啓を含めたμ’s3年生組はhunter達に襲われていたのだ。啓は覇王色の覇気を発動したが…全く効き目が無かった。

 だが、効かない事が分かった瞬間…啓はhunterを見た瞬間、それまで考えていた事に対しての閃きが起きた。

 

(あの化け物共を力でねじ伏せれば…戦力になるかもしれねェ。)

 

 ワンピース好きである啓は…主人公であるルフィの行動がヒントになった。

 アラバスタ近海のクンフージュゴン、深海のクラーケンこと”スルメ”、コリーダコロシアムの非情なる牛…ブルータル・ブルこと”ウーシー”。

 人間を全く寄せ付けない強さを持った彼らは…ルフィと闘い合った事により、その人柄に触れた結果…。物語の要所要所でルフィとその仲間達を手助けしてくれる心強い味方となった。クンフージュゴンに至っては、ルフィに影響され…海に出て、武装色の覇気を会得する個体までも居た。

 

 さて、その事に気付く事が出来た啓は恐怖で動けないμ’sを護る為に車から飛び出すと…持ち前の覇気を活かしつつ、瞬く間に襲ってきたhunter達を倒した。

 だが…致命傷を与えず、意識を奪う事に徹し、襲ってきたhunterを自らで抱えみ…回収。

 その後、気絶させたhunterを囮にして…助けに来たhunterを1人で返り討ちする事で遂にhunter共を倒す事に成功する。

 

 そして、倒したその場でこう言ってみせた。

「俺に負けたお前らはもう…選択の余地はねェ。 だからこうしろ。」

 

 「お前ら…俺の仲間になれ。」ドン!!

 

 ‥その後、hunter達は自分を襲う事はしなくなった。啓の言葉を受け、何を感じたのかは恐らく…敗北を感じ、それを受け入れたのだろう。

 hunter達も闘いの場に身を置く怪物。その闘いで敗れたという事は、自分達に選ぶ事は何も無いという事実。

 

 かくして、hunter達総勢”23匹”の軍勢は闘いに勝利した桐生啓の軍門に下る事となる。だが…あくまで従うのは闘いに勝った桐生だけであり、警察に対しては未だ言う事を聞かないという事なのだ…。

 その様な背景があって、桐生の周りには漢に従う怪物達が周りを囲んでいた。

 

「それで、鷲尾さん…蛇蝋の連中の事なんだが。」

 そう言い、啓は生首を持つと…その切り口を見た。

 

「こいつら…”蝋人形”だ。 純粋な人間じゃねェ…。」ドン!!

 

「ろ、蝋人形…。 どういう事だ、桐生。」

 

 

「多分だが…こいつら全員ドルドルの実…一昨日の昼に、音乃木坂学院を襲ってきたロウソク野郎…。 蝋家龍の能力で造られた”人形作品”だ。」ドン!!

 

 

「なんだってッ…!! だが、そいつは金剛山に殺されたと聞いていたが…。」

 

「ああ…だが、現に奴の能力で動いていたとしか思えねェのも事実なんだ。」

 

「しかも、こいつら元が蝋燭だからなのか、蝋家龍の力の所為だからかは分からねェが…俺の見聞色の覇気でも気配を感じなかった。」

 

「まさか…そいつらが爆弾を設置しても気付かなかったのか…!?」

 

「…()()()()() 兎も角もしそうだとしたら、俺が遭った偽の蝋家龍よりも厄介な使い手になるな。」

 

「…うむ、早い話が奴は生きていて、今日遭遇しても可笑しくはないのか…。」

 

 

「警部…よろしいですか?」

 

「…んッ、なんだ? すまん、ちょっと待ってくれ桐生。」

 そう言うと、話を一度切って暫くすると…。

 

「桐生…やはり東京港に転龍会が陣取っているのが分かった。」

 

「やっぱりか。」

 

「ただ…あそこへ行くには、橋が架かっていたんだが…爆破されていたみたいだ。 他のルートも同様で、狭すぎて通れなくなってる。」

 

「…そうか。 野郎…俺達を絶対に東京港へ行かせないつもりだったのか。」

 

「ああ…それで提案なんだが、矢澤さんをどうするかについてなんだが…。」

 

「にこを…?」

 

「そうだ。このまま、出発車両で通るのは無理そうだが…お前が乗っていた”アレ”なら通れそうなんだ。」

 

「…だがそれじゃあ、あんた達を護るのが居なくなるんじゃないのか?」

 啓がそう呟いた時…少しばかりの間があった。そして。

 

 ?「大丈夫よ…私は。」

 

 にこ「だって、私が港まで絶対に行かなきゃないんでしょ?」ドン!!

 

「‥にこ。 それで良いのか?」

 

「うん。 だって()()()()()()とも限らないんだし…私が外に姿を表せば多少の囮になるんじゃないの?」

 

「‥‥。」

 

 

「それに周りのあんたの友達が…協力してくれれば良いんじゃない?」

 

「…こいつらが”友達”?」

 啓はにこの言葉を聞いて、思わず周りのhunterを見渡した。

 

「そうよ。にこ達を助けてくれてたんでしょ? 感謝しないのは可笑しいじゃない?」

 にこの言葉を無線越しに聞いて、hunter達は少しばかりというか驚いていた。

 

 まさか、そんな風に言われるとは微塵も思わなかったのだ。hunter達はb.o.w…生物兵器である。

 だからこそなのか…なんだか反応に困ってしまうのだ。

 

(…”友達”か。 そんな発想…考えもしなかったな。)

そう思い、啓は眼の前のhunter達を見た。

 

(穂乃果にことりや海未が居る様に…μ’sが仲間で友達である様に‥‥()()()()()()()()()()()()()?)

そう思うと、少し頭痛が出るが…それ以上にその答えが出ないのがなんだか痒かった。

 

(いや…今はいいか。 考えても答えは今すぐ出ない。)

 

「分かった、にこ。 お前のやり方に懸けよう。」

啓はそう言い、立ち上がるとhunter達を見回す。

 

「お前ら聞いたか…? にこにとっては友達なんだそうだ。お前らがどう思うかはお前らの自由だが…。」

 

「その”友達”の頼みだ。 車両の方も援護してくれないか?」

その言葉を聞いて少し戸惑うhunter達…だが直ぐに答えを出すものが居た。

 

「guo。」

早々と意志を表したのはこの中でも若手のhunter…通称”刻まれ”という個体であった。

 

「お前か…”刻まれ”。」

啓はその”刻まれ”という個体に注目する。そうこの個体こそ、穂乃果達を襲い掛かろうとして啓に怒涛の3連撃を喰らったあの個体であった。

啓の”切り裂き・シュート”を身体に刻まれた事から、彼には傷という身体的特徴が出たことにより…他の個体より一早く差別化がなされたのだ。

 

「guooo!!」

 

「そうか…お前はサッサと決めて護ろうとそう考えているのか?」

 

「guo!!」

啓の言葉に首を縦に振り、肯定を表す”刻まれ”。

 

「だそうだ…。 お前らはどうする…?」

啓の言葉とそして…仲間であるhunter”刻まれ”の行動を見て、彼らの意思は決まった。

 

「guoooooooo!!!!!!!」

hunter達は一斉に雄たけびを上げると、行動で示すべくそれぞれが屋上から飛び降り、出発車両に向かった。

 

「…フン、なんとも頼もしい奴等だ。」

 

「guo!!」

 

「”俺達も早く行こう”ッてか…? いいだろう。」

啓とそのhunter”刻まれ”も彼等と行動を共にすべく…取り戻したビル街の屋上から確固たる意志を持って飛び降りるのであった…。

 

続く…。




啓が最初に戦力にしたのはBOWでした。個々の実力なら、構成員程度なら”首狩り”で即死です。(ちなみに”首狩り”は実際のゲームでも即死技だったりする。)

それにしても、敵から見れば桐生啓という漢はまさしく化け物…覇王色の覇気もあって、雑魚キャラ絶対殺すマンといったところですかね。
さて、次回第56話 工業地帯の”金獅子モデル”次回も乞うご期待b
 
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